鹿児島市で高齢夫婦が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われた同市三和町、無職白浜政広被告(71)の裁判員裁判初公判が2日午前、鹿児島地裁(平島正道裁判長)で始まった。白浜被告は「現場に行ったことはないし、ましてや強盗殺人罪などは絶対にやっていない」と起訴内容を全面否認、無罪を主張した。強盗殺人罪の法定刑は死刑か無期懲役。裁判員は有罪か無罪かの事実認定に加え、有罪ならば死刑判決を視野に入れた極めて厳しい判断を迫られる可能性がある。判決言い渡しは12月10日の予定。
検察側は冒頭陳述で、白浜被告が犯行前日には年金14万円をパチンコ代や飲食費に使い果たし、同居していた姉に生活費が払えず困っていたと指摘。強盗目的で被害者宅に侵入する動機があったと主張した。
その上で、被害者宅から指紋掌紋29点、DNA資料886点が見つかったことを明らかにし「物色されたたんすや書類から白浜被告と一致する指紋や掌紋が見つかったほか、網戸の破れ目に付着した細胞片からも白浜被告と一致するDNA型資料が見つかり、犯人であることは明らか」と強調。
犯行態様の悪質性や2人殺害という結果の重大さなどを指摘し「遺族の処罰感情も非常に厳しい」と述べた。
一方、弁護側は「白浜被告の目撃情報がない一方、別の不審者の目撃情報がある。白浜被告に動機はなく、被害者宅も知らない」と反論。
現場から見つかった白浜被告の指紋やDNAについては「指紋は偽造の可能性があり、DNAもほぼ一致したにすぎない。真犯人が強盗殺人を偽装した疑いがある」と指摘した。
起訴状によると、白浜被告は昨年6月18日夕から翌日朝までに、同市下福元町の蔵ノ下忠さん=当時(91)=方に強盗目的で窓ガラスを割って侵入。忠さんと妻ハツエさん=当時(87)=をスコップで殴って殺害したとされる。
審理は土日、祝日を除いた17日までの計10日間。期間中、鑑定書を作成した捜査員など計28人が証人出廷する予定で、5日には裁判員裁判で異例の現場検証もある。18日以降に判決内容を決める評議がある。裁判員選任から判決までの期間は、裁判員裁判では最長の40日間が予定されている。
=2010/11/02付 西日本新聞夕刊=