兵器外観
名称 57mm対戦車砲 ZIS-2
[57mm antitank gun ZIS-2 Model 1941]
型式
製造国 ソ連
製造メーカー
配備国 旧ソ連、旧共産圏の多くの国、アラブ諸国など
製造初年 1941年
口径 57 [mm]
口径比 72.9
砲身長 [mm]
全長 [m]
全高 [m]
全幅 [mm]
全備重量 1150(砲車)
前車+砲車で1800kg
[kg]
腔綫 有り
砲身材質
砲身命数 [発]
閉鎖機 垂直鎖線式(半自動)
平衡機
駐退複座機 液圧式駐退機
最大駐退力 [kg]
後座長 [mm]
照準具 P1-2、OP2-5あるいは、OP4-55、OP4M-55のいずれか
上下射角 ?〜+55 [deg]
水平射角 [deg]
最大射程 8400(UO-271榴弾) [m]
装薬 別表Aを参照のこと。
公算誤差
砲口初速 別表Aを参照のこと。 [m/sec]
発射速度 13〜15 [発/min]
砲弾 ・271シリーズの砲弾を使用、固定弾。
詳細は、別表Aを参照のこと。
操作人員 6〜8 [人]
布設所要時間 [min]
説明 ●開発・生産・改良
 ソ連は、第二次世界大戦開始のかなり前から重戦車を開発・生産していました。そのため、ソ連の首脳陣は、ドイツでも同様の重戦車を開発すると考えていました。そして1940年には、厚い装甲を備えた重戦車を迎え撃つための対戦車砲を開発を要求しました。Grabinの設計局も、同様の指令を受け、口径57mmの対戦車砲F-31を試作することとしました。ちなみに、Grabin(V.G.Grabin)は、当時、#92工場の主任設計技師でした。この砲は、試作76.2mm連隊砲F-24を元に、僅かな変更のみで造られました。実際、F-31とF-24と違いは、砲身のみで、その他の薬室や閉鎖機、砲架、駐退復座機などは、全く同一でした。砲弾は、新たに開発され、3.14kgの徹甲弾の初速は、1000m/secになるだろうと期待されました。薬莢は、76.2mm師団砲のものをボトルネックにしたものが使われました。1940年10月に、#92工場で、F-31の最初の試作砲が完成しました。この砲は、工場での試験の後、政府での試験を受け、両試験に合格しました。試験合格後、57mm対戦車砲1941年型として制式化されました。その後、1941年に、本砲の製造工場である#92工場が「Zavod imeni Stalina」(「スターリン名称工場」の意)の名誉称号を授与され、これにあわせて本砲もZIS-2に名称を変更しました。
 余談ですが、Grabinの設計局は、ZIS-2の開発と同時に、より高威力の57mm対戦車砲ZIS-1KVを開発していました。この砲は、1940年12月までに、ほぼ開発が終了しました。この砲は、3.14kgの徹甲弾を、初速1150m/sで発射でき、86口径比長もある長い砲身を備えていました。砲架等は、76.2mm師団砲F-22USVのものを流用していました。一方、この砲の重さは、1650kgにもなり、対戦車砲としては重すぎました。1941年1月に、ZIS-1KVの最初の試作砲が完成し、2月〜5月にかけて試験が行なわれました。しかし、この砲の砲身寿命と弾道性能はとても満足の行くものではありませんでした。開発者であるGrabinの回想録では、次のように書いています。「40発の射撃の後、砲口初速および射撃精度は劇的に低下した。50発の射撃後には、弾丸の旋動が充分ではなくなり、空中で弾丸が横転した。」 #92工場では、1941年6月からZIS-2の量産が開始され、この問題を解決する前に、ZIS-1KVの開発は放棄されました。
 1941年12月1日に、ZIS-2の量産は中止されました。その理由は、1)ドイツに本砲を必要とするほどの重戦車がいなかったこと、2)本砲は、連隊のレベルで使用されるにもかかわらず、その価格が、76.2mm野砲(師団砲)ZIS-3の10〜12倍であり、非常に高価であったこと、などの説があります。筆者は、おそらく、主に後者の問題から中止されたものと推測しています。なお、本砲の高価の原因は、その小口径で長い砲身にありました。細く、長い砲身は加工精度を出すのに苦労するのです。また、57mmの弾薬の品質が低かったという話もあります。
 本砲の量産が中止されたあと、Grabinは、口径57mmのスターリン1重戦車用の新戦車砲開発を開始しました。これには、本砲の砲身長さを63.5口径に短くされたものがあてられました。そして、砲身重量は、317.5kgキロまで軽くなりました。最初の試作砲は製造され、1942年6月6日に、試験のため、Gorokhovetsky性能試験場へ送られました。理由は不明ですが、本戦車砲は、制式採用はされませんでした。
 1943年6月15日に、本砲は再び量産されることになりました。その理由は、ドイツ軍が、重装甲のティーガーI重戦車やパンター中戦車などを投入したためと言われています。興味深いことに、本砲は、新しい呼称で配備されることになりました。その呼称は、57mm対戦車砲1943年型でした。なお、本砲の各年度、各工場ごとの生産数については、別表Bをご覧ください。
 1948年には、#235工場が、本砲を近代化することを試みました。近代化された砲は、V-22という呼称が付けられました。1948年中に、試作砲製造され、工場内で、315発の射撃および1000kmの走行試験に供されました。試験は成功裏に終り、本砲はANIOP性能試験場へ送られました。そして、1949年夏ごろに試験が行なわれましたが、結果から。いくつかの欠点が明らかになりました。このことから、これらの問題を改善することが推奨されましたが、長い討論のすえ、V-22の開発と製造は中止されました。
 1957年には、#235工場が、ZIS-2を、近代化することを再度試みました。新砲はAPN-57またはAPNZ-55夜間暗視装置を装備し、ZIS-2Nと命名されました。そして、古いZIS-2の多くが近代化されました。
 その後、1970年ごろまで、ソ連軍、東欧諸国で使用されていた他、中東、アフリカ、アジアなどのソ連友好諸国などにも供与されている。
●構造
 本砲は、半自動式の垂直鎖栓式閉鎖機、液圧式の駐退機をもっていました。運行は、前車[limber]と砲車[gun]の2車編成で、前車には、76mm連隊砲1942年型のものを流用しています。前車には、24発の弾薬の他、砲の組立て、設置、観測などの器具を積むことができました。前車と砲車の総重量は1800kgでした。照準機は、OP1-2、OP2-5あるいは、OP4-55、OP4M-55のいずれかでした。
●その他
 1958年3月より、本砲用のHEAT弾が開発され、配備されたという情報がありますが、詳細の内容は不明です。
参考文献 ・「グランドパワー」 デルタ出版
参考WebSite ・「RUSSIAN BATTLEFIELD」 URL:http://www.battlefield.ru/
写真 濃緑色の砲は、エジプトの国立軍事博物館に展示のもの(ファイアー様提供)。
灰色の砲は、トルコ軍事博物館に展示のもの(モーグリ様提供)。

