出張結果報告
１ 研修名称
第19 期FBI 太平洋警察トレーニングコース
２ 期間
平成18 年８月７日（月）〜 18 日（金）
３ 場所
タイ王国バンコク市およびパタヤ市モンティエンホテル内
４ 主催
アメリカ合衆国連邦捜査局（FBI）
５ 日本からの参加者
警部補花嶋智外事第三課警視庁
警部補椎名美雪国際捜査課埼玉県警察
警部補山本茂外国人犯罪対策課静岡県警察
６ 参加国、地域
環太平洋地域の日本（３）、タイ（26）、豪州（１）、カンボジア（２）、香港（１）、
韓国（３）、インドネシア（１）、マレーシア（２）、モンゴル（２）、ニュージーラン
ド（１）、パキスタン（２）、フィリピン（２）、シンガポール（１）、台湾（２）、サイ
パン（１）の15 の国と地域から50 人が参加
７ 日程等（講義以外）
８月７日（月） 開会式
歓迎夕食会
９日（水） タイ国家警察主催ディナークルーズ
11 日（金） パタヤ市へ移動
12 日（土） タイ国家警察案内によるパタヤ観光（植物園等）
13 日（日） タイ国家警察案内によるパタヤ観光（水族館、ワニ園）
15 日（火） 地元協力者主催夕食会
17 日（木） 送別会（非公式）
18 日（金） 終了式（兼、送別夕食会）
８ 講義内容
（８月７日）
＜本コースについて＞
・本コースが、バンコクで開催されるのは今回が２回目。９年前から一昨年までは、
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フィリピンで行われていた。それ以前は、グアムやハワイにおいて実施。
・本コースは、各授業の項目について理解を深めてもらうことに加え、参加国相互間
における友好関係の構築を主たる目的としている。
＜サイバー犯罪＞
・サイバー犯罪局における柱については、9.11 事件以降、「国際テロ対策」、「防諜」、
「サイバー犯罪」となっている。
・サイバー犯罪のカテゴリーとしては、「コンピューター自体をターゲットとする犯
罪」、「コンピューターを利用して犯罪を実行するもの」の二つに分けることができ
る。
・現在の捜査対象の優先順位としては、
�� サイバーテロ、防諜
�� 児童ポルノ等、児童を対象とした犯罪
�� 著作権法違反（海賊版DVD 等）
�� ネット利用詐欺
となっている。
☆ コンピューターを利用して犯罪を実行するもの
○ サイバー犯罪におけるテロリズム
・サイバー犯罪におけるテロリズムというときには、
�� インフラの破壊を対象としたものや、情報漏えいを狙った直接的な攻撃
�� テロ組織のプロパガンダや情報交換の方法としてとしてインターネット等
を利用するもの
の二つに分けることができる。
�，諒�類には、国家によるテロ行為としてのハッキングいうものが入るが、現在
のところ発生していない。しかし、今後の発生が予想されることから、注意を要す
る。
�△抜慙△靴董▲謄蹈螢好箸砲茲襯ぅ鵐拭璽優奪藩�用の例を挙げると、プロパガ
ンダ、情報交換、テロの標的（インフラ等）に関する情報収集がある。情報交換に
関して言えば、e-mail を送信することなく、e-mail を下書きをしたものを同じ個人ID
を利用して開いてやりとりするという記録を残さない方法を用いており、捜査が非
常に困難になっている。
○ 児童ポルノ等、児童を対象とした犯罪
・この場合のカテゴリーとしては、
�� 児童を直接誘惑するなど、搾取の対象とするもの
�� 児童ポルノ
の二つに分けることができる。
児童ポルノに関しては、インターネットのチャット等を通じてやりとりされてい
ることが多い。
○ ネット利用詐欺
・ネット利用詐欺については、少額の被害について全て捜査することができないこ
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とから、インターネット詐欺苦情センター（IFCC）を創設して対応している。IFCC
では、インターネットによる被害の報告をインターネットで受け付けており、これ
ら多数の苦情を分析し、同じ人物によると思われる手口を発見し、事件化するとい
う方法をとっている。これにより被害者も、当局へ報告したのに無視されたとの不
満を抱くことがなくなっている。
・9.11 事件発生後に、このIFCC のホームーページを通して犯人に関する情報提供
依頼を行ったところ、250,000 件の報告があり、有効に活用することができた。
☆ コンピューター自体をターゲットとする犯罪
・1997 年から1998 年にかけて、ペンタゴンがハッキングされた事件を機に、サイ
バーテロ対策が本格的に考慮されることとなり、サイバー局が誕生することとなっ
た。
・ハッカーの他、次のものが問題となる。
�� 電話を利用するなど、直接的に応対しながら、相手の心理状態を利用して、
パスワード等を盗むもの
�� 同一システムに対する大量アクセスによりシステムの動作を不能にするもの
（通常の方法でアクセスすると追跡が可能となることから、アクセス記録の残
らないIRC ？といったシステムを利用）
�� e-mail 爆弾（多数のe-mail を送りつけることによりシステムを動作不能にす
るもの）
�� スキャナー（米国では現在のところ犯罪とならないが、他人のポートを覗き
見る行為）
�� パスワード・クラッキング
�� 電話回線への侵入により情報を入手するもの
�� 偽ウェブサイト（通常はすぐに本来のウェブサイト運用者により訂正される
ことから、一時的なもの）
�� スニッファー（ネットワークを通して行われた全てのやりとりを表示するプ
