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[22454] 【習作】思いつきで書いてみたSW2.0もの
Name: 陰撮◆0dccf62e ID:5b2ca10a
Date: 2010/10/25 01:55
D&Dの作品は何作品か有るのに

SW系の作品を見ないので、それなら自分で書いてしまえと筆を執った次第です

小説を書くのは初めてですので 至らない点が多々有ると思いますが、

よろしくお願いします。

なお、本作品には 作者の独自解釈 及び

オリジナル設定が含まれます。

それでも良いという方のみ 閲覧願います。



[22454] これが始まり
Name: 陰撮◆0dccf62e ID:5b2ca10a
Date: 2010/10/17 12:29
 
 さて、 突然だがちょっとした質問をしたい。

もしも突然 頭の中で 全く知らない誰かの声が聞こえたら、

あなたは いったい どのような行動を起こすだろう?

ただの気のせいだ 最近忙しくて疲れてるから そのせいだ なんて言って 笑ってごまかすだろうか?

あるいは、何かの雑音を聞き間違えただけだと 強引に納得する人もいるだろう

それとも、もっと深刻な事態を考えて 精神科に直行したりするだろうか?

そう、多分これらが一般的な考え方だろう。・・・あくまで日本と言う国の常識では・・・





これは、昔ちょいと聞いた話だが、海外ではこのような事態に遭遇した場合(もちろん異論は多々あるが)

「神様の声を聞いた」 「天使様のお告げがあった」 「先祖が何かを伝えてきた」

そんな系統の考え方をする人達が、それなりの数に渡って 存在するし、まわりの人々も ある程度は それを受け入れる傾向にあるらしい

もしも 日本でそれを言ったら、まず間違いなく 良くても変人扱い。

下手をすると 少々変わった色の救急車を呼ばれてしまうだろう。




ん?なんでいきなり そんな話をするのかって?

うすうす キミも気付いてるんじゃないか?

そう、

『今』

『まさに』

その事態が進行中だからさ!!





言って置くが、私は 生まれも育ちも 日本の、正真正銘の日本人だ。

名前は 小川 大地

年齢 28歳 

性別 男 

血液型はB型のRH+ 

それなりにに多趣味で最近は機械いじりに精をだしている 有り触れた とまでは言わないが

少なくとも『普通の基準』の範囲内にある 紛れもない一般人だと自負している。



念の為に言っておくが、おかしな宗教なんかにハマってはいない

当然 やばいクスリも手を出しちゃいないし、現実の壁を侵食する様な 並外れた妄想力を持っている訳でもない

今のこの状況 普段の私であれば 最初に挙げた3つの行動の内 どれか1つの行動をを選んでいる事だろう。

・・・しかし、そう、『しかし』私は今、その声が導くままに この足を進めている。

特に理由が有る訳じゃない、強いて言うなら『もうどうでもいいから、この不思議な事態に流されてみよう』

と、そんな所だろうか?

なんでそんな事考えているかって?




理由は簡単、今の御時勢 どこでもよく聞く話さ

苦労して就職した会社が 不況の煽りを受けて いきなりの倒産 再就職目指して活動するも この一年 成果は全くのゼロである。

貯金も底を突きかけて、どうしたものかと 途方に暮れていたこの年の暮れ 

しばらくの間 バイトでもして食い繋ぐか それとも、

・・・もういっその事
 
なんて考えて沈んでいた そんな矢先に この出来事だ。

・・・少々 ヤケになってるみたいだ

そうのように 今の状況を振り返って思う。

多分、この行動も現実逃避の一種なんだろう






前へ 前へと進みながら 色々な思考が 頭の中で過ぎ去っていく。

「頭の中で聞こえるにしては 声のする方向が分かるなんて 妙な話だ」

とか、

「しかし、この声は 何を言っているんだろか?全く聞いた覚えのない言語だ・・・」

「そういえば 反対方向へ すっとんで逃げる なんて選択もあったな」

なんて 考えた事柄をつぶやく、

知識の中に数多ある雑学が この症状は恐怖を何とか誤魔化そうとする 精神の一種の防衛本能だと認識させる

そして 自分のそんな状態を冷静に分析している そんな今の自分を認識して 

これは パニックの初期症状の一種だ なんて そんな考えが更に頭をよぎって、



















・・・私の思考は 完全に停止した。


















今の時刻は深夜に差掛かろうとしている。

そして現在地は 近所の寂れた児童公園である。

当然の事ながら 周囲に人の姿なんてありはしない。

いたとしたら、どのような意味にせよ 問題のある人達だろう

もっとも 『頭の中に声を飛ばす』なんて事をやってのける相手だ

それなりにヤバイ相手だろうと ある程度の覚悟はしてきた

そこに幽霊なり、宇宙人なりがいれば とっさに身を隠すなり、

あるいは、前述した様に 反対方向へすっとんで逃げただろう。



しかし 



私が そこで見付けたのは、



私が そこで遭遇したのは、










公園の砂場の中に うつ伏せになって倒れている 一人の少女の姿だったのである

















・・・ゆっくりと、思考能力が戻ってくる、同時に今の状況を頭が全速力で整理していく

こんな時間に こんな場所で 少女が一人 どう言った状況だ!?

