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[22476] 【ネタ】【願望系?】Masked Rider in Nanoha (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/21 19:37
これは、タイトルにもあるようになのは(A's)の世界にクウガ・アギト・龍騎が次元漂流者として現れるものです。

仮面ライダーの怪人は今のところ出てきません。ライダーが増える事もありえます(平成か昭和か分かりませんが)

基本的にネタですので話の作りは甘いです。そして、作者が映像でやって欲しかった事を好きに書いてるだけです。それでも良ければどうぞ。

後、ライダー無双ではないと思います。でも、魔法有利でもないです。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 1 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/25 13:03
「あれ? ここ、どこ?」

 確かに先程まで、自分は果てしない青空を見上げながら、砂浜を歩いていたはず。

(そういえば、突然目の前がパッと光ったな)

 そう思い出し、青年は視線を動かす。どうも公園らしい。平和そのものといった雰囲気の中を、カップルが、家族連れが、老夫婦が歩いている。
 それを眺め、笑顔を浮かべる青年。その鼻に、ふと海風が香る。それに誘われるように足を動かしてみると、視界に広い海が広がった。

「……いい所だな、ここ」

 穏やかで静かな光景。そして見上げれば気持ちのいい青空がある。
 視線を戻せば、どこまでも続く大海原。それを見ていると、さっきまでの悩みも途端にちっぽけなものに見えて……。

「いや、見えないって」

 つい自分の発想に突っ込んでしまう青年。そして何を思ったのか、とりあえず自分の頬を抓ってみた。

「っ!」

 鋭い痛みが走った。どうやら夢ではないらしい。それを確認し、公園の外へ出てみる事にする。現在地を確認しようと思ったのだ。
 雰囲気的には、日本のようだがまだ分からないと思い、青年は入口へ向かう。そこには、公園の名前だろう名前が刻まれていた。
 それを見て、青年は安堵すると同時に途方に暮れる。

「海鳴……海浜公園……」

 その名に聞き覚えもなく、先程まで自分のいた国から日本は、ありえない程の距離がある。
 だから、彼はどうしてこうなったかを考えて、一つの可能性に行き着き、お腹の辺りに手を当てて困った顔で呟いた。

「……どうしてこうなったんだろ……? ……まさか、アマダムのせい?」

 青年の名は五代雄介。戦士を意味する力を手にした優しき男。またの名を、仮面ライダークウガ。



 平和な一軒家。そこから上機嫌な雰囲気を漂わせ、一人の青年が庭に顔を出す。彼はそのまま庭の一角に作った菜園に近付くと、雑草を抜き始めた。
 その菜園は、今から半年前、彼がこの家に居候するようになってから作られたものだった。
 彼のたっての希望により、実現されてからというもの、この家の家計を助けてはいるのだが、問題もある。
 それは、彼は野菜しか育てないという事。そして、何故かそれが通常よりも大きくなるという事だった。

 青年はどうやら菜園の手入れをしに来たようだった。そこで育てられているのは、青年が丹精込めて世話をする野菜達。味は保障される無農薬の一品だが……。

「よしっ」

「よし、じゃね~よ。いつになったらイチゴやメロン育ててくれんだ」

 全ての雑草を抜き終え、満足そうに頷く青年に、Tシャツと半ズボンの少女が蹴りを入れつつ、文句を述べる。
 それに青年は怒るでもなく、申し訳なさそうに表情を歪め、手を合わせた。

「ゴメン、ヴィータちゃん。今は野菜達で場所が埋まってるからさ。それに、今からじゃ今年は無理だから」

「それぐらいにしておけ、ヴィータ。何だかんだ言って、お前も野菜が美味しくなったと喜んでいたではないか」

「へっ、それはそれ。これはこれだ」

 シグナムの指摘に、どこか照れながらヴィータは青年から顔を背けた。その仕草が可愛らしく、子供のように見える。
 それを思い、シグナムと青年は笑顔を浮かべる。

「じゃ、約束するよ。来年からは、ちゃんと甘いものも育てるから」

「約束だかんな。嘘吐くなよ、翔一っ!」

 ヴィータの言葉に笑みを浮かべて青年は頷く。それにヴィータも笑顔を返す。

 彼の名は、津上翔一。人の新たな可能性に目覚めた男。またの名を、仮面ライダーアギト。



 ジェイル・スカリエッティは戸惑っていた。天才科学者として名高い彼が戸惑うなど、珍しいのだが、今回ばかりはおそらく誰でもそうなるだろう。
 何故なら、急に、何の前触れもなく人間が現れたのだ。それもただの人ではない。全身を鎧のようなもので覆った人物だったのだ。
 人物と判断出来るのは、先程から色々喚いているからであり、そして動きが本当に人間くさい事もある。

「……まずは落ち着きたまえ。君は一体何者だい?」

「え? おわっ! 誰だ、あんた!?」

 どうやら、相手はジェイルに気付いてなかったらしい。声を掛けた途端、軽く飛び跳ね、ジェイルを警戒するように見つめてきた(ような気がした)
 そんな相手の言葉に、それを聞きたいのはこちらの方だと思い、ジェイルは頭を押さえる。だが、ふとある事を疑問に思い尋ねた。

「君は……管理局員かい?」

「は? 管理局? いや、ただの仮面ライダーだけど……」

「カメンライダー?」

「あ、そうか知らないよな。えっと……」

 聞いた事のない名称にジェイルが疑問符を浮かべると、彼は何かに納得したようだ。
 そう言うなり、鎧の人物はベルトのようなものに手を伸ばし、それからバックルらしきものを外した。
 その途端、鎧が消えて一人の青年が現れた。どこか人懐っこい笑みを浮かべ、青年は告げた。

「俺は城戸真司。OREジャーナルのジャーナリストやってます」

 そういって名刺を慌てて取り出す真司。それを見つめ、ジェイルは久方ぶりの興奮と感動に打ち震えていた。
 見た事も聞いた事もないシステム。そして、管理局を知らないという事は管理外の人間。つまり、それは何をしても管理局が動く事はないという事だった。

 どこか不気味な雰囲気のジェイルに、真司は不安そうな視線を送る。

(だ、大丈夫か、この人。それに……何かここやな感じがするし……)

 彼の名は城戸真司。戦いを止めるために戦いに身を投じた男。またの名は、仮面ライダー龍騎。



運命に導かれ、異世界に現れた三人の異なる仮面ライダー。彼らが出会う事は何を意味するのか。

そして、何故彼らが呼ばれたのか。それは誰にも分からない……。





終わっておきます。




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一発ネタ。思った以上に広がらなかった……。

時系列は一応同じ。アギトだけ若干先に来てたって事で。

……後出せるのは、平成は響鬼さんとキバがいます。

555や剣、カブトに電王は俺はほとんど知らないので無理。ディケイドはもう大変なので不可能。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 2 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/25 12:59
 五代の目の前で展開されている光景。それは、自分が世話になっている少女の友達が空を飛び、赤い服の少女に襲われているというものだった。
 しかも、その少女はその赤い服の少女によってビルへ向かって吹き飛ばされたのだ。何か胸騒ぎを感じ、散歩に出た先で起きた出来事。
 周囲の色がまるで抜け落ちたようなものに変わり、驚いていたのも束の間、そんな光景を見たのだ。
 そして、そんな時、五代が選ぶ事は一つ。

「なのはちゃんっ!」

 走る。だが、追いつけるはずもない。届かない。”今の自分”では。だからこそ、五代は願う。助けたい。守りたいと。
 もう二度と。そう思った力を、彼は再び使う事を決意する。それは、倒すための力ではない。それは、守るための力。
 五代の想いに応えるように、彼の腹部にベルト状の装飾品が出現する。

「変身っ!」

 五代の言葉が、アークルと呼ばれるベルトに息吹を吹き込む。中央にある宝石。アマダムと呼ばれる神秘の輝石が、五代の姿を変えていく。
 赤い身体。赤い瞳。古代の戦士にして、現代に甦った英雄。その名は―――。

「っ!!」

―――クウガ。笑顔を守るために戦い抜いた、青空の如き心の勇者。

そして、その身体が飛び上がりながら赤から青へ変わり、ビルに激突しようとしていたなのはを受け止める。
 その温もりになのはは目を開け、驚いた。だが、その瞬間聞こえた声にそれが別のものに変わる。

「大丈夫? なのはちゃん」

「ふぇ?! ……その声、もしかして五代さん!?」

 こうして、戦士と魔法は出会う。後に『闇の書事件』と呼ばれる戦い。その幕開けを兼ねて……。



「だ、第四号……」

 翔一は、驚愕を隠す事もせずに目の前を見つめていた。はやてが寝付いた後、蒐集行為へ出かけたヴィータ達が心配になり、シャマルに頼んで連れていってもらったのだ。
 そして、そこで見たものは、未確認生命体第四号がヴィータと戦っている光景だった。いや、正確には戦ってはいない。
 まるでヴィータを止めるようにしか動いていない。その証拠に一度も第四号、クウガはその拳を振るっていないのだ。

「でも、このままじゃ……」

「シグナム、どうするの?」

「……介入するか。私があいつを「いえ、俺が行きます」……何?」

 シャマルとシグナムが揃って翔一を見る。翔一は、何かを決意した眼差しでクウガを見つめる。
 その眼差しの強さに、二人は何も言えなくなる。普段は大人しく優しい翔一が、そんな眼差しをするなど想像もつかなかったからだ。
 しかも、その視線は紛れもなく戦士のもの。だからこそ、何も言わない。
 そして、それを了承と取った翔一の腹部にベルトのようなものが出現する。オルタリングと呼ばれるそれは、彼がもう一つの姿になるためのもの。
 それと同時に、翔一が左手を腰に、右手を前へとゆっくり動かしていく。

(な、何だあれは。いや、それよりもこの安心感は何故だ……?)

(デバイスではないわ。……まさか、翔一さんが私達を平然と受け入れたのも……)

「変身っ!」

 その言葉と共に両手でオルタリングの側面を押す。それをキッカケに、翔一の身体を光が包む。
 それは、人類に与えられし光の力。闇を払う誰もが持つ可能性の姿。金色の身体と真紅の瞳。その名は―――。

「はっ!」

―――アギト。全ての人間のために、全てのアギトのために戦い抜いた勇者。

 アギトはヴィータとクウガの前へ降り立つと、ヴィータに対して視線を向けた。

「ヴィータちゃん。ここは俺に任せて逃げて」

「そ、その声……翔一なのかよ?!」

「え……? クウガに……似てる……?」

 当然の乱入者に戸惑いを見せる二人。それに構わず、アギトはクウガへ視線を戻す。それに気付き、クウガもアギトを見つめる。
 本来ならば出会う事のなかった二人の仮面ライダー。互いに何か思う事はあれど、守る者のためにその力を使うのは同じ。
 だが今は、まだその力が重なり合う事はない。互いに互いを見つめ、呟く。

「「……何で戦うんだ……この人は……」」



 ジェイルは久方振りの満足感を味わっていた。ライダーシステムと名付けた真司の変身能力。それの解析が一向に進まないからだ。
 普通ならばそれに満足などしない。むしろ不満にさえ思うのだろう。だが、ジェイルは違う。自分の知識や技術が通用しない事に喜びを見出していたのだ。

「素晴らしい……。鏡の中へ……ミラーワールドだったかね?」

「そうそう。でも、ここにはモンスターいないみたいだ」

 ジェイルの視線にいい加減に答える真司。その視線は出された食事に固定されている。
 真司がジェイルのラボに来て数日。既に真司はここに馴染んでいた。
 最初こそジェイルの性格や行動に戸惑ったが、話してみれば質問には答えてくれるし、住む場所や食事まで世話してくれるので今では変わり者の良い人と思っていた。

「で、真司さん。そのミラーワールドへ行く事が出来るのは、仮面ライダーだけなんですか?」

「いや、行くだけなら何とか出来るけど……は~、戻ってくる事が出来ないんだよ」

 ウーノの問いかけに、真司は最後のジュースを飲み干して答えた。それにジェイルが益々笑みを深くする。
 それを見て、ウーノはやれやれとため息一つ。最近、真司が来てからジェイルが上機嫌なのはいいのだが、本来の研究を放り出しているのだ。
 理由は簡単。ライダーシステムに魅入られているのだ。ま、流石に残りのナンバーズを仕上げる事は忘れていないが。

「失礼しまぁ~す」

「げ、クワットロ」

 ウーノがどうやってジェイルに研究をさせるか思案し始めたところに、ナンバー4ことクワットロが現れた。
 ちなみに真司はクワットロが苦手である。初対面から事ある毎にからかわれ、真司はすっかりクワットロを、浅倉とは違った意味で厄介な相手だと認識していた。

「あっらぁ~、シンちゃんじゃなぁい。げっ、なんて酷いわねぇ。ウーノ姉様~、シンちゃんが私を嫌うんですぅ~」

「……当然でしょ、クワットロ。あまり真司さんをからかうんじゃないわ。……彼は、その気になったら誰にも手が出せなくなるのよ?」

 嗜めるウーノ。だが、さり気無く近付き、後半をやや警告のように言うのを忘れない。それにクワットロも渋々頷き、視線を真司へと向ける。
 真司は食事の片付けを始めており、それを見てクワットロは少し不満気味にため息を吐き、それを取り上げる。

「何だよ?」

「私が片付けておくから。シンちゃんは、チンクちゃんの相手、お願い出来る?」

「いいけど……貸しなんかにすんなよ?」

「はいはい。別にそんな事考えてないから」

「絶対だぞ~!」

 そう行って真司は研究室を出て行く。それを確認し、クワットロは視線をジェイルへと向ける。
 彼女がここに来た理由。それは、真司がいては邪魔だったからだ。

「……それで?」

「はい。ドクターの希望通り、ドゥーエ姉様から例のものが手に入った、と」

「それは良かった。で、ドゥーエは何と?」

「それが……シンちゃんの事を聞いて一度会ってみたいと」

「……戻ってくるつもりなの?」

 ウーノのどこか呆れた表情と声にクワットロも同じ表情で頷いた。それにジェイルは一人笑う。それは心からの笑い。
 一番自分に近いドゥーエが、真司に会いたいと言った事が堪らなく嬉しかったのだ。変化していると。
 何故なら、ドゥーエは一番冷酷で残忍な性格。それが与えられた任務を終えたとはいえ、自分から仕事ではなく帰還を選んだだけでも驚きなのだ。
 ましてや、その理由が次元漂流者に会ってみたいとは。だからこそ、ジェイルは笑う。自分から離れ、独自の道を歩き出した存在に。

「いやぁ~、愉快だ。実に愉快だよ。……ククッ、真司は本当に私の興味を尽きさせないね」



「……ヘックシッ!」

「風邪か?」

「いや、多分違う。ジェイルさんが噂してんだ、きっと」

 どこか心配そうに声を掛けるチンク。それに笑顔で答える真司。既に、真司はナンバーズから一定の尊敬を受けている。
 その理由の一つは、ジェイルと平然と会話している事。ちなみにジェイルは自分が犯罪者だと真司に告げた。だが、真司は―――。

「いやいや、ならどうして俺を助けたりすんのさ。犯罪者って、大抵酷い奴だし」

 と言って、まったく信じなかったのだ。まぁ、後にそれが真実と知った時も真司は、ジェイルを悪人とは思えず、助けるのだが。
 そして、もう一つはその力。戦闘用のナンバー3、トーレすら勝てないその能力にあった。

「じゃ、やろうか」

「頼む」

 チンクの言葉に、真司は頷き、用意された鏡へと向き合う。そして、ケースのようなものを取り出し、それを鏡へ突き出す。
 するとその鏡の自分の腰に、ベルトが装着される。そして、それは実際の真司も同様で、そのままケースを片手に―――。

「変身っ!」

 叫ぶ。そして、そのケースをバックルの位置にはめ込む。すると、その身体が鎧で覆われる。銀の鎧と銀の仮面。赤い身体に赤い瞳。
 その姿こそ、人が手出しできない世界から襲い来る怪物を倒すため、戦い続ける戦士。その名は―――。

「っしゃあ!」

―――龍騎。戦いを止めるべく戦う、龍の影を纏う勇者。

「さ、行くぞチンクちゃん」

「ああ……それと、何度も言うが、ちゃん付けはやめろ」

 そういいながら、どこか嬉しそうなチンクであった。


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一応続き。話が飛んでるのは、仕様です。

何か電波が入ったらまた書くやも?



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 3 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/18 17:50
「ちょっといいですか?」

 突然掛けられた声に、クウガは戸惑う。今まで未確認と戦っていた時、相手からこんな風に話しかけられた事がなかったからだ。
 故に若干戸惑うものの、クウガは出来るだけ柔らかい声で返した。

「……何かな」

「貴方は……第四号ですか」

「そう……呼ばれてるね」

 クウガの答えに、アギトは内心驚いていた。本来自分がいた世界にいた存在。それが目の前にいる。そして、人の言葉を話している事に。
 それはクウガも同じ。最初こそ未確認かと思ったが、どうやら違うらしい事は雰囲気で分かった。先程の少女に対して逃げろと言っていた事からも、それが窺える。
 だからこそ、クウガは聞かねばならない。何故、少女がなのはを襲っていたのかを。

「今度は俺からいい?」

「……どうぞ」

「さっきの女の子。俺の知り合いの子を……えっと……」

 襲っていた。そう言おうとしてクウガは躊躇う。目の前の相手が守ろうとした子。それが襲う事にした理由を聞かねばならない。
 だが、少女の事を一方的に悪く言うように取られかねない言葉はどうかと、そう思ったのだ。
 アギトはそんなクウガの沈黙の理由に気付かないが、それが言い出し難そうにしている事だけは理解した。

「もしかして……知り合いの子に迷惑を掛けたんですか?」

「……うん。どうしてかな? って理由を聞いたんだけど、お前には関係ないって」

 それを聞き、アギトは実にヴィータらしいと思った。でも、それが本当ならアギトとしても許せる事ではない。
 はやてのために。そう聞いたからこそ、彼は蒐集行為を見逃した。でも、誰かに迷惑を掛けるのは、はやて自身が許さない事だ。

「そうだったんですか。すいません! ちゃんと言っておきます」

「えっと……でも、さ。きっと……仕方ない理由があったんだよね。だから、あの子もどこか悲しい目をしてたんだろうし」

 クウガは自分と対峙していた時のヴィータの目を思い出していた。まるで、したくない事をしなければならないと言っているような目を。
 それは、クウガには良く分かる。かつての自分が、そうだったのだから。
 だからこそ、理由が知りたかった。どうして望まない事をしなければならないのか。それを聞きたかったのだ。
 もしかしたら、自分が力になれるかも知れない。そう思っていたから。

「……四号さん」

 そんなクウガの思いを感じ取ったのか、アギトはどこか感動したように呟いた。そう、そうなのだ。
 ヴィータ達も蒐集なんてしたくない。だが、それをしなければはやてが死んでしまう。それを防ぐために、四人ははやてとの約束さえ破って行動しているのだ。

