米原女性殺害、2日に裁判員選任手続き 大津地裁
滋賀県米原市の雑排水タンクで昨年6月、長浜市今川町の会社員小川典子さん=当時(28)=の遺体が見つかった事件で、殺人罪に問われた米原市坂口、会社員森田繁成被告(41)の裁判員裁判が、大津地裁(坪井祐子裁判長)で2日に裁判員選任手続きが行われ、4日に開廷する。計10日間の審理を経て、判決は12月2日の予定。凶器などの直接証拠がないとみられ、森田被告は逮捕時から一貫して無罪を主張している。状況証拠を積み重ねて立証する方針の検察と真っ向から対立する見込みで、裁判員は難しい判断を迫られそうだ。
起訴状では、2009年6月10日午後9時ごろから11日午前1時ごろまでの間、同タンク付近で、交際していた小川さんの頭部などを鈍器のようなもので殴って重傷を負わせ、タンクに投げ入れて、汚泥により窒息死させた、としている。
森田被告は09年7月に起訴されたが、「身に覚えがない」と起訴内容を全面否認しており、弁護人は「森田被告には法廷で裁判官や裁判員へ(直接)語ってもらう」とする。
審理では、多数の証人尋問などが行われる見込みで、11月22日に論告求刑。裁判官と裁判員の評議は、複数日行われる予定だ。
小川さんの遺族は、県警を通じ「間もなく始まる裁判を見守りたいと思います」との手記を公表した。
■判決まで1ヵ月 のしかかる負担
米原女性殺人事件の裁判員裁判は、審理が10日間、初公判から判決まで1カ月という日程になる。これまでで最長級になり、裁判員への負担を懸念する声もある。証拠調べなどに時間が必要なためだが、今後の裁判員裁判を考える上で、注目が集まりそうだ。
最高裁によると、今年7月末までに判決があった全国の裁判員裁判は859件で、審理と判決を合わせた開廷日数の平均は3・6日。否認事件は4・1日に上昇するが、米原事件は11日と際だつ。
裁判員裁判は、審理が3日以内ならば連日開廷が大半だが、5日を超える事件では週に2、3日程度ずつ分けて審理する例が多い。裁判員の負担への配慮だが、結果として「拘束期間」は長くなる。
全国でも長期の裁判員裁判が増えており、東京地裁の耳かき店女性殺人事件は初公判から判決まで14日間(10月19日~11月1日)、鹿児島地裁の強盗殺人事件は約40日間(11月2日~12月10日)の予定だ。
国学院大法科大学院の四宮啓教授(弁護士)は「従来の刑事裁判と比べればはるかに迅速とはいえ、長期間になれば裁判員の負担は確実に増す」と指摘。「適正な裁判を実現することが第一の目標だが、裁判員の負担も考慮した計画的な審理が必要だ」と話す。
【 2010年10月31日 23時30分 】