平成20 年６月13 日
外事第三課
サミット本番に向けた首都圏情勢と対策
１ 情勢
米国は、本年４月30 日、｢2007 年テロ年次報告書」を公表し、国際テロ
の情勢について、「アル・カーイダが、米国及びその同盟国にとって最大
の脅威であるとの認識に変化はない」と述べるなど、依然、Ｇ８各国に対
するイスラム過激派によるテロの脅威は深刻です。
わが国でも、サミットを直前に控え、本年４月、国際テロ組織アル・カ
ーイダのナンバー２とされるアイマン・ザワヒリが、日本が攻撃対象とし
て、｢日本は、イスラムの土地に対する十字軍(遠征)の共犯者である｣とし
て、テロの可能性に言及したほか、５月には日本のアニメの表現が、「イ
スラムを冒涜している」として、イスラム教徒の反発を招いた事案も発生
しいます。こうしたことから、これらの情勢に触発されて、過激化した個
人などがサミットの機会にテロを敢行する可能性も懸念される情勢にあり
ます。
警視庁公安部は、特に注目すべき最近の国際テロの傾向として、�．曄�
ムグローン・テロリストの出現、�⊆蠕叔�弾の使用、��ソフト・ターゲッ
トが狙われている、という３点を掲げ、その対策に取り組んでまいりまし
た。３年前の｢グレンイーグルズ・サミット｣開催期に発生した「英国・ロ
ンドンにおける同時多発爆弾テロ事件」では、非イスラム圏で生まれ育ち
ながら、何らかの影響で過激化した「ホームグローン・テロリスト」が、
手製爆弾を用いて、首都の公共交通機関を狙ってテロを敢行しました。今
次サミットも、サミットは北海道洞爺湖で開催されますが、あくまでも｢首
都東京が主戦場」との認識の下、各種対策に取り組んでおります。
２ 対策(今後の予定に係る内容はすべて12日現在のもの)
現在、国際テロ対策としては、外事第三課長以下216 名体制で、以下の
各種対策を強化推進しております。
(1) 対象国人(イスラム諸国人)等の実態把握
イスラム・コミュニティーがテロのインフラとなり得ることから、イ
スラム諸国人の実態把握率向上を目的としてポイント制による特別表彰
を実施してます。これまでに約12,677 人(H20.5.31 現在)（都内のイスラ
ム諸国外国登録数14,254 の約89%）を把握しデータ化しています。
(2) 各種管理者対策
化学剤取扱業者、ホテル、レンタカー、インターネットカフェ、ハラ
ール・レストラン、中古車業者等テロのインフラとして利用されるおそ
れのある業態ごとに、時期を指定して強化期間を設定の上、各警察署に
おいて当該業態の管理者と面接させ、不審情報の収集及び即報体制を強
化しています。化学剤取扱業者に対する対策の成果としては、薬局から
の通報により、手製爆弾(TATP)を自宅で製造していた日本人男性の発見
・逮捕に至った好事例も報告されております。また、担当課による粘り
強い対策の結果、現在、都内に本社を置くレンタカー業者大手４社(トヨ
タレンタリース、ニッポンレンタカー、オリックスルレンタカー、ニッ
サンレンタカー）から、照会文書なしで利用者情報の提供が受けられる
関係が構築されており、特にイスラム諸国人等が利用する車両に係る情
報については、現場での検問に資すると思われることから、当該情報の
警備部との共有について、現在、細部を調整中である。
(3) ホテル対策
ホテル対策については、�”埒馨霾麈�知時における警察への通報、��
外国人旅券の写しの保管の徹底、について、管理者対策を推進していま
す。５月末現在、外国人が利用する686 施設のうち、旅券の写しを保管
していないのは177 施設（旅券写し保管率74%）であるため､引き続き､
粘り強く協力を働きかけています。
(4) 不審者情報の収集活動の強化
担当課では、提報者、管理者、一般人等による情報提供を通じて入手
した国際テロに関する容疑が払拭できない不審な情報を「不審情報」と
定義して、各警察署に挙署一体となった情報収集体制の確立と容疑解明
の徹底を指示しています。本年１月24 日から６月11 日までの報告件数
は209 件(入手経路：管理者120 件、提報者25 件、巡回連絡23 件、その
他41 件)に達し、継続案件については21 件となっています。
(5) 要警戒対象者警戒の強化
サミットに向けて、テロ等の不法行為を行うおそれのある者を要警戒
対象に指定し、６月23 日からサミット終了までの間、常時厳重な視察・
行動確認を実施して容疑解明を強化推進する予定です。現在、鋭意警戒
対象を選定中ですが、ネット上のチャットルームで過激な言動を繰り返
すイスラム諸国出身者や、テロ組織のメンバーを自認するイスラム諸国
出身者らが候補に挙がっております。また、併せて都内のモスク・礼拝
所に対する視察体制を強化して出入り者の実態把握を強化します。
(6) 来日者対策
４月１日から来日外国人の査証申請に係る情報に基づき、�‥�該来日
者の国内の招聘元に関す適格性調査、��滞在予定のホテル等に対する宿
泊事実の調査を行っており、５月末までに、招聘元への調査については
675 件、宿泊事実については2,887 件を実施しています。
さらに、来日者対策をより万全なものとするために、６月23 日からサ
ミット終了までの間、来日者が記載したED カード（出入国記録カード）
を閲覧した上で、国際テロ対策上の注意を要する対象者に関し、都内の
滞在先を把握・確認する作業を実施する予定です。