「四号さんは止めてくれるかな? 俺、クウガって言うんだ」

「あ、すいません。じゃ、俺はアギトって呼んでください」

「アギト? それもかっこいいなぁ……でも、クウガが一番だな、うん」

 どこか和やかな空気さえ感じさせる二人の仮面ライダー。だが、周囲はそうはいかないようで……。

「ちっ、やるな!」

「早い……そして強い」

 空中では、なのはを助けるため現れたフェイトとシグナムが戦っており……。

「やるじゃないのさ!」

「……まだ甘いな。今度はこちらから行くぞぉ!」

 アルフとザフィーラが激しい攻防を展開し……。

「くそ、厄介な奴だ」

「ユーノ君、気をつけて!」

「あの術式……まさかベルカ式?!」

 デバイスを損傷したなのはを守るため、ユーノがヴィータをひきつける。その守りは、鉄槌の騎士さえ舌を巻いていた。

 そんな周囲に気付き、クウガとアギトは共に空を見上げ、互いへ視線を送り―――頷いた。

「っ!」

「はぁ!」

 同時に飛び上がり、叫んだ。

「「止めてくださいっ!!」」

 その声にフェイト達もシグナム達も動きを止める。その視線はクウガとアギトへ注がれ、シグナム達はともかく、フェイト達は完全に動揺していた。
 二人は、近くのビルへと着地すると、そのまま両陣営へと呼びかけた。

「もうやめてください。なのはちゃんからも何とか言って」

「シグナムさん達もやめてください。人を襲ったなんて聞いたら、はやてちゃんが悲しみますよ」

 二人の告げた言葉が両陣営へ動揺を生む。そして、クウガから指名されたなのはは、少し驚きながらもフェイト達へと念話を送った。
 クウガは敵ではなく、味方で自分を助けてくれた事。あの姿をしているが、本当は人間だとも。
 一方、シグナム達も念話で相談していた。アギトとクウガが揃って戦闘する気がない事に疑問を抱きつつも、アギトの言った、はやてが悲しむとの言葉から、これ以上何かアギトが言う前に早期撤退するべしと結論付けた。

 そんな風に落ち着いたのを見て、クウガとアギトは安堵した。どうやらもう戦う必要はない。全てが片付いた。そう思ったのだ。
 だが、それが間違いだと二人は気付く。そう、二人だけは感付いたのだ。何者かがこちらを見ている事を。
 それに感付いたクウガは、変身時と同じ構えを取った。そして、叫ぶ。

「超変身っ!」

「緑になった……」

 ペガサスフォーム。時間制限こそあれ、全ての感覚が鋭敏になる姿。それでクウガは、こちらを窺う仮面の男を確かに確認した。

「アギトさんっ!」

「はいっ!」

 クウガが指差した方向へ向かってジャンプするアギト。そして、何をしているのか理解出来ないフェイト達へ向かって、身体を赤に戻し、クウガは叫ぶ。

「誰か射撃出来る道具持ってないですか? ちょっと貸して欲しいんだ!」

「何に使うの?」

 なのはの問いかけに、クウガは簡単に答える。

「こっちを監視してる相手がいるんだ。その人、かなり怪しいし、万が一に備えておきたいんだ!」





 ジェイルは困っていた。それは、真司から聞いたとある事が原因だった。それは……。

「餌?」

「そ。え・さ」

 真司はいつものように食事を平らげた後、思い出したと言ってそう切り出した。それは、自身が契約しているモンスターのついて。
 ミラーモンスターは、定期的に餌を与えなければ最後は契約者を襲う。そして、そのまま本能のままに暴れる存在となるのだ。
 それを聞き、何を食べるのかと尋ねた答えに、ジェイルは初めての絶望感を味わう事になる。

「ミラーモンスターかな? あ、後は……」

 何か言い出し辛そうな真司。だが、ジェイルの続きを促す視線に、どこか嫌そうに答えた。

「人間、だったはず」

「……それは困ったね」

「だろ? どうしよ……」

 無論、真司とジェイルの間には考えの違いがある。
 真司は、純粋に人を餌になんて使えないと思っているのに対し、ジェイルはそうそう確保出来ないし、後始末が面倒との理由から困っているのである。

 故に、今ジェイルは、ドラグレッターの餌をどうするかをその天才と呼ばれた頭脳をフルに活用し、考案中なのだ。

「……ドクター、真面目に仕事をしてくれないと困ります」

 そんなジェイルを、秘書的な役割をしているウーノが呆れつつ見ていた。その手には数多くの書類が抱えられている。
 全てジェイルが要求された最高評議会絡みの仕事のものだ。これをやらなければ、この生活もままならないのだが……。

「う~ん……下手に人工生命体を与えると真司が煩いだろうし……」

「ドクター?」

「そうだ……原生生物ならいいか。それも人に危害を加える程の凶暴なものなら生命力も強い……ああ!
 それを真司に倒してもらってデータ取りにも使えるなぁ! 一石二鳥だ。これで行こう!」

 ウーノを完全無視して呟き、いや、ただの狂言にも近い独り言を叫ぶジェイル。それを聞き、ウーノはため息一つ。
 そして、視線をジェイルから天井へ移し、呟いた。

「ドクターの世話、クワットロに押し付けようかしら……?」



 その頃、真司はと言えば……。

「空を飛べないくせに、中々しぶといな」

「馬鹿にすんなよ! モンスターの中には空飛ぶ奴もいたつ~の!」

 訓練場でトーレと戦闘中。龍騎へと変身し、その手には剣が握られている。トーレは、そんな龍騎を空から見下ろしていた。
 だが、その表情は言葉とは裏腹に嬉々としている。

「なら、見せてみろ。どうやって空の相手に対応するのかを……なっ!」

 インヒューレントスキル。ISと呼ばれる特殊能力を、ナンバーズは全員所持している。トーレのISは”ライドインパルス”と呼ばれる高速移動。
 その速度はかなりのものがあり、今の龍騎では完全に捉える事は出来ないのだが……。

「何度もやられるかっての!」

”ガードベント”

 ドラグバイザーにカードを差し込む龍騎。それを読み込ませ、音声と共に龍騎の肩に盾が出現する。
 それにトーレのブレードが叩き付けられるが―――。

「何だとっ?!」

 まったく傷付かない。それどころか強度の差か、ブレードの方が欠けてしまったのだ。
 あまりの事に戸惑うトーレ。それを見逃す程、真司も素人ではない。即座に手にした剣で、欠けていない方のブレードを叩き折る。

「折れたぁ~!!」

「折れた、だと!」

 自分の武器を失い、距離を取ろうとするトーレだったが、そこへ龍騎が手にした剣を投げつける。
 それをかわすトーレだったが、そこで距離を取ったのが間違いだと気付いた。

”ストライクベント”

「はあぁぁぁぁぁ……」

 剣を投げると同時に、カードを読み込ませ、龍の顔をした手甲のようなものを龍騎が構えていたからだ。
 それは、トーレも知る攻撃。ドラゴンストライク、と彼女が名付けた龍騎の技の一つなのだ。
 かわす事は出来る。だが、トーレにかわすという選択肢はない。何故ならば……。

(かわせば、次はアレが来るっ!)

 そう、それは彼女の速度を持っても逃げ切れなかった龍騎の最大の技。それを出されれば、彼女に勝ち目はない。
 だからこそ、この攻撃を凌ぎ、カウンターを仕掛ける以外に道はない。真司は、何だかんだで負けず嫌いで、熱くなりやすい。
 故に、この一撃を避ける事は最後の手段へ移行させる事に繋がるのだ。

「はぁ!!」

「おぉぉぉぉっ!」

 迫り来る火球を紙一重でかわしながら、龍騎へ肉迫するトーレ。完全に硬直している龍騎を見て、トーレは確信した。

(勝った!)

 残されたブレードを龍騎の首元に突きつけるトーレ。だが、その顔に浮かぶのは、どこか満足そうで悔しさを滲ませた笑み。

「……やるな」

「トーレこそ」

 龍騎の首元に突きつけられたブレード。そして、トーレの後方で唸りを上げるドラグレッダー。
 そう、龍騎は攻撃を繰り出す前の溜めの時点で、こっそりとアドベントを手にしていた。そして、放った瞬間にそれを読み込ませ、火球と共にドラグレッダーがトーレの後ろに回るようにしたのだ。

 相打ち。だが、もしこれが実戦ならばトーレの敗北だ。なにしろ、突きつけたブレードは先が折れている。
 そして、龍騎はまだ奥の手を出していないのだ。更なる姿。更なる力。それをまだ隠していると。
 それを聞いた時、トーレ達は揃って驚愕したのだ。龍騎の可能性と強さに。だからこそ、トーレも真司を認めている。
 戦士ではないのにも関わらず、ここまでの強さを身に付けた心を。だからこそ、戦って楽しいと思えるのだ。

「とりあえずさ……これ、降ろしてくれよ」

「……いいだろう」

 静かにブレードを降ろすトーレ。それに応じるように龍騎も変身を解除する。
 大きく息を吐き、トーレへ笑みを見せる真司。それに顔を背け、トーレは歩き出す。

「おい、何だよ。どうしたんだって」

「別に何でもない。私は洗浄に行く」

「あ、ズル~! 俺も風呂入りたい!」

 並ぶように歩きながら、二人は言葉を交わす。素っ気無く返すトーレにどこか蓮を思い出す真司。
 初めて戦闘してから、この二人はいいコンビとして、後のナンバーズの先生役をする事になるのだが、それはまだ先の話……。




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続き。クウガとアギトの会話がやりたかっただけ。

でも、本当にこれ、原作の展開とは違う方向へ行きそう……。

後、トーレは蓮だと思うんだ。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 4 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/20 15:58
 クウガに教えられた場所に向かったアギト。その視界に確かに仮面の男が見えていた。あちらもアギトの接近に気付いたのか、まるで待ち構えるようにアギトを見つめていた。
 それを見て、アギトは余計に警戒心を強くする。何故かその視線に敵意を感じていたのだ。
 まるでその視線は、かつて戦った”黒い服の男”に近い何かがあった。だからこそ、アギトは警戒心と同時に不気味さも抱いた。

(一体、あの人は何者なんだ?)

 そんな思いを抱きながら、アギトは男の前に降り立った。男はアギトを見つめ、何か戸惑うように告げた。

「貴様、何者だ」

「……何者、か」

 アギトの脳裏に甦るのは、この世界に来る前に経験した発電所での戦い。その場所は、異常な空間になっていて、アギトはそこで過去のアギト達と出会ったのだ。
 そして、彼らが名乗っていた名前を思い出したのだ。あの時、ついつられるように名乗ったその名を。

「俺はアギト! 仮面ライダーアギト!!」

「仮面ライダー……だと?」

「そうだ! 闇を打ち砕く正義の光だ!」

 脳裏に甦る緑のアギトの言葉。悪魔と呼ぶべき”邪眼”に対し、彼が叫んだその言葉。その時の力強さを借りるように、アギトは言い切った。
 その叫びに、男は何か可笑しいものがあったのか、低く笑い出す。

「ハハハ……闇を打ち砕く、だと? ならば、何故貴様は蒐集行為を見逃した」

「!? どうしてそれを」

「ふん……まぁいい。とんだ邪魔が入ったが、それもここまでだ」

 その瞬間、アギトの体を光の輪が拘束した。バインドと呼ばれる拘束魔法だ。それを何とか打ち破ろうとアギトはもがくが、バインドはビクともしない。そして、そんなアギトへ男はゆっくりと手を向け、告げる。

「さらばだ。仮面ライダー……」

「くっ!」

 男の手に恐ろしい程の魔力が集束していく。その攻撃は確実にアギトを捉え、大ダメージを与えるだろう。何とか拘束を外そうと足掻くアギト。だが、無常にも男の手から魔法が放たれようとした瞬間。

「何っ?!」

「! ……今だっ!」

 アギトを捕らえていたバインドが破壊されたのだ。目には見えない何かによって。しかも、その攻撃は今度は男へと襲い掛かる。何とかシールドを展開し、男は謎の攻撃を防ぐものの、その間にアギトが体勢を立て直し、片手でベルトの側面を叩く。

 それにアギトの体が赤くなる。フレイムフォーム。剣を使うアギトの姿。腕力に優れ、攻撃力が高いその姿で、アギトはベルトの前へ手をまわす。それに呼応し、ベルトから一振りの剣が出現する。
 フレイムセイバー。フレイムフォームと、とある姿しか使えない専用装備である。

「はあっ!」

「ぬっ!」

 謎の見えない攻撃を凌ぎ切った男へ、アギトが斬りかかる。それも先程と同じようにシールドで防ぐ男だったが……。

「ば、馬鹿な……っ!」

「はあぁぁぁぁ!」

 アギトのフレイムセイバーがシールドにひびを入れていく。男の驚きを他所に、アギトはそのままフレイムセイバーを振り下ろす。

「……はっ!」

「ぐあぁぁぁっ!」

 その剣先が男の腕に掠り、押さえるように男はアギトから距離を取る。そして、アギトを睨むように見つめて吼えた。

「覚えていろ! 今度は……こうはいかんぞっ!」

 その言葉をキッカケに、男は姿を消した。アギトは追い駆けようとするが、流石に魔法陣の中へ消えたものを追い駆ける事は出来ない。
 周囲にもう怪しい気配がないのを確認し、アギトは後ろへと視線を戻す。先程の自分を助けた攻撃。あれはきっと……。

「クウガさん……」



 アギトが男を見失った頃、クウガはビルから降り、手にしたペガサスボウガンをなのはへと返した。それを恐々受け取るなのは。そう、クウガが変化させたのはレイジングハート。
 射撃という言葉に、なのはがレイジングハートを渡したのだ。損傷を受けているのでクウガも不安ではあったが、見事にレイジングハートはペガサスボウガンへと変化した。
 クウガの物質変換能力は、原子レベルでおこなうもの。つまり、手にしたものがどんな状態でも関係なく、その姿に適したものであれば、応じた武器へと変化させるのだ。

「……本当に戻った」

”驚き……ました”

 自分の手に乗った途端、普段の姿へ戻るレイジングハートを見て、なのはは手品を見たように呟く。
 それに同調するように喋るレイジングハートだったが、損傷のため途切れ途切れだった。クウガはそれを見ながら、再び姿を赤へ戻す。それに今度は全員が驚いた。

「ありがとう、なのはちゃん。おかげでアギトさんを助けられたよ」

「えっと、その事で聞きたい事があるんだけど」

 なのはへ改めて御礼を述べるクウガへ、ユーノが恐る恐る問いかける。なのはから人間と言われても、先程からのクウガを見ているとどうしても人間とは思えないのだ。
 それをクウガも感じ取ったのだろう。頷いてユーノへ視線を向ける。だが、その姿が一瞬にして青年へと変わったのだ。

 全員がそれに驚く中、五代だけはどこか気まずそうに表情を変え、周囲の面々に告げる。

「すいません。何か、驚かせてばっかりで……」

 そこへアギトも戻ってきて同じような事をし、五代と翔一は揃って苦笑いを浮かべる事になるのだった……。



「嘘だ……」

「チンク、気持ちは分かるがこれは現実だ」

 どこか憮然とするトーレと、唖然としているチンク。その二人の視線の先にいるのは……。

「っとと……あぶね~」

 巨大なとかげの化物を相手に孤軍奮闘する龍騎の姿だった。ここは管理外にあるとある世界。三人はドラグレッダーの餌を確保するため、ここに来ていた。
 本来ならば、三人で協力して倒すはずだったターゲット。それを龍騎は「俺だけでいけるって。二人は女の子なんだし、さ。任せてくれよ」と言ってこの状況だ。
 二人が何故龍騎の戦いを見つめ、どこかやるせない気持ちになっているのには理由がある。それは、龍騎が相手をしているターゲットの強さ。管理外で原生生物なので、個体差があり絶対とはいえないが、魔導師ランクに換算すればAAは堅い。だが、それを龍騎は一人で相手をし、尚且つまだ余裕さえあるのだ。

「今度はこいつだ!」

”ストライクベント”

 龍騎の右手に龍の顔をした手甲が装着される。そして、腕を引いてパンチの構えを取る。それを好機と見たのか巨大とかげは龍騎へ向かって突っ込んだ。
 だが、それは悪手でしかなかった。龍騎はギリギリまで引き付けて、その拳を打ち出した。ドラゴンストライク。龍騎の技の一つが巨大とかげの巨体を吹き飛ばす。

「……私は、あれを喰らった事があるのだが……?」

「おそらく、加減してるんだろう……どこか信じられんがな」

 その光景に背筋が凍る二人。既にドラゴンストライクを受けた事のある二人にとって、眼前の光景は恐怖でしかなかった。底が見えてきたと思っていた龍騎。その底が再び見えなくなったのだから。

(真司はどこまで力を隠しているのだ? ……もしや、全力を出せばSランクさえ凌駕するとでもいうのか!?)

(……真司の奴、まだ力を隠していたのか。まったく、私には全力を出せと言っているのに! ……帰ったら説教だ)

 二人が思い思いに龍騎を見つめる中、勝負は決着の時を迎えようとしていた。先程の攻撃で巨大とかげは横たわっている。それを確認し、龍騎はおもむろに一枚のカードを手にする。そこに描かれているのは、龍騎のマーク。それを見て、二人は息を呑む。
 そして、それをドラグバイザーへ読み込ませる龍騎。それが意味する事を知る二人に、緊張が走る。

”ファイナルベント”

「はあぁぁぁぁぁ……」

 龍騎の周囲をドラグレッダーが巻き付くように動いていく。そして、それと呼応するように龍騎も腰を深く落とし……。

「はっ!」

 ドラグレッダーと共に空へ跳んだ。空高く舞い上がり、その体をドラグレッダーが一瞬隠す。その瞬間龍騎は一回転捻りをし、蹴りの体勢へ入った。
 それは、未だにトーレもチンクも破れない無敵の必殺技。今の龍騎の最大にして最強の攻撃。その名も……。

「うおぉぉぉぉぉっ!!」

―――ドラゴンライダーキック。ドラグレッダーの火球を受け、その勢いを加えて突撃する荒業。だが、その破壊力と速度は凄まじく、トーレのライドインパルスさえ逃れる事は出来なかったのだ。

 龍騎の蹴りが巨大とかげを完全に沈黙させる。そして、それを確認して龍騎をドラグレッダーを見上げた。
 ドラグレッダーは龍騎の視線から何かを感じ取ったのか、巨大とかげへと近付き、それを食べ始めた。
 それに安堵の息を吐く龍騎とトーレ達。もしこれで無理なら、やむを得ずジェイルの創る人工生命体を食べさせるしかなかったからだ。

「腹一杯食えよ。でも、確かにこんな奴が暴れたら大変だよな。いやぁ~、ジェイルさんってやっぱ良い人だよ。
 人を襲いかねない凶暴な生き物を退治して、それを餌に出来ないか? な~んてさ。ホント良い人だな」

「……ああ」

「そうだな……」

 ジェイルの言った言葉を本気で信じている龍騎。その実情を知っている二人としては、その言葉に何も言えなくなった。
 こうして、懸念されたドラグレッダーの餌は解決した。だが、ここでジェイルの予想外の出来事が起こってしまう。それは……。

「データ、もう取れないよ」

 龍騎が強すぎるため、現状の姿で十分相手出来てしまったのだ。本来期待していた龍騎のもう一つの姿。それをジェイルは期待していたのだが、それは結局出さずじまいとなったのだ。


龍騎が更なる力。”サバイブ”の力を使う事になるのは、これより遥か先の『レリック事件』まで待たねばならなかった……。




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続き。アギトとクウガの変則的共闘?

