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【デフレの恐怖】(中)生き残りへ もがく企業

2009/11/03 10:30更新

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弁当購入客に総菜やサラダなどの「ついで買い」を促し、客単価アップを狙うコンビニエンスストア =東京・大崎の「ローソンゲートシティ大崎店」(兼松康撮影) 

記事本文

 10月27日の昼休み、都心のオフィスビルにあるコンビニエンスストア、ローソンのレジは、この日発売した弁当「漬け焼き牛カルビ重」を買うサラリーマンでにぎわっていた。値段は480円だが、「以前なら600円程度」(ローソン)の内容を持つ品質自慢の低価格弁当だ。

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記事本文の続き 弁当購入者の多くがサラダや総菜を一緒にレジに持ち込む。弁当には副菜や漬物はついていない。サラダが欲しければ別に買う必要がある。この「ついで買い」「複数買い」が、ローソンの戦略の根幹だ。

 昨年9月のリーマン・ショック以降、消費者の節約志向は顕著になった。弁当の売れ筋価格も急落し、「それまでの500円から398円あたりになっている」(ローソン広報部)という。高いと売れないが、客単価は落とせない。そこで「ついで買い」を促す戦略を立て、弁当の内容を高級感ある主菜に絞った。

 7月にスタートして以来、「ついで買い」戦略の対象商品はいずれも約100万食の限定数を2週間以内に売り切った。

 ただ、9月の客単価は前年同月比4.2%減と成果はまだ、表れていない。同社は「これからが正念場」と気を引き締める。

 ◆物流まで自前

 物価下落が継続するデフレの影響で賃金や雇用が脅かされ、消費者は高い買い物を敬遠する。ローソンの「ついで買い」戦略のように企業は低価格路線に工夫を凝らし、消費者の引き留めに懸命だ。そのなかで経費圧縮を徹底し、低価格でも利益を出せる経営体質を作り上げた企業もある。

 家具・インテリア用品製造販売大手のニトリは10月31日から400品目について15~40%の値下げに踏み切った。値下げは昨年5月から7度目で、対象は累計2500品目にのぼる。

 これまでの値下げ効果は鮮明だ。平成21年8月中間連結決算は営業利益が50・9%増となり、大幅な増収増益を達成した。顧客の大幅増が大きな理由だが、値下げをしても利益が出る収支構造も見逃せない。

 利益体質のからくりは製造から小売りまですべて社内で仕切ることにある。SPA製造小売り)と呼ばれる手法で、外部に支払う手数料を減らせるうえ、社内事情にあわせやすくムダも減る。カジュアル衣料ブランド「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングもSPAが得意だ。

 ニトリの場合はさらに、物流も自前だ。製品の大半を労働コストの割安な海外で生産するため製品輸送の取扱量は年間8万コンテナに及ぶが、手数料を商社に支払う必要はない。

 似鳥(にとり)昭雄社長は「価格が3分の1になれば、給料が3倍になったのと同じだ」と値下げ戦略に胸をはる。

 ただ、日本経済の将来を考えると、この仕組みにも不安がある。低価格を求めて海外生産をさらに進めれば、国内のものづくりが空洞化する。購買力の源泉である国内の雇用や所得の悪化を招く懸念は消えない。

 流通大手の幹部は「安さはあくまで、ブランド力や性能など、数ある商品力の一つであるべきだ。安さばかりが強みの日本経済は衰退する」と警告する。

 ◆中間層に照準

 最先端の高機能製品で利益を挙げてきたメーカーも方向転換を迫られている。

 電機大手パナソニックは収益の対象を得意の高価格帯から中価格帯に広げようと懸命だ。新興国の中間所得層を「ボリュームゾーン」と位置づけ、この層への売り込みを成長戦略の中核に位置づけた。

 21年3月期に連結最終赤字に転落したパナソニックは、成長が期待できる海外に売り上げの軸足を移す必要に迫られている。そのためには上位数%の富裕層に絞っていた従来の海外戦略では不十分で、「中間層であるボリュームゾーンの攻略は避けては通れない道」(大坪文雄社長)と判断した。現在、低価格で現地の生活実態に合わせた白物家電の開発を強化している。

 インドネシアでは、最も需要の大きい約1万6千円前後の価格帯で独自開発の冷蔵庫を投入。開発段階のコスト削減を徹底し、「低価格でも利益は大きい商品に仕上がった」という。

 ただ、価格優先で機能面での優位性が縮小すれば、韓国や中国のメーカーとの低価格競争に巻き込まれてしまう。同社は「最初に買う製品をパナソニックに誘導できれば、その後も買い続けてくれるケースが増える」と、まずは現地でのブランド構築に力を注ぐ。

 デフレ脱出の道筋が見えないなか、生き残りを目指した模索が続く。

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