懐かしのドッキリカメラ的な悪戯の可能性も考えたが(そうであってくれれば非常に有難いのだが)状況的に可能性はゼロに等しいだろう

現状から考えて 少女に何かの発作が起こったか あるいは(出来れば外れていて欲しいが)何かの事件に巻き込まれた可能性が高い



そんな考えが頭をよぎったが 気が付けば 私は少女に向かって全力で駆け出していた。




『少なくとも 私はこの状況下で少女を見捨てるような 最低の人間じゃなかった』





そんな ちっぽけな 他人からすればどうでもいい事実に安堵しながら数歩近づき 

私は とんでもない違和感に気付いた



周囲の景色に比べ 少女が 余りにも小さすぎるのである

それは 近づく程に現実味を増し、私が一歩を踏み出すごとに違和感は膨れ上がり
 
それが違和感どころの問題ではなく

あまりにも異常な事態なのだと そして自分は 間違いなく『それ』に直面しているのだと 

そのように はっきりと 確信した。












そう、


その少女は 人と呼ぶには余りにも小さすぎた

その少女には 背中に蝶を思わせる羽があった

その少女からは うっすらと しかし 確実に 白い光が溢れていた

その少女こそが 私に語り掛けていたのだと なぜか私は確信していた

その少女は 現実には存在しない 空想上の存在のはずだった
















少女の姿は











『妖精』












そう呼ばれる存在にしか見えなかった
































・・・ああ、なんて事だろう


・・・体から一瞬で力が抜けていく・・・

この世界には なんてマナが少ないのだろう 

お陰で体の自由がきかない 空も飛べず 魔法も全然発動しない、すぐ其処に、次元の裂け目は、帰る手段は目の前に有るのに・・・

この異世界には 流石に人々の信仰も 届かないのか 



今の体を維持する力は 最早 この アタシには残ってない

唯の一妖精のレベルにまで 体を弱体化させたが 時間稼ぎに過ぎないし それも あまり長くは持たないだろう。

最後の希望と魔力を混めて アタシの思念を アタシの声を アタシの周囲に飛ばす事にする 



<<ウインド ボイス>>

LV1 妖精魔法   消費MP 2


対象 半径5Mの空間 15人まで

射程 100M    形状 起点指定      持続時間180秒 
 

効果  対象の周囲に音を立てたり範囲内のキャラクターと会話出来る
     
    対象は術者の視界内で 屋外でなければならない





周囲にまばらに見える 石の柱(電柱)の一本を対象にして魔法を行使する

しかし、たった一度の魔法で 誰かが 気付いてくれる確立は 正直な所 ほとんど無いだろう



いや、

それ以前に こんなマナの枯渇した様なこの世界で 果たして生命有る存在は居るのだろうか?

・・・いけない 目が霞んできた、同時に 過去の出来事が次々と頭に浮かんでは消えていく・・・









数えるのも馬鹿馬鹿しい程の そんな太古の時代




『始まりの剣』の一つ ルミエルに触れ アタシは莫大な力を得た



長い時の中で 他の仲間達は 人々と交流し 絆を育み その文化を発展させていった



アタシは そんな 仲間たちとは違い 大自然と交わり 水や風 森の木々達と戯れて過ごした



そうして過ごしていく内に アタシの周りにも いつしか人々が集まりだし 共に過ごす様になっていった



やがて月日が流れ いつしか彼らは『人間』ではなく『エルフ』と呼ばれる存在になっていった。




しばらく後 アタシは 一人の神に恋をした しかし 彼には既に妻がいた


悩みはしたが、自分の本能と 直感に従い 彼を誘惑した


彼の妻とは当然の事ながら争いになった 思えばあの頃は随分と無茶をした・・・




その後 長らく平和で穏やかな時が流れた 少々退屈では有ったが 仲間達に囲まれ毎日が楽しかったのを覚えている
 



しかし、その平穏は突然の終焉を迎える 



『第二の剣』イグニスの力を得た 戦神ダルクレム率いる軍勢が奇襲を掛けてきた時の事を アタシは今でも鮮明に覚えている


始めこそは圧倒的に押されていた戦いも 相手の連携の無さがアタシ達に有利に働いた


また、ダルクレム陣営において反乱が起きたことも非常に大きいだろう


結果、 少しづつではあるが アタシ達は戦局を押し返していった




その後 戦いは 長期化し 激化し アタシ達と交流のあった 人間族 エルフ族のみならず あらゆる種族を巻き込んでいった。


やがて 戦いの混乱の中 ルミエル イグニス 共に行方が失われ 『第三の剣』カルディアは砕け散った



その結果を受けて 戦いは済し崩し的に休戦状態に入り アタシ達も天界で力の回復に努める事になった



とはいえ、完全に眠ってしまう訳にもいかない 


そこで、必要最低限の力だけを残し 能力を封印後 人々から信仰を集め それを力の回復に充てる事にした







再び流れる (多少の小競り合いは有る物の)明らかに平穏と言って良い日々。



しかし、そんな中、アタシは非常に退屈していた。


能力の大半が封印され かつてと比べて 明らかに不自由な毎日に苛立っていた



そんな毎日の中で アタシは見付けた ・・・見付けてしまった


空間に走った亀裂を、次元を超えた裂け目を!



「次元の裂け目は、一説に拠れば こことは異なる世界 いわゆる異世界と繋がっていると言われています。


 もっとも、誰も確かめた者はいないので 唯の憶測に過ぎませんが・・・


 非常に珍しい現象なので そうそう遭遇する事は無いと思いますが もし見付けても 決して近づかない様にして下さい


 万一引き込まれた場合 どうなるか分かりません」



いつだったか、キルヒアと交わした そんなやり取りが頭をよぎった。



危険だとは承知していた


・・・しかし 何度も言うが アタシは退屈だったのだ。何年 何十年 何百年と!!


『異世界を覗けるかもしれない』 そんな誘惑に アタシはあっさりと負けたのも ある意味当然だったのかも知れない


好奇心のままに 裂け目に近づき そして 裂け目に吸い込まれた、抵抗する間もない程の一瞬の出来事だった


そし後、今に至る。


我ながら 情けないにも程が有る このままここで 最後を迎えるのかと思うと 自然と涙が溢れてきた。




仲間の、友人の顔が思い出される・・・




冗談の 分からない男 グレンダール


酒飲みの サカロス


わが悪友 ル=ロウド


うんちく好きな キルヒア


恋敵だった シーン


古きよき友人である ライフォス


他にも 余り交流は無かったが ザイア ニールダ リルズ ルーフェリア と言った面々が思い浮かぶ



そして



・・・ティダン アタシが死んだと分かったら 彼は泣いてくれるだろうか?