クウガは最終回後。アギトはゲーム「正義の系譜」後。龍騎はTVの終盤近くからです。具体的には決めてないです。

今回やりたかったのはアギトの名乗りです。ゲーム内で仮面ライダーと名乗るシーンがあり、それに当時感激したため、絶対やってやると思って書きました。

……さて、クウガはペガサスで援護しました。アギトが名乗るのも、もしかすると聞いていたかも知れませんね。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 5 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/23 18:14
「次元漂流者か……」

「あ、それシャマルさん達も言ってました」

 あの後、五代と翔一が同じ世界から来たと分かり、シグナム達もクウガの力を見た以上、それからは逃げられないと悟ったのか、大人しくなのは達に事情を話す事になった。
 というのも、翔一が言ったはやてちゃんという言葉を五代が覚えていたからだ。そして、運の悪い事に五代が世話になっているのは月村家。
 そこの住人である月村すずかとはやては最近知り合った知人だったのだ。その話をすずかから聞いていた五代が、その事を翔一に尋ね、はやてが主である事が発覚したのだ。
 そうなったのは、シグナム達が翔一に管理局の存在を知らせず、それに対しての対応を指示しておかなかったのも原因の一つだったのだ。

「それで……その子を助けるために……」

「はい。でも、はやてちゃんは何も知らないんです! 俺達だけが内緒で……」

 五代の声に翔一はそう答えた。シグナム達も何も言わないが、否定しないという事はそういう事なのだろう。そう誰もが考え、悲痛な表情を浮かべた。
 何の罪もない少女が死ななければならない。だが、それを避けるためには誰かを犠牲にしなければならない。それを聞いて、五代は心が痛かった。

 それは、形や状況さえ違えども、自分が未確認を倒してきたのと同じだったからだ。みんなの笑顔のために。そう思い拳を振るい続けた五代。でも、それは裏を返せば自分達のために未確認を犠牲にしていたとも言える。
 無論、彼らは殺戮を目的としていたので、厳密に言えば生きるためではなく、楽しむためにしていたのだと五代も知っている。でも、した事だけを見れば自分も大差ないのではないか。そんな思いが五代に生まれる。

 一方、翔一も改めて蒐集行為について考えていた。具体的には聞いていなかったが、リンカーコアと呼ばれるある意味での心臓を狙う行為。
 しかも、下手をすれば蒐集対象は死んでしまうとの事。それを聞き、翔一は自責の念に駆られていた。何故もっとちゃんと聞かなかったのか。どうしてはやてが禁止した理由を考えなかったのか。
 はやてのためにとした事が、かえってはやてを苦しめるのではないか。そんな事を思い、翔一は告げた。

「何とか……何とか誰にも迷惑を掛けずに蒐集する事は出来ないんですか!?」

「そんな方法が……「あります」……何?」

 翔一の言葉に反応したシグナム。それに反論したのはユーノだった。ユーノは語る。手分けしてリンカーコアを持つ生物から蒐集すれば、おそらく時間は掛かるが、誰にも迷惑を掛ける事無く蒐集出来ると。そして、ユーノは最後にこう言った。

「それに、死なない程度に加減出来るなら……僕からも蒐集してください」

 その言葉に全員が驚いた。そして、それを理解したなのはが意を決して告げる。

「私も……構わないです」

「本気で言っているのか?!」

 流石にシグナムも、なのはまで言い出した事に驚きを隠せない。そして、その流れは止まらずに……。

「私も協力します」

「フェイトっ?!」

 フェイトまでが言い出し、アルフが驚く。三人は口々に告げる。確かに蒐集行為はいけないだろう。でも、それでしか助けられない命があるなら助けたいと。
 嘘を言っている顔にも見えないし、何よりもなのはを襲ったヴィータの目を見た五代も言い切ったのだ。したくない事をしている目だった、と。
 それを聞き、余計に困惑したのはシグナム達だ。先程まで戦っていた相手。しかも管理局に関わっているフェイトさえ、蒐集してもいいと言い出すのは想像出来ない事だったからだ。

(本気でこの三人は蒐集を? ……主のため、か。私達がしていた事を……許すと、言うのか……)

(こいつら……本当にはやてのために? 死んじまうかも知れないって、分かってて言ってるんだよな……)

 シグナムとヴィータが、なのは達が見も知らないはやてのために見せた決意に感じ入っていれば……。

(まさか、長い間蒐集行為をしてきたけど、こんな事は初めてよ。そう、か……私達はとんでもない勘違いをしていたのかもね)

(蒐集を禁止する主に出会ったかと思えば、主のために蒐集してくれという者と出会う、か。今回は本当に変わった事ばかりだ)

 シャマルとザフィーラがその言葉に心を揺さぶられていた。そして、翔一と五代もまたそんななのは達に心打たれていた。
 見知らずの相手のために、危険を承知で自分の命を賭ける。危険性は低いと分かっていても、中々出来る事ではない。だからこそ、二人は思うのだ。自分達に出来る事はなにかないのかと。子供達だけでなく、自分達も何かしなければと。

「「あの……何か出来る事はないですか?」」

 だが、その言葉がキレイに重なる。それに全員が一瞬ポカンとなり、そして揃って笑い出す。そこに先程まであった緊迫感や焦燥感がすっかり消えてしまったのだ。
 そんな笑い合うなのは達を見て、五代と翔一は互いに顔を見合わせ笑い合う。そう、分かり合えるのだ、と。話が出来るのなら、必ず分かり合える。そう改めて感じ、二人は笑う。
 その笑い声が夜空に響く。敵も味方もない。ただ同じ思いを共有する者として、全員が笑い合う光景がそこにあった……。



 ジェイルラボ 温水洗浄室。そこに、ウーノからチンクまでのナンバーズが揃っていた。そう、揃っているのだ。五人全員が。

「それで……どう? 感想は」

「う~ん、悪くはないわね。でも、あれが本当に強いとは思えないけど」

 ウーノの言葉に反応したのは、ナンバー2ドゥーエだ。聖王教会への潜入任務を終え、彼女は一旦帰還したのだ。それもつい先程。
 そして、真司と初対面をし、その感想がそれ。だが、それには他の四人も異論はないようだが……。

「真司は、見た目からは分からないが確かに強い。それはこれまでのデータが証明している」

「それにぃ、シンちゃんってば、チンクちゃんやトーレ姉様を相手に加減までしてるみたいなんですぅ」

「……悔しいがクワットロの言う通りだ。私達は、未だにあいつの底が見えん」

 トーレ、クワットロ、チンクとその意見を受け入れつつ、反論を述べる。それを聞き、ドゥーエはおかしそうに笑って言った。

「貴方達、随分とあの男に肩入れするのね?」

「ち、違う! 私は素直に思った事をだな……」

「……そうだぞ。真司の力は底知れん。ドクターすら、まだ解析出来た事は少ないのだ」

 慌てるように答えるチンクと、冷静だがどこか顔が赤いトーレ。クワットロはそんな二人を見てニヤニヤと笑みを浮かべ、ウーノは微笑むようにそれを見る。
 そして、ドゥーエは満足そうに頷き湯船から上がって断言した。

「なら、私があの男の力を出させてあげるわ」



 その頃、真司はジェイルと共に、残りのナンバーズが入っている調整ポッドの前にいた。だが、その様子は落ち着かない。
 それもそのはず。ナンバーズは全員女性で、ポッドの中には裸で入っている。
 そのため、先程から真司はどこを見ていればいいのか分からず、挙動不審なのだ。

 そんな真司とは対照的に、ジェイルは何の躊躇いもなく調整を行なっていた。現在集中的に行なっているのは、ナンバー6セインとナンバー10ディエチだ。
 真司との模擬戦を繰り返し、トーレとチンクが提案したのは、遠距離戦での龍騎の能力を測ろうというものだった。近距離や中距離では、未だに龍騎に勝てない二人。だからこそ、遠距離主体に戦える姉妹なら新しいデータが取れるかもしれないと言われ、現在ジェイルはその二人の調整に余念がない。

 ちなみにセインは真司の「いや、姉妹ならちゃんと順番に出してあげようよ」の言葉から調整している。

「……で、ドゥーエの印象はどうかね?」

「へ? っ?! ……ああ、やっぱ美人だよな。ウーノさんやトーレもそうだけど、ドゥーエさんも綺麗だよ。モデルとか出来るな、あの人」

 視線を床に向け、思考を裸から脱却させようとしていた真司だったが、ジェイルの声に視線を上げる。そして、再び目に入った裸体に視線を逸らし、天井へとそれを向ける。
 ジェイルはそんな真司に気付かず、その答えに可笑しそうに笑う。真司は知らない。ウーノからクワットロまではジェイルの遺伝子を基にして創られた存在だと。

 真司は、ナンバーズの事をジェイルからこう聞いている。複雑な事情から止むを得ず創る事になった人工生命体だと。そして、その開発責任者がジェイルであり、スポンサーはこの世界の治安維持組織だと教えられていた。
 最初は人工生命体に否定的だった真司だったが、生まれてくる命に罪はないとジェイルに言われ、その考えを改めた。だからこそ、ナンバーズを人間として彼は認識している。
 まぁ、それを聞く前から既に人間としか思っていなかったので、今更ではあったが。

「モデル、ね。まぁ、ドゥーエのISを使えば確かにそれは一番簡単かもしれないねぇ」

「ISかぁ。ドゥーエさんのISって何なんだ?」

「ライアーズ・マスク。ま、簡単に言えば変装だよ。誰にも何にも分からない完璧な……ね」

 その言葉を聞いて、真司は素直に感心した。まるでスパイ映画みたいだと言って笑ったぐらいだ。その言葉に、ジェイルは面白そうに「本当にスパイをしてるんだ」と言った。
 その言葉に真司は驚き、その表情を不思議そうにした。その顔が何を聞きたいかを理解し、ジェイルは言い切る。

「何、偉そうな事ばかり言って、何も世界を変えようとしない連中だよ。宗教絡みだから余計にね」

「へぇ。こっちにも宗教とかあるんだ。どんな神様祭ってんの?」

「神様? ……ああ、君の世界では架空の神を祭ってるのか。こちらでは『聖王』と呼ばれた実在の人物を祭ってるのさ」

 ジェイルの話を聞いて、真司は驚きながらも納得していた。キリスト教はまさにそれだったからだ。古に実在した人物を崇める宗教。
 本当は、キリスト教も神が存在し、それを崇めているのだが、真司にとって大切なのは自分の知るものと共通点があった事。

 そして、その聖王がどんな存在かを聞き、真司は素直に感心していた。争いが絶えなかった時代を平和にしようと尽力した王。それは、真司がライダーバトルに参加したのと似ていたからだ。
 誰かを殺す事を肯定したくない。でも、それをしなければ多くの人が死んでしまうという矛盾。それを感じながらも戦ったであろう聖王に、真司は共感を覚えた。
 そんな真司の反応に、ジェイルは内心呆れながらも嘘偽り無く聖王伝説を語る。その間も手は調整を続けているところが、実に彼らしい。

「……で、古代ベルカは戦乱から解放されたのさ」

「……凄いな、聖王って。もしかして、今も子孫とか「残念ながら初代聖王の子孫はいないよ。ま、その遺物が教会には残されているがね」

 どこか興奮したような真司の言葉を遮って、ジェイルがピシャリと言い切った。それに真司はどこか肩を落とし「な~んだ……」と呟いた。
 その姿がどこか滑稽だったからか、ジェイルはついこう言ってしまう。

「でも、いつか会えるかもしれないよ」

「うっそ?! どうして!?」

「あ、いや……! 教えて欲しかったら、龍騎のもう一つの姿を見せてくれ」

「え~、でもなぁ……会えるかも、だしな……」

 真司がサバイブを見せるのに躊躇う理由は一つ。直感的に感じ取っているのだ。それは見せてはいけないと。仮面ライダーの力がどれ程危険で恐ろしいものかを理解しているのもある。
 それに、ジェイルは確かに悪人ではないが、何より龍騎の力は”守るための力”と思っているからこそ、真司はおいそれと使う訳にはいかないのだ。
 トーレ達との手合わせは、本人達が希望し、真司も元の世界に帰った時に勘が鈍っていないようにするのも兼ねてしているだけ。

 そして、そんな真司の渋る声にジェイルは計画を話してしまおうかとも考えていた。だが、それをした場合、下手をすれば真司を敵に回しかねないと思い、口を噤む事にした。
 龍騎のもう一つの姿。それにも興味は尽きないが、それよりも計画の障害は出来る限り少ない方がいい。そう思い、ジェイルは真司と友好的な関係を築こうとしていたのだ。そう、まだこの頃は。
 後に彼は知る。いつしかそれが計算ではなく、本心からの思いになっていた事を。

「……そうか。さて、もう少ししたらディエチとセインもロール……目覚める事が出来るよ」

 ロールアウト。その言葉を言おうとした瞬間、真司の鋭い視線がジェイルを刺し、それにジェイルが軽く笑みさえ浮かべて言い直した。

「ディエチって……十番目って意味だっけ? で、セインが……」

「六番目よ、真司君」

「おや? どうしたんだいドゥーエ。ウーノ達と久しぶりに会って、会話を楽しんでると思ったんだが?」

 真司の言葉に答えたのは、ジェイルではなくドゥーエだった。そして、どこか不思議そうなジェイルから視線を外し、真司へと視線を向ける。
 その視線がどこかからかう時のクワットロに似ていて、真司は若干嫌そうな表情を浮かべた。
 そして、その予感は現実のものとなる。何故なら……。

「お願いがあるのよ、真司君。私と戦ってくれないかしら?」

 ドゥーエはまるで、お出かけしましょ、とでも言うように笑顔でそう告げてきたのだった……。




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地味に進展しないクウガ&アギト達。そして、ノンビリ&ほんわかの龍騎達。

今回は一応の決着をつけた感じです。今後は、いきなり話がある程度飛ぶかもです。

あ、龍騎はこの続きですよ。クウガ達はいきなり数日飛んでる可能性もありますので……ご容赦を。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 6 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/23 17:25
「……いいでしょう。ですが、闇の書は大変危険なロストロギアです。蒐集を完了した際、起きる事については……」

「承知している。その時は我々も手を貸し。事態の収拾に努める」

「それに、四百ページを超えれば管制人格も覚醒します」

「なら、その人にも手伝ってもらえば、暴走も何とか出来るかも!」

「みんなで頑張りましょう! ですね!」

 リンディの結論にシグナムがはっきりと断言し、シャマルが補足するように告げる。それを聞き、翔一が希望が見えたというように続き、最後に五代がサムズアップで締め括った。

 あの後、リンディ達管理局所属のアースラクルーにも、五代を始めなのは達による事情説明があり、大体の事情を把握したリンディは全員に対し、驚愕の事実を話した。
 それは、蒐集を終えた闇の書が恐ろしい災害を引き起こすという事実。それを聞き、シグナム達は驚愕しながらも、どこかで納得していた。どうして自分達が蒐集を終えた時の事を覚えていなかったのかを理解したからだ。
 そして、その事をリンディに告げると、リンディ達に微かに動揺が生まれた。闇の書の一部であるシグナム達が忘れていたという事実。それが持つ意味を考えたのだ。

 そして、蒐集行為をなのは達から行うという事にも、リンディは難色を示したが、なのは達の強い意志とシグナム達の決して死なせはしないとの言葉と眼差しに折れ、まずはなのはが蒐集される事となった。
 安全を考慮し、家族には「フェイトが海鳴にやって来たので、今夜は泊まる」となのはが心苦しく思いながらも嘘を吐き、万全を喫した。

 それと同時に、リンディ達は闇の書自体を詳しく調べる必要があると思い、無限書庫での調査を決断。それを聞いたユーノが、それなら自分が役に立てるかもと言い出し、クロノと共にその日の内に無限書庫へと向かった。
 フェイトとアルフは五代達が撃退した仮面の男に備えるのと並行し、ヴィータ達と魔法生物からの蒐集活動の手助けをする事となり、五代と翔一もそれに同行する事で話は纏まった。



 アースラ内、医務室。

「じゃあやるわね、なのはちゃん」

「はい」

 シャマルが静かに闇の書へなのはのリンカーコアを蒐集させる。その行為の痛みに耐えるなのは。それを悲痛な表情で見つめるシャマル。そして、ページが十五程埋まったところで、蒐集を中止する。

「……もう、終わりですか?」

「当たり前よ。これ以上は……今の私には出来ない……」

(そうよ! はやてちゃんと同い年の子から蒐集するだけでも心が痛いのに、ギリギリまでなんて出来る訳ないっ!)

 シャマルの表情になのはは何かを察し、シャマルの手に自分の手を重ねた。それに驚くように顔を上げるシャマル。そんなシャマルになのはは微笑みを浮かべて告げた。

「シャマルさんの気持ち、伝わりましたから。だから、そんな顔しないでください。私まで……悲しくなっちゃうから」

「あっ……ああ……」

「シャマルさん……?」

「ごめんね! ごめんね、なのはちゃん! ……ありがとうっ!」

「シャマルさん……だから……私も泣いちゃうから……っ!」

 零れる涙を拭う事もせず、シャマルは泣いた。それになのはもつられるように涙を流す。しばらく医務室に、二人のすすり泣く声が響くのだった……。



 その頃、フェイト達は今度の事を食堂で話し合っていた。フェイトの隣にアルフが座り、向かいにはシグナムにヴィータ、そしてザフィーラがいた。
 その視線は険しいものの、敵意や怒りではなく、困難が予想される今後にそれぞれが思いを抱いての事である。

「まず、私とヴィータさんとアルフでAチーム」

「別に呼び捨てでいいし、敬語もなくていい」

「あ、うん。分かりま……分かった」

 ヴィータのどこか呆れるような声に、フェイトは意外そうな表情を浮かべて頷いた。それを同じような表情でシグナムとアルフが見つめている。

「んだよ?」

「いや……意外だなぁ~って」

「私もだ。認めたという事か……?」

 シグナムの言葉にヴィータは顔を背けて「悪いかよ……」と告げた。その仕草にフェイトは一瞬驚くも、すぐに笑みを浮かべて頷いた。

「ありがとう、ヴィータ」

「礼はいいから、さっさと決める事だけ決めようぜ。はやてが寝てる間が一番動き易いんだ」

「そうだな。では、私とザフィーラがBチームか」

「後、翔一って奴もだよ。雄介は、シャマルと二人で行動」

 アルフの言葉にフェイト以外の三人が疑問を感じたのか、怪訝な顔を見せる。それにフェイトが笑みを浮かべて答えた。
 雄介の力。クウガはアギトよりも汎用性が高いので、戦闘能力的には問題ないとの事。それに、なのはが回復すればなのはがそこに合流するので、心配はいらないとも。

 その説明を聞き、三人も納得していた。よくよく考えてみれば、どのチームもバランス良く配置されている。おそらく、リンディの指示だろうが、その人選も流石だと三人は思った。

(高町を襲撃したヴィータをテスタロッサ達に組ませるのは、当然として……)

(翔一をシグナムとザフィーラに組ませるのは、翔一があたしらの中で一番信頼出来るから……)

(そして、シャマルは現在なのはと共に過ごしている。その干渉役にはあの男が適任、か……)

 それぞれがリンディ采配の意図を考え、感心する中、フェイトはただ友人であるなのはの心配をしていた。
 死ぬ事はないが、それでもしばらく魔法は使えない。その間、自分が頑張らないといけない。そう思い、フェイトは誓う。

(なのは、ゆっくり休んでて。その間、私が頑張るから)



 一方、五代と翔一はアースラの休憩所で自分達の話をし合う内に、ある事に気付いていた。

「「えっ?」」

「翔一君、今何年って……?」

「えっと、2004年ですけど」

 自分達のいた時間が違う。それを知り、二人はどこか分かりかけていた共通点に疑問を感じた。

「五代さんは何年って……?」

「俺、2001年だけど……」

 その言葉に翔一も驚く。そして、二人して頭を悩ませる。どうしてこうなったのか。その理由を考えるために。
 五代はアマダムのせいだと思っていた。だが、アマダムを持たない翔一は自分よりも先にこの世界へ来ている。では、一体どうして自分がここに来てしまったのだろう。そんな風に考えていた。

(桜子さんがいれば何か分かったかな?)

