発煙弾[Smoke]
●発煙弾とは
発煙弾とは、その名の通り煙を発する砲弾である。発煙の目的には数あるが、具体的には、1)行動する部隊を隠す、2)他の部隊や航空機などへ目標を指示する、などが上げられる。発煙剤には、ヘキサクロロエタン(HC:Hexachloroethane)と黄燐(WP:White
Phosphorus)など発煙を利用したものがあり、それぞれHC発煙弾およびWP発煙弾と呼ばれている。
●HC発煙弾(ヘキサクロロエタン発煙弾)の例
HC発煙弾の構造概略図を図1に示す。HC発煙弾の例としては、米国製105mm榴弾砲M2A1で用いられたM84発煙弾が上げられる。構造は、弾体の先端に信管が付き、内部に先端側から黒色火薬、続いて充填剤を納めた発煙缶が3個収納されている。一定時間で信管が作動すると、黒色火薬が点火され、発煙剤の点火とともに缶が弾底部より放出される。煙色はWP弾より灰色ぽい。有効発煙区域は30m×350mで持続時間は2〜3分である。M84発煙弾には着色(赤、黄、緑)タイプも存在する。
●WP発煙弾(黄燐発煙弾)の例
WP発煙弾の構造概略図を図2に示す。WP発煙弾の例としては、米国製105mm榴弾砲M2A1で用いられたM60発煙弾が上げられる。構造は、弾体の中心に炸薬の入った筒があり、その周りに充填材が収められている。信管は弾底部にあり、着弾と同時に炸薬により弾体が破裂し、充填材である黄燐を飛散させる。黄燐は空気に接触すると白煙を上げながら自然発火し、煙幕を形成する。黄燐は発火性が高いために、限定的であるが焼夷効果もある。有効発煙区域は60m×30mで持続時間は1分である。
作成:2001/09/16 Ichinohe_Takao