傾斜装甲板の実厚と換算厚の関係の概略図

[題目]
 傾斜装甲板の実際の装甲厚と換算装甲厚の関係
[作成]
2000/02/16
[更新]
2001/05/05
[経緯]
 戦車の装甲では、装甲に傾斜をつけることにより実際の厚さよりも装甲の効果を高くすることができる。その効果について数学的に計算してみた。

[理論]
 傾斜装甲板の実厚と換算厚の関係の概略図を左図1に示す。傾斜装甲板の水平に対する角度をθ、装甲の実際の厚さをt、装甲の換算厚さをtrとする。装甲を垂直に立てた状態(θ=90deg)では、砲弾が水平に飛んでくるとすると、この装甲に垂直に衝突する。このときの実厚さ:tと換算厚さ:trは同じである。装甲板をθ度に傾けると、砲弾が装甲板を通過(貫通)する距離が長くなる。その関係は以下の式で表せる。
 
 tr=t/sinθ ・・・ (1)
 傾斜装甲板の換算厚さ:tr
 傾斜装甲板の実厚さ:t
 傾斜装甲板の水平に対する角度:θ
 
 この理論式から計算した装甲の換算厚さを下表に示す。実厚の10mmの装甲は、
水平に対して60度に傾けると、換算厚さは11.55mmに、水平に対して30度
に傾けると、換算厚さは20.00mmになる。
 
表  傾斜装甲板の実際の装甲厚と換算装甲厚の関係

  装甲厚(実際) 角度 装甲厚(換算)
θ tr=t/sinθ
単位 [mm] [deg] [mm]
1 10.00 15 38.64
2 10.00 30 20.00
3 10.00 45 14.14
4 10.00 60 11.55
5 10.00 75 10.35
6 10.00 90 10.00

[実際では]
 傾斜装甲板では、上記の理論の他に砲弾を弾かせる効果が生じる。衝突前の運動量
は、砲弾の進む方向へのベクトルしかないが、衝突と同時に装甲の抵抗のために装甲
の傾斜角度と平行方向にベクトルが生じ、これが一定以上大きいと砲弾が弾かれる跳
弾という状態になる。この効果により、上記の理論換算厚さよりも大きな効果を表す
こともある。
また、砲弾は衝撃インピーダンスの違う材料に衝突した場合、光で言うところの屈折に
極めて似た(屈折角の式と同じ形式で記述可能)現象が発生する。このことから、傾斜装甲
板に対する侵徹長を検証する場合、この侵徹パスの検証を行う必要がある。

以上

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