平成19 年10 月22 日
インドネシア・マレーシア出張計画
外事第三課
警部補長�霏鷄�
１ 出張期間
平成19 年11 月１日（木）から７日（水）
※ インドネシア１日から４日、マレーシア４日から６日（７日帰国）
２ 出張者
警察庁国際テロリズム対策課都外川警視
警察庁国際テロリズム対策課永井警部
長�襍拮�補警視庁公安部外事第三課
３ インドネシア出張計画
(1) インドネシア出張（接触）の目的
在インドネシアの協力者との信頼関係を強化することにより不審情報の入手体
制をさらに強化すること。また、同国内のイスラム過激派関連動向に精通してい
る協力者と、通信手段を介さずに対面で直接情報交換をすることを通じて、当方
の関心事項について、有益な教示を得ること。
(2) インドネシア出張における接触対象者（当課の海外協力者）人定
インドネシア共和国（アチェ出身、現在はジャカルタの大学で研
氏名アル・ハイダリ（AL CHAIDAR）
国籍
究）
職業大学院生（マリクサレ大学）
生年月日1969 年11 月22 日生（37 歳）
（コメント）
当人は、DI（ダルルイスラム運動）※のスポークスマンを自称しており、新
聞・ラジオ等のインタビューでAQ（アル・カーイダ）のネットワークやJI（ジ
ェマア・イスラミア）との接点について言及するなどしている。アチェ解放運
動の活動家としても知られる。イスラム過激派擁護、人権問題に関する執筆が
多い。一部に、インドネシア国軍のスパイになっているとの情報もある。
※ イスラム国家樹立を目的とした運動で、1948 年に西ジャワ州で始まった。
(3) 日本人の知人である中村唯の対象評
（中村唯について）
東京都世田谷区代田４− 30 − 15 代田コーポ３ B
財団職員（庭野平和財団：南アジアプログラム担当）
住所
職業
生年月日1969 年11 月１日生（37 歳）
○ アル・ハイダリと知り合った経緯
日本の大学を卒業後、タイに留学し、卒業後、現地の国際交流基金のタ
イ事務所で勤務していた。タイに滞在していた間に、シンポジウムのパネ
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リストとして訪問したアル・ハイダリと知り合い、親しい関係になった。
（中村のアル・ハイダリ評）
アル・ハイダリはアチェ出身なので、素直で裏表がない。風土的には、アチ
ェは九州のような感じである。彼は、インドネシアにおける一連のテロ事件後、
現地ムスリムの微妙な感情を説明しようとして、過激派の先導者であるとか擁
護者であるというレッテルを貼られたこともあるようである。彼は、過激派と
政権側の双方に通じているため、相当危ない橋も渡ってきている。実際、彼の
仲間は、大部分が消されている。しかし、彼は、バランスを保って切り抜けて
きた。幸運によるところも大きいと思う。
彼は、スハルト政権時代には、私の知るだけでも、10 回以上、政治犯として
身柄を拘束されている。彼は、ちょうどテロが発生したタイムリーな時期に、
マスコミ等でコメントをして注目を浴び、有名になった。
彼は、電話やメールでは、他人に傍受される恐れがあると思っている。従っ
て、実際の個人名や具体的な場所などは、そうした手段ではしゃべらないと思
う。
※ これまで中村唯とは、アル・ハイダリが来日する場合、その拠り所とな
ると思料されたため、その際、当方がアル・ハイダリとコンタクトする場
をもてるよう、アル・ハイダリの来日の事前に連絡するなど、橋渡しとし
ての役割を果たしてもらうことを求めて、日本国内において協力関係を構
築し、接触を保っていた。
しかし、本年９月から１年間の予定で、英国のサセックス大学に留学し
ているため、メール交信を除いて、こちらの作業は一時休止となっている。
※ なお、アル・ハイダリ自身も、大学院博士課程在籍中であり、この先２、
３年は日本に赴くことはない旨言明していたため、前回、不審情報確認の
必要から、接触が計画された。
(4) 接触上の留意点
対象は、これまでも情報屋的立場で危険な橋も渡ってきているとみられており、
また、いわゆるイスラム過激派に通じる人物とも交流がある旨述べているため、
こちらの動向等が過激な人物に伝わる可能性もあることを念頭に置いて、隙を与
えたり、無用な紛議を起こさないよう留意しながら、確実に信頼関係を構築して
いく必要がある。
(5) 接触日
11 月２日（金）19 時ころの予定
※ インドネシア滞在は11 月１日から４日（正味２日半）。
(6) 接触方法
飲食（会合形式）による聴取。
※ 当方、防衛を１人配置。
(7) 接触場所（予定）
ジャカルタ市内Central Senayan １ Basement Floor
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日本料理「高（Koh）」Tel: 572-3388
※ 前回と同一場所。
(8) 謝礼
未定（交通費プラス物品で、総額日本円２万円程度か？支出は警察庁対応。）
※ 前回は日本円５万円を交付。これは、対象の滞在地からの交通費及び５つ
星ホテルの１泊宿泊代の概算に謝礼２万円を上乗せして算出したもの。）
(9) 前回接触の目的
架電により情報提供を受けた不審情報について、詳細を追及聴取し、日本に情
報を持ち帰った後、その内容をつぶさに検証。信憑性がある場合は、事後、定期
的にコンタクトをして情報を入手する必要があるので、その判断（評価）を行う
ため出張を計画。
(10) 前回出張の理由となった不審情報
平成19 年４月15 日、以下のような情報の提供を受け、確認の必要を認め、
警察庁と協議し、接触を計画するに至った。
【内容】
○ １ヶ月ほど前に日本から帰ってきた友人の話によると、日本のいくつかの都