    それとも なんて馬鹿な事をしたと 顔を真っ赤にして怒るだろうか?


・・・・あの 熱く 豪放な彼の事だ 多分、両方の様な気がする


そんな事を朦朧とする意識の中で考えて居るときだった 


アタシの前に 一人の男が現れたのは・・・ 











[22454] つづいて2話目
Name: 陰撮◆0dccf62e ID:5b2ca10a
Date: 2010/10/17 12:42
『妖精』

御伽話、童話、映画、ゲーム、ざっと挙げただけでも妖精の出てくる関連物は

現代社会に置いては相当な数が存在するだろう。

それこそ、園児から老人まで、なんらかの媒体を介して存在を知らない物は

皆無と言っていい。



私も当然ながら 知っている。

むしろ 知らない方が どうかしているだろう。

ただし、それは本の中に登場する存在として、

あるいは、テレビやパソコンの画面の中の存在としてである。

そんな存在が ある日突然 目の前に現れたら 一体何人が 冷静でいられるか・・・。




・・・そろそろ 回りくどい表現はやめよう。


早い話が、今現在の私が冷静ではなく 混乱と焦りの只中にあると言う事だ。

勢い込んで駆け付けたのは いいものの、相手は妖精である。


何をすればいいのかが 全く分からない。

相手が人間であれば 声を掛けるなり 救急車を呼ぶなり やることはいくらか思いつくが

先ほどのテレパシー(?)を聞いた限りでは 言葉は全く通じそうに無いし

救急車なんて呼んでも 人間相手の医療技術が役に立つかは大いに疑問である

それに、下手をするとモルモットにでもされて 随分と悲惨な結果になる事は 想像に難くない

しかも その場合は機密保持の関係上 最悪の場合 私に 口封じと言う名の贈り物がなされるだろう

なんて素敵な未来予想図だ 思わず涙が出そうにる。

しかし、このまま何もせずに放って置く分けにもいかない

とりあえず 意識の有無だけでも確認する事にしようか・・・
 

そんな考えをめぐらせながら 彼女に対して手を伸ばそうとした時だった。

彼女が 不意に顔を上げたのである。

このタイミングは完全に予想外だった、驚きの余りバランスを崩し その場に尻餅を着いてしまう。

反射的に右手で支えるが 少々無理な姿勢で支えた為 わずかながら痛めた様だ 手首から鈍痛がする。

こんな事で転ぶとは、我ながら 小心者もいい所だ。

だがしかし、彼女に意識があったのは 恐らくは喜ぶべき事だろう。

とりあえずは 砂場の上なんかではなく もっとマシな所へと彼女を移動させるべく、意思の疎通をはかる事にする




「ええと・・・動けるかい? 

 と言っても、言葉は通じないか・・・」

彼女の話す言葉が未知な物である事は分かってる

とはいっても 私がまともに話せるのは日本語だけだ

そうなると、必然的に私の取る行動は決まっている

「とにかく、ここから、移動しよう?」

そう言って 少々大げさに 身振り手振りを行い、彼女に意思を伝えようと動く。



果たして伝わったかどうかは大いに疑問だったが

差し当たって 痛めた右手ではなく、左手を彼女に差し出した。

・・・そう、『左手』を

思い返すに、この瞬間が 私の人生を、まさに文字通り私の『住む世界』を変える事になるとは

この時の私には 知るよしも無かったのである。



 














