国内初の官民協同の刑務所「美祢社会復帰促進センター」(山口県美祢市)内に、美祢市が設けた一般向けの婦人科診療所が医師を確保できないため、オープン以来3年半以上開業できていない。「地域との共生」を掲げる刑務所の目玉事業だったが、委託先の市立病院が医師を確保できないのが理由。市は「全国的な医師不足。開院のメドは立っていない」と頭を抱えている。
センターは05年、構造改革特区として認定を受け、07年完成した。9月末現在721人(うち女性396人)の受刑者が服役中だ。
市は市内に産婦人科の病院がないため、刑務所内に新しい診療所の設置を決定。センター庁舎棟1階に診察室や処置室などを備え、07年4月のセンター開所と同時に開院する予定だった。ところが、市立病院が産婦人科医を確保できないどころか、院内の他の診療科の常勤医師も06年から4年半で半減するなど、深刻な医師不足に陥った。現在、受刑者は市と市医師会が派遣した開業医らが施設内で診察している。
婦人科診療所の開設見通しについて、市立病院担当者は「産科医にこだわっていたら医師は集まらない」と、他科目にも広げて募集するという。市民は隣接する山口市や宇部市などの産婦人科に通っている。
この問題を市議会で取り上げた西岡晃市議(36)は「外来診療所の開設は地域住民との約束だった。市の怠慢ではないか」と指摘した。【佐野格】
2010年10月27日