【専欄】製造業への興味失う日本の若者たち 技術を持って海外へ

2010.11.5 05:00

 二十数年にわたって働く若者たちを見てきた。そこで気付いたのは、彼らはとても恵まれた環境にありながら、物作りに対して興味をどんどん失っているのではないか、ということ。いい先輩がいて、いい工場があるにもかかわらず、生かそうとしない。もったいない話だ。

 今の若者は美容師などのサービス業を好む傾向にあり、町工場で油まみれになる物作りに関心を示さない。結論から言おう。日本の力を維持するためにも、これはよくない。

 なぜならば、物作りは文化であり、日本にとって欠かすことができないからだ。物作りに秀でているから、日本は世界から認められる。経済力の上にあぐらをかいているだけでは、日本人のアイデンティティーをも否定するようなもので、言語道断である。

 日本の街を見渡すと、下を向いて歩いている人がなんと多いことか。元気を失った人が多すぎる。どうしてこうなってしまったのだろうか。それは経営者が若者にチャンスを与えないところに大きな原因があるのではないか。

 高齢化が進む日本社会では、経営者も高齢化している。しかも彼らは決定権を抱えたまま、次世代に譲ろうとしない。その弊害に一日も早く気づくよう願うばかりだ。

 さて、ここで若者に一つの提案をしたい。1年間、みっちりと工場で働き、その技術をもって海外へいこう。世界の工場を見て回ってほしい。できれば、中に入りこんでみよう。そうすれば、日本の工場がいかに優れているか、日本の技術がいかに素晴らしいかを具体的な体験として学べるはずだ。

 日本人は海外から多くのものを取り入れ、それをミックスして取捨選択し、磨きをかけていいものに仕上げる特技を持っている。

 それが世界から得る日本の信頼というのは前述の通りだが、若者に言いたい。これを誇りに思うべきだ。そしてこの力を高めることが大切であり、それはあたなたち若い世代に課せられた責務だと思う。(剣豪集団会長・鄭剣豪)

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