市で、イスラムグループがネットワークを広げているとのことであり、彼は懸
念を表明していた。
○ 日本には現在、攻撃的なテロリストのグループと保守的な反テロリストのグ
ループの二つがあるが、二つはいずれも、元をたどれば、同じダルル・イスラ
ム運動の流れをくんでいる。彼らが別れたのは、ジハードを巡る解釈の違いに
よる。両グループは、合わせても日本国内に約40 人くらい（テロリストグル
ープが30 人くらい、反テロリストグループが10 人くらい。）である。今、私
は、彼らが何をしようとしているのか、その計画について、はっきりとした情
報は持っていない。現時点、具体的な攻撃の兆しはないと思う。日本国内の反
テロリストグループは、そうしたラディカルなグループの攻撃を阻止しようと
しており、、イスラム的に適切な手段を執るべきと考えている。両グループの
メンバーは、東京、京都、名古屋、新潟、神戸、それに藤沢にいる。
(11) 前回出張後の調査結果及び警察庁の見解
前回の出張で提供を受けた、アル・ハイダリの日本におけるインフォーマン
ト３人の人定について調査を行った結果、３人はいずれも情報通り存在するこ
とが判明し、アル・ハイダリの供述は、一応信用できることが裏付けられた。
ただし、彼らについては基調までは行ったものの、今後、彼らと接触するか、
運営して情報を得るまでに作業を進めるかについては、双方への影響を見極め
る等、慎重を期する必要があるため、現時点未定であり、進める場合でも、情
報提供者であるアル・ハイダリに逐次確認を行いながら進めることになるため、
直ちに、事案が進展することはない。
対面での接触は、今回が２回目であり、現段階では、信頼関係の強化が最優
先事項である。
※ 前回の出張時の結果については別添のとおり。
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(12) 今次接触の目的及び質問予定内容等
(ｱ) 接触の目的（信頼関係の強化）
前回接触時に、日本国内に所在するインフォーマントについても情報提供を
受けたが、当方は、貴方の了解なしに、勝手に動いてコンタクトするなどの行
動はしないということを先方に伝え、先方や先方の知人に害を与えたり、迷惑
をかけるようなことはしないと約束し、まず先方に安心感を与える。
その上で、誠意を持って接触を続け、イスラムにとってマイナスイメージに
つながるテロ等の不法事案を防ぐという共通の目的を保持し、当方がそのため
の協力を惜しまないことを理解させ、漸次信頼関係を強化していくとともに、
互いに、不法事案を防ぐための有益な方策は何かについて建設的な議論を重ね、
この先、先方からその目的に資する情報等が入ってくる関係を確立する。
(ｲ) 質問予定内容
（不審情報関係）
○ その後、日本にいるという知人と話はしているか。
○ 日本にいる過激分子は増加しているか。
○ 穏健勢力は、過激分子をコントロールすることができるか。
○ （不審情報の更なる詳細について尋ねるとともに、情報の信憑性について
感知できるような、確認的質問を試みる。）
（インドネシアのイスラム関係）
○ ダッワ・カンプス（大学における宣教）の実態。
○ ダッワ・カンプスの変遷。
○ JI などの過激派は、学生にどのようにアプローチしてくるのか。
○ 学生らは、どのような経緯をたどって、過激思想を持つセルに仕立て上げ
られていくのか。（外見から見て取れる変化はあるか。）
○ JI が日本でテロを起こす可能性について、現状でどう見ているか。
○ 学外に研究サークルなどの蝟集場所はあるか。
○ インドネシアで今後伸張してくるとみられる政党はどこか。（そうした政
党の日本に対するスタンスはどのようなものか。）
○ 貴方が考える、イスラムにおける正義とは。
○ 貴方が考える、イスラムの敵とは。
４ マレーシア出張計画
(1) 接触日
11 月５日（月）あるいは６日（火） （先方の回答待ち。）
※ マレーシア滞在は、11 月４日から６日（正味２日）
(2) マレーシア出張の目的
マレーシア国家警察とのテロ情勢等に関して意見交換を行うこと。並びに、ク
アラルンプール市内の様々なモスクを視察し、その外観（建築様式）等から、そ
のモスクが、トルコ系なのか、ペルシャ系なのか、あるいはアラブ系なのか等に
ついて検討を加えるとともに、そのモスク周辺のコミュニティーについても必要
な分析を行うため。また、市内の店舗の看板に書かれている言語等から、客層な
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どを推測、地区による色分け等を視認し、コミュニティーの混在状況等を認識す
るため。
なお、モスクや街並みの分析については、インドネシアにおける特徴との比較
も行う。
さらに、得られた画像等のデータの中で教養資料化できるものは選別し、積極
的に課員等に示すなどの措置を検討していく。
【マレーシア国家警察への質問予定内容】
○ マレーシア国内における、全マレーシアイスラム党の活動について。
○ 全マレーシアイスラム党の分子は日本にもいるか。
○ 過激化する分子がいる場合、その要因は何であると考えるか。
○ JI 幹部は、なぜマレーシアに所在していた者が多いのか。
○ マレーシア当局は、テロ対策、過激派の発見方策として、どのような対策
を講じているか。
○ マレーシア当局は、コミュニティーから過激な分子を出さないための対策
を何か行っているか。
○ 過激なグループの隠れ蓑になっているような組織として、マレーシア国内
で注目している組織などはあるか。
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