ログラム）
○ 悪質なコード
・悪質なコードの種類
�� トロイの木馬
伝染はしないが、コンピューターにダメージを与えたり、必要の無い動作
をさせる。
Net Bus と呼ばれるトロイの木馬は、簡単なゲームの形をしているが、一
度使用すると、すべてのコンピューター操作側の動作（キータッチを含む）
の情報をハッカーに与えてしまう強力なツールである。
�� ウィルス
感染するには、クリックするなど何らかのコンピューター操作側の動作が
必要。
�� ワーム
自己増殖し、感染すると何もしなくてもコンピューターに何らかの影響が
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出てくるもの。簡単に広まる。
・これら悪質なコードの伝達方法は、e-mail によるものが大半である。
☆ インターネットに関する知識
・インターネットについて知識を持つことは、裁判、特に陪審員にわかりやすく説
明できるようにするために必要であり、捜査員一人一人がよく理解しておく必要が
ある。FBI では、1986 年から将来を見越して、新たにコンピューター関連の捜査員
を募集し始めた。実際、2000 年には経済関連事犯の90 ％がコンピューターにより
行われている。
・通常の電話は、回路スイッチ型でデータの転送には、１つの道をたどる。しかし、
いわゆるIP 電話は、パケットスイッチ型で、データが転送される際、データがいく
つかのパケットに分割され、それぞれが別の複数の道を通り、最終的に統合されて
一つのデータとなる。
（８月８日）
☆ コンピューターの接続に関する知識
・コンピューターがラインで接続されている限りは、どこからでも操作が可能であ
るということを忘れてはならない。したがって、ファイアーウォール等のソフトを
導入しておかなければならない。
・インターネットで利用されている言語は英語であることから、すべての捜査員は
英語を読める必要がある。また、被害者も犯罪者もマイクロソフト社のソフトウェ
アを利用していることが大半であるから、特に、マイクロソフト社のソフトウェア
に関する知識が必要となる。
・捜査において、IP を追跡する必要が出てきた場合、これを追跡することはできる
が、現在、ワイヤレスのカードが利用されている現状を考えると、発信元がどこで
あるかを特定するのは難しい状況にある。たとえば、電波が壁を越えて、隣家から
発信されてしまう可能性があるので、令状などを取る際に注意が必要。
☆ メールに関する知識
・米国において、スパム・メールとは、要求していないメールで、同時に不特定多
数に対して送られるメールのことをいう。
・スパムメールはまた、受信者と無関係の内容である。
・メールを追跡する際には、IP アドレスおよびその送信時間が必要となる。
・メールの送信は、メール送信を専門としたサーバーを経由して送られることから、
SMTP と呼ばれるe-mail を送信する際のプロトコールが必要となる。メールを送信
した時には、必ずこの手続がとられることとなる。
・偽メールは、犯人自身が自分で送信元等の情報を勝手に書き込み、相手を騙すも
のである。
・犯罪を行う際の通信手段として、e-mail の他、IRC（Internet Relay Chat）等オープ
ン・リレーを利用してメールをやりとりしている。このオープン･リレーは、誰でも
利用が可能で、SMTP と同様のことができるばかりでなく、送信したログが残らな
いことから、追跡が不可能である。
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☆ フィッシングについて
・フィッシングは、提供すべきでない情報を提供させるための手段として、非常に洗
練化されている。
・いわゆるSocial Engineering の洗練された形である。
・ハイパーリンクページのトリックが使われる。
・フィッシングの騙す手法としてその鍵となるのは、IP アドレスにある。メールを
送信する場合、メールは、分割され、それぞれが様々な中継点を経由して最終目的地
へ届くが、経由したコンピューターごとにこれを受け取った旨のメッセージが加えら
れることになっている。つまり、オリジナルのメッセージの一番近くにあるアドレス
が犯人に近いこととなる。
・フィッシングでは、メールフィルターによるメールの排除を避けるために、特定の
言葉についてはコード化して送信される。コード化には、＜・・・＞を挿入すること
により行われるが、＜＞の間の文字は、プログラムとしては、無視されるがHTML
では認識されるという特性を利用している。
・フィッシングで利用されている手段としてよく見られる例は、
− 表示されているアドレスは、単なるテキストで、実際の接続先が違うもの
− 似通ったアドレスを利用するもの
− 本物のアドレスバーの上に、別のアドレスバーの画像を表示するもの
（Internet Explorer のみに有効）
− 犯人自身が立ち上げたセキュアサイトに接続させるもの
などがあるが、この他にも、様々な方法を利用している。
・米国では、オンラインの決算方式を利用する者が増えていることから、今後は、消
費者を教育することが必要である。
☆ その他コンピューターに関する知識
・インターネットの履歴を見る方法（一般公開されているソフトウェア、別CD 内
の"Forensic Kit"を利用）
〜これを利用すると、削除したはずの写真データも撮影年月日とともに復元可能
・現在米国では、安くて速度の速いワイヤレス・ホーム・ネットワークを利用する
