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就職できない大学生が3割“大留年時代”到来の悪夢(上)

ダイヤモンド・オンライン 10月25日(月)5時30分配信

リーマンショック後の景気悪化で大学生の就職難は厳しさを増すばかりだ。すでに今春時点で大学卒業生の3割が実質的に就職できない状況になっており、現在の厳しい就職活動の状況を見れば、来年はさらに就職留年が増えるのも確実だ。かつての就職氷河期が再来した。

 9月下旬。東京・青山の高層ビルでは、合同会社説明会が開催されていた。

「イオンさん、セブン&アイさんなど流通各社を50社以上回りましたが全滅でした」

 地場の中堅スーパーの採用担当者にこれまでの就職活動実績を問われた都内中堅大学の女子学生が伏し目がちに答えている。

 斜め後ろのブースは、一般には不人気な、生・損保の電話セールス会社が陣取っていたが、時間指定の整理券をもらわないと説明会に参加できないほど、希望者が殺到していた。

 雨にもかかわらず、会場には、就職の決まらない大学生が600人以上も押し寄せた。会場に入り切れない入場待ちの学生の行列がエレベーターホールにまで溢れている。開場からわずか1時間で、会場はすれ違うのさえ困難なほどの混雑ぶりだ。

 無理もないことだ。この合同説明会が開催されたのは、企業が学生に内定を出すのが解禁される10月1日まで残りわずか3日の時点でのことである。

 この時期に、20社近くの企業が集まって開催される合同説明会自体が首都圏でもほとんどないとあって、就職が決まらない学生が大挙して押しかけたというわけだ。はたしてこのうち何人が内定を獲得できたのだろうか。

 この合同説明会を開催したアクセスヒューマンネクスト社は、「去年の1.5倍、一昨年の2倍相当の学生が来たし、一流大の学生もいる。今年の就職状況の厳しさは、尋常ではない」と指摘する。

 酷な話だが、10月1日で、日本の大学4年生の就職活動(就活)は名実共にほぼ終わった。

 この日は、大学の申し合わせや日本経済団体連合会の倫理憲章で定めた「内定解禁日」だ。実際には、夏休み前までに「内々定」が出されているが、多くの企業がこの日に、内定通知書を渡したり、入社ガイダンスを行い、就活は終了する。

 そして、この日は同時に3年生が就活をスタートする日でもある。就活の中核を占める就活サイトはこの日に3年生、すなわち2012年卒業予定者を対象に企業情報の提供をスタートする、いわゆる「グランドオープン」を迎える。勤務条件や選考スケジュールなどの情報が開示され、企業へのエントリーも可能になる。

 日本経団連の倫理憲章では、面接の解禁日は4年生の4月からだが、その半年前に就活戦線の火ぶたが切られるわけだ。

 3年生の就活が始まると、4年生は就活を終えざるをえない。

 むろん、このまま就活を続けることは可能だが、11年卒業予定者に対する就活サイトの情報提供はもう微々たるものだし、なにより、この時期に新卒募集を行っている企業はごくわずかでしかない。

 日本経団連の今年4月の会員企業へのアンケート調査では、11年卒採用で58.8%の企業が既卒者を、「受け付ける予定がない」と回答している。ひとたび大学を卒業して既卒になってしまうと、大企業への就職の扉が閉ざされるという“既卒不利”は否定しようのない事実だ。

 ちなみに、同じ調査では、10年卒採用の実施企業割合は91.1%と昨年度より4.7ポイント減少し、1997年の調査開始以来、初の2年連続減となった。大企業が新卒採用を減らし、既卒に門戸を閉ざす厳しい状況だ。

 4年生が、現在の3年生の就活に加わるには、留年を覚悟し、12年卒業予定者として就活サイトに再エントリーするしかない。

 “既卒不利”覚悟で卒業しても留年しても就活を続けるしかない。行くも地獄、戻るも地獄の就活だ。

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最終更新:10月25日(月)5時30分

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