アタシが朦朧とした意識のなかで死を覚悟した時だった アタシの耳に足音が聞こえてきたのは

相手が 獣や蛮族の類では無い事を祈りつつ アタシは顔を上げた。

次の瞬間 アタシの目に入ったのは、

一瞬ビクッと体を硬直させた後 そのままドスンとその場に尻餅を着いた 年若い 人間族と思われる男だった

そこまで驚く事はないだろうと思いながら その人間族を観察する

黒髪 黒眼で それなりに整った顔立ちをしている 

表情を見るに 少なくとも今の所は害意は無さそうだ。

次に その服装に目が移る

シンプルと言っていい服だが アタシが知っている今の人間族の服とは 明らかに生地が違う

しかも あの生地の目の細かさはどうだ? 一見しただけで それが高度な技術によってつくられた事は

疑う余地も無い。

人間族と良く似た別の種族だろうか?・・・いや ここは異世界だった

世界が違えば 材質や 発展してきた技術も異なって当然だろう。




そうしている内に 彼がアタシに話掛けてきたのだが、何を言っているのかサッパリ分からない

やはり 言葉もまるで違うらしい。

もっとも 何を言いたいかは その大げさな身振りでなんとなくだが理解できた。

どうやらアタシを移動させたいらしい。

そう理解した所で 彼が アタシに手を伸ばしてきた

その手が目の前まで来た時だった

!? 宝石の気配がする

彼が手首に巻いているブレスレット(腕時計)からわずかだが宝石の気配がするのである。

余りにも僅かな気配なので 恐らくは 小さい欠片を使っている程度なのだろうが

今のアタシには それは生き延びる為の まさに命綱に見えた。

人間族は 妖精と契約をする時に宝石を必要とする

どうやら人間族は ある程度時間を掛けて(1時間程)簡単な儀式を行いながら宝石を磨き 

それを妖精に覚えさせる事によって

宝石を『門』として登録し、妖精を使役出来る様になる と考えている様だが

実際には それは異なっている

正確には 儀式と 宝石を磨くといった行為で 契約する人間と宝石の結びつきを強め、

その間 妖精は宝石を覚えているのではなく 契約者との結びつきの強まった宝石を媒介にして

その人間と『魂』をリンクさせているからだ。

要するに ある程度 契約者との結びつきの強い宝石が その場にあれば 儀式などは行う必要は全く無いのだ。

もっとも、『魂』をリンクさせるだけならば ほとんど一瞬で終わるのだが・・・

では なぜそんなに時間が掛かるのかと言うと

正確には 『魂』をリンクさせた上で 必要な時に魔力のみを遣り取り出来るように 

細かい調整を宝石にしているからである。

この調整をしないと、個人差はあるが魔力のみでなく、体に負った傷や 双方の記憶等も強制的に遣り取りされてしまう事があり

最悪の場合 片方が死んだ場合、契約を行ったもう片方も死亡する事態も起こりうるのだ。

だからこそ 本来はその辺りの調整は念入りに行うのだが

今回に限って言えば 時間が全く無い

先ほど言った様に 契約を結べば 相手から魔力を受け取れるのだ

しかし 普通に契約していたのでは アタシの命が持ちそうに無い

幸いにして このブレスレットを見る限り それなりに長い間身に着けて来たのだろう。

つまりそれだけ愛着が有ると言う事。

時間的にも 感情的にも 問題は無い ただ 宝石の小ささに不安を覚えるが

この際 贅沢は言ってられない。

アタシは覚悟を決めると 宝石に対して意識を集中する

次の瞬間 ブレスレットが 淡い光を放ち始めた 

目の前の人間族は 半ばパニックになっている。

悪いとは思ったが 説明している時間も手段もないのだ

運悪く不慮の事態が起きたなら 謝罪と償いは彼が死ぬまで行おうと心に誓う

・・・そんなの 唯の 自分にとって都合のいい 言い訳と偽善だ

自身に嫌悪感を抱きながら 契約と言う魂のリンクを開始する。

アタシにできる 最大限の速さで調整を進めていくが、マズイ 想像以上に魔力の消費が激しい

このままでは どんなに急いでも 契約は間に合わない

仕方が無いので 互いの死が同調しない様に調整を行い 後は大雑把と言うのもおこがましい程の調整で

契約を終了する。

直後、アタシの体に魔力がみなぎるのが分かった。

助かったと 安心した次の瞬間 膨大な量の知識が頭に流れ込んでくる

クッ・・・!!調整はヤハリ十分ではなかったか!?

これは、目の前の彼の知識だろうか?

次から次へと 頭に情報が刻まれていく 地球 宇宙 日本 歴史 科学 物理 医療 機械

そしてやはり、彼にも同じ現象が起きているらしい

頭を押さえながら

「なんだ!?これは? 始まりの剣・・・ダルクレム・・・マナ・・・ラクシア?」

等、この異世界の住人である彼が知り得ないであろう単語が聞こてきた。

言葉の端々から ひどく混乱している事が分かる。

・・・そう『分かる』!!

流れ込んできた知識の中に この世界の言語、『日本語』の知識があったらしい

今ならば 彼に意思を伝える事が出来る。

アタシは もうほとんど閉じかけている次元の裂け目を指差して今だ混乱している彼に向かって叫んだ



「お願い!この場所に向かって 高威力の魔法を打ち込んで!!」


「!?、魔法? いや、それよりも キミ 言葉が」


「今のあなたは 魔法の使い方が分っているはずよ・・・

 あなたは もう唯の人間じゃない

 妖精を使役する者 宝石を持ちて 人の理を超え 世界の理へと足を踏み入れた者

 あなたは、『フェアリーテイマー』になったのだから・・・」




そう、まして契約した相手がアタシなのだ

既に唯のフェアリーテイマーの枠を大きく外れている。






「? 何を言って・・・え?・・・なぜだ?『知っている』・・・
 
 ・・・私は、『知っている』」


そう言って、彼は自分の手を真っ直ぐに前へと突き出した。

同時に 宝石を通じてアタシに魔力が送り込まれる

その後『アタシを媒介にして』世界に干渉し 頭の中のイメージを空間へと投影し 

魔法と言う現象を紡ぎ出す。

これが『妖精魔法』の大まかなメカニズムだ。

もっとも、世界の理の制限が掛かる為 

投影できるイメージは そんなに多くは無いのだが・・・



彼が手を掲げる先で 純粋にして膨大な魔力のエネルギーが流れ込み

一瞬で凄まじく凝縮されたと認識した直後、その場所を基点に凄まじい衝撃が発生した。

特にハデな爆発や 凄まじい音がした訳ではない

ただそこに置いては 純粋に『破壊』という力が 

人が想像する事さえ許されない そんな次元のレベルで振るわれたのだと、

アタシは本能で認識したのだった。






<<カオス スマッシュ>>


LV15妖精魔法      消費MP 18(?)


対象 半径6メートルの空間内

射程 30M    形状 起点指定    持続時間 一瞬


効果 すべての妖精の力を合わせ 攻撃する

   (上記は人の解釈であり 実際は 妖精が変換可能な最大限の魔力を送り

    それら すべてを純粋な破壊エネルギーに変換し 対象を攻撃する魔法)









直後、衝撃が収まるのを待たずして、空間が歪み ひび割れ そして裂けた。

後はこの世界に来たときと同じ展開だった。

次元の裂け目から発生する 凄まじい力で一瞬にして引き込まれ

世界の壁を越えた。





























・・・どうやら、アタシはまた倒れているらしい

が、先程までとは 明らかに状況が違うのが分かる。


むせかえる様な緑の匂い

周囲に満ち溢れているマナ

アタシは ゆっくりと目を開いた。

立ち上がって周囲を見渡す。


そこには、次元の裂け目に吸い込まれる前と なんら変わらない風景が

目の前に広がっていた。

どうやら アタシは帰って来れたらしい

ほっと胸をなでおろす

退屈ではあるが、再びあの日常を送れると思うと、うれしくなって

ついその場で飛行し くるくると意味無く回ってみる。

そんな時だった、飛ぶアタシの足元から声が聞こえたのは




「えっと・・・楽しんでいる所 済まないんだが 状況を説明してくれると

 私としては非常に有り難いんだが・・・」


「え?・・・あ。」


そこには、アタシが異世界で出会い 契約を行った 人間族の青年が佇んでいた・・・。











[22454] プロローグ的な物 終わり
Name: 陰撮◆0dccf62e ID:5b2ca10a
Date: 2010/10/25 01:47
事実は小説よりも奇なり 