者が増えている（約40 ％が利用）。しかし、このネットワークは家の外からも受信
が可能であり、公道からでも利用できる場所をオープン・アクセス・ポイントと呼
びハッカーや犯罪者が利用している。この場合、他人のアドレスを利用することと
なるから、本犯を特定するのは難しい。
消費者側の防止策としては、
− ユーザーネーム、パスワードの変更
− 暗号化（通称ＷＥＰ）
− SSID を送信（ブロードキャスト）しない
− メディア・アクセス・コントロール（通称ＭＡＣ）を利用してアクセスで
きるコンピューターを限定する。（ハッカー等であれば、メディア･アクセス
・コントロールの内容を変更することも可能であるが、時間がかかるので別
のオープン・アクセス･ポイントを探したほうが早い）
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等がある。
なお、犯罪者は、何度も同じオープン・アクセス・ポイントを利用する可能性が
ある。
・サイバー犯罪における証拠の検索と捜索差押について、何が物的な証拠となるの
か、等基本的な知識として知っておきたい。
（８月９日）
＜テロ資金捜査＞
・人間が生活していく上では、必ず「金」が必要である。そこで、「金」の循環に目
をつけることから全てが始まる。また、慈善事業等の名目で「金」が集められる実態
を考慮すると銀行口座を調べる必要が出てくる。
☆ 捜査の手順
・捜査の端緒となる情報は、
− コミュニティーとの信頼関係の構築に基づく情報入手
− 金融機関からの情報入手（一定額以上の取引の報告、クレジットカードの
利用状況等）
− 税務
− 法律に関する知識を利用した各種法令の適用
− ゴミ作業
などから、入手される。
・これらの情報をもとに、各機関との連携の下、捜査が実施されることとなるが、
最も重要となってくるのが、本部であり、本部が全責任を負うとともに捜査をコー
ディネートしていかなければならない。
・捜査経済上の無駄をなくすためにも、捜査の打ち切り時期の判断も重要である。
・通常の犯罪とテロ資金捜査の違いとして、通常の犯罪では、個人や一定のグルー
プによる犯行で、利益を追求し、大金が送金されるというのが一般的である。一方
で、テロ資金捜査の場合は、必ずしも利益を追求しておらず、少額の資金の動きし
かなく（オクラホマシティー爆弾事件では、500 ドルしか、かかっていない等少額
で爆弾を製造することは可能）、さらに捜査対象にあっては、慈善団体やテロ支援
国家であったりと実質的に捜査依頼が不可能である場合などがあり、困難を伴う。
・テロリストの基本的な概念に、MICE(Money, Ideology, Coercion, Ego）があり、テ
ロの理解の根拠となる。
・テロ捜査の３つのステップとして、Investigation（捜査）、Regulation(規制）、Procecutor
(検察−基礎）がある。
・いわゆるホワイトカラークライムとテロ対策をあわせたものが、テロ資金捜査と
なる。
☆ 世界における国際テロの傾向
・9.11 事件以降、テロが発生してからの捜査から、発生する前の捜査へと移行。そ
の中で、テロ資金対策として、情報収集、事件化、金融機関等に対する教養（プレ
ゼン等）を実施している。
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・米国内におけるアル･カーイダによる資金調達は、（合法・不法活動を通じた）自
己調達、モスクやNGO を通じた調達などが行われている。
これまでに判明したテロ資金の調達方法には、以下のものがある。
○ ヒズボラのケース
・州ごとに税額が異なることに目をつけ、煙草の販売を通じて資金を調達。
○ ハマス等のケース
・モスクやイスラム系NGO 等による募金活動等を通じて資金を調達。
○ PIJ（パレスチナ・イスラム聖戦）のケース
・テロ支援国家からの資金提供およびモスクやNGO にる募金活動を通じ
て調達。資金の移動には、外交チャンネル、クーリエ、両替、通常の銀行
送金などが利用された。
・NGO によるテロ資金の調達に関する捜査は大変困難である。米国内には、膨大な
数のNGO が存在しており、この中から如何にして対象を見つけるかが課題である。
例えば、モスク等の掲示板には、NGO によるチャリティーの募集やハワラ、中古
自動車の取引に関する情報が掲示されていることが多いが、アラビア語等の言葉で
書かれていることから、これらの情報を実際に入手するのは困難である。さらに、
これらの募集元のNGO 等を分析し、テロ組織との関連があるかを見極めていかな
ければならない。
また、米国を拠点としないNGO（例えば、アル・ハラマイン、IIRO）も存在する
ことから、その捜査は多岐に亘る。
しかし、9.11 以降も資金調達の方法には変化は見られておらず、今後もテロ組織
のフロントNGO、あるいは、“腐敗した”NGO を見つけていく必要がある。
☆ 事例
・Benevolence International Foundation（BIF:慈善国際基金)は、テロリストの移動費用
を提供。また、Holyland Foundation（聖地基金）は、ハマスに資金を提供していた。
これらの事犯等から判明したテロ資金調達に利用されるビジネスは以下の通り。
− 大規模な複合商売
− 医薬品販売店
− 貿易・投資会社
− 武器取引
− 免税店
− 旅行会社
− 輸出入業者
− 製造業
− 麻薬取引
・9.11 事件以前、テロ資金は、通常の銀行送金を利用して直接的にテロリストに提供