 思い出すのは、未確認との戦いを知識面で支えてくれた女性。彼女の知恵があれば、現状も少しは変わったかもと五代は考える。

 そんな五代と同じように翔一もある人物を思い出していた。

(先生なら何かいいアドバイスくれるかな?)

 美杉教授。彼が長い間世話になった恩人である。彼も翔一にとっては自分を支えてくれた者の一人。その人生論や何気ない一言は、翔一の大きな助けになっていた事もある。

「「う~ん……」」

 二人して思うのは同じ。そして、揃ったように唸りを上げ、それに気付いて笑い出す。
 そして、翔一に五代は右手を向けてサムズアップ。それに翔一はどこか不思議そうに視線を送った。

「大丈夫! きっと何とかなるよ。リンディさん達も協力してくれるし、シグナムさん達もいるし」

「そうですね。で、五代さん……気になってたんですけど、それ何です?」

「これ? サムズアップって言って、古代ローマで納得出来る、満足出来る事をした人に送られる仕草。俺、これが似合う人になりたくってさ」

「そうなんですか……」

「ま、色々大変だと思うし、辛い事もあるだろうけど……さ」

 五代はそう言って、もう一度翔一に対してサムズアップする。それを見て、翔一も同じように五代へ返す。

「でも大丈夫! だってアギトがいるんだし」

「はい! 絶対大丈夫です! クウガがいますから」

 互いに笑顔を見せあい、断言する二人。そして、その視線に宿る希望を感じ取り、更に笑みを深くする。二人の仮面ライダー。その優しき心が完全に繋がり合った瞬間だった。



 ジェイルラボ 訓練場。

「さ、行くわよ真司君」

「……へ~い」

 準備万端といった感じのドゥーエに対し、龍騎はやる気の欠片もなく声を返す。それをトーレが聞いていれば怒鳴っただろう。チンクなら呆れながら注意しただろう。
 だが、ドゥーエは何も言わず、無言で走り出した。その手にしたピアッシングネイルを光らせ、龍騎へと突き立てようとするが……。

”ガードベント”

 龍騎の手に現れた盾を見て、その狙いを龍騎の体ではなく、顔へと変えた。それに若干龍騎も慌てるものの、即座にかわし、距離を取る。
 だが、そうはさせじとドゥーエが走る。その爪先を突き立てんと龍騎へと迫る。正直早く終わらせたい龍騎は、いっそわざと負けるかとも考え出していた。

 そんな龍騎の思考を読んだのか、ドゥーエがこう告げた。

「もし、わざと負けたりしたら、トーレが煩いわよ?」

「げっ!」

 脳裏に浮かぶトーレの怒り顔。そして、そのまま説教までされる自分を想像し、龍騎は一瞬身体を震えさせる。
 その瞬間を狙い、ドゥーエは爪を龍騎に突き出し―――。

「よっと」

 龍騎の手にした盾に弾き飛ばされた。防具である盾を、攻撃に使った事に一瞬思考が止まるドゥーエだったが、すぐに気を取り直し、龍騎から離れた。
 だが、飛ばされたピアッシングネイルを取りに行くような事はしない。それに龍騎が軽く驚いた。

「……取りに行かないのかよ」

「あら、行ったら何かする気だったでしょ?」

「……バレてるか」

 龍騎の手にしているのはストライクベント。そう、ドゥーエがピアッシングネイルを回収しに行ったところに、ドラゴンストライクを決めようと考えていたのだ。
 その龍騎の行動をドゥーエは内心で誉めていた。単なるお人好しではなく、戦い慣れをしていると感じたからだ。先程の盾を使った攻撃もそう。
 どこかで防御にしか使わないと思っているものを、攻撃に転用し、相手の思考を乱す。その僅かな隙を突ければ完璧なのだろうが、龍騎はそこまで戦闘の達人という訳ではない。

(でも、厄介だわ。確かにこれはトーレでも手を焼くはずよ)

 ドゥーエは知らない。先程の盾を使った攻撃の後、龍騎が敢えて何もしなかったのを。その気になれば、そこでドゥーエを倒せた事を。だが、それを龍騎がしなかったのには、理由がある。それは……。

(トーレもチンクちゃんも気の済むまでやらないと納得しないんだよな~。ドゥーエさんが同じとは思えないけど、不意打ちで倒してもう一回!
 とか言われても嫌だし……)

 というもの。意外と考えてないようで考え、それが裏目に出る龍騎だった。



 勝負は龍騎の勝利で終わりを告げた。武器を失ったドゥーエに勝ち目があるはずもなく、元々戦闘用ではないドゥーエでは限界があったのだ。
 そして、決着が着いた時、どこか清々していたドゥーエに真司はこう言った。

「ドゥーエさんさ、戦いに向いてないから、これから気をつけてよ」

「……どういう事?」

「いや、スパイとかってさ。時々襲われる事もあるし、ドゥーエさん女性だから。もし戦いになりそうだったら、何がなんでも逃げて」

 真司はそう心から心配して言った。それをドゥーエは笑い飛ばし、そんな事はないから大丈夫と告げた。そして、ドゥーエはそのまま真司に背を向け、歩き出す。
 その背中を見つめ、真司はもう一度大声で告げる。

「絶対に戦ったりしたらダメだからな~!!」

 その言葉を内心鬱陶しく思いながら、ドゥーエは手を振った。何故かその真司の言葉を記憶の片隅に留めて。そして、翌日彼女は管理局への潜入任務へと向かった。


彼女が、この時の真司の言葉を思い出し、窮地を逃れる事になるのは先の話……。




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続き。前回あんな事言いながら、結局普通に続きが書けました。

これでクウガ&アギト組は動き出します。龍騎はしばらくこんな雰囲気が続く……?

……俺、A's終わらせられたら……これを板移動させるんだ……。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 7 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/25 13:03
 時空管理局内 無限書庫

「どうだ。何とかなりそうか?」

「……検索魔法があるからね。ただ、色々と整理されてないせいで、時間はかかりそうだよ」

 無重力空間の書庫内で、クロノとユーノは闇の書に関する情報を得ようとしていた。ただ、無限書庫は長年放置されてきたにも等しい状態だったため、ユーノから言わせてもらえば「宝の持ち腐れ」状態。
 有益な情報があるにも関わらず、碌に整理もしないせいで必要な情報が見つからないのだ。

「出来るだけ早目に頼む。なのはが復帰する頃には、フェイトが動けなくなるからな」

「……先に僕って考えてたけど、ここの進行具合じゃその方がいいかもね」

「ああ。だが……まったく三人揃って何を考えているんだ」

「人助け、かな」

「……それで蒐集させるのか。君達は本当にお人好しだな」

 呆れるようなクロノの言葉に、ユーノは静かに穏やかに告げる。

「……五代さんが、あの人が言ったんだ。みんなが出来るだけの無理をすれば、きっと何とかなるって」

 ユーノのどこか憧れるような声にクロノは黙る。それは、クロノもその言葉に込められた想いを感じたから。きっと、五代はそれがどういう事か知っている。
 でも、だからこそ言ったのだろう。それが現状を解決する一番の方法なのだと。それはクロノの口癖にもなりつつある言葉に、どこか反論しているようだった。

―――いつも世界は、こんなはずじゃなかった事ばかりだ。

 それを五代が聞けば「そうだね。でも……だからって悪い事ばかりでもないよ」と笑顔で言っただろう。こんなはずじゃない事は、良くない予想にも適応出来るのだから。
 だが、ここに五代はいない。クロノの抱く想いを変える笑顔は、ここにはない。だが、ユーノの口を通じて言われた五代の言葉は、確実にクロノの心に届いていた。

(……五代雄介、か。冒険家と言っていたが、彼は彼なりに多くの不条理を見てきたんだろうか……)

「クロ助~」

 そんな風に思考を止めていたクロノだったが、突然聞こえた声に戦慄する。そして、声のした方へ視線を向け、それが間違いではなかった事を確認した。
 そこにいたのは、猫型の使い魔。そして、彼にとっては忘れる事の出来ない相手の一人。主に戦闘術を教えてもらった師匠の一人。

「……ロッテか。一体どうしてここに?」

「ん~、まぁ、お父様に言われてお手伝い。リンディ艦長の方にはアリアが行ってるよ。闇の書絡み、なんだろ?」

「……ああ。そうか、グレアム提督が……」

 最後のロッテの囁きに、クロノは神妙に頷く。そして、ある人物の協力を聞かされ、クロノに驚きと喜びが浮かぶ。自分の恩人でもあり、父親の最後を看取った人物。それが、ギル・グレアムだ。
 クロノにとっては、もう一人の父と呼んでもいいぐらいの関係でもある。

「クロノ、その人は?」

「お、何か獲物っぽいの発見……」

 そんな二人が気になったのか、ユーノが近付き、ロッテにロックオンされる。それを感じ取り、クロノがすかさず止めに入った。

「それで、何を手伝ってくれるんだ」

「ちぇっ……何って検索だよ。人手がいるだろ?」

「そうか。なら頼む。僕は一度アースラに戻って話し合う事があるから」

 クロノの言葉にユーノは疑問を感じたのか、不思議そうに問いかけた。そして、その答えにユーノではなくロッテが反応するのだが。

「何を話し合うって言うんだ」

「仮面の男への対応だ。奴の目的がはっきりしない。それを探る事もしなきゃならない」

 クロノの言葉にロッテはどこか驚き、訝しむような表情を浮かべた。それを見て、クロノが何かを思い出したように告げた。
 仮面の男とは、守護騎士達を監視していた存在で、何故か蒐集活動を見逃していた魔導師の事だと。民間協力者によって撃退されたが、その行動目的が不明なので、要警戒の相手である。
 そのクロノの説明を聞いて、ロッテは納得し「気をつけなよ」とクロノに軽く笑いながら言った。それを同じように笑みを浮かべてクロノも応じる。

 そして、クロノが去った後、ユーノとロッテは闇の書についての文献を探し出す。

(クロ助の奴、いつの間にかクライドに似てきたね。でも……)

 どこか不敵に笑うロッテ。それに気付かず、ユーノは検索魔法を使って文献をどんどん分別していく。それと並行し、闇の書関連の文献を探す。その表情は、まさしく真剣な男の顔だった……。



「よく来てくれたわね。本当に助けるわ」

「いえ、私はお父様に言われただけですから」

 アースラ 艦長室。そこには、リンディと猫型の使い魔で、クロノの魔法の師匠であったリーゼアリアがいた。二人は、久方ぶりの再会を喜んだのも束の間、早速本題である闇の書事件へと話を進める。
 だが、その前にリンディは気になっている事があった。それは、アリアの腕の包帯である。その事をリンディが指摘すると、アリアはどこか苦笑いを浮かべた。

「実は……ロッテとの模擬戦で少し」

「あら、相変わらずね」

「どうにも接近戦はロッテに勝てなくて」

 そこから話は事件の今後の動きへと変わっていく。リンディから告げられた守護騎士達の投降と協力に、アリアは驚きを隠せなかったようだが、すぐにそれも切り替えたか、リンディからの説明を聞き、納得はしたようだった。
 話は更に進み、完成した闇の書に対する対応へと及んだところで……。

「艦長、今戻りました」

「ご苦労さまです」

「クロノ、久しぶり」

 敬礼し合う二人。それが終わるのを待って、アリアがクロノへ微笑みかける。それにクロノも笑みを浮かべて応える。
 そして、無限書庫で会ったロッテの話をし、リンディはグレアムの配慮に感謝していた。グレアム自身も優秀な人物だが、傍にいる二人の使い魔リーゼアリアとリーゼロッテもかなり優秀な人材だったからだ。
 その二人を惜しげもなく協力させてくれる事に、リンディはグレアムの闇の書への強いこだわりを感じていた。

(グレアム提督も、やはりまだあの人の事を引きずっているのね……)

 十一年前、闇の書を輸送していた次元航行艦の艦長をしていたのが、リンディの夫であるクライド・ハラオウンであった。その時、艦隊の指揮を執っていたのがグレアム。
 その輸送の最中、闇の書が謎の暴走を始め、クライドは艦のクルーを全て脱出させた後、自分ごと艦を撃たせたのだ。闇の書の暴走によって、艦の制御を乗っ取られ、それによる攻撃からグレアム達を助けるために。

 その事を、自分と同じようにまだどこかでグレアムも引きずっている。そうリンディは思った。

「それで艦長、お話があります」

「何でしょう?」

「仮面の男についてです」

 その言葉にアリアが若干表情を曇らせる。それにクロノもリンディも気付かぬように会話を進める。目的がはっきりしない事や守護騎士達を監視していたらしい事などから、敵かもしくは何かの犯罪組織の手の者かもしれないと、クロノは告げた。
 それにリンディも同意し、情報を得ると共にその出方も警戒したほうがいいと改めて考え、その旨をフェイト達に告げると言った。

(そうか、クロノ達は闇の書を完成させて破壊するつもりか。それならそれで……)

 クロノ達の話を聞きながら、アリアは密かに笑う。彼女達の目的。それを果たす意味でも、クロノ達の行動は歓迎すべき事だった。
 だが、そこにある人物が現れた事で、アリアの表情が一変する。

「すいません。そろそろ俺達、はやてちゃん家に戻りたいんですけど」

「っ?!」

「あら、翔一さん。もうそんな時間?」

 部屋に現れたのは、どこか疲れた翔一だった。と言うのも、五代と話していたらついつい話し込んでしまい、そこにやってきたエイミィから現時刻を聞いて、食堂へ行き、そこからここへ走って来たからだ。
 ヴィータ達は蒐集へ向かうと言っていたが、それを今日は色々あったから休もうと説得し、なのはへの謝罪は寝てしまったため、後日すると五代に伝えてもらう事にしたのだ。
 そして、リンディに転送ポートの使用と許可、それと帰りの挨拶をしにきたのだった。

「ええ。俺達も早く動きたいんですけど……今日は色々あって疲れましたし」

「そうだな。確かに貴方達は一度帰ってくれて構わない。ただ……」

「はい、蒐集をする時は必ず皆さんに連絡します。それと勝手にはしません。また明日も来ます」

 クロノの言いたい事を察し、翔一はそう強く言い切った。その声と視線にリンディもクロノも安堵の表情で頷いた。

(やはり、彼なら信頼出来るな)

(まだどこか信用出来ない騎士達も、彼がいれば大丈夫そうね)

 そんな二人とは違い、アリアだけはどこか翔一を睨むように見つめていた。その視線を感じ、翔一はアリアへ視線を移す。
 初めて見る人物から睨まれる事に戸惑う翔一だったが、その理由を思い当たったのか、申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめんなさい! 初めまして。俺、津上翔一って言います」

「え? あ、私こそ初めまして。リーゼアリアよ」

 その翔一の態度にどこか驚くアリア。翔一は初対面にも関わらず、自己紹介をしなかった事にアリアが怒っていると考えたのだ。
 一方のアリアは、そんな翔一の態度に戸惑うも、毒気を抜かれたのか比較的優しく言葉を返した。

 その後、簡単に事情を聞き、翔一はアリア達の協力に感謝を述べ、アリアに苦笑された。そして、翔一は三人に礼と挨拶をし、そのまま部屋を後にした。

(でも、アリアさん腕に怪我してたけど……あれ、何かひっかかるなぁ……)

 転送ポートへ向かう途中、翔一は何故かアリアの腕の包帯が気になっていた。彼は知らない。その答えが、この事件に大きく関わる事だとは。



 一方、翔一がリンディ達と会話している頃、五代はと言えば……。

「そうですか。なのはちゃん、そんな事を……」

「本当に……私達、取り返しのつかない事をしようとしてたんだって……気付きました」

 医務室の前でシャマルと話していた。なのはから言われた一言で、完全に目が覚めたと。誰かを不幸にしてはやてを助けても、はやてが喜ぶはずはなかった。その事に気付かせてもらったのだと、シャマルは真っ赤な目で語った。
 それに五代は優しく笑顔を見せる。何をするにも、何に気付くのも、遅いって事はない。そう言ってシャマルを慰めた。

「だって、シャマルさん達はこれで気付いたじゃないですか。はやてちゃんを笑顔にするには、誰にも迷惑を掛けないで蒐集するしかないって。
 そして、その方法はあって、リンディさん達管理局の人も手伝ってくれる。闇の書の暴走も、みんなでやればきっと何とか出来ます」

「五代さん……」

「大丈夫! 必ずみんな笑顔になれます!」

 サムズアップ。それと共に見せる五代の笑顔。それにシャマルも笑顔を返す。心からそう思える。そんな不思議な力が五代の笑顔にはある。
 そんな事を考え、シャマルは告げた。自分と数日は二人で蒐集に当たる事になるが、自分は戦闘向きではない。だから五代の負担が大きくなると。
 そんなシャマルの言葉に、五代は少し考えて答えた。

「う~ん……その魔法生物っていうのがどんなのか分からないですけど……多分いけます」

「本当に……大丈夫ですか?」

「はい。だって俺、クウガですから」

 その言葉とサムズアップ。それだけでシャマルは安心した。そう、きっと大丈夫、と。だからシャマルも笑顔を返す。そして、こう言い切る。

「分かりました。なら、サポートは任せてください。私、湖の騎士ですから」

 サムズアップ。それに五代は少し驚くも、その顔は笑みを浮かべている。向け合う親指。それは、互いの気持ちを向け合うようだった。



こうして、この日は終わる。静かに穏やかに”本来の流れ”を変えて……。





「で、相談なんだけど……」

「……何です?」

「ドクターに仕事するよう言ってくれないかしら?」

 ここはラボ内にある真司の部屋。そこのベッドに腰掛け、ウーノはどこか疲れたようにそう切り出した。
 その発言に真司はやや驚きを見せるも、そのまま考え込む。ウーノから相談があると聞いた時、真司は何事かと思った。ナンバー1、ウーノはジェイルの秘書であり、姉妹の頂点に立っている。
 更に、真司の面倒もさり気無く見てくれる優しい美人。それが真司の印象。だからこそ、そんなウーノが弱くなっているのが、真司には驚きだった。

(ウーノさんって、完璧人間だと思ったんだけど……あ、玲子さんと同じか)

 元いた世界での上司に当たる関係だった女性。その彼女も自分からは欠点がないように見えたが、その内実は繊細で複雑だった事を真司は思い出した。
 出来る女性程、ストレスを溜め易いのかもしれない。そう考え、真司はウーノを少しでも楽にさせようと立ち上がって断言した。

「分かった! 俺がジェイルさんに仕事するようにしてみせる」

「……よろしく頼むわ」

 そう答えるウーノは、どこか投げやりな声だった……。



「……で、君がいるのか」

「そうだ! ジェイルさんさ、ちゃんと仕事してくれよ。ウーノさんだけじゃなく、クワットロにまで頼まれるなんてよっぽどだぞ」

 ジェイルの研究室。そこには、ややうんざり顔のジェイルと、やる気満々の真司がいた。ウーノに頼まれ、研究室へ向かっている途中、クワットロに遭遇した真司だったが、ウーノから頼まれた事を話すといつもの間延び口調ではなく、割かし本気で言われたのだ。
 ジェイルに真面目に仕事させてくれたら、前々から言っていた調理器具を何とかしてやると。真司の現状での不満は料理。何せ、栄養さえ取れればいいとジェイル達が考えているため、美味しくないのだ。
 故に真司は得意の料理を作り、全員に美味しいものを食べる喜びを教えたいと常々思っているのだ。そのために、まずは道具が欲しいとウーノやクワットロに言っていて、それを叶えてくれるとの発言に、真司は凄まじいやる気を出していたのだ。