別表A 運用砲弾
砲弾 発射薬名
発射薬
重量
[kg]
弾丸 弾種 完成弾
重量
[kg]
弾丸
重量
[kg]
初速
[m/sec]
炸薬
重量
[kg]
信管 着弾角度
[deg]
貫徹能力[mm]
100m 500m 1000m 1500m 2000m
UO-271U G-271U 0.97 O-271U HE 6.79 3.75 700 0.204〜0.220 KTM-1、
KTM-1-U
UO-271UG G-271K 0.97 O-271G HE 6.79 3.75 700 0.204〜0.220 KTM-1、
KTM-1-U
UBR-271K G-271B 1.5 BR-271K AP-HE
(尖鋭弾)
6.61 3.14〜3.19 990 0.018 MD-5、
MD-7
60 85 65 50 40
90 100 80 65 50
UBR-271 G-271B 1.5 BR-271 APC-HE
(さい頭弾)
6.61 3.14〜3.19 990 0.014 MD-5、
MD-7、MD-10
60 85 70 60 55
90 100 90 75 65
UBR-271M G-271B 1.47 BR-271M APBC-HE? 6.24 2.8 1040 0.013 MD-10 60 95 85 75 65
90 115 105 95 85
UBR-271SP G-271B 1.5 BR-271SP APBC? 6.61 3.14〜3.19 990 なし なし 60
90
UBR-271P G-271P、
A-271P
1.6〜1.7 BR-271P APCR 5.4 1.79 1270 なし なし 60 100 75
90 145 105
UBR-271N A-271N 1.6 BR-271N APCR 5.94 2.403 1130 なし なし 60 135 120 100
90 155 140 125
USh-271 G-271U 0.97 Sh-271 Canister 6.7 3.66 なし なし

 

別表B ZIS-2の各年度、各工場ごとの生産数
工場名 年度 合計
1941 1942 1943 1944 1945 1946 1947 1948 1949
#92工場 371 1855 2525 3695 1150 9596
#235工場 1570 1250 287 500 507 4114
合計 371 1855 2525 5265 2400 287 500 507 13710

 

写真(写真をクリックすると大きな写真が見られます)
エジプトの国立軍事博物館に展示のもの(ファイアー様提供)。 トルコ軍事博物館に展示のもの(モーグリ様提供)。
理由は不明だが、駐退復座器が駐退しっぱなしになっている点に留意。

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2001.8.25更新 榴弾砲format_v0.5