されていた。しかし、9.11 以降は、資金の移動が困難となり、様々な方法を利用し
ている。
・9.11 事件の犯人の特徴として、
− どの人物も有効な社会保障番号を持っていなかった。
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− 社会保障番号の偽造は簡単である。
− 銀行口座を開設するのに、サウジアラビア等の旅券を利用していた。
− 3,000 〜 5,000 ドルで口座を開設。
− グループで口座を開設。
などがあった。
・各国のアル･カーイダ・セル（セル＝アジト）における資金調達方法、特徴等
○ マドリッド・セル
− セルのメンバーにより経営されていた会社（家屋の修繕、配管工、電気工、
に勤務
− 自動車販売業
− クレジットカード詐欺、文書偽造、自動車盗、空き巣等の犯罪行為
○ ハンブルグ・セル
− 銀行取引を隠匿しようとはしなかった。
− 生活保護を受けているなど、日々、その日暮らしであった。
− 偽造カード、ハシシ（麻薬）取引、ひったくり、強盗等の犯罪行為
− 武器の密輸、偽造旅券の販売、窃盗、密入国等の犯罪行為
○ フランクフルト･セル
○ ミラノ･セル
○ マレーシア、シンガーポール・セル（JI）
− 合法ビジネス（化学剤・医薬品販売、コンピューターソフトウェアの販売）
− ビジネスを通じて、爆弾製造に必要な材料を調達。
○ その他（米国）
− ザカリアス･ムサウイは、パキスタンから米国へ入国する当初から、32,000
ドルを申告。さらに、アル･カーイダ幹部ラムジ・ビナルシブから同人の口座
へ14,000 ドルの入金があった。
・以上のようにテロリストによる資金調達はあらゆる可能性がある。
（８月10 日）
☆ FBI におけるテロ資金対策に関する体制、方策等
・FBI では、テロ資金に関する教養プログラムを作成し、各金融機関に教養を行う
と共に、世界中の金融機関との関係構築を行っている。
・テロ資金対策としては、「戦略」と「評価」つまり、テロリストグループの解体、
と目的の達成を具体化すべく活動している。
・体制としては、ハマス、ヒズボラ、イスラム聖戦を担当する班、アル･カーイダ、
ジェマア・イスラミア（JI）等の過激原理主義組織を担当する班、各世界の地域ご
との過激原理主義組織を担当する班に分かれて、テロ資金の捜査を行っている。
・米国では、Bank Secrecy Act （銀行秘密法）により、10,000 ドル以上の現金
取引については、報告義務がある。これらの報告については、データベースとして
蓄積されており、これにFBI の情報を加えて、検索ができるようになっている。ま
た、地図上に取引等があった場所を落とすプログラムがあり、分析に利用している。
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これらの情報から、FBI が抽出して調べたものの内、約半分が外貨取引に関する
報告で、疑わしい取引に関するものがこれに続く。
外貨取引に関する報告は、9.11 以降増加しており、ハワラ等のいわゆる地下銀行
が利用されなくなっている現われではないかと考えている。
外貨取引に関する報告自体は、裁判で証拠としては使えないが、個々の書類は裁
判における使用が可能である。
疑わしい取引については、銀行等へ直接出向いて教育することにより報告が増加
している。着眼点については、それぞれのケースにより違うので、定型的なものが
あるわけではない。
・国際協力の重要性
公式ルートと非公式ルートにより、多元的に捜査協力を進める必要がある。
（８月11 日）
＜汚職＞
・公務員の一人でも汚職に関与すれば、政府への信頼が低下し、業務推進上、多大な
影響があることから、FBI の捜査においては一番の優先事項となっている。汚職捜査
の担当者は、５年で倍になっており（現在、600 名）、汚職で起訴された者も倍増し
ている。FBI が何故担当するのかというと、米国の全国的な傾向を把握することがで
きることが大きい。
FBI は全国に管轄権を持つこと、検察等との連携が強いことがその理由である。
・汚職事件は、地球的規模の公務の信用性を守るため、また、汚職があらゆる種類の
犯罪へ浸透する恐れがあることから、その捜査は重要である。
・汚職事件は、仲間内で行われており、表面化しにくく、捜査が困難であり、捜査の
センシティヴさ、対象者のカリスマ性、公共性などがさらに捜査を困難にさせるが、
証拠として一番求められるのが、実際の会話である。
・証拠収集に音声録音あるいはビデオ録画は有効である。
・汚職の形態としては、贈収賄、脅迫、横領、偽造等があり、密売、薬物、マネーロ
ンダリング、ギャンブル、売春等を誘発する。
・汚職の種類としては、法執行機関の汚職（刑の軽減など）、立法機関の汚職（贈収
賄）、行政機関の汚職（ライセンス、証明業務、検査業務など）、司法機関の汚職（弁
護士へのリベート、保護観察に伴う詐欺など）がある。最近の事例として、交通局の
汚職や、選挙時の投票に関する詐欺あるいはハリケーン被害に伴う詐欺等があげられ
る。
・世界的に見ると、汚職の原因は、低賃金に由来するものが多い。
・また、モチベーションの欠如、脆弱な監視機能、政府の透明性、信頼性の欠如、、
大きすぎる政府、脆弱な捜査のシステム等も原因である。
・ビジネスにおける危機管理に影響し、結果、政府の信用をも破壊する。
・汚職に関連した企業については、罰金に加え、政府との取引もできなくなる。
（８月14 日）