「私はちゃんと仕事しているよ。ま、残りの娘達と君のシステム解析に時間は取られているけど」

「それが問題なんだって! せめてライダーの方は中止してさ、元からの仕事してくれよ」

「嫌だ。私は私のやりたい事をやる。いくら君でも、それだけは譲らないよ」

 どこか勝ち誇ったように笑みを浮かべるジェイル。それに真司は頭を抱えそうになるが、ふと良い事を思いついたといった顔でジェイルにこう言った。

「仕事片付けてくれたら、サバイブ見せてもいいよ」

「本当かいっ?!」

 真司の発言にジェイルは子供のように身を乗り出した。それにどこか驚くも、真司は首を振ってそれを肯定する。
 そして、ジェイルに対してこう言い切った。ただし、完全に仕事を片付けたとならないと見せてやらない、と。
 それを聞き、ジェイルはそれまでののんびりが嘘だったかのように、凄まじい速度でコンソールに向かって指を動かし出した。もう、真司が目に入っていないかのように。
 それを確認し、真司は満足そうに頷いて部屋を出た。そこに何故か立っていたウーノ達四人にVサインを見せる真司。それをそれぞれが安堵の表情を浮かべた。

 こうしてジェイルの仕事が滞る事はなくなったのだが……。

「なぁウーノ。もう仕事は片付いたと思うんだけど……」

「ええ。こちらの分は、ですね。まだ追加分がありますのでこちらも」

 そう、ジェイルの仕事が完全に片付く事などないのだ。真司が、それを理由にサバイブを見せなかったのも当然。全ては、ジェイルに仕事をさせるための作戦。
 ジェイルが真司の目論見に気付いた時には、もう遅かった。ウーノやクワットロから入れ知恵された真司は「仕事をサボったら二度と見せない」と告げて、ジェイルの逃げ道を塞いだのだ。
 だけど、そう言われた後もジェイルはどこか上機嫌だった。

(真司に一杯食わされるとは……ね。中々強かだね、彼も)

 そう思い、ジェイルは楽しそうに笑う。それは、軽い悪戯をされた事に気付いた者が、どこか憎めずにする表情にも見えた。




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続き。やりたかったのは”だって俺、クウガだし”です。

これがあっての五代。そして、静かに広がるサムズアップ。いつか、これをアギトと一緒にやるかなぁ……。

現在、A'sの最後までを構想中。リインフォース生存への方法を模索中……。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 8 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/10/30 18:56
 あの日から五代達の蒐集活動は始まった。それぞれが分担し、毎日蒐集を行なう事で少ないページ数でありながらも、着実に蒐集は進んでいった。それと並行する形で、なのはとフェイトのはやてとの交流も始まり、ヴィータとシャマルが仲介役となり、はやてにとっても新しい友人を得た事は喜ばしい事だった。
 そして、なのは達がすずかとも友人と分かり、はやては一気に友人との輪が広がった事に心からの笑顔を見せた。

「ほんなら、これからよろしくな。なのはちゃん、フェイトちゃん」

「うん。また遊ぼうね、はやてちゃん」

「またね、はやて」

 少女達の繋がり。結ばれる笑顔と笑顔。だが、その裏側では……。

「五代さん、気をつけて!」

「来んぞ!」

「はいっ!」

 シャマルの援護を受け、ヴィータと共に雄介が……。

「来るぞ、翔一!」

「気をつけろ!」

「分かりましたっ!」

 シグナムとザフィーラと共に翔一が……。

「「変身っ!」」

 そんな少女達の笑顔のために戦っていた。その身に宿した”力”と”想い”を振るって……。



 五代達が蒐集活動を始めて、既に一ヶ月以上が経過した。なのはとフェイトの蒐集も終わり、二人も完全に現場に復帰していた。ユーノも無限書庫での検索を一区切りつけ、やっと蒐集を受ける事となり、三人だけで約四十ページも稼いだ。
 残りのページも半分を過ぎ、管制人格の覚醒まで後五十ページを切った。そして、現在持ち上がった難題は、はやてへの事情説明と、闇の書の暴走をどう対処するかであった。

 管制人格の起動には、主の承認が不可欠。そのため、そろそろはやてへ蒐集している事を説明しなければならない。それと現在、闇の書が完成する事で分かっているのは、恐ろしい災害を招き、下手をすれば地球だけでなく、他の次元世界まで消滅させてしまうだろうとの事。
 それをどうにかする術はないのか。それをリンディ達は守護騎士達に聞いているのだが、記憶からその暴走自体が抜け落ちていたため、シグナム達にも有効な手立てが見つからないとの事。
 しかも、ユーノが見つけた文献によれば、闇の書は元々『夜天の魔導書』と呼ばれ、その目的もあらゆる魔法を記録する図鑑に近いものだった事が判明した。そして、それと同時にシグナム達も思い出した事があった。

「転生か……」

「ああ。だから単に破壊するのではダメだ」

 転生機能。それを聞き、リンディ達も思い出したのだ。十一年前にアルカンシェルにて破壊された闇の書が、何故元通りに再生していたのか。
 そう、その機能を根本から破壊するか、もしくは修正するしかないというのがユーノが出した結論だった。
 というのも、闇の書とよばれるキッカケは、何代目かの主が改竄した結果によるバグだったのだ。それを聞き、リンディ達も守護騎士達が蒐集完了後の事を記憶していなかったのも、バグによる影響と結論付けた。

「はやてちゃんを助けて、夜天の書を元に戻す手段があればいいんですけど……」

「そうだね。それが……一番だね」

 翔一の言葉に五代も頷く。そしてそれは、その場にいる全員の総意でもあった。だが、その方法が思いつかない。リンディ達もシグナム達も何も言わない。
 何が原因で闇の書と呼ばれるようになったのかは分かった。しかし、それに対しての有効的な手段が見つからないのだ。現在、アースラの艦長室で行なわれている会議に参加しているのは、守護騎士達と翔一、リンディとクロノ、エイミィ、そして五代という面々。
 なのは達はアリアとロッテの二人に頼み込んで、現在訓練中なのだ。

「……そういえば、少し思いついた事があるんですけど……」

 五代が呟いた言葉に全員の視線が向く。それに五代は、どこか自分でもまだ分からないという風に告げた。

「封印って事なら……クウガの力で何とかなるかもしれない」

「どういう意味か教えてくれますか?」

 不思議そうなリンディの言葉に、五代は記憶を呼び覚ましながら話し出した。

「クウガの敵……っていうか戦った相手を倒す時、必ず浮かび上がる文字があって」

「文字?」

 クロノの言葉に五代は頷き、昔桜子に尋ねた事を話し出す。クウガが未確認を倒す時、相手に必ず浮かび上がる文字の意味を。
 それは、鎮めるという意味だそうで、おそらく古代のクウガが未確認を長きに渡り封じ込めていた事からも、クウガには邪悪を封印する力があるかもしれないと五代は語った。
 それがもし闇の書にも効果があれば、封印を出来るかもしれない。そんな話を五代はしながら言った。可能性が少しでもあるなら、これに賭けさせてほしいと。

 それを聞き、真っ先にそれに賛成したのは翔一だった。彼は語る。自分がいた世界で猛威を振るった未確認生命体を、たった一人で戦い抜いたクウガ。その力は、絶対にどんな闇ですら封じ込めると。
 そして……。

「それに、今は俺が……仮面ライダーアギトがいます!」

「仮面……ライダー……?」

「あ、それ初めて会った時、仮面の男に言ってたやつだよね!」

 翔一の発言に全員が首を傾げる中、五代だけが思い出したように答えた。それに翔一も頷き、簡単にそう名乗る事になった経緯を話す。
 その内容に驚き、そして誰もが言葉を失う。人知れず、平和のために怪物と戦い続けた男達。それが仮面ライダー。
 翔一は、その名を過去のアギト達が名乗るのを聞き、自分も彼らのように”心強くありたい”と思って名乗る事にしたのだと。

(そうか……翔一の世界には、そんな生き方をした者達がいたのか……)

(あたしらよりもある意味過酷だったろうに……すげぇな)

(私達も修羅場と呼べる戦場を経験してきたけど……たった一人でなんて)

(騎士……いや、戦士と呼ぶに相応しい”漢”達なのだろうな。願わくば、一度会って話を聞いてみたかったものだ……)

 シグナムを始めとする守護騎士達は、長きに渡る戦乱を生きてきたが故に、その生き様に敬意を払い……。

(人外の力……姿……その哀しみを噛み締めて、たった独り、人々のために戦う。私達管理局も見習いたいわね、その強い心を……)

(強大な力に溺れず、それを誰かを守るために使う、か。本当にヒーローそのものじゃないか……)

(何も知らない人が聞いたら笑うんだろうな。でも、あたしは笑わない。五代さんや津上さんがいるんだから……ね)

 平和を守る事に携わるリンディ達にとって、その選択がどれ程厳しいかを想い、密かに尊敬の念を抱き……。

(他にも未確認みたいなのがいたんだ。そして、それを倒していたクウガみたいな人達がいた。戦う事を決意したのは、きっと……)

(アンノウンも、もしかしたらあいつらの生き残りだったのかもしれない。そして、あの人達が戦っていた理由は……そう……)

 二人の仮面ライダーは、その自分達に近い存在に親近感と同時にある事を想う。

((みんなの笑顔のために……))

 その戦う理由。それは、おそらくそのためだと。誰にも知られず、戦い続けられる理由。その根底にあるものは、その原動力はきっと自分達と同じだったはず。
 そう想い、五代も翔一も改めて誓う。この力を”笑顔”のために使う事を。自分達を人知れず守っていた存在に応えるために。

―――”仮面ライダー”として。




 いつものように食堂に集まるジェイル達。だが、そこに並んでいるのは、いつもの栄養食ではない。半透明の皮で包まれた餃子。それがスープに入ったものと、焼いたもの。そして、蒸したものが並んでいる。それとウーノに無理を言って手に入れてもらった白米。それを大盛りに盛った白いご飯。そして、卵を使った簡単な中華スープ。
 スープ以外初めて見るもの料理に、全員がどう反応するべきか迷っていたが、それを急かすように真司が言った。

「ほら、早く食べてみなって! 本気で旨い………って思うから!」

 その真司の言葉に真っ先に動いたのはチンク。手にしたフォークを焼き餃子へ突き刺し、真司特製のタレをつけて口へ入れた。それをどこか固唾を飲んで見守るジェイル達。真司はそんな反応にどこか心外だという表情。
 やがて、焼き餃子を飲み込んだチンクが、静かにフォークを置き、立ち上がって真司に向けて頭を下げた。

「すまん……私が悪かった。一瞬でもこれを、不味いかもしれんと疑った私を許してくれ」

「チンク……?」

「旨いだろ?」

「ああ。これが”美味”という事なのだな」

「っよし!」

 笑顔で告げたチンクの言葉に真司がガッツポーズ。それを聞いて、トーレもフォークを焼き餃子に突き刺し……。

「う、旨い……」

「驚いた……本当に真司さんって料理が得意なんですね」

「信じられないけど……美味しいわぁ」

「真司は凄いね。どうやってこれほどの腕を?」

 次々と食べては称賛していくジェイル達。真司一番の自信作。それが餃子だった。その美味しさに、ジェイル達が驚愕と感激を表しながら、次々に餃子を食べていく。それを見つめて、真司は笑顔で告げた。

「さ、どんどん食べてくれよ! まだ追加あるからさ」

 こうして、真司の料理係が確定し、ジェイルを始めとした全員は、決まった時間に食事をする事にされ、箸を使う事も基本となる。
 そして、その食事作法もいつしか真司に厳しく言われる事になる。
 具体的には食べる前には「いただきます」と言い、食べ終わったら「ご馳走様」を言う事。それにジェイル達は段々と染まっていき、セインやディエチが加わる頃には、それは当たり前になっていたりする。

 そして、餃子はかなり大目に作ったにも関わらず、全て完食された。それに真司が満足そうに頷いて、残った食器を片付けようとして……。

「真司、片付けは私がやろう」

 チンクにそう声を掛けられた。それに真司は少し驚きながらも振り返り、不思議そうに尋ねた。

「いや、それは嬉しいけど……何で?」

「何、美味しい物を作ってもらった礼だ」

「そっか。なら、手伝ってくれよ。俺一人でやるより、その方が早く終わるしさ」

「だから……はぁ、まぁいいか。そうだな、二人でやろう」

 真司の言葉にチンクは一瞬何か反論しかけるが、それを思い留まり、やや呆れた表情を浮かべて頷いた。

「うし。じゃあ、俺が洗うから、チンクちゃんが拭いてくれ」

「ああ、了解だ」

 そう言いながら、真司は食器を手にして歩き出す。それに笑みを浮かべて、同じように食器を手にしてついて行くチンク。それを眺め、クワットロが呟いた。

「なんか……あれじゃ兄妹ねぇ……」

「否定は出来ん。チンクは真司を慕っているからな」

「あら? トーレは違うの?」

「……私は慕ってなどいない」

 そう言い切って、トーレはそのまま歩き出す。そして、やや歩いたところで、ウーノ達に背を向けたままで告げる。

「……まぁ、認めてはいるがな」

 そう言って、トーレは再び歩き出す。その去り行く背中を見ながら、ウーノとクワットロは笑みを浮かべる。その言葉がトーレの照れ隠しである事を理解しているからだ。
 だからウーノの笑みはどこか微笑ましく、クワットロはどこかからかうように、それぞれ笑っている。だが、そんな風に笑う二人をジェイルは楽しそうに見ていた。

(やれやれ……いつの間にかウーノやクワットロまでこんな顔をするようになるとはね。真司の影響かな……? 困ったものだ。
 確かに生命の揺らぎは見ていて興味深いが、このままだと問題になるかも……ね)

 そんな事を考えるジェイルだったが、その彼の表情もどこか嬉しくて堪らないという顔をしているのだった……。



「……これでラスト」

「そうか」

 真司から手渡される皿をチンクは軽く背伸びをして受け取った。最初、真司は少し屈んでそれをしようとしたのだが、チンクが背丈の事を気にしている事を思い出し、皿をやや下に出す事で、チンクに配慮する事にした。それをチンクも分かっていたが、それでも僅かに届かず、背伸びをして受け取っていた。

 拭き終わった皿を棚にしまうのは真司の役目。チンクは流石に届かないので、そこは真司に委ねた。だが、その顔はどこか悔しそうだったが。

「……真司、少しいいか?」

「ん? どうしたの、チンクちゃん」

「だからちゃん付けは……いや、もういい。聞きたい事があるのだ」

 真司の呼び方に異議を申し立てようとして、チンクは首を振った。それを言い出すと長くなり、尚且つ無駄に終わるからだ。
 チンクはそう思い出し、真司へ本来の目的を話すべく、そう切り出した。それに真司は、不思議そうな顔をして頷いた。

「……いいけど……何?」

「どうしてお前は、仮面ライダーになったのだ?」

「どうしてって……」

 チンクの疑問に真司は困ったような表情を浮かべる。それは、真司にとって答え難い質問だった。彼が仮面ライダーになったキッカケは、モンスターに襲われる人達を守るためだった。だが、戦いを続けていく内に真司は知ったのだ。仮面ライダーに課せられた悲しい宿命を。
 それは、他の仮面ライダーを倒す事。それは、その見返りとして得る権利を求めているからだった。
 何でも願いが叶う。それを理由に多くの者がライダーの力を手に入れた。真司は、最初それを止めようとしていた。だが、自分が初めて出会ったライダー、ナイトである蓮は、それを「無駄だ」と切って捨てた。誰かに言われて止めるようなら、最初から戦う事など選ばない、と。

(蓮だけじゃない。みんながみんな、戦う理由があった。ライダーになって、叶えたい願いが……)

 それは愛する者を目覚めさせる事であったり、不治の病への対抗策であったり、あるいは終わらない戦いであったりする。真司も全てのライダー達の願いを知る訳でない。だが、己が命を賭けても叶えたい願いがある事は知っている。
 だからこそ、チンクの質問に答え難いのだ。真司には、他のライダーを倒してでも叶えたい願いがなかったのだ。

(俺は……仮面ライダーになった気でいるだけで、ホントはまだなってないんじゃないか……?)

「どうした? な、何か言い辛いのなら別に……」

 真司が珍しく複雑な表情で考え込んだのを見て、チンクは慌てるようにそう言い出した。だが、それすら真司は聞いていなかった。

(俺の願い……俺の叶えたい事……それは…………あっ!)

「俺がライダーになったのは、戦いを止めるためだ!」

「答えなくても……何?」

「誰も殺されない。誰も泣かない。そんな夢みたいな世界。そうだ……そうなんだよ! 俺の願いは、ライダー同士の戦いを止める事!」

「ど、どうしたんだ真司。何を言って「ありがとうチンクちゃん! おかげで俺、分かったよ!」

 突然興奮したように言い出した真司。その内容は、チンクにはあまり理解出来なかったが、それでも自分の問いかけが、真司の役に立ったらしい事は分かった。
 喜び、自分の手を握る真司にどこか呆れながらも、チンクは、真司の言った仮面ライダーになった理由をきちんと聞いていた。

(戦いを止めるため、か。真司、それは……いつか私達と……いや、そうと決まった訳ではない! そんな事あってなるものかっ!)

 チンクの脳裏に龍騎と対峙する自分達の姿が浮かぶ。その想像を振り払うようにチンクは首を振った。それを見て、真司がやっと落ち着いたのか、不思議そうにチンクを見つめた。

「どうしたチンクちゃん。俺、何か嫌な事でもした?」

「いや、違う。それよりも、まだ聞きたい事がある。長くなるだろうから、ここでは何だし、私の部屋へ行こう」

「それはいいけど……チンクちゃんは女の子だし、部屋に男入れるのは不味いっしょ。だからさ、俺の部屋にしよう。
 あ、コーヒーとか淹れるよ。それと何かお菓子でも持ってさ」

 子供のように笑う真司。それにチンクはやや苦笑するも、頷いて歩き出す。その後を追うように真司も歩き出し、慌てて元の場所へ戻り、棚から二人分のカップを取り出す。
 それを見て、チンクは笑みを浮かべつつ「菓子はクッキーで頼む」と告げて、スタスタと行ってしまう。それを見て真司は「ちょっと! 俺、今両手塞がってるんだけど?」と言うが、チンクは「片手で二つ持てばいい」と告げて離れていく。そんな態度にも関わらず、真司はブツブツ文句を言いながら、棚から皿を出してクッキーを並べる。
 そして、カップにコーヒーを淹れながら、横目で離れたチンクを見て呟いた。

「……クッキー、か。チンクちゃんも、やっぱ女の子だよなぁ」



ちなみに、チンクが真司に聞いた事は住んでいた世界の事だった。
懐かしそうに話す真司を見て、チンクは微かに悲しみを滲ませながらも、微笑みを浮かべて聞いていた。




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続き。やりたかった事は”仮面ライダー”の持つ意味。そして、何故そう翔一が名乗るように思ったかを俺なりに考えました。

基本として、歴代ライダーは五代や翔一、真司と同じく戦いを止めるために、戦いへ身を投じたと思います。

その根底にあるものは、若干違うかもしれませんが、簡単に言えば”みんなの笑顔”のためと言えると思うので。

人によって、感じ方や考え方は違うかと思いますが、少なくとも昭和ライダー達は全員にそこへ行き着くかと、俺は考えてます。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 9 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/11/03 15:20
 八神家 リビング。そこでは、シグナム達と翔一がはやてに現在の状況を説明していた。はやての体を闇の書―――夜天の書が浸食している事。それを止めるために管理局やなのは達が協力し、蒐集を行なっている事。そして、その夜天の書のバグを直せるかもしれない管制人格の起動を許可してほしい事。
 それを全て話し終え、シグナム達ははやてを見つめた。はやては何も言わず、俯き黙って話を聞いていた。そして、小さく何か呟き顔を上げた。

「まず、何でわたしに教えてくれんかった」

「そ、それは……」

「それは何や? わたしが禁止って言ったのを意識してやな? わたしに気ぃつこうてそうしたんやろ。違うか?」

 はやての言葉に誰も何も言わない。その通りだったからだ。その沈黙が答えと理解したのだろう。はやては瞳一杯に涙を浮かべ、大きな声でこう叫んだ。

「何でや! どうして相談してくれんかった!? わたしを大事に思っとるなら余計や! わたしら、家族やなかったんかっ!!」

「はやてちゃん……」

 その痛々しいはやての叫びに翔一は心が痛かった。誰よりも家族に憧れていた少女。翔一は思い出す。自分がはやてと出会った日の事を。それは今から半年以上も前の事……



「本当に色々凄い戦いだったな……」

 邪眼との戦いを終え、バイクで帰路を行く翔一。途中まではギルス―――葦原涼もいたのだが、また旅を続けると言って先程別れた。一度、店の方にも顔を出すと言っていたので、また会えるだろうと翔一は思い、スピードを上げようとして―――突然視界が真っ白になった。

(何だっ?! この光は?!)

