'96年の初演以降、ピュリッツァー賞のドラマ部門やトニー賞を受賞。12年4ヶ月のロングランと世界15ヶ国での上演記録を打ち立てた名作ミュージカル。'06年にオリジナルキャストで映画化された。
プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースに、夢と現実の狭間で揺れる若者たちの姿を圧倒的に描くミュージカル『RENT』。今回は'08年に好評を得た米国人演出家エリカ・シュミット版の、2年ぶりの上演となる。
「周囲の人からも『公演がまたあるんだね!……それに出るの?』と、僕のことよりも『RENT』に話題が集中するんですよ。この作品のすごさを、改めて感じてます」
と話すのは、メインキャストである映像作家志望の青年・マークを演じる福士誠治だ。ミュージカルはこれが初挑戦。
「歌うことは好きで、ミュージカルはいつかやりたかったんですが、まだまだ手探り状態ですね。でもここ数年、舞台や映像作品をいろいろ経験させていただいたので、挑戦するには今のタイミングかなって」
そう謙遜するが、話題作に次々と出演する傍ら、2年前からは演劇ユニット「乱-Run-」も結成。表現の幅を広げている。
「キャストは個性的な方ばかりで、今はそれがすごく刺激的ですね。すごい歌唱力を持つ米倉利紀さんのような人がいると思えば、お芝居は今回が初めてという方がいたり。僕も歌い方を教えてもらう代わりに芝居で分かることは教えるし、そんな不思議な集団が『RENT』の世界観につながるんだなと思います」
物語は夢よりも現実をとらざるをえなかった者、HIVポジティブの者、性的マイノリティなど、現代の“リアル”を名曲の数々と共に綴っていく。
「『RENT』のテーマは、昔も今も変わらないもの。国や時代が違っても共鳴できるその物語の上に、素晴らしい楽曲がついているから、世界中のファンに愛されているのも納得です。今、CDをずっと聴いてるんですけど、おなじみの曲が聞こえてくると『きた!』ってワクワクする。これが『RENT』の魅力ですよね」
マークと同年代の27歳。まっすぐな瞳で挑む彼の新しいマーク像に期待したい。
インタビュー・文●佐藤さくら 撮影●高岡 弘 スタイリング●星野和美(MIXXJUICE) ヘアメイク●松下 泉(MIXXJUICE)
自分の好奇心には素直に従おうと思ってます
「どちらかというと役に入り込むほうですね。舞台が終わったら毎回、屍みたいになっちゃう」という福士さん。ブラウン管で見かける涼やかで和風なたたずまいとは裏腹に、取材はラフな会話からスタート。今回演じる、NY在住の青年マークのキャラクターに入り込みつつあるようです。キャストは米国在住歴のあるミュージシャンやダンサーも多いらしく、稽古場の雰囲気は独特だとか。「芝居や歌のできる程度がそれぞれ違うので、お互い積極的に『今のあれ、良かったよ』と口にするようにしてますね。演劇ユニットで一からお芝居を作る感覚とどこか似ている気も。今は自分の好奇心と挑戦心に素直に従おうと思ってます」。尊敬しているのは、以前に共演した東山紀之さんや戸田恵子さん。「ストイックなのに柔軟に挑戦を続ける姿勢に憧れます」という福士さんに、その魅力の一端を垣間見た気がした取材班でした。
福士誠治:フクシ セイジ
'83年神奈川県出身。'02年にドラマデビュー。'06年、NHK朝の連続テレビ小説『純情きらり』でヒロインの相手役・松井達彦を演じてお茶の間の人気者に。以降、時代劇から現代劇まで幅広い役を演じられる若手としてドラマ、映画、舞台に多数出演。主な出演作に初座長を務めた舞台『蝉しぐれ』、ドラマ「のだめカンタービレ」など。