＜犯行現場＞
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・犯行現場に同じ現場はないが、捜査に関して、やらなければならないことはいつも
同じである。証拠収集は、裁判を左右するものであることから、慎重に行わなければ
ならない。FBI では、どこの警察でも全く同じ方式で証拠収集をする様に教育してい
る。
・犯罪現場をどのように保存し、管理するかが重要である。
・何が証拠となるのか、証拠として採取したものは、裁判で使えるものなのか等機能
的にまたプロフェッショナルとして判断すべきである。
・鑑識のチームは、８人編成で、チームリーダー、写真、図面、記録、採証、専門家
で構成される。現在、FBI には142 チームある。
・鑑識の手順については、現場に臨場する全ての捜査員が知っている必要があり、例
え上級幹部であっても、基本的な事項を守らなくてはならない。特に、現場への出入
りについては、１箇所だけにして出入りのコントロールだけは確実にする必要がある。
・アメリカでは、鑑識活動、証拠収集に立会人を必要としないが、捜査員２名によっ
て行い任意性を担保している。国によって（例えばメキシコなど）は、立会人を要す
る。
☆ 現場保存要領
・現場における採証の12 段階
準備〜現場到着〜現場保存〜初期調査〜証拠として利用できるかの評価〜
ビデオ撮影をしながらの口頭説明〜写真〜図面〜詳細のスケッチ〜採証〜
最終調査〜現場離脱（解除）
※ 全ての場面において、個人の安全の確保を考慮する必要がある（汚染物質、
ブービートラップ（偽装爆弾）等）。また、別の現場へ行く際には、服を変え
る。
・事前準備
− 全ての資器材を搭載した車両
− 専門家との連絡
− 任務分担
− 捜索令状
− 鑑識員に必要なもの（水、食事、シフトの調整等）
・現場到着
− 個人の安全の確保
− 立ち入り禁止区域の設定
・現状保存
− 屋外の現場では、天候による影響を考慮
− 立ち入りできる者とできない者の区別
・写真
− 出入り口から撮影
− 全体（航空写真等を利用すると陪審員に分かりやすい）、中距離、接写
− 写真が終わるまで物は絶対に動かさない
− なお、デジタルカメラの写真（データ）については、画像の改変が可能であ
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ることから、「書き込み不可」のディスクに記録することで、改変を防ぎ、ま
た、裁判において証言することで証拠として採用が可能となる。
・採証・記録
− 細部まで実施、急がない
− ２人以上で実施
＜簡易爆発物IED ＞
・IED は、爆薬、爆破装置、容器から構成される非軍事用・非商用もしくは改造爆発
物である。低爆発物には、黒色火薬等の火薬類が当たる。高爆発物には、C4 等の軍
用爆弾等がある。低爆発物が十分な破壊力を持つためには、容器が必要となる。
・IED には、電気的な装置をヒューズとして利用し、爆発させるもの、化学変化を利
用して爆発させるもの、両方を利用して爆発させるものがある。テロリストが多用す
るTATP を爆発させる際には、電気的な装置を利用する。電気的な装置を利用する場
合には、現場から電池が見つかる。
・容器については、爆薬の量に応じて大きさが異なってくる。車両を利用するものか
らパイプを利用するものまで色々ある。また、容器が破裂した際の破片により、人を
殺傷することを考慮して選択される場合もある。
・爆発の方法としては、時限式、被害者自身による作動、命令等がある。
・IED の知識の入手方法
− インターネット
− 軍のマニュアルの複写
− 市販の雑誌、ビデオ
− 軍での訓練
− 民間人の訓練
− 高校、大学での授業
・FBI では、IED の内容物、構成等から使用組織を特定できるデータベースがあるこ
とから、必要があればいつでも照会に応じる。
＜血液・体液の採取＞
・いずれも採取前には、写真撮影、スケッチ、書類化が必要である。
・DNA 資料の採取
血液が一番。尿からもDNA が採取できるが現在の技術では、十分な人物特定は不
可能。
・DNA 資料をラボへ送る時には、絶対に混ぜないように注意。また、ビニール袋に
入れずに、紙袋にいれる。（湿気がDNA を破壊してしまうため）
・血液の検出には、FBI では２種類使用している。
− フェノールフタレイン法
メリット：安い、瞬時に反応、血液のみに反応
− ヘマスティックス法
メリット：使いやすいデメリット：DNA を破壊
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・血液反応のテストが陽性であった場合には、小さな物であればそのまま採取。大き
なものであれば、切り取るか、ふき取って採取。
・見えない血液の検出には２種類ある。
− ルミノール
完全な暗所で実施、反応が出た場合に写真撮影
メリット：1930 年代から利用、DNA を破壊しない
デメリット：すぐに消える、完全な暗所でないと駄目
− フルオレセイン（蛍光色素）
メリット：使いやすい、長持ちする
デメリット：1990 年代から利用
特別の光源（ALS）が必要であるが高価
・アメリカではDNA サンプルのデータベース化は進んでいない。国家的なFBI の
DNA データベースは、在監者等が人権を主張しDNA サンプルの採取に反対するな
どし、不完全なものとなっている。
・なお、ニュージーランドでは、いち早くDNA サンプルのデータベース化を進めて
