装甲と大砲の新事実
「AMX30の車体前面や側面左右のパネルは増加装甲ではない!」
お兄軍曹殿 談
当WebSiteの常連で、生粋の戦車マニアである「お兄軍曹殿」より下記のようなお話を聞きました。
*** お兄軍曹殿のお話 ここから ***
先日、本屋でGUN誌を立ち読みしていたんですが、フランスMBTであるAMX30の記事がありました。
読んでみて・・・車体正面に2枚の増加装甲・・・?
アクセスドアじゃないのか?いや、61戦車じゃあるまいしそんなわけないな。
試作車には無かったって言い切ってるし。
調べました。古いパンツァー誌をひっくり返して。
(※管理人も手持ちの雑誌から問題の記述を探してみました。その内容はこちら)
一番信頼の置ける江畑さんの記事を見ると、そのことには触れられていない。
その後の写真キャプションなどにいきなり登場してきます。
車体前面の板=増加装甲板説。あげくの果て車体前方左右のアクセスドアも補助装甲板だとおっしゃる。
ただ、反論の根拠が無いんです。車体左右のものは車体雑具等収納へのアクセスドアに間違いないはずです。
それで無ければ何故ヒンジと取り外し容易な構造になってるんだ?
それよりも車体前面の板だ。この板もヒンジと取り外し容易なロックで取り付けられている(図1参照)。
説明では20mm厚の装甲板だという。何故ボルト止めか溶接じゃないの?
簡単に取り外しできる構造はなんなんだ?しかも装甲板だったら華奢すぎないか?
取り付け方法。・・・あきらめました。分かりません。
ところが、別の物を探して見ていた本に載ってました!
車体左右の板がアクセスドアであると証明できる写真が。
整備中のものでアクセスドアは開放、更に車体横転輪に車体前面パネルのようなものが立てかけてある!(図2参照)
それは薄い板でした。箱状になっているので厚く見えるだけ。するとこれは何かのカバーだ。
ピンと来たのは潜水渡渉時の水密パネルに違いない。
と言うことで、AMX30のエンジンルーム上面の判る写真を見るとピタリ一致(図3および図4参照)。
車体前面の2枚のパネルはエンジン空気取り入れ口用の水密パネルでした。
ついでに状況証拠として潜水渡渉準備写真(図5参照)。
ご覧の通り全車とも前面のパネルがありません。吸気口に取り付けてあるためでしょう。
さらにAMX30車体を流用した自走砲の写真(図6参照)。
こっちの方がより増加装甲っぽくていいです(笑)。
でも増加装甲であるとすればAMX30だって操縦手の前にもしなくちゃね。
*** お兄軍曹殿のお話 ここまで ***
●問題の記述
管理人が手持ちの雑誌より問題の記述を探しました。それが下記です(PANZER 1998年11月号 特集記事:AMX30戦車、P36より引用します)。
「操縦席右側の車体前面には、前後に2枚の大きな増加装甲板が装着されているが、これはプロトタイプの段階ではなかったものだ。前面装甲板にこのような増加装甲を設けることは本車の前面装甲厚が当初あまり要求されていなかったにせよ、やはり薄すぎたことを如実に示している。いずれにせよ戦後型戦車としては珍しい例といえよう。」
●証拠の写真 | ||
図No. | 写真 (クリックすると大きな写真が見られます) |
解説(お兄軍曹殿) |
図1 | ●こんな取り付け方の増加装甲があるかい(笑) 工具を使わず直ぐ取れるようになっています。 写真奥付:「PANZER 1987年3月号(巻頭グラビア・フランス陸軍第5機甲師団:撮影 PAR YVES DEBAY)」 より引用。 |
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図2 | ●整備を受けるAMX30 側面のアクセスドアは開放状態 第4転輪にパネルが2枚立てかけられています。 写真奥付:「PANZER 1987年3月号(巻頭グラビア・フランス陸軍第5機甲師団:撮影 PAR YVES DEBAY)」 より引用。 |
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図3 | ●吸気口付近 金網部の左右に前面パネル取り付け部とほぼ同じ物が在るのがわかります。 写真奥付:「PANZER 1987年3月号(巻頭グラビア・フランス陸軍第5機甲師団:撮影 PAR YVES DEBAY)」 より引用。 |
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図4 | ●プラモだけど 上の写真だとやや見難いのでプラモデルだけど。 御覧の通りサイズがぴったり合いますね。 |
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図5 | ●潜水渡渉準備写真 ご覧の通り全車とも前面のパネルがありません。 吸気口に取り付けてあるためでしょう。 写真奥付:「戦車マガジン1978年12月号(特集・AMX30:著・P.H.Merullon 訳・松村一)」より引用 |
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図6 | ●自走砲も増加装甲? AMX30の車体を流用したAMX155GCT自走砲にも! こっちの方がより増加装甲っぽくていいです(笑)。 増加装甲であるとすればAMX30だって操縦手の前にもしなくちゃね。 写真奥付:「PANZER 1987年3月号(巻頭グラビア・フランス陸軍第5機甲師団:撮影 PAR YVES DEBAY)」 より引用。 |
●まとめ
ということでAMX30の車体前面に見られるパネル状のものは、潜水渡渉時にエンジンの空気取り入れ口を塞ぐための水密パネルです。また、車体側面左右にあるパネル状のものは、アクセスドアであることが判りました。ですから増加装甲であるとの説明は誤りです。
以上
作成:2004/01/07