作成:2001/5/7

題目:砲弾に対する地球自転速度の影響

目的:近年、榴弾砲の射程はRAP弾、ベースブリード弾の使用により40000m程度にも
なっている。一方、射程が長いほど、地球の自転によるコリオリ力の影響を受けやすい。
このことから、砲弾に対する地球自転速度の影響を考察した。

内容:

●地球の寸法
地球の寸法を表1に示す。地球の平均半径は、およそ6,378,000[m]である。この値から算出した
平均直径は、12,756,000[m]、最大周長は、40,074,156[m]である。なお、実際は、赤道部は、
自転により膨らんでいるので、この値より大きいが、ここではそれは考慮しない。

表1 地球の寸法
平均半径 6378000 [m]
平均直径 12756000 [m]
最大周長 40074156 [m]

●砲弾の目標までの到達時間
砲弾の目標までの到達時間を表2に示す。砲弾の平均速度を600[m/sec]、射程距離を40,000[m]
とし、砲弾が直線距離を飛ぶものとして、到達時間を計算した。目標到達までの時間は66.7[sec]と
なる。なお、実際の砲弾の弾道は、曲線なので、より多くの時間がかかる。

表2 砲弾の目標までの到達時間
砲弾平均速度 600 [m/sec]
射程距離 40000 [m]
到達までの時間 66.7 [sec]

●地球自転速度の緯度方向の違いによって砲弾が流される距離
モデルとしては、北緯0度(赤道)、北緯45度および北緯60度から、北極に向かって、砲弾を発射した
場合の射程40000mでの、自転速度の差によるずれを計算した。計算結果を表3に示す。
なお、計算方法は、発射位置と、そこから40000m北極よりの位置での自転速度の差を求め、それに、
到達時間を乗し、1/2を乗している。より精密に計算するには、緯度方向での速度差を砲弾の速度と時間で
関連し積分する必要があるが、前記の簡易計算でも、比較は可能と判断している。
 北緯0度(赤道)では、そこから40000m北極よりの位置との自転速度の差は、0.008[m/sec]である。
この速度差で到達(66.7sec後)までに砲弾が流される距離は、0.3mと計算できる。
 北緯45度では、同じく、自転速度差が2.609[m/sec]、流される距離は87[m]となる。
 北緯60度では、同じく、自転速度差が4.545[m/sec]、流される距離は151.6[m]となる。
なお、今回の計算では、弾道を直線で計算しているため到達時間が本来より短くなっており、本来の流される
距離は、さらに大きくなると予想される。

表3 地球自転速度の緯度方向の違いによって砲弾が流される距離
断面径 断面周長 自転速度 流される距離※1
[m] [m] [m/sec] [m/sec] [m]
北緯0度(赤道) 12756000 40074156 412.286 0.008 0.3
上の40km北 12755750 40073370 412.277
北緯45度 9019850 28336694 291.530 2.609 87.0
上の40km北 8939140 28083137 288.921
北緯60度 6378000 20037078 206.143 4.545 151.6
上の40km北 6237380 19595307 201.598

●考察
 結果から緯度方向の地球自転速度差により砲弾が流される距離は、緯度が高くなればなるほど大きくなる
ことが判る。 赤道付近では、この影響はほとんど無いが、北緯が高い土地での戦闘では、無視できないと
予想される。
以上