弾道学の概論


●弾道学[ballistics]とは
 銃砲の弾丸は、砲の腔内で、発射薬の燃焼ガスにより加速され、砲口を飛び出し、空中を飛翔して、目標に着弾する。このような弾丸の経路を弾道[ballistic]と呼ぶ。弾道学[ballistics]とは、銃や砲から発射される、弾丸の運動に関する学問である。一方、今日では、電子計算機や計測機器の発達により、弾道学は、航空宇宙工学や流体力学などとも総合的に結び付き、弾道学のみの独立した学問では無くなっている。

●弾道学の区分
 弾道学には、大きく分けて4つの区分が存在する。弾道学の区分を表1および図1(アニメーション)に示す。

表1 弾道学の区分
区分 説明
砲内弾道学(腔内弾道学)
[Interior Ballistics]
弾丸が、砲身内(腔内)で発射薬の燃焼ガスの圧力により加速され、砲口を飛び出すまで関する学問。弾丸の運動(物理学)の他、発射薬の燃焼(化学)、砲身の設計(工学)など、多くの分野にまたがる。
砲外弾道学
[Exterior Ballistics]
弾丸が、砲口を飛び出し、目標に到達するまでに関する学問。弾丸の運動には、空気抵抗(流体力学)や、重力、コリオリ力等が影響しており、これらを考慮する必要がある。現在では、弾丸を航空機やロケットに見立てることで、本学問と航空宇宙工学の間には、多くの関連性がある。
終末弾道学
[Terminal Ballistics]
弾丸が、目標に到達し、目標内での弾丸の運動や、目標にどのような被害を与えるかに関する学問。徹甲弾のような弾丸の持つ運動エネルギーによる被害から、榴弾のような弾丸に内蔵される炸薬の爆発による被害まで、さまざまな破壊現象を研究する。
過渡弾道学
[Trancient Ballistics]
弾丸が砲口を飛び出した直後の運動に関する学問。この瞬間は、砲外弾道や終末弾道に大きく影響を及ぼすことから注目されてきたが、実際的な解析が可能になったのは、電子計算機が発達した、極近年である。このことから、未だ学問的には成熟したもので無い。

 

図1 弾道学の区分の概略図(アニメーション)

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作成:20020616 Ichinohe_Takao
更新:20030616