 そして、光が収まった時、翔一の目の前には先程の景色ではなく、見も知らない景色が広がっていた。何しろ、先程までは無人の道路を走っていたのだ。それがいきなりどこかの街中だ。流石に翔一もこれは参ったようで、ヘルメットを取り、周囲を見渡す。
 文字は日本語だし、周囲を歩いている人も日本人ばかりなので日本なのは間違いない。そう判断し、翔一はとりあえずバイクを置いておける場所を探して走り出した。

 しばらく走り、ここが海鳴という町である事。そして、どうやら自分がいた世界とは違うという事が分かった。何しろ翔一が店へ電話をかけても繋がらないどころか、使われていないと返ってきたのだ。
 次に翔一が訪れたのは図書館。そこで新聞を見て翔一は自分の予想が正しい事を知る。何しろアギトの事どころかアンノウンや未確認の事さえ記事には載っていなかったのだ。

(……これは……邪眼の仕業なんだろうか……?)

 時空を歪ませ、現在と過去を繋いだ邪眼。もしや邪眼がまだ生きていて、自分を異世界に送り込んだのでは。そんな考えが翔一の中に生まれるが、そんな事はないと思い直し、翔一は思考を切り替えようとする。すると、視線の先に車椅子の少女がいた。少女は棚の上の方を見つめて動かない。

「あ……届かないんだ」

 そう呟くや否や、翔一は少女が見つめる棚から本を取って少女に手渡した。それに驚く少女。翔一は笑顔でそれを見つめるが、何故か少女は中々本を取ろうとしない。
 どうしてだろうと翔一が首を傾げると、少女が申し訳なさそうに「あの……私が取りたかったのはそれちゃうんです」と言った。それに翔一はしまったという顔をし、その本を戻す。

「……ごめん。どれか教えてくれる?」

「あ、ええっと……その右です。あ、それやなくてその……そう、それです」

「えっと……はい、これ。でも、図書館に来るなんて偉いね。お母さんと一緒に来たの?」

 その何気ない翔一の一言に少女の顔が微かに曇る。それを感じ取り、翔一は少女が何か言う前に慌てて頭を下げる。

「ゴメン! 辛い事聞いたみたいだね」

「ええんです。それにしても……お兄さんは良く来るんですか? 何や昔の新聞とか探しとったみたいやけど」

「あれ? 何で分かったの?」

「やって、来るなり係員の人に、ここ二、三年の新聞ありませんか言うてたから」

 そう言って笑う少女。それに翔一も安堵し、笑みを浮かべる。

「あ、そや。ここで会ったのも何か縁や。わたし、八神はやて言います。お兄さんの名前は?」

「え、俺? 俺は津上翔一。よろしくはやてちゃん」

 これが、翔一とはやての出会い。そして、はやては翔一が行く宛のない人間と知り、その話を詳しく聞いて決断する。翔一を自分の家に住まわせる事を。翔一はその申し出を有難がったが、流石にそれは色々と問題があると遠慮した。はやてはそんな翔一に、せめて一晩だけでもと言って中々退かなかった。
 翔一は、それがはやての寂しさから来るものだと思い、なら一晩だけと受ける事にしたのだ。

 そこからは、はやての孤独感を知った翔一の優しさが炸裂した。はやてに泊めてもらう礼と言って作った料理に、はやてが驚き、翔一が店で働いていたコックだと分かると、レストランの味やと嬉しそうに言って翔一を喜ばせた。
 そして、はやてがたった一人で暮らしている事を知り、翔一は悩んだ。はやては、出来れば元の世界に戻るまでいて欲しいと懇願したからだ。
 翔一にとってそれはとても有難い事だった。でも、はやてと何の関係もない自分が一緒に住む事が許される訳がない。そう思った時、翔一はかつての自分を思い出した。
 記憶を失った自分を暖かく迎え入れてくれた真魚達。それとはやてが同じに思えたのだ。

(記憶を無くした時は、先生達。帰る道を無くした時は、はやてちゃんか。俺、本当に人に恵まれてるんだ)

 こうして、翔一ははやての申し出を受ける事にした。その時はやてが言った言葉。それが―――。

「なら、これで翔一さんはわたしの家族。そうやな……翔一さんやと他人過ぎるから、翔にぃでどうやろ?」

 こうして翔一ははやての家族となった。それから少ししてシグナム達が現れ、八神家は一気に賑やかになったのだ。



 そんな事を思い出す翔一。はやてにとって、自分達がどんな存在だったかを改めて感じ、心からの想いを込めて翔一は告げた。

「本当にごめん! はやてちゃんに黙ってた事は確かにいけない事だった。でも、これだけは信じて欲しい。
 シグナムさん達は、はやてちゃんを家族だと思ってるからこそ、内緒にしたかったんだ。出来るならはやてちゃんが知らないまま終わらせたかったから」

「それでも、わたしは……わたしは……」

「ごめんね。俺達、はやてちゃんを助ける事ばかり考えて、肝心のはやてちゃんの気持ちを考えてなかった。本当に……ごめん」

「主、お許しを。我々が、間違っていました……っ!」

「はやてちゃんに、寂しい想いをさせてるって知ってたのに! 私達、それを……それを……っ!」

「はやて……ホントごめん。ごめんよぉ~!」

「主のためにと思ってした事が、苦しめる事になっていた事に気付けず……我らは家族失格です」

「翔にぃ……シグナム……シャマル……ヴィータ……ザフィーラ……ええよ、もうええ……もう、ええから」

 そう言ってはやては翔一達へ手を伸ばす。それを翔一はしっかりと掴み、優しくはやてを抱き寄せた。それにはやては涙を流し、抱きしめる。それにヴィータも涙を流し、はやてにしがみついた。シャマルやシグナムも涙を流し、ザフィーラも静かに涙を流す。
 黙っていた方がいいと判断した自分達の浅はかさを感じ、優しいはやてに辛い想いをさせていた事を痛感したのだ。

 こうして、はやてへのシグナム達の隠し事は消えた。そして、それと同時に八神家に新しい家族が増える事になる……



 翔一達がはやてに事情を説明している頃、五代はと言うと……

「それで明日も出かけるのか?」

「そう。ごめんねイレイン。中々ストンプ見せてやれなくて」

「べ、別にいいって言ってんだろ。それを楽しみにしてんのはファリン達だからな!」

 そう言って顔を赤めるイレイン。彼女は、自動人形と呼ばれる存在。そして、そもそもは、ここ月村家を襲撃に来た刺客でもある。
 五代が月村家で世話を受ける事になったのは、良くも悪くもイレインが原因なのだ。

 簡単に言えば、偶々五代はイレイン達が月村家を襲撃していた時に近くを歩いていた。そして、それを止めるべくイレイン達と戦った。それだけ。そして、それがキッカケでイレインは月村家でメイドとして雇われ、五代は月村家に居候する事になった。
 その際、五代とイレインが因縁めいた関係なのを面白がった忍が、五代専属メイドとして任命し、現在に至る。

 確かに自動人形であるイレインの力は強かった。だが、五代はクウガである。そう、月村家の者達は、五代が普通の人間ではないと知っているのだ。
 何せ、燃え盛る炎の中、クウガとイレインが戦うところを忍達は見ていたのだから。

「そっか~、でもイレインも見たいって思ってくれてるよね」

「ま……まぁな」

「そっか。よし、じゃぁ、早くこのお手伝い終わらせて、ストンプ見せるから」

 サムズアップ。それを見て、イレインはそっぽを向くが、その右手は同じようにサムズアップをしている。
 それを五代は嬉しそうに見つめ、笑顔を深くするのだった……



「仮面ライダー……か」

「そう、異世界で怪物と戦ってた異形の存在……になった人間達だって」

 アースラ艦内にある休憩所。そこに二人の使い魔がいた。リーゼアリアとリーゼロッテである。彼女達もリンディ達から翔一の話を聞き、感じる物があったのだ。聞けば、五代も翔一も望んでその力を手にした訳ではない。恐ろしい怪物を相手するため、仕方なくその力を手にしたと、そう二人は考えていた。

「……その人達からしたら……私達、何て言われるのかな……?」

「犠牲を出そうとしてる事を……かぁ。きっと、止めようとするんだろうね」

「でもそれじゃあ……」

「大丈夫」

 ロッテの言葉に何か言いかけたアリアだったが、それを遮るようにロッテが言った言葉と仕草に、それが止まった。
 ロッテのしたのはサムズアップ。その表情は笑顔。だが、それをロッテは自嘲気味に笑ってやめた。

「……って、あの五代って奴なら言うんだろうね。そして、きっと何とかしようとするんだ」

「何とかって……相手は闇の書よ」

「それでも……だよ。あいつら、仮面ライダーはそういう存在なんだろ、きっと」

「……闇を打ち砕く、正義の光……」

 そう呟いてアリアとロッテは天井を見上げる。出会って一月と少し。五代達とも、蒐集活動やその手伝いで何度となく顔を合わせ、交流を深めた。そして知ったのは、五代達の想いと守護騎士達の想い。かつての自分達を悔いながら、罰を受けるのは自分達だけでいいと、はやてを助けようと必死に足掻く四人。それを支え、何とかはやてを助けようとする五代達。
 それを間近で見て、感じ、二人は主人であるグレアムに伝える事を悩んでいた。このまま、五代達の計画を支援したいと思ってきている事を。

 管制人格が起動すれば、否応無く蒐集完成後の話になる。完全封印を考えるグレアム達にとって、その完成の瞬間こそ一番狙う機会なのだ。
 だが、もし五代の、クウガの力が本当に闇の書に効果があるのなら、それに賭けたい。誰も犠牲にせずにすむのなら、それが一番いいのを二人も理解しているのだ。

(お父様……私は……私は……)

(お父様、あたしどうすればいいの。あいつらといると、覚悟がどんどん鈍ってくよ……)

 そんな二人に答える者はいない。まるでその答えは、自分達の中から見つけ出せと言われたように……





 ジェイルラボ 訓練室。そこに何故かやや元気のない龍騎と巨大な砲身を構えた少女がいた。その少女の前には、緑髪の活発そうな少女もいる。

「セイン、ディエチ、真司は見かけによらず手強い。心してかかれ」

「うぃ~す」

「了解」

 トーレの声にナンバー6、セインはどこか楽しそうに。ナンバー10、ディエチは無感情に近い声で答えた。活発な少女がセイン。砲身を構えているのがディエチである。
 対する龍騎だったが、そんな二人とは対照的にやる気のやの字もなかった。

「真司、始めるぞ」

「……何で戦うのさ。俺、今日はトーレ達とやったからいいって言ったのに」

 チンクの声に龍騎はそう不貞腐れるように返した。そう、龍騎はつい先程、トーレとの模擬戦を終えたばかりなのだ。しかも、チンクを交えての激しいものを。それが終わり、ゆっくり休みながら風呂にでも入ろうとしていた矢先、ジェイルが二人を連れてきた事に、今回は端を発する……



「じゃ、自己紹介をしなさい」

「は~い。あたし、セイン。ISはディープダイバー。ま、簡単に言えばどこでも潜れますよ~ってとこ。よろしく真司兄」

「し、真司兄?」

「そ。だって、ウー姉達がさんとかちゃんで呼んでるみたいだし」

 そうからからと笑うセイン。その明るさが今までいなかった性格だからか、真司も嬉しくなり笑顔を浮かべる。それに一人っ子だったため、真司は密かに兄弟に憧れていたのもあり、セインの呼び方も受け入れる事にした。
 そのやり取りが落ち着くまで、もう一人の少女は大人しく待っていた。そんな少女に真司は意外な印象を受けた。何せ、ナンバーズは皆個性豊かで、自我が強い者達ばかりだったからだ。

「えっと……初めまして。あたし、ディエチです。ISはヘビィバレル。簡単に言えば……砲撃、かな。よろしく真司兄さん」

「よろしく、セイン、ディエチ」

「……何故私はちゃん付けで、二人は呼び捨てなのだ」

 笑顔で答える真司を見つめ、こっそりとチンクがそう呟いていた。その周囲からは負のオーラが出始めているが、生憎それに真司は気付かない。それを横目にしながら、トーレはジェイルへ問いかけた。用件はこれだけですか、と。それにジェイルがとても良い笑顔で告げたのだ。

「今から真司と二人に戦ってもらいたいんだ」



 こうして、冒頭へと戻る。トーレとチンクの二人を相手に戦った真司は、それはもう疲れていた。そのため、本来なら余裕で戦えるはずのセインとディエチ相手に苦戦していた。
 動きは散漫、注意は怠る。挙句にストライクベントを奪われる始末。だが、全員が目を見張ったのはディエチが全力で放ったヘビィバレルの攻撃を、龍騎が耐え凌いだ事。

 ガードベントで呼び出した盾を二つ、隙間なく地面に突き立て、それをしっかりと手と体で支えたのだ。さしものドラグシールドも壊れはしなかったものの、あちこちが溶けており、ディエチの攻撃力の高さを龍騎は思い知った。
 だがそれでも、龍騎はあまり衝撃は受けなかった。何故なら……

(ま、北岡さんのファイナルベントよりマシだな)

 龍騎の脳裏に甦るゾルダのファイナルベント”エンドオブワールド”。あの攻撃に比べれば、ディエチの攻撃は可愛いものだと龍騎は思い、一人頷く。
 一方で衝撃を隠しきれないのはジェイル達だった。単純な攻撃力でいえば、今の一撃は現在のナンバーズでトップクラス。それを龍騎は防ぎ切ってしまったのだ。それが意味するものは、龍騎はSランク級の砲撃を単身で防ぎ切れるという事。

(いやぁ~、良い物を見せてもらった。でも……今でこれなら、一体サバイブはどれ程の力を持ってるんだろうねぇ……)

(これが真司の底力か……? いや、まだ分からん。それにしても……あれ程戦闘中に気を抜くなと言っているのに!)

(あれを耐え切るか。真司の奴、流石だな。私のISが通じないはずだ)

 ジェイル達はこれまでの事も含め、色々と考えを抱き……

(嘘でしょ? あれ喰らって無傷なんて……真司兄、カッコイイよ!)

(あたしの最大出力だったのに……でも、真司兄さんが無事で良かった……)

 直接対峙した者達は、初めて見た龍騎の力を前に感動と安堵を覚えていた。

「……もうこれでいいだろ? 俺、風呂入りたいんだけど……」

 そんな中、さっさと変身を解いて真司は告げた。その表情はかなり疲れていた……



おまけ

「は~……良い湯だな」

「おっ邪魔しま~す!」

「へ?」

「真司兄! 背中流したげるよ~」

「な、何でセインがここにっ?!」

「だ、だから止めようって言ったのに……」

「ディエチまで?! てか、少しは隠せ!」

「あ、真司兄ってばスケベ。あたしの体そんなに見ないでよ~」

「だから……あたしは……」

「だ、誰かセインを止めてくれ~!!」



セインはその後やってきたチンクとトーレに鎮圧され、ディエチは軽いお叱りだけですみました。
真司? ……顔を真っ赤にしたトーレとチンクに何故か成敗されました。




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やりたかった事は、翔一とはやての出会いと五代が何故月村家で世話になっているかです。

え? 真司の風呂だろって? ……ソンナハズナイデスヨ?

しかし、さり気無く原作よりも早くセインとディエチが起動した事がどんな影響を与えるのか。



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 10 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/11/03 16:54
「えっと……夜天の書やと呼び辛いから……リインフォースはどうや?」

「……管理者権限により、名称変更確認しました。はい、私はリインフォースですね、主」

「祝福の風、ね。良い名前だと思うわ、はやてさん」

「いや、そんなんでも……リンディさん達も呼び辛いやろ思て」

 アースラ艦内 艦長室。はやてを加えた今回の関係者全員が見守る中、管制人格が起動し、はやての提案により名前が付けられる事となった。
 そして、その命名により、リインフォースから夜天の書のバグについての説明がなされた。闇の書と呼ばれる事になった原因である防御プログラムは、リインフォースがはやての指示で少しではあるが手を出せるとの事。だが、はやての体の事等の根本的な解決には至らないので、一度完成させてから防御プログラムを完全破壊してほしいとの事。
 万が一に備え、守護騎士システム等は切り離し、はやての元に残るようにするともリインフォースは言った。

 それを聞いて、ユーノが疑問を浮かべた。それは、先程のリインフォースの話で触れられなかった部分。そう、管制人格であるリインフォースは、厳密には守護騎士ではない。ならば、防御プログラムを破壊した後、リインフォースはそうなるのかと。

「大丈夫だ。私なら何とでもなる」

「でも……貴方の存在を考えると何かまだある気がするんだ」

「何かって……何なの、ユーノ君」

 どこか不安そうな表情のユーノに、なのはも言いようのない不安を感じてそう尋ねた。それにユーノは、あくまで予想だけどと前置いて言った。

「そんな簡単に事が終わるなら、とっくに闇の書なんて物は消えているはずなんだ。でも、何度も闇の書は現れては、恐ろしい災いを起こしている。
 つまり、バグは簡単にどうにか出来るものじゃない。違いますか?」

 ユーノの声にリインフォースは何も言わない。だが、そのどこか諦めたような表情が何よりの証拠だった。
 それを見て、はやてが信じられないというように呟いた。

「……リインフォース」

「賢いな、少年。そうだ……おそらく私がいる限り、防御プログラムは再生する」

「?! じゃあ……っ!」

「私を最終的には消滅さ「大丈夫!」……何?」

 息を呑んだフェイトの言葉に、リインフォースが答えようとしたのを遮る声がした。その声の主に全員の視線が集まる。それは五代だった。いつものようにサムズアップを見せ、その表情は笑顔。だが、それに面食らっているのは、初対面のリインフォースとはやてのみ。
 他の者達は、それにやはりといった顔をし、一部等は呆れつつ笑みを浮かべ、なのは達や翔一は同調するかのように笑みを見せる。

「リインさんは死にたくないですよね?」

「……それは……」

「死にたくないなら、死なせない。殺される理由なんてない。絶対、助けますから……俺達みんなで!」

「そうです。俺達が力を合わせれば、必ず何とかなります!」

「「だから大丈夫っ!」」

 五代と翔一の二人が見せるサムズアップ。それに言葉を失うリインフォース。はやても同じように言葉を無くしたが、何かに驚いて周囲を見渡した。そう、二人以外にも……。

「な、なのはちゃん達まで……」

「にゃはは、これ五代さんといるとクセになっちゃって……」

「うん。でも、不思議とそう思えるんだ。大丈夫って……」

「きっと、五代さんがやるからだよ。大丈夫。その想いがこれに込められているんだ……」

 なのは達三人の言葉にはやてが何故か納得している横では、リインフォースが同じ仕草をしているシグナム達に驚いていた。

「私達も同じだ。五代や翔一が、仮面ライダーがいる。それだけで……そう思えるのだ」

「ええ。決して何事にも負けない。そんな気持ちにね」

「あたし達もなのは達もいる。それに仮面ライダーが二人もいんだ。怖いもんなんかね~よ!」

「……ガラではないが、そういう事だ」

「お前達……そこまで……」

 そう言いながらリインフォースも何故かそれを見ていると、心が不思議と穏やかになっていく印象を覚えていた。絶対の安心感。必ず、絶対上手くいく。そんな想いがそれから伝わってくるような感じを。

 そんな二人と違った意味で驚いている者がいた。クロノである。彼はサムズアップをしていなかったが、エイミィやリンディはやっていた。それは彼も予想していた。そう、彼が驚いたのはそこではなく、ある二人までがそれをしていたからだ。

「まさか君達まで……」

「その……えっと……」

「ま、まぁ意思表明ってやつかな?」

 アリアとロッテの二人は、何か戸惑いながらもその行為を止めようとはしない。ロッテの言葉を聞き、クロノ達はリインを助ける事と取ったが、実際は違う。二人は決意したのだ。犠牲を出さずにこの事件を終わらせる。そのために、グレアムが思い描いた計画とは違うものを支える事を。
 サムズアップと笑顔で戦う男と、家族として全力ではやて達を助けようとする男。その二人の心に惹かれた故に……

(お父様……この罰は必ず受けます。だから……許してください。初めての我侭を!)