いるイギリスに習い、起訴された被疑者のDNA サンプルの採取と一方で個人からの
任意の提出によるデータベース化を進めている。
（８月15 日）
＜車両の捜索＞
・捜索の前に、法的根拠、強制か任意か、令状の確認、目的物の確認、採証の12 段
階の手順を踏むことを忘れない。掃除機を使用する場合は、場所ごとに容器を変える。
・基本であるが、破壊されやすいものから採取する。
・その他、警察犬の使用、特別な接着剤による作業、走行距離計の確認、タイヤの溝
のパターンなども捜索時の確認ポイントとなる。
＜爆弾事件発生後の捜査＞
・捜査担当のリーダーが重要。捜査の目的、方法等を決定するとともに、指揮所との
やりとりを行う。
・爆弾事件捜査の問題点としては、事件後の混乱、ブービートラップ（偽装爆弾）な
どによる被害に対する安全性、犯行現場の保護等がある。
・捜査については、現場内の捜査を担当する班と現場外での捜査を担当する班に必ず
分けて実施。
・現場外の捜査では、街頭防犯カメラの映像入手や目撃者への聞き込み当を実施。爆
発後の煙の色により、軍用（黒い煙）、商用（白い煙）が判別できる。また、被害者
対策なども重要。
・現場に人間の頭だけが残っていた場合には、自爆の可能性が高い。
・現状保存は、爆発の中心部から、一番遠いところにある爆発物の破片までの距離の
1.5 倍を半径とする地域とする。
・車両については、車両固有の番号から被疑者等の特定、身分事項の確認等の捜査が
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可能である。
・証拠の採集に当たっては、直線状、螺旋、グリッド等の方法がある。
・報道に対しては、絶対に何も話さない。犯人が技術を改善するのに利用されるのを
防いだり、公判対策のため。
＜潜在指紋＞
・14 点から18 点による照合。
・関節や先端部、手掌など各部位を採取する場合は、インクを使用するが、FBI では
基本的にデジタルイメージをスキャナーで読み込んでいる。地域レベルの警察ではま
だデジタルイメージを採取できない署等もある。
＜血痕の分析＞
・血痕の点の大きさにより、打撃の強さ・速さがわかる。打撃が強ければ、点は小さ
くなり、弱ければ大きくなる。
（８月16 日）
＜組織犯罪＞
☆ FBI における組織犯罪の定義
・恐怖や腐敗により助長される欲により動機付けられた組織的構造を持つ継続的な犯
罪謀議等をいう。
・FBI では、高度に洗練された犯罪組織を特定し、破壊し、壊滅することを使命とし
ている。また、組織犯罪に関しては、1 年間に200 件ほどの連邦法違反の事案を扱う。
☆ アジアにおける組織犯罪
・秘密捜査官の選任については、様々な観点から適任者を選択。6 ヶ月以上の長期に
わたる捜査については、本部で実施。
・アジア地域における優先順位としては、
�� 北朝鮮
�� 日本の暴力団
�� 東南アジアにおける麻薬取引
�� 人身売買
となっている。
☆ FBI における組織犯罪捜査
・FBI では“捜査の企業説（ETI：Enterprise Theory of Investigation）”を取り入れ、
犯罪組織の特定および資産凍結の二つのアプローチを同時に行っている。また、日
本の暴力団と違い、階層がはっきりしていない組織犯罪に対しては、RICO 法
（Racketeering Influence and Corrupt Organizations）を活用して取締りを行っている。
☆ 米国における組織犯罪
・1990 年代ころから、福建省出身者による組織犯罪が増加。（1980 〜 1990 年代は香
港出身者によるものが多かった。）
・福建省出身者による犯罪としては、人身売買、恐喝、麻薬（エクスタシー、覚せ
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い剤）が見られる。また、韓国出身者によるものは売春等、従来型の犯罪が多い。
ベトナム出身者によるものは、窃盗やストリートギャング、あるいは中国人の下で
働くといったものが多い。
☆ 共謀罪
〜 ケーススタディ
・アメリカでは、２人もしくはそれ以上の者による犯罪の敢行あるいは不法行為を
通じた目的の達成に関する合意を共謀と定義し、共謀罪は10000 ドル以下の罰金あ
るいは、５年以下の懲役もしくは双方と法律に定められている。
☆ これまで行ったオペレーションの紹介（それぞれコードネームが付いている）
○ トロピカル･ストーム
・1990 年年代に日本の暴力団が覚せい剤をハワイで売買していた事犯。
・ETI 説を活用し、組織の解明等に成功した事例。
○ ロイヤル･チャーム
・昨年まで約５年をかけて行った中国マフィアによる偽造タバコの密輸に関する
オペレーション。最終的には、北朝鮮につながるなど、北朝鮮が犯罪の面からも
最重要対象であることが明らかになった。
☆ 情報源（捜査協力者）
・情報提供者による捜査への協力は不可欠である。情報提供者の開拓とその取扱には
慎重さを必要とする。
＜犯罪情報分析＞
・犯罪情報としては、戦術的なものと戦略的なものに分けることができる。戦術的な
ものとは、オペレーション等短期間に必要となる情報をいう。また、戦略的な情報は、
捜査方針の決定等に利用される。
・情報分析は以下のステップが繰り返されて行われる。
�� インテリジェンス･ギャップ（足りない情報は何か？）・必要性の策定
�� 方針の決定
�� 収集と情報の評価
�� 処理および利用（関係者のチャート作成等）
�� 分析と提示・提供
�� 情報の配信〜配信の基準
