鋳造装甲
戦車の砲塔などの構造を組み立てる場合には、通常、装甲板を溶接したりリベットで接合したりすることが一般的である。一方、予め型を造り、その型に金属(鋼等)を流し込んで構造を造る方法を鋳造と言う。この鋳造で造られた構造の装甲を鋳造装甲と呼んでいる。
鋳造の利点は、
1)避弾経始を重視した複雑な曲面形状などが造りやすいこと
2)複雑な形状でも多くの工程を経ずに造れるため安価であること
などが上げられる。一方、不利な点は、
1)均質圧延装甲と比較すると、型などから機械的性質を劣化させる不純物が入り易く、装甲の耐弾性能が低下すること
2)鋳造で造った複雑な構造を後で熱処理することになるため、装甲の機械的性質を均質にすることが難しく、耐弾性能が低下すること
などが上げられる。
また、純粋に冶金技術的な問題だが、鋳造では合金の湯流れ性(型に流し込むときの金属の流れ易さの性質、これが悪いと鋳造構造の中に「す」と呼ばれる空間や不良部分が出来易い)等を向上させるため、化学成分構成に制約が出来やすく、純粋に耐弾性能を重視した成分構成からは外れることになりかねない。
以上のことから、鋳造装甲は同じ厚さの均質圧延装甲に比較し、15〜20%程度耐弾性能が劣ると言われている。
鋳造装甲の兵器の例としては、日本国自衛隊の74式戦車(74式戦車外観参照)の砲塔部分、米国のM60戦車の砲塔部分、ロシア(旧ソ連)のT-62の砲塔部分などが上げられる。
作成:2001/05/27 Ichinohe_Takao
更新:2001/05/30 Ichinohe_Takao