(信じてお父様。必ずこいつらなら……仮面ライダーならやってくれるよ!)

この瞬間、アースラにいる者達の想いは一つになった。本来ならば有り得ない流れ。
それがもたらすのは、果たして希望か絶望か……




 その日、真司は困っていた。というのも、いつものように訓練をしてほしいとチンクにせがまれたのだが、同じようにセインが遊んで欲しいと言ってきたからだ。
 真司としては、チンクの日課である訓練に付き合ってやりたいが、妹分の頼みを聞いてやりたいとも思い、悩んでいたのだ。

(チンクちゃんとの訓練に付き合ってあげるべきだよなぁ……いや、でも、セインは妹みたいなもんだし……)

 そんな風に悩む真司を見て、チンクはセインへ視線を送る。それはどこか非難めいたもの。だが、それを受けてもセインは、どこ吹く風とばかりに視線を送り返す。
 その視線は、別に何も悪い事していないと言わんばかり。そんな二人に気付かず、真司は未だに悩んでいた。だが、ふとその悩みに答えが出る。

「そうだ! じゃ、訓練の方法を変えよう。模擬戦じゃなくて俺の世界の遊びにしてさ」

「遊びだと……?」

「真司兄、どんな遊び?」

「あのな……」

 これが、ジェイルラボ始まって以来の大騒ぎとなるとは、この時誰も想像しなかった……



「何? 新しい訓練法?」

「そうだ。だが真司が言うには、人数が多くなければ訓練にならんらしくてな。トーレにも声を掛けてくれと」

 トレーニングルームで軽く汗を流していたトーレ。そこへチンクが現れて告げた内容に、その表情が訝しむようなものへと変わる。真司の性格を知るトーレにしてみれば、何かあるとすぐに模擬戦をサボりたがる真司が、自ら訓練をするなど考えられなかったのだ。
 だが、それをチンクも良く知るはずと思い直し、まずは詳しく聞く必要があると尋ねるのだが……

「……どんなものだ?」

「詳しくはまだ知らん。だが、普段の模擬戦とは違う内容だ。セインはディエチを誘いに行った」

「……何か嫌な予感はするが……いいだろう。訓練場に行けばいいのか?」

「ああ。そこで待っていてほしい」

 返ってきた言葉に一抹の不安を覚えるものの、チンクの言葉に頷き、トーレは訓練場へ向かって歩き出した。その背中を見送ってチンクは小さく呟いた。私は嘘は言ってないぞ、と……



「真司兄さんが?」

「そうなんだよ。楽しくて訓練にもなるんだってさ。ね、やろうよディエチ」

 真司の洗濯物を干していたディエチだったが、セインの言葉にその手を止める。真司は、あまり訓練が好きではないとディエチは知っているのだ。そんな真司が、本当に訓練になるようなものをしたがるだろうか。そう考えたのだ。
 それをセインも理解しているからか、どこか楽しそうに笑みを浮かべて告げた。

「何かさ、ウー姉達も誘ってやるんだって。みんなでやるなんて面白そうじゃない?」

「……確かにそうだけど……」

「ね! やろ~よ、ディエチ。きっと楽しいって!!」

 ディエチの手を掴んで力説するセイン。それが何かおかしくてディエチは苦笑しながら頷いた。

「じゃ、洗濯終わったら訓練場ね。待ってるから」

「うん、分かった」

 元気良く去って行くセインを見送り、ディエチは首を傾げる。一体大勢でやる訓練みたいな遊びって、何なんだろうと考えて……



「私達も?」

「参加ぁ?」

「そ! どうせならみんなでやろうって。だってさ、姉妹だろ? たまにはみんなで何かしないと」

 書類整理等の事務仕事を片付けていた二人の前に現れた真司は、新しい訓練法を検証してほしいと言って二人の参加を求めた。無論、二人は戦闘用に作られてはいないので、訓練などする必要はない。だが、真司の姉妹全員で何かという言葉には、確かに思う事もあるもので……

(真司さんの言う通り、今後の計画のためにも、妹達とは色々と意思疎通をする必要があるわね……でも……)

(シンちゃんの考案した訓練法ねぇ~……みんなでするってところにも興味はあるけど……どうしたものかしら……)

(やばいな。もう一押ししないと、この二人は動かせないぞ……うしっ!)

 何かを悩んでいるように見える二人を動かすため、真司は奥の手を出す事にした。それは何かと言うと……

「訓練の勝者には、今日の晩飯注文権が!」

「「やるわ」」

 即答だった。その二人の声に真司は隠れてガッツポーズ。そう、既にジェイル達は栄養食には満足出来ず、真司の料理を密かな楽しみにしているのだ。
 しかも、その注文権などは、未だに食べた事のない料理を頼む絶好の機会。ま、ここのところの二人の密かな悩みは、体重増加だったりするのだが……

(最近運動不足だったし……丁度いいわね。そう、これは体のためよ。決して食事目当てではないわ……何頼もうかしら?)

(まぁ、私がやるからには勝利確実。少しは体も動かさないとねぇ。体調管理も重要だし……何食べるか決めておかないと)

 こうしてウーノとクワットロも参加が決定して、真司は心から笑顔を見せる。そして、その視線をジェイルのいる部屋へ移し呟く。

―――後はジェイルさんだけだ……



 それから五分後、訓練場にラボにいる全員が揃っていた。何故かやる気十分のジェイル、ウーノ、クワットロ。待ちきれないといった表情のセイン。どこか不安や疑問が晴れない感じのトーレとディエチ。そして、どこか嬉しそうな雰囲気のチンク。
 ちなみに、ジェイルは言うまでもなく、サバイブを条件に参加しました。それと、こっそり注文権も。
 そんな七人を前に、真司は嬉しそうな笑顔を浮かべて頷いた。

「じゃ、これからみんなでやるのは、鬼ごっこです」

「「「「「「「鬼ごっこ?」」」」」」」

 真司の口から告げられた言葉に、七人の声が重なる。それに真司はやはりという顔をして、鬼ごっこの説明をした。誰か一人が鬼となり、残りの者は隠れたりして鬼から逃げるもの。鬼に体を触られたらその場で終わり。制限時間内に鬼は全員捕まえたら勝利。逃げる方は、時間内逃げ切れれば勝利となり、もし勝者が複数いれば、日にちを分けて注文に応じると真司は告げた。

 そして、決めたルールは変身とIS禁止。後、攻撃もなしで、隠れていいのはラボの一部限定。制限時間は一時間。その間、ただ知恵と体力のみで勝利を目指す事となった。もし反則行為をした場合は、一週間栄養食と真司が告げると、七人それぞれに大小の戦慄が走った。

「じゃ、鬼はじゃんけんで決めよう」

「「「「「「「じゃんけん?」」」」」」」

「あ~、これもか……」

 真司、じゃんけん説明中。全員が石が紙に負けるのは理解出来ないと言い出し、真司が説明に困り一時中断。結局、真司の世界では、それでみんな納得してるとごり押し、説明終了。
 そしてじゃんけんの結果、鬼は真司となり、ジェイル達はそれぞれ隠れるために去って行く。律儀に目を閉じ、三十数える真司。そして、目を開け走り出す。

「絶対、見つけてやっからな」



 それからはもう騒々しいにも程がある程だった。真司が最初に見つけたのはトーレ。隠れるのは性に合わんと真司を待っていたらしい。それを聞き、真司は肩透かしを食らった気分になったが、急いで追い駆ける。それを余裕を見せて逃げるトーレ。その逃走劇を遠目で眺め、チンクはどこか寂しい気持ちになり、真司の後ろから声を掛けた。
 それに気付き、目標をチンクへ変更する真司。だがチンクも素早く、中々追いつけない真司。そのままチンクは逃げ切り、真司は地面に大の字で転がった。

 そうして数分後、真司はおもむろに起き上がると、狙いをトーレやチンクのような運動系から、ウーノやクワットロの事務系へと変更し、動き出す。
 それを離れて見つめる人影二つ。

「これで終わりか。ったく、情けない……」

「……もう、私を追ってはこんか……」

 そうどこか寂しげに呟くトーレとチンクであった……。



「こないね……真司兄」

「そうだね……」

 一方セインとディエチは二人揃って入浴中。それというのも、セインの考えた作戦が原因。それは、真司に触られないようにすればいい。ならばどうするか。簡単だ。真司が体を直視出来ないようにしよう。
 そして、入浴と相成った。ディエチが同伴しているのは、真司に見つかった際、セインを取り押さえるため。前回の騒ぎで真司がとばっちりを喰らったのを、ディエチは繰り返さぬようにと。どこまでも兄想いのディエチだった。

「ね、ディエチはさ、真司兄をどう思う?」

「え? どうって……」

「あたしさ、真司兄に言われたんだよね。戦闘機人って言葉、あまり使わないでほしいって」

「セインもそうなんだ。あたしも言われた。戦うために生まれたんじゃない。みんな、幸せになるために生まれたんだからって」

 セインもディエチもその言葉を言われた時、何かが自分の中で動いたのだ。それは、ある意味で自分の存在を否定する言葉。でも、それに込められたものは、紛れも無い真心。戦うために生きるのではなく、幸せになるために生きて欲しい。その言葉の意味を考えるたび、二人は何故か心が苦しくなるのだ。
 自分達が生まれた訳、その理由。それらを理解しているからこそ、真司の言葉は痛い。創造主であるジェイルの目的。それを果たすための存在が自分達なのだ。

(真司兄に、計画の事は話すなってドクター達は言ってるけど……隠し事するのって何か嫌なんだよね)

(真司兄さんは何も知らずにドクターに手を貸してる。もし、あたし達がしようとしてる事を知ったら……嫌われるかな)

 元々ナンバーズには血の繋がりはない。故にその絆は歪だったのだ、本来は。だが、真司がそれを補うようにいた。血の繋がりどころか何の繋がりもない存在。それが何故か、いつの間にかこのラボの中心にいた。
 ジェイルやクワットロ等の気難しい者達とは、裏表ない言動や素直な性格で信頼を得て、トーレやチンクは、模擬戦や日常の他愛ない事で繋がりを作り、セインやディエチは兄と呼ばれたためか、熱心に世話を焼いてくれる。
 そして、その真司がそれらの出来事を他の者達へ話す事で、それを話題に食事時は盛り上がる。本当の家族のような構図が出来上がっていたのだ。

「……ディエチ、あたし決めた事があるんだけど……聞いてくれる?」

「何?」

「……もし、真司兄がドクターと敵対するなら……あたし、真司兄の味方する」

「っ?! それって……」

「だってさ! 真司兄は言ったんだ! 仮面ライダーになったのは、戦いを止めるためだって……あたし……真司兄と戦いたくないよぉ」

 立ち上がり、セインは涙を浮かべながらそう言った。まだ起動してたった五日。それでも、セインは元来の性格故か真司に強く影響されていた。積極的に関わったせいもあるかもしれないが、それ以上にセインが少女だったのも関係している。そう……

(あたし、誰が何て言っても真司兄を助ける。お兄ちゃんだもんね、真司兄は)

 それは兄妹愛なのだろう。だが、その裏には本人も知らない恋慕がある。今はまだ影すら見せぬ想いなれど、それは確かにセインの中に息づいている。
 そんなセインをディエチは見つめ、驚愕と同時に羨望の眼差しを送っていた。

(セインは自分の道を決めたんだ。あたしは……そんな事出来ないよ……)

 ジェイル達を裏切る事は出来ない。でも、真司と戦いたくないのはディエチも同じ。訓練では誰よりも強く、家事を共にしたり、色々な話をしてくれる優しく頼れる存在。それがディエチにとっての真司。
 故に分かる。セインの気持ちは。だが、ディエチはそれと同じ決断は出来ない。姉妹を敵にする事など出来ないのだ。それをセインも分かっているのか、目元を拭いながらディエチへ言った。

「大丈夫だよ。時間は掛かるだろうけど、あたし達で、何とか真司兄とドクター達を敵対させないようにしよう」

「……出来るかな?」

「う~ん……まぁ確かにかなり厳しいとは思うけどさ……やるしかないでしょ」

「そうだ、ね。やるしかないね」

「あ、それとさっきの話は」

「分かってる。誰にも言わないから」

「えへへ、よろしく~」

 そう言ってセインは浴槽へ入り直す。やや冷えた体に温水が心地良い。そう感じてセインは笑みを浮かべる。そんなセインにディエチも笑みを見せ、目を閉じて静かに思う。
 いつか来るかもしれない最悪の事態。それを防ぐために、自分も出来る限りの事をしようと。

そんな風にゆったりする二人だったが、この後、衣服が脱衣所にあるのを真司に見つかり、呆気なく失格となった……



 ジェイルの研究室。そこに真司はいた。彼は思いついたのだ。ここなら、ラボのどこに誰がいるか良く分かるのではと。

「えっと……確かこれで……お、出た出た」

 モニターが複数表示され、その一つ一つに目を向ける真司。すると、その内の一つに、話し合うウーノとクワットロの姿があった。何を話しているのか気になった真司は、そのモニターをメインへ変更しようとして、コンソールを操作しようとしたのだが……

「あれ? どれだっけ……?」

 操作が分からない。いつもウーノやクワットロが手軽にやっていたので、自分にも簡単に出来るだろうと踏んでいたのだが、そこは素人の考え。適当にやれば出来るだろうと、真司が何かのボタンを押そうとした瞬間―――何かがその手を止めた。

「それはダメだよ!」

「おわっ!? ジェイルさんかぁ……びっくりした」

 物陰に隠れていたジェイルが飛び出し、真司の手を押さえたのだ。それに驚く真司だが、相手がジェイルだと分かると安心し、自分が押そうとしていたボタンについて尋ねた。それにジェイルが答えたのは、それは万が一の時用の証拠隠滅システム。つまり自爆装置の起動スイッチだと言った。

「そ、そんなもん本当にあるんだ……」

「そりゃあそうさ。ここのデータを……悪用されたら不味いしね」

「なるほど」

 どこか皮肉っぽく笑うジェイルに真司は何も疑わずに頷いた。そして、その瞬間何か思い出したようにジェイルの手を掴んで言った。

「ジェイルさん、失格だから」

「……今のは無しに……「無理」……だろうねぇ……」

 容赦ない真司の言葉に、どこかがっかりしながらジェイルは肩を落とした。この後、ジェイルはウーノ達を捕まえに行った真司を見送り、トボトボと訓練場へと歩いていくのだった……



「……じゃ、私が勝ったらクワットロの料理も注文するわ」

「はい。なら、私はウーノお姉様のものを……」

 そう、二人が話していたのは勝利後の取引。どちらが残れば互いの注文を頼める。そのため、いざという時にはより逃げられる可能性の高い方を逃がそうと。そんな話し合いをしていたのだ。
 そして、取引成立と二人が不敵に笑う。この時、二人が安全を考慮して物陰に隠れていなければ、結末は変わっただろう。しかし、残念ながら今回はそれが裏目に出た。

 二人の肩が同時に叩かれた。それに二人は何かと思い振り向いて―――固まった。

「ウーノさんとクワットロ、失格」

「どうしてここが……」

「分かったの……」

 信じられないとばかりに呟く二人。それに真司は先程の出来事を告げ、二人を驚かせた。確かにラボの施設の使用は禁止されていなかった。それを真司は思いつき、行動に移したのだ。その機転と発想に二人は改めて真司の凄さを知った。

(まさかそんな発想へ行き着くなんて……真司さんってたまに恐ろしいのよね……)

(まさかシンちゃんに知略面で負けるなんて……でもぉ、これで次回は私のか・ち……)

 どこか感心したような二人に、真司は笑みを浮かべ「俺も中々やるだろ?」と尋ねた。それに二人は少し笑みを浮かべて頷いた。その反応に笑顔でガッツポーズを取る真司。そんな真司を二人は微笑ましいものを感じ、微かに笑う。
 こうして、残りはトーレとチンクだけとなったのだが……



「え~、それでは結果を発表しま~す」

 訓練場に響き渡る真司の疲れた声。その場にいる者達は、そんな真司にそれぞれ苦笑。結局真司はトーレとチンクに逃げ切られ、最後の最後までくたくたになるまで走り続けていたのだ。
 その光景を五人は眺め、微笑んでいたりしたのだが。

「勝者、トーレとチンクちゃん。で、勝者のご褒美として、今日の晩飯注文権が与えられま~す」

「注文、か……何かあるか、お前達」

「ドクター、私は特にありませんので、どうぞご自由に」

 チンクはセイン達へ、トーレはジェイルへとそう振ったが、そこにいた全員が揃って首を振った。それは二人の権利だから、二人が決めるべきだと真司も続けた。
 それに二人は困り顔。だが、このままでは埒が明かないと思ったトーレが言った。

「なら、以前チンクが手伝ったアレだ」

「アレか。確かにアレならいいな」

 どこか嬉しそうに頷くチンクを見て、不思議そうなセインとディエチ。そんな二人にウーノが笑みを浮かべて告げた。二人が起動する少し前、真司を手伝ってチンクが一緒になって作った料理の名を。

「実はね……」



その日、ジェイルラボに食欲をそそる香りが立ち込めた。香辛料をふんだんに使った本格的インドカレーと、家庭的な日本カレーの香りが。
そして、この日食べたカレーの美味しさに感激したセインが、一週間に一度はカレーがいいと言い出し、カレーのレギュラー化が決まる。
その後、カレーは後のナンバーズ達にも好まれ、セインは真司のお手伝いからカレーだけは任されるまでになるのだった……



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やりたかった事は、それぞれの影響力の大きさ。知らず知らずで影響を与えるのが仮面ライダー達。

そして、それは必ず良い方向へと世界を動かす力と変わる。そんな感じの話。

次回でクウガ・アギト組は大きな動きがあります。龍騎はいつもと同じかな?



