焦げ茶色の落ち葉がいっぱいに積もった泥だらけの斜面には、捜査員のものとみられる靴の跡が残されていた。島根県立大1年平岡都さん(19)=同県浜田市=の遺体の一部が見つかった広島県北広島町の臥竜(がりゅう)山(1223メートル)。28日午前、延べ3400人の警察官が投入された大規模捜索の痕跡を見た。
27日夕、島根、広島両県警の合同捜査本部による捜索打ち切り後、山頂に向かう林道入り口は約3週間ぶりに規制線が解かれた。6日の遺体発見後、一時通れるようになったが、その後最大390人態勢の捜索が始まり、近づけなかった。
遺体の一部が見つかった8合目の車両転回場までは車で約15分、曲がりくねった細い林道を上る。ふもとの八幡高原はまだ色づいているが、山頂付近に近づくにつれ、葉を落としたブナやトチノキが目立ち始める。
転回場に向かう途中、右手に広がる雑木林の奥に、ピンクのリボンが結わえられた細い木を見つけた。7日に脚の骨が発見された付近だ。
林道からは約35メートル離れ、30度ほどの急斜面を上らなければたどりつけない。地面には高さ80〜90センチ程度のササがうっそうと生い茂り、明確な遺棄目的がなければ近づかないだろうと実感する。
転回場に着くと、名水といわれる「雪霊水(せつれいすい)」のせせらぎが聞こえた。眼下に広がるがけ下の斜面と、そこから70〜80メートル離れた雑木林で頭部と胴体などが見つかった。近くにはユリの花束が置かれていた。
転回場からは登山道があるが、さらに脇にそれなければ遺棄現場に近づけない。この日は気温10度で天候に恵まれ、捜索を困難にした雪もほとんど解けていたが、水分をたっぷり含んだ落ち葉が積もり、踏むとすき間から泥がはみ出す。
登山道や脇に入った場所には、捜査員が滑ったとみられる跡が何カ所も残り、生い茂る草木がなぎ倒され、悪環境での懸命の捜索活動がうかがわれた。
林道途中で広島市安佐北区からキノコ狩りに訪れた親子と出会った。約30年前から毎年のように訪れているという息子(50)は「これから雪が降り積もると何カ月も人が来ない。自然の豊かな山でこんな事件があって残念」と話していた。