作成:2001/6/18
題目:対艦ミサイルの半徹甲弾頭の貫徹能力について
目的:
対艦ミサイルは、半徹甲弾頭と言われており、貫徹能力を考慮されていると言う。そこで、どの程度
の貫徹能力があるのか、各種兵器弾頭の炸薬/弾頭重量比を比較することで、評価した。
内容:
各種兵器弾頭の炸薬/弾頭質量比を表1に示す。兵器は、対艦ミサイル、航空爆弾、
砲の榴弾、戦車砲の徹甲榴弾、艦砲の徹甲榴弾の5種類である。なお、炸薬/弾頭重量費は、
下式で計算している。
炸薬/弾頭重量費[%]=炸薬重量[kg]÷弾頭重量[kg]×100
対艦ミサイルAGM-84ハープーンの炸薬/弾頭重量比は44.1%である。
各種兵器弾頭の炸薬/弾頭重量比は、航空爆弾で38%、砲の榴弾で約15〜20%、
戦車砲の徹甲榴弾で1%、艦砲の徹甲榴弾で2.3%であった。
この中で、対艦ミサイル弾頭の炸薬/弾頭重量比にもっとも近いのは、航空爆弾であり、
同程度の貫徹能力があることが推察できる。一方、半徹甲弾頭と言われる割には、榴弾や
徹甲榴弾と比較して、炸薬/弾頭重量比が大きく、貫徹能力はそれほど高くないことが推察される。
このことから、半徹甲弾頭の意味は、「他の対空攻撃用のミサイルの弾頭等と比較して、侵徹効果を
考慮するためにちょっと丈夫にした弾頭」という程度の意味で使われていると考えられる。
表1 各種兵器弾頭の炸薬/弾頭質量比 | |||||
兵器 | 名称 | 弾頭重量 [kg] |
炸薬重量 [kg] |
炸薬/弾頭 重量比 [%] |
備考 |
対艦ミサイル | AGM-84 | 221.4 | 97.5 | 44.1 | ハープーンの半徹甲弾頭 |
航空爆弾 | Mk82/500lb | 226.8 | 87.1 | 38.4 | 無誘導の航空爆弾 |
Mk83/1000lb | 453.6 | 174.6 | 38.5 | 無誘導の航空爆弾 | |
榴弾(砲用) | 93式榴弾 | 40.6 | 7.8 | 19.1 | 45式15cm加濃砲等で使用 |
92式榴弾 | 36.0 | 7.7 | 21.3 | 4年式15cm榴弾砲で使用 | |
91式榴弾 | 16.0 | 2.5 | 15.8 | 14年式10cm加濃砲で使用 | |
93式尖鋭弾 | 40.2 | 5.5 | 13.6 | 45式15cm加濃砲で使用 | |
92式尖鋭弾 | 36.0 | 6.2 | 17.1 | 4年式15cm榴弾砲で使用 | |
91式尖鋭弾 | 15.7 | 2.3 | 14.5 | 14年式10cm加濃砲で使用 | |
戦車砲の徹甲榴弾 | 95式破甲榴弾 | 6.6 | 0.065 | 1.0 | 3式中戦車(チヌ) |
艦砲の徹甲榴弾 | 91式徹甲弾 | 1460 | 33.9 | 2.3 | 戦艦用徹甲弾(徹甲榴弾) |
参考文献:
「大砲入門」 佐山二郎著 光人社NF文庫
参考WebSite:
「Military Analysis Network」 URL:http://fas.org/man/index.html
「戦史研究」 URL:http://www.bekkoame.ne.jp/~bandaru/