| 兵器外観 | |||
| 名称 | 九〇式野砲(90式野砲) 機動九〇式野砲(機動90式野砲) |
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| 型式 | − | ||
| 製造国 | 日本 | ||
| 製造メーカー | − | ||
| 配備国 | 日本 | ||
| 製造初年 | 1930年 | ||
| 口径 | 75 | [mm] | |
| 口径比 | − | ||
| 砲身長 | 2.883(砲口制退機、閉鎖機含むと3.023m) | [m] | |
| 全長 | 約5.0 | [m] | |
| 全高 | 約1.6 | [m] | |
| 全幅 | − | [m] | |
| 全備重量 | 九〇野砲:1400 機動九〇野砲:1600 |
[kg] | |
| 腔綫 | 有り | ||
| 砲身材質 | − | ||
| 砲身命数 | − | [発] | |
| 閉鎖機 | 水平鎖線式右開き | ||
| 平衡機 | − | ||
| 駐退複座機 | − | ||
| 最大駐退力 | − | [kg] | |
| 後座長 | 1000 | [mm] | |
| 照準具 | − | ||
| 上下射角 | -8〜+43 | [deg] | |
| 水平射角 | 左右各25 | [deg] | |
| 最大射程 | 14000 | [m] | |
| 装薬 | − | ||
| 公算誤差 | − | ||
| 砲口初速 | 680 | [m/sec] | |
| 発射速度 | − | [発/min] | |
| 砲弾 | 九四式榴弾 九〇式榴弾 九〇式尖鋭弾 など |
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| 操作人員 | 6 | [人] | |
| 布設所要時間 | − | [min] | |
| 説明 | ●開発 九〇野砲は、日本陸軍の要請で、フランスのシュナイダー社が設計した野砲の一部の仕様を変更して、1930年に大阪造兵廠で試製された。本砲の設計は当時としては最新のものであった。特筆すべきは以下の4点である。 1)砲身は、自己緊縮法による単肉自緊砲身で、軽量化が図られている。 2)駐退複座機の主体を砲身に固定して、後座合成体の重量を増大することにより、射撃時の衝撃的な加速度を軽減させている。 3)砲口制退機を採用し、反動の軽減を図っている(日本では、初めての採用)。 4)開脚式砲架と打ち込み式駐鋤の採用により、上下射角および方向射角の増大が図られている。 これらのことから、本砲の性能(射程距離、威力、射撃精度)は、当時の世界水準と同等以上のものであった。一方、整備にあたっては、参謀本部の作戦担当者から、本砲の重量が過大で、より軽量で運動性の高い新野砲を研究すべきとの意見が出された。他方、野戦砲兵学校などの実用部隊からは、射程が大きく高性能の本砲を主力野砲とすることが適当であるとの意見が出され、意見が対立したまま、決定は先送りされていた。しかし、満州事変において、関東軍管轄下の第2師団により、約9ヶ月間の部隊実験により、本砲の高性能は、多少の重量過大以上の価値があることが証明された。以後、本砲の整備が進められた。一方、参謀本部の作戦担当者推奨の、より軽量(軽量化の弊害で短射程)の新野砲として、95式野砲も開発・整備も行なわれている。 ●改良 本砲の試製の後、諸外国では野砲の自動車牽引の研究が始められた。九〇野砲は、馬牽引が前提であり、これにともない、日本陸軍でも、九〇野砲を自動車牽引可能な機動九〇野砲に改良することなった。 機動九〇野砲は、1933年6月から設計が開始され、数回の試験・改修を経て1935年8月に制定された。九〇野砲からの改良点は、車軸の板バネ懸架およびソリッドゴムタイヤの採用で、射撃時には、緩衝装置の機能を防止する(緩衝装置があると射撃精度が低下するため)機構が付けられている。この改良により、射程等には、変化は無いが、重量は1600kgに増大した。自動車による牽引速度は、最大45km/hourである。 機動九〇野砲とは他に、九〇野砲機動運搬車も開発・制定されている。この機動台車は、九〇野砲の車軸の下に緩衝装置を介した小車輪を取り付けたもので、射撃時には、砲の車輪を接地させ、容易の射撃姿勢に移行でき、牽引時には、砲の車輪をわずかに持ち上げた状態で、運行するというものであった。牽引速度は、最大45km/hourで、機動九〇野砲に遜色の無いものであった。 ●性能 九〇野砲の性能は、前述の通り、第2次世界大戦当時の列強各国の装備野砲と比較しても、優れたものである。まず、射程距離であるが、14000mという数値は、1940年に制式化された米国の105mm榴弾砲M2A1の11273m、英国の25ポンド野砲MkIIの12200m、1935年に制式化されたドイツの105mmleFH18の10675m、1942年に制式化されたソビエトの76.2mm野砲M1942の13290mと、列強国の装備野砲を凌駕している。 射撃精度については、データが無く比較できないが、戦時中、野砲兵中隊長、第一陸軍技術研究所所長などを歴任し、戦後、防衛大助教授、陸上自衛隊武器学校火器科長などを歴任した、小野左吉郎氏は、その翻訳書「大砲撃戦、サンケイ新聞社出版局発行」の解説で、「訳者がアメリカ出張中、太平洋戦線でこの砲の射撃を体験した米軍武器学校の教官が、その驚異的な威力および精度を賞賛していたものである」と述べている。この内容からも、この砲の精度の高さがうかがえる。 一方、榴弾の威力は、榴弾の弾丸重量が6kgと小さく、威力半径は22m(独自に推定した値では20m)程度である。この値は、105mm榴弾砲M2A1の榴弾重量15kg(威力半径25m、推定値で27m)や、25ポンド野砲MkIIの11.3kg(推定威力半径25m)、76.2mm野砲M1942の6.5kg(推定威力半径21m)など、列強の野砲より劣っている。ただし、発射速度は、小口径砲の方が速い傾向にあり、単位時間当たりの制圧面積は一概には比較できない。 その他、野砲にとって重要な、直接照準による装甲目標に対する射撃能力は、その初速の速さ(680m/sec)から良好なものであった。 ●自走砲や戦車への搭載 本砲は、改良を施され、1式砲戦車ホニIや、3式中戦車チヌのに搭載された。 |
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| 参考文献 | ・「九〇式野戦砲取扱法」 ・「大砲入門」 佐川二郎著 光人社NF文庫 ・「大砲撃戦 第二次世界大戦ブックス37」 Ian V Hogg著 小野佐吉郎訳 中野五郎監修 |
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| 写真 | − | ||
| 作成 | − | ||
| 更新 | 2004/07/19 | ||
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2001.8.25更新 榴弾砲format_v0.5