とは よく言ったものだ。

私の今の状況を見るに その程度の表現では済まない気もするが

起こった事は使用が無い。

そう自分を無理やり納得させる、落ち着け 冷静になれ、平常心だ。

そうだ、まずは 現状を把握してみよう。

まず第一に、ここは私が先程までいた場所ではない

周りの風景を見れば一目瞭然だろう

次にここはどこかを考える

・・・ここはラクシアで テラステア大陸北部地域で・・・??

ん?

・・・ダーレスブルグ公国東部にある それなりの広さを誇る森の中・・・!?

??この知識は一体・・・





数メートル先で 非常に浮かれた顔をして飛ぶ妖精を見付けたのは、丁度そんな時だった。

表情にこそ出さなかったが 少々イラッと来たのは仕方のない事だろう。

私は 目の前の妖精に 現状の確認をする事にしたのだった。












「・・・ふう、とりあえず状況は理解した。しかし・・・」

正直 信じられない・・・いや、信じたくない話のオンパレードだ

話を総括するに、ここは異世界で 蛮族や魔物が跋扈する世界

しかも次元の裂け目が完全に閉じてしまっている現状

私には 帰る手段が無い・・・と。

それに次いで、魂のリンク 知識の共有 そして魔力か・・・

話していて分かったのだが、どうも知識の共有はしていても 記憶の共有はしてないらしい

後で詳しく調べてみるらしいが、この分だと 肉体の同調も心配しなくてもよさそうだ、との事。




それにしても この妖精も無茶をした物だ、と思う。

確かに 私の腕時計には ダイヤモンドが使われている

ただし、3、6、9、12の4箇所に 針の先程度のダイヤが使われているだけだ。

正直言って 値段も大した事は無い。

頭の中に有る知識の通りであるならば 指先程度の大きさの宝石が契約には必要なはずだ

4つのダイヤ全部を足しても、ハッキリ言って大きさが全然足りない。

もっとも、契約に関する調整が無いに等しいあの状況で

予定外に共有したのが知識だけで済んだのは 恐らくそのお陰だろう

要するに、宝石の容量不足で それ以上の共有が出来なかった、と言うのが 私の推測だ。



次に私の魔力に付いてだが、正直、ありえない程に多い

恐らく、マナの極端に少ないあの世界にいた為、高山トレーニングの様な効果が出ているのではないか

と言うのが一点。

そして、恐らくこちらの方が影響しているであろうもう一点・・・




「つまり、あなたの魂とリンクした事で、私の魂が引っ張られて 魂の『格』が上がった

 そう言う認識でいいんですね・・・『妖精神アステリア』様」


「ええ、その考えで 概ね正しいと思います」


そう言った彼女の顔は、私に対する申し訳なさと、何か決意の様な そんな物が入り混じった

複雑な表情をしていた。



詳しく話すと、本来 人の魂は その強さに従い 15段階に分けられる

当然、最初は1から始まり 鍛える事で 徐々に階位を上げていく事が出来る

鍛えるのが 肉体でも魔力でも 強さに従いその『格』は高まっていくのだ

一般的に その『格』を総じて 『冒険者レベル』と呼ぶらしい。

その中でも、LV6を超える者達はその道のプロと呼ばれ

更に経験を積んでいっても LV7~8辺り

才能がある者でもLV10と言った所だ

LV11以上になるには、才能ある者がそれこそ死に者狂いで鍛え上げる必要があり

最高位であるLV15ともなると それこそ 成れる人物など ほとんど存在しないと言ってもいい



早い話が LV10を越えた人物は それだけで英雄クラスの実力であり

国からいくらでも仕官の話 それも かなり上の役職が宛がわれ 優遇される存在である

それでは、私の冒険者LVはと言うと、目の前の神様曰く、

「現状でLV25 経験を積めば 更に高まる可能性あり」

だそうだ。


魔力に関してのみだが 現状ですでに 人間の限界を超えている

神様の領域に 片足をつっこむ所か 肩まで どっぷりと漬かってる状態だ

しかも 魔法を使う度に呼び出す妖精は 正体は『古代神』(エンシェント・ゴッド)である

『妖精神アステリア』

この世界の神様の最高峰の一人であり 世界中に何十万、何百万の信徒がいる相手だ

本来 彼女を召喚するには、1年の準備期間と 7日間の儀式

更にLV15の神官がその命を捧げて やっとこさ召喚出来る存在である(この一連の流れを『コールゴッド』と呼ぶ)

