装甲の種類


 ここでは、戦車や戦艦等の装甲の種類について説明します。なお、日本で出版されている多くの軍事関係の書物では、装甲の強度について硬度のみで比較することが多いようですが、装甲に必要なのは、硬度はもちろん、降伏点や引張強さ、靭性などすべての機械的性質であり、硬度のみで語ることは、ナンセンスであることを述べておきます。また、この辺りの内容については、「大砲と装甲の方程式」の中の「装甲と砲弾のお話」の中で詳しく述べていますので、そちらを参照ください。

装甲の種類 説明の要約(詳細説明は各装甲名をクリックしてください)
表面硬化装甲  均質圧延装甲鋼板の砲弾が衝突する面の表層だけを浸炭焼入硬化(浸炭を省くこともある)し、裏面は靭性を低下させないようにした装甲板。
均質圧延装甲[RHA]  炭素鋼(スチール)にニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)等を若干ずつ加えた合金を圧延し熱処理することで、板厚および幅方向で機械的性質を均質にした装甲板。
鋳造装甲  予め型を造り、その型に金属(鋼等)を流し込んで構造を造る方法を鋳造と言い、鋳造で造られた装甲を鋳造装甲と呼ぶ。
アルミ合金装甲  アルミニウム合金を主成分とした装甲板。
中空装甲  装甲と装甲の中に隙間を設けた装甲板。
複合装甲  セラミックや複合材などを防弾鋼板に重ね合わせたり挟み込んだりした装甲で、多種の材質の特性により複合的に性能を向上させることを目的としている。
爆発反応装甲
[ERA]
 爆発反応装甲とは、2枚の鋼板の間に爆発性の物質(爆薬)を挟んだ装甲板で、補助装甲として使用される。運動エネルギー弾や成形炸薬弾のメタルジェットの侵徹およびそれらの衝突の圧力で起爆して、表面側の鋼板を高速で飛散させ、メタルジェットの進路を横切って収束を妨げたり、運動エネルギー弾の侵徹体に衝突し変形・破壊して侵徹を妨げる。
その他の
反応装甲
その他の反応装甲としては、電磁装甲、部分反応装甲、非爆発性反応装甲と呼ばれるものがあり、それらについて説明する。
内張り装甲 装甲の内側(裏面)に貼るもので、スポール・ライナーやスプラッシュ・ライナーと呼ばれる。材質は、現在ではアラミド繊維(ケブラーなど)とプラスチックの複合材を使用するのが一般的となっている。効果は、「被弾時、装甲裏面が剥離した場合に、その剥離破片を受け止める」、「被弾貫通時に破片の飛散角度を小さくする」といったものである。左記リンク先の解説では、ロシアの内張り装甲の外観や設置方法が見られる。
ショト装甲  レオパルド2A5以降の砲塔前面に付く増加装甲。
Zimmerit
[ツィンメリット]
 Zimmerit[ツィンメリット]自体は装甲ではない。装甲表面に磁力による吸着を阻害する消磁性の塗布材を塗ることで、磁力吸着地雷が着かないようにするためのコーティング。

参考文献:
・「海軍製鋼技術物語」 堀川一男著 アグネ技術センター
・「現代戦車のテクノロジー」 日本兵器研究会編 アリアドネ企画
・「ドイツ装甲部隊全史3」 学研
・「アルミニウムのおはなし」  小林藤次郎著 日本規格協会
・「JISハンドブック2001 鉄鋼1」 日本規格協会
・「JISハンドブック2001 鉄鋼2」 日本規格協会
・「雑誌: 軽金属溶接 Vol.27,No.9,P.417-421 1989」 高強度アルミニウム合金委員会
・「Soldat und Technik 1995/03」
・「戦車マガジン 第13巻第4号 1990/04」 株式会社戦車マガジン
・「International Defense Review 1995/06」

参考Web Site
・「日本軽金属株式会社」 URL:http://www.nikkeikin.co.jp/

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作成:2001/05/13 Ichinohe_Takao
更新:2005/03/11 Ichinohe_Takao