MOOCS TOP > マガジン > 「わかば対談。」 > 「はじめての、小西康陽。」
2007.12.19更新
- 小西康陽(こにしやすはる)プロフィール
- 1959年生。1984年、ピチカート・ファイヴのリーダーとしてメジャーデビュー。2001年の解散まで同バンドに在籍し「渋谷系」シーンを牽引した。
- けいすけ プロフィール
- ただ今14歳。公立高校の音楽科を目指すドラム少年。尊敬するドラマーは、ジョン・ブラックウェル。マイブームは、友達とメールをすることです。
音楽を愛している、音楽とまじめに向き合っている。大人と子供という、ふたりの“ミュージシャン”が対談します。音楽的キャリアも、年齢も違うふたりがフラットな関係で語りあう。それが、「わかば対談」なのです。
DJとして、プロデューサー・作曲家として活躍している元ピチカート・ファイヴの小西康陽さん。今回の「わかば対談。」は、“渋谷系”という90年代の一大ムーブメントを築いた小西さんと、ドラマーになることを志し、芸術高校音楽科への進学を目指す受験生のけいすけくんが対談します。残り少ない中学生生活……受験に、そして恋に悩むけいすけくんは小西さんの娘さんと実は同い年! 親子ほどの年の差のある少年に興味津々の小西さん、果たしてどんなお話が聞けるのでしょう? ドキドキの「わかば対談。」はじまりです。
「ドラムしか好きなことがないから、プロになりたい。」(けいすけくん)
小西(以下、小):けいすけくんは何歳ですか?
けいすけ(以下、け):14歳です。
小:ぼくの娘と一緒ですね。
け:そうなんですか。
小:うーん、緊張するなあ(笑)。
け:僕もです……(コチコチになってる)。
小:大丈夫! じゃ、始めましょう。
け:はい!
小:(資料を見ながら)けいすけくんは、ドラムをやってる中学三年生。音楽の高校を受験したいんだね。
け:はい!
小:すごいね。本当に音楽家になりたいの?
け:はい!
小:高校に入ったとたんに音楽に飽きちゃったらどうする?(笑)
け:それはないと思います(キッパリ)。
小:えらい! 音楽の道に進もうと思ったのはいつ頃からなの?
け:中学校に入ってからです。
小:音楽を好きになったきっかけはなんだったんですか?
け:アニメの主題歌が好きになったのがきっかけだと思います……。そしてお父さんが昔ドラムをやっていて、僕にもなにか特技を身につけなさいということで同じドラムを薦めてくれたんです。
小:プロになろうと思ったのはどうして?
け:それしか好きなことがないから、かなあ……。でも、本当にプロになれるのかなという不安はあります。
小:僕もずっと不安だったんです。“プロになんてなれっこないよ”って。最後はプロになっちゃったんだけどね。
け:小西さんがプロになれたのはどうしてだと思いますか?
小:結局、音楽をやめられなかったんです。本当に音楽は僕にとって当たり前で、それをやめるなんて考えたこともなかった。けいすけくんにとってもドラムを叩くことが当たり前だと思えれば、ずっと音楽との付き合いは続くと思う。そうであれば大丈夫なんじゃないかな。例えばスポーツだと怪我して続けられなくなったりするよね。でもドラムはそういうことはあまりないから。今の自分を信じてみてください。
け:不安とか悩みがたくさんあって……。
小:はい、なんでしょう? なんでも聞きますよ。
「音楽のことしか考えていない人って、僕はすごくかっこいいと思うんですよ。」(小西康陽)
け:実は、ドラムを自由に叩くのが苦手なんです。譜面を見て叩くのは得意なんですけれど……。
小:あのね、プロのミュージシャンでそういう人はいっぱいいますよ。クラシック音楽のミュージシャンは殆どそうかもしれない。ロックやポップスの人でも自由にやるのは苦手という人はいます。
け:え! そうなんですか!
小:有名な歌手の方でもいらっしゃいますよ。ちゃんと譜面が読めて、譜面の通りにきっちり歌えるんだけど、譜面とは別に自由に歌って下さいと言われるとできないという人。でもそういう歌手は、アドリブみたいな歌い方であってもちゃんと譜面に書けばその通りに歌ってくれるんです。だから、プロのミュージシャンがみんな自由にできるというわけではないんです。
け:そうなんですか。逆に、自由に叩く練習は止めた方がいいですか?
小:(笑)そこまでは言わないけれど。でも、音楽に親しんでいれば、ある日突然自由に叩くのが好きになるときもあるかもしれないしね。その時考えれば良いんじゃない? 悩み無用です。
け:よかった!
小:他の質問は?
け:あの、“渋谷系”ってどんな音楽ですか?
小:衝撃の質問ですね(笑)。えーとですね、渋谷系というのは、音楽が好きな人、音楽マニアみたいな人が作っている音楽です、マンガで言えば、マンガがすごく好きな人やオタクの人が描いているマンガに近いかもしれない。
け:どういう音楽なんですか? 渋谷系の音楽を勉強しようと思ったらどうすればいいんでしょう?
小:図らずも宣伝をします(笑)。今年、僕が渋谷系のコンピレーションアルバムを出したので。これを聴きましょう(→『bossa nova 1991 shibuya scene retrospective』(COCP-34496) 購入はコチラ。)
け:(笑)わかりました。小西さんは音楽マニアだったんですか?
小:うーん、音楽が好きなだけなんだけど、マニアと言われればそうかもしれません。渋谷系が流行った頃は、音楽のマニアやオタクがそんなにいなかったんです。だからかっこいいとされた。今は一般的にマニアはかっこいいとは言われませんよね。モテなくなるから、けいすけくんはマニアになるのはやめたほうがいいです(笑)。
け:……はい。
小:でもね、すごく音楽に打ち込んで夢中になって、もう音楽や例えばドラムスのことしか考えていないような人って、僕はすごくかっこいいと思うんですよ。でも女の子にとってはどう映るかが微妙だよね……。 けいすけくんはモテたいですか?
け:モテたいです(キッパリ)。
小:好きな子はいるの?
け:(真っ赤)います……。まだ告白はできていないんですけれど。恥ずかしくて。
小:よし、ドラムスを叩いているところを携帯の動画で彼女に撮って送っちゃおう(笑)。
け:(小声で)照れちゃいます……。
小:でもうらやましいですよ。僕が中学三年生の頃なんて、そんな、人に見せられるような特技はなかったもん。
け:どうなっちゃったんですか?
小:ダメでしたよ。でも、僕は正直に打ち明けたよ。もう本当にその女の子のことで頭がいっぱいになっちゃっててさ……あれ、なんで僕がこんな話してんの?(笑)
-
| 1 | 2 | 3 |
次へ
- 「わかば対談。」トップ