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津谷さん、消費者保護に熱意 秋田の弁護士殺害事件

 殺害された秋田市の弁護士津谷裕貴さんは、消費者問題に精力的に取り組んでいた。「志半ば。本人が一番悔しいはず」。法律事務所で一緒に働く弟の聡さんは、無念の最期を迎えた兄を思いやった。

 津谷さんは1983年、秋田弁護士会に入会。2年後、豊田商事事件が起きると、秋田県内の被害者を支援する弁護団の事務局長に就いた。当時を知る柴田一宏弁護士は「熱意あふれる人だった。豊田商事の訴訟で、従業員が非を認めて和解になった時は本当に喜んでいた」と振り返る。
 87年から日弁連の消費者問題対策委員会に所属。高齢者を勧誘して投資させる先物取引問題に関心を寄せ、2003年5月から2年間は「先物取引被害全国研究会」の代表幹事として救済活動に奔走した。
 ここ数年は、強引な訪問販売や電話による勧誘などを規制する消費者保護対策に力を入れ、勧誘を制限する県条例の原案作成にかかわった。
 条例案は時期尚早として議会提出が見送られたが、ともに条例制定を目指した瀬田川栄一県議は「津谷さんはあきらめていなかった。来春、改選後にもう一度やろうと話していた」と語った。
 司法修習で同期だった仙台弁護士会の新里宏二会長は「政府の消費者問題の審議会委員となり、先物取引を規制する法改正にも尽力した。先物取引の被害者が減ったのは彼の功績が大きい」と早過ぎる死を悼んだ。

◎東北の弁護士、衝撃と懸念と/命の犠牲許せぬ/自己防衛に限界
業務萎縮が心配…「毅然と対処」宣言

 秋田市の弁護士津谷裕貴さんが殺害された事件は、東北の弁護士に大きな衝撃を与えた。消費者問題の専門家を失っただけでなく、相談や訴訟に絡むトラブルが事件に結び付いた可能性があるためだ。関係者は「相談者からの危害を恐れ、依頼を断る弁護士が出かねない」と懸念する。
 「消費者問題への取り組み方をたたき込まれ、尊敬する先輩だった。どんな理由であれ、命を奪ったことは許せない」と仙台弁護士会の菊地修弁護士。2005年3月まで秋田弁護士会に所属し、ともに先物取引の被害者救済に走り回った。
 東北6県の弁護士会によると、近年、在籍の弁護士が殺害された例はない。ただ、山形県のある弁護士は「相談者が苦情を訴えたり、不信感を募らせたりすることはよくある」と明かす。
 仙台市では昨年1月、無職の男(61)が恐喝未遂容疑で宮城県警に逮捕された。男は民事訴訟の敗訴を理由に、担当弁護士に「金を払わなかったら殺す」などと言い掛かりをつけ、金を脅し取ろうとしたとされる。
 秋田弁護士会の狩野節子会長は02年、相談者の男に髪をつかまれるなどした。男はバッグに包丁2本をしのばせていた。「弁護士業務は相手と1対1にならざるを得ない時がある。金属探知機を使うわけにもいかず、自己防衛には限界がある」と語る。
 今年6月には横浜市の法律事務所で、弁護士が刺殺される事件が起きた。岩手弁護士会の石橋乙秀会長は「最も心配なのは、頑張っている弁護士が萎縮(いしゅく)し、離婚やドメスティックバイオレンスなどの事案の依頼を引き受ける人が減ることだ」と指摘する。
 秋田、仙台の両弁護士会は業務妨害対策に関する研修会を開き、相談者による暴力行為が刑事事件に発展した実例などを検証する方針。
 東北弁護士会連合会と仙台弁護士会は4日、「暴力手段による弁護士業務の妨害には一致団結して毅然(きぜん)と対処する」などと声明を発表。秋田、青森の弁護士会も声明で、妨害行為にひるまず、弁護士活動に当たる決意を示した。


2010年11月05日金曜日


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