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きょうの社説 2010年11月1日
◎台湾で九谷PR ジャパン・クタニ再興の一歩
県陶磁器商工業協同組合(能美市)は、今月末から台湾の台北市で「九谷茶碗まつり」
の初の海外キャンペーンを展開する。12月に台湾北部の温泉地にオープンする加賀屋の和風旅館に、九谷焼の食器25種類が採用されることになったことも合わせて、台湾に九谷焼の良さを浸透させる好機である。明治期に欧州を中心に湧き起こった「ジャパン・クタニ」ブームと同様に、海外から販路開拓の活路を開く一歩として取り組んでもらいたい。2年前の小松―台北定期便の就航を機に、同組合は、それまで東京など国内で隔年で開 いてきた展示会を、台北市の大型百貨店での開催に転換した。過去2回の展示会では、100万円を超える湯飲みなど高級生活用品を中心に需要が多かった。さらに今年に入って台湾の旅行会社が能美市の九谷陶芸村を訪れ「富裕層向けのコースに組み入れたい」と提案するなど、追い風も吹いてきた。 今月27日から台北で開かれる展示会では、5月の連休の大型人気イベントである茶碗 まつりを収録した映像を紹介し、まつりへの来場を促す。九谷焼の本場のにぎわいを味わってもらうことで、ファン層拡大につなげる狙いがある。 台湾の愛好者を小松便を介して茶碗まつりに呼び込むことで、九谷焼と合わせて、近隣 の温泉や史跡などを巡るツアーなどを提案すれば、金沢や能登に比べて影が薄い印象もある南加賀一帯の観光資源を発信する起爆剤にもなろう。 台湾では戦前を知っている高齢世代を中心に日本の陶磁器に関心が高いと言われ、これ まで佐賀県の有田焼が、自治体を挙げて台湾への売り込みに力を入れてきた。多方面での“台湾効果”が見込めるだけに、九谷焼の地元でも、自治体や観光団体が積極的に情報発信し、同組合の取り組みと連携した誘客策が求められる。 ジャパン・クタニ隆盛時代は、輸出生産が全体の8割を占めていた。九谷焼のまとまっ た輸出は1980年代に途絶えたとされ、円高もあって、現状でも輸出はなかなか厳しい状況だが、台湾を海外戦略の起点として、ジャパン・クタニ再興への道筋を開きたい。
◎外国の資源探査規制 急ぎたい自国の開発計画
わが国の排他的経済水域(EEZ)の海底資源を保護するため、政府は外国による資源
探査を規制する新法を検討している。国連海洋法条約で認められた沿岸国の主権的権利を守るため、国内法を整備するのは当然であろう。法案づくりを急ぐと同時に自国の海底資源開発計画のてこ入れを図る必要がある。政府は昨年3月、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を策定している。レアメタル(希 少金属)の宝庫ともいわれる海底熱水鉱床などの探査・技術開発の道筋(ロードマップ)を示したものである。海洋基本計画に基づき、今後10年程度で商業化する目標を立てているが、予算、技術力の投入を惜しまず、計画実現のスピードアップを図ってもらいたい。 政府がEEZ内における海底資源探査の規制法づくりの検討に入ったのは、海洋法条約 で認められた科学調査を偽装した外国の資源探査の横行を防ぐためである。日本近海で通告なしに資源探査を行っている中国を念頭においたものだ。東シナ海では日中のEEZの境界線がまだ定まっておらず、中国側が反発を強める可能性もあるが、そのために国内法の整備をちゅうちょする必要はない。 海底資源開発に適用される鉱業法の見直しも検討課題である。同法は元来、陸地の資源 開発を前提に制定され、海底資源は想定外であった。鉱業権の取得については日本国民と日本国法人に限定し、外資を規制しているが、その抜け道を縫うように、英国企業の日本子会社が海底熱水鉱床の採鉱権を申請するという、これも想定外の状況が生まれている。 沖縄近海や伊豆・小笠原海域などで確認されている海底熱水鉱床は金や銅、亜鉛、ゲル マニウムなどが堆積する貴重鉱物資源の山である。また、「燃える水」とも呼ばれる新たな化石燃料・メタンハイドレートも四国、紀伊半島沖などで確認されており、次世代エネルギーとして期待されている。水深500メートルから3千メートルの海底にあり、採鉱技術の確立は一朝一夕にはいかないが、官民で実用化に全力投球をしてほしい。
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