【社説】離散家族再会、国軍出身者に顔向けできない
今年還暦を迎えたイ・ミングァンさんは、父リ・ジョンリョルさん(90)が韓国戦争(朝鮮戦争)当時に死亡したと思って暮らしてきた。父は息子が生まれて100日後に息子に名前を付け、韓国軍に入隊したまま、消息が途絶えた。イ・ミングァンさんは10日前に父が北朝鮮に住んでおり、自分に会いたがっていることを知った。父は先月30日、金剛山の離散家族面会所で60年ぶりに会った息子にすがるようにして泣き崩れた。北朝鮮側の離散家族97人のうち4人が韓国軍出身者だった。彼らが韓国国防部の兵籍記録簿に名前が記載されているが、韓国政府が北朝鮮で生存していると推定してきた約500人の捕虜名簿には含まれていなかった。
今回の離散家族再会は、10月30日から11月1日まで北朝鮮に住む97人の離散家族が韓国側の家族と会い、3日から5日は韓国側の離散家族100人が北朝鮮に住む家族と会う順序で行われる。
韓国政府は1957年、韓国戦争で行方不明となった将兵約4万1900人のうち、約1万3800人を戦死者扱いした。一部の韓国側家族はこれまで政府が発行した「戦死通知書」を信じ、祭祀(さいし)を営んできた。彼らは国に徴集され入隊された人々だ。この国はそんな献身の上に建国された。そうだとすれば、国は最善を尽くし、最後まで彼らの生死を確認するのが道理だ。60年ぶりに離散家族再会の会場に姿を見せた国軍出身の4人に対し、すべての韓国人は恥ずべき思いを感じた。
南北は最近、赤十字会談で離散家族再会行事を大幅に増やすことで合意した。2000年以降、離散家族の再会は今回を含め18回行われたが、約3500人が再会を果たしたにすぎない。韓国側で離散家族再会を申請した約8万3000人のうち、76%が70代以上だ。北朝鮮は再会回数を増やす見返りとして、コメ50万トン、肥料30万トンを要求している。離散の悲しみまで売り物にして、見返りを得ようとする行為に怒りがこみ上げる。とはいえ、死んだと思っていた人が60年ぶりに生きて姿を現すようなことが繰り返されるのを放置しておくことはできない。
韓国政府は捕虜、拉致被害者、離散家族の生死確認、手紙の交換、再会の定例化を南北関係の最優先課題とし、北朝鮮側に要求すべきだ。必要ならば西ドイツが東ドイツの政治犯釈放のため、政治犯1人当たりの金額を定め、東ドイツに資金を供与した「自由買い」方式も検討すべきだ。
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