2010年10月31日22時10分
大文字山から京都市街を望むと、ナラ枯れした木が目立つ=京都市左京区、原写す
ナラ枯れの被害が深刻な「大文字山」=28日、京都市左京区、朝日新聞社ヘリから、小林裕幸撮影
カシノナガキクイムシが侵入し、フラスが根元にたまった木。防除のためのシートも巻かれている=京都市、原写す
ナラやカシなどの広葉樹が集団枯死する「ナラ枯れ」が拡大し、昨年度の被害地域と面積はいずれも過去最悪の23府県、2511ヘクタールに達したことが林野庁の調査で判明した。今年度は新たに静岡県などでも発生が確認され、専門家からは「被害拡大は確実」との見方も出ている。
ナラ枯れは樹木の伝染病が原因で、害虫のカシノナガキクイムシ(カシナガ)が運ぶ「ナラ菌」によって起きる。特にミズナラやコナラが被害を受けやすく、各自治体は枯れた木の伐採や殺虫剤による虫の駆除などの対策を進めているが、被害拡大に追いついていないのが現状だ。
林野庁によると、2000年度のナラ枯れ被害は12府県、356ヘクタールで確認。一時は下火になったが、昨年度は新たに宮城、大阪、岡山の3府県で初確認されるなど一気に広がり、被害面積も前年度の約1.7倍に達した。昨年度に被害が大きかったのは、新潟県(482ヘクタール)や愛知県(408ヘクタール)、山形県(342ヘクタール)などで、特に愛知県は前年度の約13倍に拡大した。
今年度の被害は各自治体が調査中だが、夏の記録的な猛暑と少雨が、病原菌の感染で弱った木に追い打ちをかけた可能性も指摘されている。
奈良県では8月、10年ぶりに被害を確認。県北部では初めて、東大寺の背後にある若草山周辺の林でナラ枯れが見つかった。静岡県や伊豆諸島(東京都)では今年初めて確認されたほか、京都市の東山一帯や神戸市の六甲山系など景観美に優れた観光地の被害も目立っている。(石木歩、小林正典)