環境に優しい乗り物として自転車が人気を集めているが、都心で利用するには不便な点も多い。例えば郊外から遠距離を自転車で移動してくるのは大変だし、多くの自転車が都心に集まれば、駐輪場が不足する。また、従来のレンタサイクルは費用がかさむし、店まで借りに行ったり戻しに行くのが面倒だ。

 そこで注目されているのが、コミュニティサイクルという、一定地域内での短時間利用を前提とした自転車の貸し出しシステムだ。主に都心部で、短い間隔に多数の貸し出しスポットを設置する。利用者は手近なスポットで自転車を借り、移動後に目的地付近のスポットに返却すればよい。

 短時間利用が中心なら少ない台数で大勢が利用できるので、駐輪スペースは小規模ですむ。地域で何台もの自転車を共用すると考えれば、わかりやすいだろう。

 最近のIT技術を使えば貸出・返却手続きは簡単にでき、コストを低く抑えられる。広告収入や自治体の補助があれば30分以内は無料といった運用も可能だ。

 海外ではパリ、バルセロナなど、すでに多くの都市で普及が進んでいる。日本でも、あちこちの都市で本格導入に向けて準備中だ。例えば、JTB首都圏が環境省の委託事業として、大手町・有楽町・丸の内エリアで2009年10月1日から11月30日まで、名古屋市が名古屋駅から栄地区で同10月20日から12月18日まで、社会実験を実施中。都心を自転車で気軽に走り回れる日も、遠くなさそうだ。

(文/梅方久仁子)