注意すべき点：情報提供者の保護、秘情報の扱い、情報源の表示
・情報分析でいつも問題となるのが、情報の逆流である。また、配信の遅延、個人の
先入観・偏見等も問題となる。
（８月17 日）
＜ ETI 適用例＞
・香港三合会に対して適用した例。複数の組織が１つの組織として活動したことを証
明。通信傍受が多くの情報を提供。潜入工作等も実施。
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・フランク・マのグループに対して適用した例。ベトナム人グループと中国人グルー
プが関与。ヘロイン密輸、人の密輸、殺人を敢行。自動車盗で連邦令状の発付を受け、
検挙。10 件の殺人事件に関与していた。また、福建からニューヨークへ密入国した15
名が検挙された。密入国等の事案では通常保釈等は認められない。
・カナダとの捜査協力が功を奏した。
・アメリカと中国の間には逃亡犯罪人引渡し条約がなく、中国に逃亡した被疑者の引
渡しは、基本的には無理である。
→ ETI を実施する際には、時間、人員、道具、全力を注ぐことが必要。ETI は重要な捜
査ツールである。対象者に協力を促す洗練されたテクニックであり効果的である。
・アメリカでは、外国における通信傍受も適法に行われている以上、裁判の証拠とし
て使用できる。
＜取調べの技術＞
・「Interview」(事情聴取）と「Interrogation」（取調べ）の違いについて。事情聴取は
任意であり、相互の会話、メモを取る、ストレスのないといった特徴があり、取調べ
は詰問的、支配的、項目だった質問、メモを取らない等の特徴がある。
・少しでも陪審員に攻撃的ととられると、証拠として採用できなくなってしまうため、
米国では取調べのビデオテープによる記録はしていない。
・オーストラリアでは、取調べは全てビデオ録画あるいは音声録音がなされている。
・取調べの場所としては、相手が上の立場に立たないようにできる限り、警察施設内
の取調室で行うようにする。ただし、環境は快適にしてできる限り安心して話せるよ
うにする必要がある。
・取調べにおいて重要な点は、信頼関係の構築と相手の年齢、性別等に応じた取調官
の選択である。
☆ 虚偽の供述
・虚偽の供述を避けるためには、事前に相手が何を知っているかを把握、答える前
にこちらから口を挟まない、最初の容疑を認める供述を信じないことなどが必要。
☆ ポリグラフ
・供述の真偽を判断する際、目の動きをで判断する方法や声の震えをコンピュータ
ーで分析する方法などがあるが、これらは正確度が50 ％でしかない。しかし、ポリ
グラフは、その正確度が85 〜 90 ％あることから、FBI でこれを採用している。ただ
し、裁判の証拠として利用するのではなく、供述者が本当のことを言っているかを判
断するために利用している。その供述者は、捜査対象者、目撃者、情報提供者、協力
者、被害者、FBI への採用志望者であることもある。
＜不法入国＞（Alien Smuggling）
・一般的に不法入国は、組織的に行われていないことからETI を適用することが困
難。米国では、ヒスパニックや中国人が多い。
・不法入国の方法としては、査証の偽造、フロント企業（旅行会社、バス会社、タク
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シー会社、レンタカー会社）、宗教施設、職業斡旋会社等を利用している。
・問題点として、退去強制の費用負担、コミュニケーションの困難性、雇用・学生・
婚姻等に基づくビザ関連の詐欺事案の増加等がある。
＜人身売買＞（Human Trafficking）
・不法入国と人身売買の相違は、人身売買には、暴力、詐欺、強制等が伴うことであ
る。不法入国はお互いの合意により成り立っている。人身売買の被害者は、世界中で
年に600,000 〜 800,000 人いるとされ、その内80 ％が女性や少女であり、その70 ％
が性産業に従事させられている。アメリカでは年間145000 人〜 17500 人の被害者
がいるとされる。また、被害者の人種構成としては、ヒスパニック34 ％、アジア21
％、アフリカ16 ％、アメリカ13 ％、東欧８％、不明８％となっている。
・人身売買は、「現代の奴隷制度」との考え方のもと、なによりも国民の教育が大切
である。
（８月18 日）
＜参加各国からのプレゼン＞
・洪水による被害者特定の際の鑑識作業について
・DSI について
〜 2004 年に設立、より高度かつ専門的な捜査を担当
・ナイジェリア人によるインターネット詐欺事犯
〜被害者は皆高等教育を受けている者であった。
そのほとんどがウエスタン・ユニオンを通して送金されていた。
○ タイ
○ 豪州
○ カンボジア
・カンボジア国家警察の紹介。
・今後の課題としては、マネロン、反テロ、汚職に関する法律を作ること。
○ 韓国
・情報の共有化に向けた取り組みについて
・今後、検察への送致など、調書等のやりとりは全て電子データによるものとな
る予定。
○ インドネシア
・バリ島テロ事件の捜査について
○ マレーシア
・マレーシアにおけるサイバー犯罪について
○ ニュージーランド
・DNA のデータバンクの有効性について
〜重大犯罪者については、DNA を採取
犯罪現場に残されたDNA サンプルの資料化
○ パキスタン
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・何故米国は、アル･カーイダの幹部を捕まえることばかりに躍起で物事の根本
