福岡県水巻町の遠賀中間医師会館で9月18日に開かれた第134回患者塾。院内感染についての考え方や新型耐性菌とどう向き合えばいいかについて医師が語り合った。
◆MRSA
小野村さん 「90歳の母親が入院中の病院で『MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)という菌が出た』と聞いたのですが大丈夫でしょうか」とのお尋ねがありました。MRSAは、よくいる菌と考えていいですか。院内で出たということは問題ではないのでしょうか。
村谷さん 黄色ブドウ球菌は、ある程度は人の体内に常在化していますが、MRSAは問題がこの10年間で一つ起きています。市中感染型MRSAと呼ばれる白血球を破壊する毒素を持つタイプが欧米で流行し、重症化したり亡くなるケースが報告されています。国内では市中感染型MRSAがこの毒素を持っておらず、問題にならなかったのですが、2~3年で急に報告が出てきています。
通常タイプの黄色ブドウ球菌を体内に持つのは普通で、それがMRSAであってもなくても何も症状がなければ気にする必要はありません。ただ、医療スタッフが免疫低下患者の担当である場合は、除菌するか、担当を替わることを考える必要があります。
◆院内感染
小野村さん 院内感染については、「あそこの病院でそんなに汚いことがあったのか」という印象を持つ人が多いのかもしれません。でも起きたことをアナウンスするのが大事で、ふたをすることのほうが問題です。だから積極的に院内感染があったことを報告する病院のほうがいい病院という認識を持ってほしいと思います。
谷口さん 院内感染は一生懸命、原因を追及することで見つかることが多いです。だから「この病院はまじめにやっているから院内感染が出てしまった」と一般の人には受け止めてほしいと思います。院内感染イコール汚い病院、危ない病院という考え方はやめてほしいと思います。
◆新型耐性菌の対策
小野村さん 新型耐性菌は何が怖いかというと、抗菌薬でやっつけようと思っても逆に抗菌薬を溶かしてしまう力を持っていることです。そういう菌に対して私たちができることは何ですか。
村谷さん 大病院の医療従事者は、まず菌を見付けることです。そして見付けた時にどうするかを明確に決めておくことが大事です。クリニックや小児科では、新型耐性菌についてあまり考える必要はありませんが、市中感染型MRSAはそろそろ気にする必要があります。一般の人は通常の生活で新型耐性菌は一切関係ありません。ただ、自分に何の病気がなくても年齢と共に免疫力は下がっています。病院のお見舞いなどに行った場合には、いつもよりアルコールなどでの消毒を気を付けてください。
「『この病院はまじめにやっているから院内感染が出てしまった』と受け止めて」と医師から話があった。
何度か院内感染を取材したことがあるが、病院の話を聞いて、「大騒ぎする話ではない」との結論に達したケースがほとんどだ。
でも病院が事実を正確に説明しようとしないと、記者心理として「何か隠しているのでは」と勘ぐってしまい不信感が生まれる。
耐性菌発生を防ぐには「薬をしっかり飲んでしっかりたたく」と説明があった。院内感染の誤解を防ぐにも「しっかり説明、しっかり報道」だと思っている。【佐藤敬一】
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村谷哲郎さん=キューリン検査部長(北九州市)▽安藤由起子さん=安藤ゆきこレディースクリニック(北九州市、産科・婦人科)▽谷口初美さん=産業医科大学医学部微生物学教室教授(北九州市)▽平田敬治さん=福岡山王病院(福岡市、外科)▽津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院(福岡県水巻町)
▼司会・小野村健太郎さん=おのむら医院(福岡県芦屋町、内科・小児科)
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◆第136回患者塾
「成績がいいから医学部に行ったらいい」と勧められる学生が少なくありません。適性をまったく考えず、成績がいいという理由だけで医学部に進む風潮には首をかしげます。
学生が医学部にあこがれる理由は何なのでしょう。他の職業と比較して収入が安定しているからでしょうか。医学部というブランドにステータスを感じるからでしょうか。人の命や心を助けたいという崇高な気持ちからでしょうか。研修医が都市に集中し、僻地(へきち)に医師が来ない現状を見ると、学生や若い医師の志に偏りがあるような気がしてなりません。
産業医科大学の医生祭を訪ね、「医者になりたい本当の理由」を学生から聞き出し、教育に当たる教授と患者塾の常連の医師が医学教育の裸の現状を分析します。さらに、今問われ始めている「医師は病気を治すべきなのか、人を治すべきなのか」というテーマに触れながら、医療と医学教育が抱える問題点を探り、その解決策を考えます。
11月3日午前10時~正午
産業医科大学(北九州市八幡西区医生ケ丘1の1)ラマツィーニホール
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〒807-0111
福岡県芦屋町白浜町2の10「おのむら医院」内
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FAX093・222・1235
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2010年10月26日 地方版