その力も絶大で 大陸に穴を開けたり 地形を変えたり 島を生み出したりと

開いた口が 塞がらない程の 反則振りである

私が魔法を使った際にも、知識の中にある魔法の行使される速度とは 比べ物にならない位に早かった記憶がある

その点について聞いた所

「アタシがその辺の妖精と同じ能力な訳が無いでしょう」

との事だった。

他のフェアリーテイマーが1回魔法を行使する間に、自分なら5,6回は魔法を行使してみせる

なんて豪語もしている。


その様な存在である彼女が 果たして 本当に自分なんかが契約相手でいいのかと質問をした所

「強引に断りも無く契約し 命を助けてもらったと言うのに 元の世界から引き離すと言う 

 恩を仇で返す様な真似までしてしまいました。これでもまだ足りない位です」

との返事が返ってきた。

・・・正直言って 心苦しい

実を言えば 契約うんぬんはともかく、元の世界には大する未練は ほとんど無かったりする。

前にも説明した通り、生活の先行きは不安だらけだったし、2年前に両親とは事故で死別している。

親しい友人は何人かいたが、逆に言えばその位しか元の世界へ執着する理由が無かったのだ。

案外 帰る手段が有るのならば執着したかもしれないが、無いとなると完全に吹っ切れたのである。

それに 今の状況を、目の前に広がった冒険の世界を前にして 私は胸の高まりを覚えていた。

私もどうやら御他聞に漏れず、異世界や冒険等に憧れる心を持ち合わせていたらしい。



そんな心の内を彼女に話し、自分達は 文字通り 魂の繋がったパートナーなんだから

お互いに敬語なんて使わずに もっとフランクに行こう、と

どうせなら 唯の契約相手としてではなく、よき友人として 相棒としての関係でいようと

そう彼女に言いながら手を伸ばす。



「さあ 行こう。まずは人のいる所へ案内してくれ

 魔力はともかく 体力には余り自信が無いんだ。

 鍛え直さないと これから先 冒険なんて出来やしない」


彼女は 最初はキョトンとしていたが、やがて私の手を取り


「任せなさい、相棒!」


と笑顔で答えたのだった。





そう、この日、この場所から、私と彼女の『ラクシア』での冒険が始まったのだ。


 













-------

あとがき的な物

こうして文章書いていて思うけど、やっぱり文章書くのって難しいですね

こんな駄文ですが、楽しんでもらえたなら 幸いです。








[22454] セッション1-1  山賊団『赤い雄叫び』 
Name: 陰撮◆0dccf62e ID:5b2ca10a
Date: 2010/11/07 08:25
「ベイド団長見て下せえ、久々のお客さんですぜ!」

見張りのボーンナムがそう言って来たのは、丁度部下共と昼飯を取ろうとしている時だった。

今まさに食いつこうとしていた肉を、俺は不満を隠す事無く目の前の皿へと放り投げた。

クソッ!なんて嫌なタイミングで来やがる。

折角の熱々の飯が冷めちまうじゃねーか!!

仕事前に食っちまうと、体の動きが鈍くなっから仕事が終わるまで食えねーじゃねーか!!

その頃にはもう飯なんて冷め切って食えたもんじゃねーじゃねーか!!

ちったぁこっちの都合も考えやがれってんだ!



だがしかし、そうはいっても久々の飯のタネだ、背に腹は変えられん。

この鬱憤の分も、その『お客さん』に請求するとするか!

そう考えて部下共に号令を出す。

「おう!オメーら!久々の『お客さん』だ!!

 一丁派手に迎えてやろーじゃねーか!!山賊団『赤い雄叫び』出るぞぉおおお!!」

そう言った直後、部下共からいつも通りの威勢のいい返事が返ってきた。

おっし!仕事始めは、ヤッパこうじゃねーとな!!











さて、勢い込んで出てきたのはいいが、肝心のお客さんを遠目に確認すると、なんて事ぁねぇ。

ちょっと細身の旅人だろう若ぇ男が一人いるだけじゃねーか。

期待してただけに、完全に肩透かしを食らっちまった。

しかしまあ、お客さんには違いねえ、ここン所仕事日照りだったし、一人だけでも大助かりだ。

いつもの通りに美味しく頂くとしようか!

部下共に指示を出し、お客の前後に徐々に距離を詰めて行く。

そして、ある程度距離が詰まった段階でお客の後ろに部下共が数人、わざとらしく出て行った。

客がそれに気付いた段階で、目の前に俺を含めた残りの団員が姿を現す。

なんだ?えらく反応が薄いじゃねーか?

今までの相手なら、困惑するなり怯えるなり、もうちょいと何がしかの反応が有ったんだがな。

まぁ、そんな事ぁどうでもいいか。

いつも通りに仕事と行くかねぇ。




「悪ぃな、兄ちゃん。

 死にたくなかったら、取り合えず持ってるモン全部だせや。

 安心しな、大人しくしてりゃ命までは取らねーよ」





そう言って愛用のヘビーアックスを突きつけた。



・・・お?

こうやって近くで見るとコイツ、なかなか珍しい服ぅ着てるじゃねーか。

見た事がねー布で作ってあるし、造りも随分と目が細けぇ見てぇじゃねーか。

こいつぁ案外当たりだったかも知れねぇな。

がっかり来た直後のお宝発見に気を良くした俺は、ちょいとした仏心を出してやる事にした。





「さっさと寄越しな、ああ、水と食料だけは勘弁してやる。

 感謝しなよ、兄ちゃん」




フフッ、自分で言っておいてなんだが、中々慈悲深いじゃねーか。

破格の大サービスだ、気が変わらん内にさっさと渡した方が身の為だぜ?

・・・?、なんだ? 一瞬驚いた顔をしたと思ったら、次は自分の肩の方見て何か呟いていやがる。

恐怖で気でも触れちまったんじゃねーか?

そんな事を考えてた時だった、隣の部下から不意に予想外の言葉が聞こえたのは。


「・・・嘘だろ、妖精が人間と交易共用語で話してるなんて・・・」


あん?今なんてっt










直後、いきなり地面が光りやがった。

訳が分からねぇ、一体なんだってんだ!?

眩しい光を我慢して地面に視線を移すと、見た事も無ぇ様な複雑な文様が円を描くように規則正しく並んでいた。

・・・おい、こいつぁひょっとして、噂に聞く『魔方陣』って奴じゃねーか?

・・・ひょっとして、とんでもなくヤバイ状況なんじゃあ・・・

そんな事考えてる間にも、光は一層強くなり、次の瞬間に中心部分へと圧縮され始めた。





・・・なんだ!?やたらと暑くなって・・・いや、熱い!暑いじゃなくて熱いんだ!!

何だこの熱気は!? それだけじゃねぇ!この息苦しいまでの威圧感、ただ事じゃねえ!?