[22476] 【一発ネタ】Masked Rider in Nanoha 11 (クウガ・アギト・龍騎)
Name: MRZ◆a32b15e6 ID:c440fc23
Date: 2010/11/07 06:02
「レイジングハート・エクセリオン」

「バルディッシュ・アサルト」

「「セットアップ!!」」

””セットアップ””

 その声に応え、待機状態から姿を変える二人のデバイス。そう、シグナム達のデバイスのように『カートリッジシステム』を搭載し、生まれ変わった愛機。それがレイジングハート・エクセリオンとバルディッシュ・アサルトである。
 それを展開し終えたのを見て、はやてがリインフォースへ視線を送る。それに頷き、周囲に向かってリインフォースが告げる。

「では、そろそろ始めるぞ」

 その声に全員が頷く。そして、シャマルが旅の扉と呼ばれる魔法を展開する。その相手はエイミィだ。
 既に蒐集も終わりに近付き、残すは二頁と半分。それを埋めるため、エイミィが自分を蒐集させる事を申し出たのだ。それなら完成の時期を自分達で決められるからと。
 それにクロノが猛反対した。いくら危険が少ないとは言え、何が起こるかわからない。それに、残りが少しなら魔法生物でも十分だとも。

 そのクロノに全員が驚いていた。常に沈着冷静を心掛けるクロノ。それがまるで感情をむき出しにして、エイミィに反論したのだ。それにエイミィも驚くも、何故か嬉しそうに笑みを浮かべて言い返した。
 誰かが疲弊する事無く、蒐集する事が出来ないのは、防御プログラムと戦う際、致命傷になるかもしれない。だからこそ、大した魔法も使えない自分が適任なのだと。
 それに尚も反論しようとするクロノへエイミィは念話で告げた。

【もういいよ。クロノ君の気持ちは伝わったからさ……ありがとう】

【……そんなんじゃない。僕達には君の管制が必要だからだ】

 どこか照れるような拗ねるような答え。それを聞き、エイミィは心から笑みを浮かべるも、それを隠すように全員に告げた。

「あたしもみんなと一緒に戦うよ。隣じゃなく、このアースラからだけど。みんなの笑顔のために、ね!」

 それに全員が頷き、笑顔とサムズアップを返す。クロノもやや憮然としながらも、同じようにサムズアップを返す。こうして、現在に至るのだ。
 現在アースラはとある無人世界の衛星軌道にいる。そして、五代達はその無人世界で待機。作戦はこうだ。まず、エイミィから蒐集し、完成した闇の書をはやてがアクセスし、リインフォースと共に守護騎士プログラムなどを切り離す。そして、それと並行してなのは達により、防御プログラムへの攻撃を開始。はやてとリインフォースが闇の書から解放されるために、魔力ダメージで大ダメージを与える。
 そして、解放されたはやてとリインフォースを加え、おそらく独立するであろう防御プログラムを撃破し、そして、とどめは防御プログラムのコアをクウガが封印する。

 その際、起きる可能性の高い大爆発を考慮し、五代が無人世界を希望したのだ。誰にも何にも被害を出さずに済む場所として。
 それに応え、リンディ達が見つけ出したかつて資源採掘に使われた世界。今や住む者もなく、ただ荒れ地が広がるのみ。それを見て、五代は真剣な表情で頷いたのだ。
 ここなら、思いっ切り戦える、と。

「そういえば、どうして翔一君はバイクを?」

「あ、これですか。きっと空中戦になると思って持ってきたんです。リンディさん達も同じような事聞いてきましたけど」

 五代は隣にいる翔一にそう尋ねた。翔一の傍には、一台のバイクがある。この世界に来た時、乗っていたものだ。五代は翔一の答えに疑問を感じるものの、それを尋ねる事は出来なかった。
 感じたのだ。何かが地の底から這い出るような悪寒を。

「これで……完成だ」

 そうリインフォースが呟いた瞬間、闇の書が鈍く輝き出す。そして、リインフォースとはやてを包み込み、その足元にはベルカ式の魔法陣が浮かび上がる。
 それを見て、五代と翔一は揃って構える。それは、彼らが戦う意志を表す動作。

「「変身っ!」」

 二人の想いに呼応し、ベルトが光る。そして、二人の体を変えていく。それが終わった時、二人を見ていた全員が感じた。絶対に勝てると。その悲劇をここで終わらせるんだと。
 そんな想いを与えた二人のヒーローは、リインフォースと同じ姿をした闇の書の闇とも呼ぶべき存在を見つめていた。

「いいか! まずは相手に大ダメージを与える。サポート組は支援に徹し、前線組は攻撃に集中しろ!」

 クロノが先陣を切るように手にしたデバイスを構える。そのデバイスの名は”デュランダル”。アリアとロッテがグレアムから与った、対闇の書用のデバイスだ。
 グレアムはリーゼ姉妹から心変わりとその理由を聞かされ、何も言わずにデュランダルを渡した。その顔は何か憑き物が落ちたように清々しく、二人はそれを見て、改めて思ったのだ。
 誰よりも犠牲を出す事を嫌っていたのは、グレアムだったのだと。

「ロッテ、頼んだわよ!」

「任せろって! 行くよ、翔一!」

「はいっ!」

 ロッテに続けとアギトもバイクに跨る。それにバイクが姿を変え、マシントルネイダーと呼ばれるものへと変わった。それに周囲が驚き、防御プログラムさえ僅かに動揺していた。
 更にそこからマシントルネイダーは形を変え、アギトが飛び上がると同時にスライダーモードと呼ばれる飛行形態へと変わる。

「嘘っ?!」

「空飛ぶバイクかよ!?」

 目の前で見ていたリーゼ姉妹が声を上げる。アギトはそんな二人に構わず、視線をクウガへ向けた。それだけでクウガは何かを悟った。

「そうか!」

 そう言ってアギトの後ろへ飛び乗るクウガ。それに頷き、アギトはマシントルネイダーを上昇させる。その速度は周囲が想像していたよりも早く、クウガだけでなく、その場にいる誰もが驚きと希望を抱いた。

「よし、超変身っ!」

 クウガは今の姿のままでは戦いにくいと判断し、青いクウガへと変わった。

 ドラゴンフォーム。跳躍力に優れ、俊敏さは全フォームの中でも断トツ。その反面、筋力は落ちるため、専用武器『ドロゴンロッド』を使い戦う。
 長き物を手に、邪悪をなぎ払う水の心の戦士である。

「五代雄介っ! これを使え!」

「っと、ありがとうクロノ君。これ、使わせてもらうよ」

 そして、クウガにクロノが渡したのは、クロノの本来のデバイス”S2U”。それを待機状態から変化させると、その形状が青い棒へと変わる。
 そして、その上下が伸びたのを見て、クウガは頷く。これで準備は整ったと。

 視線を戻せば、シグナムとフェイトを中心になのはとヴィータが的確にダメージを与えている。

「五代さんっ!」

「分かったっ!」

 だが、それでもまだ大きな一撃は加えられない。そこへクウガが虚を突いて飛び掛った。

「おりゃあ!!」

「ぐっ……」

 スプラッシュドラゴンと呼ばれる一撃。突き当てられたロッド。それを離し、クウガは落下していくものの、即座にアギトがそれを助けに回る。だが、その間クウガの視線は防御プログラムへ注がれていた。
 腹部を押さえている防御プログラム。そして、その手がゆっくり離される。そこには―――。

「……よし」

 封印の文字が浮かび上がっていた。それを確認し、クウガは小さく頷く。更に防御プログラムはその文字に苦しんでいた。まるで何かに抗おうとするように。
 それを見たユーノが叫ぶ。やはり防御プログラムは闇の存在になったため、クウガの封印エネルギーに弱いのだろうと。それを聞き、全員に希望の光が灯る。本来ならば、きっと苦戦した相手。それが天敵とも呼べる存在がいる事で、絶望どころか希望さえ持てる。

「五代さん! 効いてますよ!」

「うん。なら、もう一度行くよ!」

「分かりました! 俺が必ず着地地点に回ります」

「お願い!」

 そんな周囲の空気を感じながら、二人のライダーは互いのやるべき事を確認し合い、再び行動開始。それに負けるなとなのは達にも気合が入る。

「ディバイン……」

「サンダー……」

”バスター”

”スマッシャー”

 桃色と黄色の輝きが防御プログラムの動きを止める。その隙を見逃す程、ベルカの騎士は甘くない。

「レヴァンテイン!」

”シュランゲフォーム”

「アイゼンっ!」

”了解”

 連結刃と呼ばれる鞭のような形態へ変わるレヴァンテイン。それを駆使し、防御プログラムを拘束するシグナム。そこへ小さな鉄球を魔力でコーティングしたものを浴びせるヴィータ。
 それを喰らい、ややよろめく防御プログラム。そこへ青い光のバインドと緑の光のバインドが現れ、その体を再び拘束した。

「逃がさん!」

「五代さん、今です!」

 ザフィーラとユーノのバインドを何とか破壊しようとするも、異なる術式のバインドを同時に破壊するのは困難。だが、それも瞬く間に破壊した防御プログラムだったが、その僅かな時間さえ―――。

「おりゃあぁぁ!」

「かはっ……」

 クウガにとっては好機。三十メートルを一気に飛び上がる跳躍力を活かし、視界の下から突き上げるようにドラゴンロッドを突き立てる。
 そして、そのまま勢いを殺さず、クウガは防御プログラムと共に上空へ。そして、そこに待っていたのはクロノ。

「喰らえ!」

”ブレイズカノン”

 得意の砲撃魔法を叩き込むクロノ。器用にクウガが離れた瞬間を逃さずに放つところに、彼の優秀さが光る。
 それのダメージと封印エネルギーが防御プログラムを襲う。先程よりも文字が消えるのも遅い、その痛みに苦しむ防御プログラム。それを見て、誰もが内心で苦しんでいた。何せ外見はリインフォースなのだ。頭では割り切っていても、優しい彼女を苦しめているように見える光景に、クウガ達は心を痛めていた。

【なのはちゃん達、聞こえとるか! こっちは終わった。早くこの子を止めたって!】

 はやてからの作業完了の声。それに気持ちを入れ替えるなのは達。それを見て、クウガ達も状況を把握し、頷き合う。

『魔導師組はとどめに備えて準備! 騎士達と翔一さんで、雄介さんと共に彼女へ攻撃を続けて、もう一度だけ封印攻撃を仕掛けて!』

 エイミィの指示でそれに全員が了解の意志を示す。なのはを始めとした魔導師達は、この後戦う事になるだろう防御プログラムへの対策のため、簡易的な打ち合わせ。クロノのデュランダルの氷結魔法で動きを止め、その間になのはとフェイトがそれぞれでダメージを与えつつ、大威力魔法の準備。ロッテは二人の護衛を務め、ユーノとアルフ、アリアの三人はシャマルと共に、クウガのとどめと手助けするための転送魔法を担当。
 実はこれが今回の一番の要。というのは、クウガの目の前に転送するのではなく、クウガが放つ一撃へ当たるように転送するのだ。そのタイミングはシビアだが、再生能力が高いと思われるコアを叩くには、刹那の間さえ惜しいのだ。

「いいな? 君達に掛かっているようなものだからな」

「分かってるよ。僕らだって、やる時はやる!」

「そうだよ、少しは信じな!」

「私達が絶対五代さんを、仮面ライダーを手助けします!」

 三人の言葉に頷くクロノ。なのはとフェイトもそれを聞き、笑みを浮かべた。その視線の先では、クウガがもう一度スプラッシュドラゴンを炸裂させていた……



「どうだ?」

「やったか?」

 ヴィータとシグナムが揃って防御プログラムへ視線を向ける。その途端、はやてが弾かれるように現れた。それに驚くシグナム達だったが、即座にアギトがそれを受け止め、安堵した。そして、ザフィーラが何かを見て叫んだ。

「見ろ! 奴の体を!!」

 その声に全員の視線が防御プログラムへ向く。見れば、その周囲から紫のような色の暗いオーラが滲み出している。その原因がクウガの付けた文字である事は、誰も疑っていない。そう、防御プログラムの腹部にはその文字がはっきりと浮かんでいたのだから。
 だが、その光景に一番最初に違和感を抱いたのはクウガだった。

(何でリインさんのままなんだ……?)

 本来であれば、未確認達は文字をきっかけに一様にひびを生じ、爆発していった。だが、今回はそれがない。それは彼らにあった装飾品がないからだと、クウガは知っている。
 だが、リインフォースが解放されないのは不自然なのだ。文字は鮮明に浮かんでいる。でも、その後に続く事が起こる気配がない事に、クウガは一人言い知れぬ不安を抱いていた。
 一方で、アギトもまた不安を抱いていた。それは、防御プログラムから滲み出しているオーラにある。そのオーラを、彼は見た事があったのだ。

(あれは……”邪眼”と同じものだ……)

 そう、彼がこの世界に来る前に戦った邪眼。それが復活した際、全身から滲ませていたのがそれだった。

「おかしいんや! リインが中に何かおるって言って、そいつがどうも切り離しを邪魔しとるんよ!」

 そのはやての言葉に全員が戦慄する。視線の先では、依然防御プログラムが苦しんでいる。だが、その雰囲気からクウガとアギトは何かを感じ取っていた。

((何かが……出ようとしてる……))

その予想は二人の想像を超える形で当たる。それは、本当の”闇”との戦いへの幕開け……



ついに始まった闇の書の闇との決戦。
なのは達の協力やクウガの力により、防御プログラムを追い詰めたに見えたのだが、はやての言葉に不安を抱く二人の仮面ライダー。
果たして、闇の書の闇に潜むモノとは? 本当にリインフォースを助ける事が出来るのか?



 いつものように流れる時間。穏やかな日々。それが永遠に続くと誰もが、いや彼だけはそう思っていた。これは、そんな頃の話……

「次に目覚めるのは、セッテだっけ?」

「そうだよ。七番目だからね。でも、どうもドクターがセッテとオットー、ディードはクワ姉に任すんだって」

 真司の言葉に笑って答えるセイン。だが、後半はどこか残念そうだった。それを聞いて、真司も同じように残念そうな表情を浮かべる。
 きっと、クワットロが調整を行なう事になった以上、セッテ達の起動はおそらく遅くなるだろうと思ったからだ。クワットロは完璧主義者。自分の納得いくまで三人を起動させないだろう。

「……俺、少しクワットロに言ってみる」

「真司兄……」

「だってさ、やっぱ家族は多い方がいいって。楽しいし、賑やかだし。俺もセインやディエチみたいな妹が出来て嬉しかったしさ」

 だから、早めに起こしてくれるよう頼んでみる。笑顔でそう言って、真司はセインへ手を振って走り出す。行き先は、ナンバーズの調整室。この時間なら、ジェイルかクワットロがいるはず。そう思って真司は走る。
 その背中を見送って、セインは嬉しそうに小さく呟く。

―――やっぱりあたし、真司兄のそういうとこ好きだよ。



「セッテちゃんを早めに出して欲しい?」

「そう。何をするのか知らないけどさ、基本的な事はみんな同じなんだろ? だったら―――」

「シンちゃ~ん……セッテちゃん達は、私がドクターに任されたの。つまりぃ~、私の好きにして、い・い・の」

「ふざけるなよ! 妹だろ!? 早く起こしてやりたいって思わないのかよ!」

 そんなクワットロの言い方に、いつもなら真司は怒る事無く何か返すのだが、今回はその発言に珍しく怒りを見せた。声を荒げ、視線は確かな怒りを宿し、クワットロを睨みつけている。
 その鋭い視線には、さしものクワットロも気圧され、一歩後ずさる。

 その後も真司は叫んだ。確かにクワットロ達は普通の人間とは違う体だけど、それでも心があるのだから、早く起こしてやって世界を見せてやりたいと。楽しい事や嬉しい事、辛い事や泣きたい事も全部ひっくるめて、感じさせて、教えてやりたいんだ。そう真司は言い切って、クワットロに告げた。

「……少し言い過ぎたかもしれないけど、俺、この話に関しては絶対譲らないから」

 そう告げて、真司は部屋を出ようと扉へと向かう。その後姿を黙って見つめるクワットロ。きっと、昔の自分ならば真司の言葉に反論していたか、認めた振りをして流していただろう。
 だが、今彼女が考えているのは、そのどちらでもない。

(”人らしさ”なんて戦闘機人には不要。感情を削ぎ落とし、機械に近い存在にする……それが私のプラン。でも……)

 視線は扉の前で何故か止まっている真司へと向けられている。

「だけど……クワットロがジェイルさんに任されたのも事実だし……俺、納得してもらうまでまた来るからな」

 そう告げ、真司は部屋を出て行った。その言葉を理解し、クワットロはやや沈黙したものの、すぐに笑い出した。それは嘲笑うでも馬鹿にするのでもなく、本当に心から可笑しくてしょうがないというように。

(”心”……か。それが一番不要って思ってたのに、私が笑ってるのもその”心”のおかげなのよね。もう、シンちゃんのせいよ、私が狂ったの)

 そんな事を考え、クワットロは目元を拭う。どうやら笑い過ぎて涙が出てきたようだ。そう思い、クワットロは扉へ向かって告げる。

「いいわ。シンちゃんがそう言うなら、セッテちゃん達は心を大切にしてあげる。その代わり、貴方が責任持って教育してね? シンちゃん……」

 そう告げて、クワットロは調整へ手を加える。先程まで組み上げていたプランを白紙にし、出来うる限り手を加えず”妹”達をありのまま目覚めるようにと。
 彼女は知らない。先程の涙が笑いから流れたものではなく、嬉しさから流れたものだと。妹達だけでなく、自分達全員を心から想った真司の気持ちに触れた事。それが彼女に流させた涙なのだという事を。
 ナンバー4、クワットロ。本来一番狡猾であったはずの彼女が変わった。そう、それはまさしく彼女の言った通り、真司が狂わせたのだ。戦闘機人ではなく、人として機能するように……



 この日から、クワットロは心無しか物腰が柔らかくなったと、セインとディエチは感じるようになる。それはチンクや真司も同じで、一体何があったのだろうと全員が首を傾げたが、クワットロはそれに悪戯っぽく笑うのみ。
 後に、ナンバーズ後発組(7以降)の中で姉の評判が言われるようになり、トップはチンクだったが、なんと二位はクワットロとなる。理由は一つ。からかいなどをしてくるが、自分達をきちんと見ており、的確なアドバイスやさり気無くフォロー等をしてくれる事だとか。

また一つ、運命が変わる。誰にも知られず、誰も知らず、世界の平和のために動く者がいる。
彼は知らない。自分がやがて来たる危機を未然に防いでいる事を。それを知る時、彼に待つのは別れか、それとも……


--------------------------------------------------------------------------------

続き。そして、ここから完全なライダー的展開となります。

クウガ・アギト組はまさかの敵の出現&A's終了まで突っ走る予定。龍騎は、いつもと同じですが、そろそろ動きも……

そして、予想を超えるような出来事が彼らを待ち受ける! ……予定。


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