きょうのコラム「時鐘」 2010年11月2日

 尖閣諸島で中国にけんかを売られ、北方領土にロシアの大統領が土足で上がり込む。大手を振って理不尽がまかり通る

無理が通って道理が引っ込む。そんな話は落語にもある。「つぼ算」は、つぼを商う善良な店主が手玉にとられる一席。ずる賢い男が店を訪れ、まず3円でつぼを買う。男はいったん店を出て舞い戻り、6円の大きなつぼがほしい、と返却を持ち掛ける

それなら売値の3円で引き取る、と店主は言う。すかさず男は畳み掛ける。「先に3円払ってある。都合6円になるな」。「そうです」とつい口にする店主。6円のつぼが3円で買えた

笑福亭仁鶴さんの十八番で、巧みな話術に聴いている方も引っ掛かりそうになる。「先に3円渡してある」が、だましのタネ。同様に、ありもしない既得権益を振りかざすのが領土問題の火種である。道理を押しのけて無理を通す。国際政治の裸の姿をまた見せつけられた

おかしな「つぼ算」に納得できず、店主の頭はこんがらがる。「それがこっちの思うツボや」がオチ。楽しい落語だが、無愛想な隣国の指導者たちの顔が浮かんできて、笑えそうにない。