魔方陣の光が一箇所に集まり、やがて一つの形に収る。

でかい人型、炎の巨人、圧倒的な存在・・・

それを見た時の俺の感情をどう言えばいいのか・・・

ただ、その時分かった事は、人間自分の理解を超える存在に出会ったときは、何にも考える事が出来ないって事だった・・・。






 

















アタシ達は森の中をひたすら進んでいた。

少し前に森の中から街道沿いの山道へと出たので、随分と歩き易くなったらしく

目の前の青年、『ダイチ』の歩行速度は数分前とは比べ物に成らないほどに早くなっている。

この分であれば、夕暮れ前には最寄の村まで辿り着けるだろう。

ここに来るまでにお互いに随分と話し込んだ。

地球の事、ラクシアの事、お互いの事等、互いに興味のある内容を、これでもかと語り合っていく。

互いの知識は有る物の、それについて意見を交わし、話し合えると言うのは非常に有意義な事である。

ちなみに、目下私の興味は日本の娯楽に釘付けである。

彼の知識の中にある、アニメやゲーム、インターネット、それに各種カード、ボードゲーム。

異世界人の娯楽へ欲求は、よくぞここまでと関心する。

特に、アニメ、漫画、ゲームに関してはアタシの感性に何か触れる物が有ったらしく、頭の中の知識を彼とむさぼる様に語り合っていく。

実物を手に出来ない事をこれほど歯痒く思ったのは、ここ数百年間有りはしなかっただろう。

むぅ・・・どうにかならないものか・・・。

そんな事を考えている時だった、不意に後ろに数人の男が、アタシ達の後方を遮る様にして出てきたのは。

それとほぼ同時に前方にも何人かの男達が出てくる。

1 2 3 ・・・・全部で8人

・・・会話に夢中になって周囲の警戒が疎かになっていたみたいだ、これは反省しないといけない。

相手がこんな三下達でなかったら、最悪『14へ行け』的な展開になっていたかもしれない。

差し当たって前後に注意を払いながら、アタシとダイチは自身を戦闘体制へと持っていく。

そんな中、一人の男が一歩前へと踏み出し、アタシ達に告げた。



「悪ぃな、兄ちゃん。

 死にたくなかったら、取り合えず持ってるモン全部だせや。

 安心しな、大人しくしてりゃ命までは取らねーよ」







出た!追い剥ぎ連中の信用出来ない台詞ナンバー1!!

こう言って安心させておいて、服を渡した直後にバッサリ、と言うのがこういった場合のお決まりである。

理由は簡単、服に血を付けない為だ。

無理やり脱がそうとすれば服が高確率で破れるし、かと言って服に血を付けずに殺すなんてのは不可能に近い。

それゆえに、自主的に脱いでもらって後は自分達の情報が外部に漏れない様に後腐れなく、といった具合だ。

どうやらダイチもそう考えたらしく、宝石に意識を集中し始めている。

このままいけば、目の前の連中は十秒後には恐らく消し炭にでもなっているだろう。

そう思った時だった、目の前のボスと思わしき人物から予想外の台詞が飛び出したのは。






「さっさと寄越しな、ああ、水と食料だけは勘弁してやる。

 感謝しなよ、兄ちゃん」




・・・驚いた。

今の台詞は、少なくとも殺すつもりの有る人間からは出てこない台詞だ。

つまり先程の殺すつもりも無いと言うのも、恐らくは本当か?

その時、ダイチがアタシの方を向いて言って来た。



「どうやらまだ、完全には悪人ではないらしい。

 ちょいとキツめのお灸を据えてやる程度で勘弁しとこう」


そう言って術式を走らせる。

マナを光に変換し、力ある文様に移し変えていく。

それらを束ねて円を結び、中央に一種の『揺らぎ』を発生させ己の望む力有る存在へと扉を開く。

そうやって呼び出された存在は、容赦ない熱気と、圧倒的な存在感と、絶大な魔力を伴い顕現した。





<<フェアリーロード>>

LV15 妖精魔法


対象 任意の地点   消費MP 特殊



効果 LV17以下のカテゴリー『妖精』の魔物を呼び出し使役する事が出来ます。

   この魔法を行使する時に使用するMP(マナ)は呼び出す魔物のLVに比例して多くなります。







・・・火炎魔人イフリート、召喚できる魔物の中でも最高位に位置する存在だ。

だがしかし、今の光景に思う所があったアタシは、イフリートにちょっとしたお願いをした。

不躾なのは分かっていたが、どうにも歯止めがきかなかった。

少々悪い気がしたが、本能を愛し、直感を信じよ だ。

もうこのまま突き進もう、うん、そうしよう。

イフリートは少々迷った素振りをみせたが、『ホントにやるのか?』と言った目線をアタシに向けた後、辺りに響く重々しい声でこう言ったのだ。



『我が名は火炎魔人イフリート コンゴトモヨロシク』




その後、山賊たちがどうなったか、それは『推して知るべし』である。































あとがきの様なもの


山賊団の能力値は、馬に乗った追い剥ぎから馬を取った値と仮定してます。

山賊達のその後は次回に主人公視点で書く予定。

あと、感想くれた方々、ありがとうございます。

思いの他好意的に受け止められているようで大変うれしく思います。

あと、感想の中に 空白、改行についての指摘があったので、今回書き方を変えてみましたがいかがでしょう?

FCやSFCを意識しているのかとの事でしたが、そんなスキルは自分にはありません(笑

ただただ未熟であるだけです。

こんな未熟者の書く文章でも 楽しんで頂ければ幸いです。

では、次話でまたお会いしましょう。













[22454] セッション1-2 8人のお供
Name: 陰撮◆0dccf62e ID:5b2ca10a
Date: 2010/11/07 08:20




私の目の前で、熱気を伴い光の中からイフリートが顕現した。

その後すぐに、アステリアがイフリートに何事か言っていたが一体何を頼んでいたのだろうか?