から解決しようとしないのかといった疑問の提起。
○ シンガポール
・シンガポールの紹介、治安状況
○ 台湾
・台湾における犯罪傾向について
○ 日本
・偽造クレジットカード詐欺等事件について
９ 配布資料
○ Pacific Training Initiative Global Challenge for Law Enforcement 2006
○ Cybercrime Investigtion
○ Terrorism Training for Law Enforcement
○ Public Corruption
○ Crime Scene Investigation w/Post Blast Volume 1
○ Crime Scene Investigation w/Post Blast Volume 2
○ Organized Crime
１０ 所見
○ アジア太平洋地域の警察官が、それぞれ国や文化、言葉も違う中で、警察官（法執
行機関）としての日常の活動や抱えている問題に共通点を見い出したり、また相違点
を知ることで今後、自らの国の制度、方法等についての理解を深める、あるいは改善
すべき点を考えるなど、参加者がそれぞれ個人として、また組織への還元ができる研
修であったと思う。内容的には、基本的な捜査事項も多かったものの、FBI が昨今、
最も重要視しているテロ対策や、サイバー犯罪等の講義は興味深かった。一方で、講
義が主だったことから、参加者による意見交換の時間がそれほど取れなかったのが残
念でもあった。主催者であるFBI としても今回の研修の目的は今後の業務上の国際
協力の円滑化を図ることにあるとしており、今後のコンタクトポイント作りをするこ
とができた。現在の業務では、国際捜査共助等を担当していることから、FBI をはじ
め、アジア各国の捜査機関との連携が図れたことは有益であった（埼玉：椎名）
○ 本コースは、元来、米国の麻薬取引や人身売買等の組織犯罪が東南アジア等の組織
により実施されていることが多いことから、FBI が各国警察とのパイプを作り、情報
入手や捜査を容易にするためにはじめたものと考えられる。しかし、9.11 事件以降、
FBI においても国際テロの捜査が優先事項となったものと見られ、本コースの内容の
どれも国際テロを念頭に置いた講義が中心となっていた。
講義内容は、多くの範囲を網羅しようとしているため、どうしても表面的となりが
ちで、警察官であれば誰もが知っているようなものがほとんどで、これといって今後
の執務の参考になるようなものはなかった。各国の参加者の大半は、捜査部門に従事
しているものであったが、その他にも様々な職種の者がいることから、全ての者が満
足できる内容とするのは難しいと思われるが、どの参加者も口をそろえて、講義は退
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あるとの印象であった。
一方で、FBI のコーディネーターが本コースを通して強調していたのが、各国警察
がパイプを持ち、何かがあれば直接コンタクトをとって情報交換ができるようなネッ
トワーク作りをして欲しいということであった。この点では、ほぼ毎日のように顔を
あわせ、授業以外でも食事をともにするなど、特別に努力をしなくても知らず知らず
のうちに繋がりができていたと思え、その意味では本コースの目標を達成していたも
のと思われる。
私自身も、いわゆるインテリジェンスを担当するものが少ない中で、共通の話題を
探すのが難しいところもあったが、当課の対象国人も多数いたことから、彼らから直
接話を聞くことができたのは大きな収穫であった。今後、現在の業務にこの繋がりを
生かしていきたいと考えている。また、外事第三課の業務上、国際的な協調関係が必
ず必要となってくる可能性があるので、今後もこの種の研修があれば積極的したいと
考える。（警視庁：花嶋）
○ 講義の内容は、突っ込んだものではなく、概括的なものが多く、それを専門として
いる捜査員には物足りなかったのではないか。私自身では、テロ対策、爆発物捜査、
サイバー犯罪捜査は日常で扱っていない分野なので、興味を持って受講できた。しか
し、講義で話される英語は、専門用語も多く、私の語彙力では、その場では理解でき
ず、後から単語を調べる作業も必要だった。
講義で紹介した事例（ケーススタディー）については、具体的な捜査手法（潜入の
方法等）や、各法執行機関との連携、また、外国との法執行機関との連携について、
さらに詳しく説明して欲しかった。
また、本コースもう一つの目的である各国捜査機関との良好な関係の構築について
は、２週間の間に互いにかなりの交流が持たれ、相当な人間関係が醸成されたものと
考える。しかしながら、警察庁を通さない情報交換の禁止という国際捜査共助の絶対
原則の前に、いかに、情報交換（照会・入手）し、後に、正規なルートに乗せていく
かが課題である。
今回、日本からは、３人とも警察からの参加であったが、韓国は検察、警察、対北
朝鮮の情報機関それぞれ各１人の参加、台湾についても警察及び警察以外の情報機関
職員の参加、香港は税関職員の参加であり、これらの国（地域）の参加者からは、「何
で、全員警察なのか」という驚きの声もあり、ＦＢＩの参加要請の条件にもよるが、
今後は、日本も、警察以外の法執行機関からも参加させることができれば、日々なか
屈である旨を述べていたことを考慮すると、講義自体は、あまり、意味のないもので
なか円滑な関係が図れない国内の関係機関との関係構築の一助にもなると感じた。（静
岡：山本）