自転車事故 子供が高齢者とぶつかり賠償金80万円
毎日新聞 11月7日(日)13時52分配信
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長男の自転車事故について、当時の資料を手元で確認しながら思いを語る女性=大阪市内で、馬場直子撮影 |
女性は00年10月のある日の夕方、長男、長女と3人で、大阪市天王寺区の道路の右側歩道をそれぞれ自転車に乗って走っていた。先頭の長男は前にいた歩行者と駐車中の軽ワゴン車を避けようと車道に出て、対向してきた当時68歳の女性の自転車と衝突。高齢女性は自分の自転車に取り付けていた傘を差す器具で胸を打ち、骨にひびが入って入院した。
小学生の長男が自転車で人にけがをさせるとは思いもせず、損害賠償保険には入っていなかった。「誠心誠意できることを」と、治療費を求められるたびに負担し、毎日のように見舞いに通った。
約1カ月後、高齢女性は退院したが、さらに「見舞金」として約50万円を請求された。当時、夫の仕事は不況のあおりを受け、女性もパートのかけ持ちで家計を支え、その金額は大きな負担だった。雨は降っていないのに傘を差す器具をしまっていなかった高齢女性の「落ち度」も感じ、話し合ったが決裂。大阪簡裁の民事調停に持ち込まれた。
仲立ちする調停委員から思わぬ指摘を受けた。「自転車の通行は左側が原則。おたくに支払い義務がある」。右側走行が道路交通法に違反していることを女性自身、知らなかった。車道走行が原則で、歩道は例外ということも。結局、治療費なども含め、計約80万円を支払うことになった。
長男に自転車を買った時、一緒に交通ルールを確認すべきだったと思う。事故を契機に、家族みんなで保険に入った。今も後悔とともに、自転車の無謀運転を見るたび「ルール順守の意識が低い」とやるせなさが募る。
今年8月21日、「銀輪の死角」キャンペーンで「自転車事故で高額賠償相次ぐ」という記事を読み、体験を思い起こして投稿した。子供と高齢者、「交通弱者」同士の不幸な事故。訪れた記者に「自転車は加害者になることがほとんどないと思っていた。みんなそうだと思う。だけど今は『加害者になることもあるよ』と言いたい」。そして、こう継いだ。「事故の補償は保険加入が義務づけられている車よりも解決が難しい。それを多くの人に知ってほしい」【馬場直子】
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最終更新:11月7日(日)13時52分
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