旧日本陸軍防弾鋼板データ


●防弾鋼板の種別

表1 防弾鋼板の種別(製造方法による種別)
第I種1類 焼入後低温焼戻するもの
第I種2類 焼入後高温焼戻するもの
第II種 表面侵炭焼入後低温焼戻するもの
第III種 焼入高温焼戻後表面焼入せるもの

旧日本軍陸軍防弾鋼板の種別、符号および化学成分

表2 旧日本軍陸軍防弾鋼板の種別、符号および化学成分
種別 符号 化学成分 適用板厚 備考
C Si Mn Cr Mo Ni PおよびS
第I種 1類 A 0.25-0.35 <0.35 0.30-0.60 1.50-2.00 0.30-0.50 2.50-3.50 <0.03 2mm以上
B 0.25-0.35 <0.35 0.80-1.50 1.20-1.80 0.30-0.50 1.20-2.00 <0.03 50mm以下
C〜K 0.28-0.38 <0.35 0.30-1.00 1.50-2.50 1.20-2.00 <0.03 20mm以下 この他に、低Ni-Cr-Vなど数種類あるが、省略。
2類 0.25-0.35 <0.35 0.30-0.60 1.20-1.80 1.50-2.00 <0.03 20〜50mm
第II種 A 0.20-0.35 <0.35 0.30-0.60 1.50-2.00 0.30-0.50 3.00-5.00 <0.03 2mm以上
B 0.20-0.35 <0.35 0.80-1.50 1.20-2.00 0.30-0.50 1.20-2.00 <0.03 50mm以下
C〜K 0.20-0.35 <0.35 0.30-1.00 1.50-2.50 1.20-2.00 <0.03 20mm以下 この他に、低Ni-Cr-Vなど数種類あるが、省略。
第III種 A 0.47-0.50 <0.35 0.30-0.60 1.10-1.60 0.30-0.50 1.50-2.00 <0.03 50〜75mm
L1 0.47-0.50 <0.35 0.30-0.60 1.70-2.30 0.30-0.50 3.50-4.00 <0.03 100〜200mm
L2 0.47-0.50 <0.35 0.30-0.60 1.30-1.80 0.30-0.50 2.20-2.70 <0.03 100〜175mm
L3 0.47-0.50 <0.35 0.30-0.60 1.10-1.60 0.30-0.50 1.50-2.00 <0.03 100〜150mm

●第II種の浸炭深さ
鋼板を切断、断面を研磨し、硬度分布(ビッカース硬さ)を測定する。侵炭表面から550Hvまでの範囲を浸炭層と規定した。また、断面をエッチングして、侵炭層の厚さを目視判定することも許可されていた。

板厚 浸炭深さ
30mm以下 板厚の8〜10%
30〜50mm 板厚の7〜10%
50mm以上 板厚の6〜8%

●第III種の焼入深さ
鋼板を切断、断面を研磨し、硬度分布(ビッカース硬さまたは、ショア硬さ)を測定する。硬度が母材(焼入れ前の鋼板)の硬さと一致するまでを、焼入深さと規定した。また、断面をエッチングして、焼入深さを目視判定することで判定することも許可されていた。

板厚 焼入深さ
50mm 20±4
75mm 27±7
100mm 35±5
以下省略。規格としては、200mmまであった。

●確性試験
(1)材料試験
降伏点、引張強さ、伸び、絞り、衝撃値、硬さなどの測定を行う。
(2)防弾試験
所定砲および弾丸に対する耐侵徹および耐穿貫、すなわち、鋼板の防弾効力を試験する。
(3)弾撃試験
所定砲および弾丸に対する鋼板の亀裂発生および破砕の難易、すなわちBKの対弾撃抗力を試験する。

●出展
・戦車マガジン 第2巻 第14号 通巻26号 「知られざる日本の兵器 日本の防弾鋼板 覚え書 (その1)」 大前肇著より抜粋
・元データは、防弾鋼板規格(昭和20年6月19日制定)より

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作成:2002/07/28 Ichinohe_Takao