シリコンバレーで考える 安藤茂彌
【第36回】 2010年9月22日
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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授]

海底に国旗を立てて領有権を主張する
中国に日本はこんなに無防備でいいのか

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 最近中国は、近隣諸国と領有権紛争が起きている東シナ海において、乗員3人を乗せた深海潜水調査艇を海底まで沈め、中国の国旗を海底に植え込んだ。日本の「しんかい」にそっくりな深海潜水艇である。中国のテレビ局はその様子を撮影したビデオを国家的快挙として大々的に報道した。

 ニューヨーク・タイムズが中国日報の報道をスクープし、同紙の一面に掲載してアメリカでも話題になった。この事件は多くのアメリカ国民に2007年にロシアが取った行動を想起させた。ロシアは北極点の海底にロシア国旗を立てて領有権を主張したのである。だが日本のメディアは、尖閣諸島で同じことが起きる可能性が強いにもかかわらず、中国のこの事件を一切報道しなかった。

 中国はなぜこんなことをするのか。海底に眠る豊富な地下資源を支配下に置くためである。

 一例をあげよう。電気自動車の電池材料として注目されている希少金属リチウムは中国国内に豊富に埋蔵されている。従来はその多くを他国に輸出していたが、戦略物資と分かるや否や他国への輸出を制限し始めた。最近日本政府が中国政府に輸出制限の解除を交渉したが、全く応じる様子はなかった。

 今回の行動はその「海底版」である。海底に眠る希少金属をできるだけ多く支配下に置くことで、地下資源を独占し、輸出制限を通じて他国の生産能力を奪い、自国経済を更に拡大することを目論んでいる。アメリカ政府はこうした中国の戦略を既に察知し、希少金属に頼らない代替材料の開発を促す政策を採っている。

 今回の国旗植え込み事件は現在領有権で争いになっているベトナム沖の海底であると推測される。中国はベトナム沖の西沙諸島を自国の領土であると主張し、領海を侵犯したとしてベトナム漁船を数多く拿捕している。中国はベトナムと個別の交渉に応じることはあっても、多国間の交渉には応じられないとしている。ベトナムは個別の交渉であれば、中国の軍事力と威嚇でねじ伏せられることを恐れているのである。

 中国の暴挙に堪りかねたベトナムは米国とASEAN諸国を抱き込み、ASEAN会議の議題にして集団で中国に立ち向かう外交を展開している。中国の領土主張の被害国はベトナムに止まらない。シンガポール、マレーシア、インドネシアとの間でも同様な紛争を起こしているからだ。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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