2010年10月29日 (金)スタジオパーク 「広がる自転車シェアリング」

Q1、いつでも誰でも利用できる自転車シェアリングという取り組みが注目を集めています。出石解説委員です。

観光地などでレンタサイクルというのがありますが、どこが違うのでしょうか?

A1、レンタサイクルのひとつなのですが、通常は借りた場所に返さなくてはなりませんが、自転車シェアリングの場合は、街中にステーションが複数あって、どこで借りてどこに返しても良いというのが一番の特徴です。

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ことし3月から富山市でこの取り組みがスタートしました。市内に300メートル間隔でこうしたステーションが15か所あり、150台の自転車が配備されています。カードを読み取り機にかざしますと鍵が開きます。使い終わったら空いているステーションに返却し、使った時間に応じてクレジットカードから料金が差し引かれる仕組みです。
こちらは富山で使われているICカードですが、ほかにもカードに利用開始時間を記入してもらう方法や、携帯メールをすると暗証番号が送られてきてその番号を入力すると鍵がはずれる方式など形態は様々です。

Q2、日本ではどれくらい普及しているのですか?

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A2、赤が事業化しているところ、緑は期間限定の社会実験として行われているところ、主だったものだけですが、全国各地に広がっています。自治体が行っているところ、NPO法人やボランティアが運営しているところなど事業主体は様々です。世田谷の「がやリン」、名古屋の「名チャリ」など、親しみやすい愛称で呼ばれているものもあります。

Q3、料金はいくらくらいかかるのでしょうか?

A3、新潟では3時間まで100円、以降1時間100円。高松では24時間以内なら100円、1か月2000円、料金はそれくらいのところが多いようです。短時間の利用なら無料というところもあります。

Q4、歩くにはちょっと遠い、タクシーに乗るには、という距離なら便利ですね。

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A4、富山市ではスタートして半年あまりで、ご覧のように登録件数も利用回数も伸びています。新潟市では、このように駐輪場の場所と名所旧跡や商店街などが一目でわかる地図を配っています。この地図をみながら街めぐりや買い物が楽しめます。

Q5、自転車は排気ガスも出ないし環境にやさしい乗り物ですね。

A5、自転車シェアリングは環境への関心の高いヨーロッパで始まりました。ノルウェーのオスロやパリ、バルセロナなど、世界で200以上の都市が導入していると言われています。こちらは3年に始まったパリでの取り組みです。市内の1700か所に2万4000台の自転車が置かれていて、市民の貴重な交通手段になっています。2年後にオリンピックを控えたロンドンでもこの夏から自転車シェアリングが始まりました。400か所に6000台の自転車が配置されています。日本に較べますとヨーロッパの取り組みはかなり大規模です。

Q6、日本では放置自転車も大きな問題になっていますね。

A6、渋滞解消に加えて放置自転車対策としても注目されています。一日一回しか利用しなくても駅前などには自転車があふれます。自転車シェアリングなら駅から利用する人も使うことができます。高松市、新潟市、名古屋市などでは放置自転車の一部を整備し直して自転車シェアリングに使っています。

Q8、どんな利用が多いのですか?

A8、買い物、散策、観光などの利用が多いようです。自転車シェアリングを始めてから商店街に活気が戻ってきたという声も耳にします。高松市では、自転車で名物のさぬきうどんのはしごをする人も多いそうです。観光の活性化にも一役買っています。最近では、自動車の代わりに自転車を借りて営業に回るというビジネス利用も増えているそうです。

Q9、デメリットはないのでしょうか?

A9、雨や雪の日など悪天候の日はなかなか利用されません。毎回、乗る自転車が変わるので、ベルの位置やブレーキの効き具合などを走る前によく確認しておいたほうが良いと思います。また、どうしても人気のあるところと、ないところが出てしまいますので定期的にトラックなどで回って自転車が一か所に偏らないようにする必要があります。また貸した自転車が返ってこないというトラブルもあります。ICカードや自転車にGPSをつけて追跡するという方法もありますが、その分、コストがかかってしまいます。

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Q10、面白い取り組みだと思いますが、これからもっと普及していくための課題は?

A10、身近で利用しやすいものにするためには、コストを抑えなければなりません。直接市が運営している高松市の場合、年間2000万円ほどの赤字だそうです。IT技術を導入して無人化している富山市の場合は、バス停などに広告を設置してその広告料収入で運営コストをねん出しています。
もうひとつの課題は、道路環境の整備です。都市部では駐輪場の確保は簡単ではありません。最近、歩行者と自転車の事故も増えています。オランダでは自転車専用道が整備され、車、自転車、歩行者が完全に分けられています。いきなりそこまでは難しくても、歩道を区切って歩行者と自転車が通るスペースを分けるなど、自転車が利用しやすい道路環境を整えていくことも必要だと思います。  

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投稿者:出石 直 | 投稿時間:14:38

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