気にはなったが、今は目の前の状況をどうにかする方が先だと意識を切り替る事にした。







さて、差し当たって目の前の追い剥ぎ達をどうしようか?

見た所、八人全員どこかへ意識が飛んでいる様だが

いつまでもこのままと言う訳にもいかないだろう。

十分肝も冷えただろうし、そろそろ降伏勧告でもするべきだろうか?

さすがにイフリート相手に喧嘩を売るとは思えないし。

と、その時である。





『我が名は火炎魔人イフリート コンゴトモヨロシク』







この予想外の一言を聞いて、一瞬私は固まってしまったが仕方の無い事だろう。

しかもその一言で追い剥ぎ連中の時間が、どうやら再び動き出した様だ。

ひょっとしたら、私はトンでもない相手にトンでもない知識を与えてしまったのではないだろうか?

いや、今更引き返せないのだから、考えるだけ無駄か?

横目でチラリとアステリアを見ると、物凄くいい笑顔をしていらっしゃった。

・・・まあ本人も楽しんでいる様だし、いい事にしよう。

言って置くが、決して責任逃れをしている訳じゃないぞ?・・・多分。



追い剥ぎ達の半分は腰を抜かして動けないでいる様だが、残りの半分は我先にと一目散に逃走を計り始めた。

彼等の気持ちは痛い程に分かるが、さすがに逃がす訳にはいかない。

宝石に魔力を注ぐ、アステリアを通して世界を認識し、意識を逃走する追い剥ぎ達の足元に向けた。

イメージするのは力強い腕、次いで掌、そして指、それらを世界に投影し現実を書き換える。

直後、彼等はその場にバッタリと倒れたのだった。




<< スネア >>

妖精魔法LV2   消費MP 3


効果  土の妖精が対象の足を掴み転倒させます。










「な?なななんなんだこれは!?」



「あぁ!!足に!足にぃ!?」





・・・さて、逃走を止めたのはいいが、これでは収拾が付かないな。

まさに混乱の極みといっていい。

隣で「SAN値直送ね」なんて言葉が聞こえた気もするが、あえて聞なかった事にする。

このままでは話が出来ない為、もう一度彼等の時を止める事にした。


「イフリート、済まないがちょいと頼む」


この状況下で最も有効なのは、恐らくはこの威圧感を伴った火炎魔人の一言だろう。

その予測は間違ってはいなかった様で、彼(?)が一言黙れと言っただけで水を打ったような静かになった。

よし、後は少々説教をして終わりでいいだろう。























あ、ありのまま今起こった事を話すわ・・・

アタシはダイチが追い剥ぎ達にお説教している間、イフリートとお話していたら、いつの間にか信者が8人増えていた。

トリックとか超スピード(ry

事のあらましはこうだ。

ダイチのお説教の間ヒマなアタシは、イフリートと話していた訳だが、ダイチとの話ほどアタシの興味を引く物は無かった。

そんな訳で、気が付くといつの間にやらスヤスヤと寝てしまっていた訳だ。

説教を終えたダイチは、当然アタシを起こそうとしたんだけど、なんと言うか・・・アタシが寝入ってしまって起きなかったらしい。

そこで、つい大きな声でアタシの名前を呼んだわけだ。

そう、追い剥ぎ達の目の前で『アステリア』と・・・

たまたま名前が同じだけだと誤魔化そうとしてみたけど無駄だった。

なんでもアタシとイフリートの会話も聞こえていたらしく、

「あんな魔人が普通の妖精に敬語なんて使う訳がない」

とあっさりと見破られた。

それに妖精には普通名前なんて付けないしね・・・

その後は大変だった、全員が地面に頭を擦り付ける勢いで(実際に擦っていたんじゃないかと思う)



「旦那(ダイチ)にも言いやしたが、もう悪さはしやせん、全員まとめて信者にもなりやす。

 聞けば姐さん(名前で呼ぶなと行ったらこうなった)達は最寄の村を目指してるとか?

 あっしらもそこまでお供しやすぜ!」



との事だった。

ムサイ男8人が、限定的にとは言え旅の共に加わる・・・

少々・・・いや、かなりゲンナリとしながらも善意からの、仮にも『信者』の行動を無碍にも出来ず、しぶしぶと承諾したのだった。

もっとも、アタシに関する口止めだけはしておいたが。

肩を落とすアタシに



「まあ、信者が増えたのは良い事じゃないか・・・」



なんてダイチが言って苦笑いしてたけど、そんな事では誤魔化されない。

全く、アンタが不用意に名前なんて呼ぶから!

ここはちょっとした仕返しをしてやらねば・・・

なんて考えてると、ダイチがまたアタシに話しかけてきた。今度はなんなのよ?



「ちなみに、イフリートがもう帰っていいかと聞いてるんだが?」


・・・あ。























おまけ




私は『妖精の歌』と言う物にある種の幻想を抱いていると言ってもいい。

なんせファンタジーに置いて、妖精が歌う歌は素晴らしいと相場が決まっているからだ。

だから以前アステリアに何か歌ってみてくれとお願いした事がある。

妖精神の歌声ならば さぞかし幻想的なのだろう、と。

それを聞いた彼女は少々照れながらも

「気が向いたらね」

なんて言っていた、私はそれを楽しみにしていると伝え、その場は終わったのだが・・・

そんな私の幻想は、今儚くも崩れ去ろうとしている。

今、私の目の前でアステリアが歌っている訳だが





「今に見ていろハ○ワ原人♪全滅だ♪」




・・・その選曲は ないだろう・・・。






















あとがきの様なもの



なんと言うか、文章がうまく浮かばずに時間が掛かってしまいました。

しかも、出来栄えも気に入らず2回ほど書き直すハメに・・・

アン○イ先生・・・文才が、欲しいです。











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