粘着榴弾[HESHまたはHEP]


●粘着榴弾[High Explosive Squash Head、またはHigh Explosive Plastic]とは
 粘着榴弾の構造概略図を図1に、粘着榴弾による攻撃の概略図を図2に示す。粘着榴弾とは、中空の弾体に粘度の高い炸薬(爆薬)を詰めた構造ので、信管は弾底部にある。弾体の肉厚は通常の榴弾に比較するとやや薄い。装甲に着弾した場合は、装甲表面に炸薬を粘着させ、爆発の衝撃で装甲裏面を剥離させて、剥離した装甲破片により内部の人員・器材に被害を与える。なお、装甲表面での爆発による衝撃波で装甲裏面が剥離する現象をホプキンソン効果と呼んでいる。非装甲目標に対しても、爆風および破片効果で榴弾と同様の被害を与えられる。ただし、弾体の肉厚が薄い分、破片効果の範囲は通常の榴弾と比較してやや狭い。一方、欠点としては、1)弾体の薄さと関連しているが初速が遅く遠距離での命中率が低下すること、2)中空装甲複合装甲に対しては、装甲の材質が連続的(一定)で無いことから、衝撃波によるホプキンソン効果が期待できないこと、3)通常の均質圧延装甲鋳造装甲でも、装甲内面に破片飛散防止のライナーを設置すれば、内部への被害を防止できること、などが上げられる。

●粘着榴弾の例
 粘着榴弾を最も積極的に採用している国は英国である。自衛隊でも74式戦車のL7系105mm戦車砲用の粘着榴弾として、75式105mm粘着榴弾2型を使用していた。75式粘着榴弾の構造は、前述の説明の通り、比較的肉厚の薄い弾体に、粘着性を持たせるためRDXとワックスを混合した炸薬が充填され、弾底部に信管がある。この信管の作動時間は、0.2〜0.6μsecである。弾丸質量は10.8kg、炸薬質量は2.7kgで、炸薬/弾丸質量比は25%と、通常の榴弾(10〜20%)と比較して大きいことが判る。この値から榴弾としての破片効果は限定的であることが推察される。初速は760m/secで、APFSDS弾と比較すると1/2であり、低伸性が低いことから、遠距離での命中率は低いことが推察される。

●各種砲弾による装甲の破壊状況
 リンク先(こちら)を参照のこと。

 

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作成:2001/09/02 Ichinohe_Takao