福島県金山町大塩の炭酸井戸

  福島県大沼郡金山町、大塩温泉の近くに天然の炭酸水が湧く井戸があると知り旅行の途中に立ち寄ることにした。
ネット上では無雪期のレポートは多数見つかるものの、冬に行った情報は少なく少々不安ではあるがそれほど国道から離れた場所ではないようなのでおそらく何とかなるであろう。

 会津大塩駅

 JR只見線会津大塩駅がこの炭酸井戸の最寄駅となる。
 大雪によってしばしば運休することもある只見線だが、この日は順調に走り、時刻表通り到着した。
 
 全線を通して非常に運転本数の少ない只見線だが、この付近は特に少なく、下り、上りともに各3本のみでこの列車の次の上り列車は約4時間後の19時台まで無く、それが最終列車である。
 
 線路と平行する国道252号を会津川口方面に15分ほど行くと、目印の看板が見えてくる。

  交通量の少ない道ではあるが、路肩は狭くそれほどの量ではないとはいえ除雪した雪が積み重なっており結構危なっかしい。
 
 看板通りに進むと、すぐにこの会津心水の工場が目に入る。

 目的の井戸はこの近くにあるはずだが、建物の先は見るからに除雪されておらず、簡単にはたどり着けそうに無い。
 
 工場の玄関先では、関係者とおぼしき男性が雪かきをしていたが、咎められるのを恐れこの時は声を掛けなかった。
 工場の前を道なりに進むとこの状況である。替えのズボン等は用意してあるので、雪原に踏み込む事に躊躇はないが、やはりこの時期には無理なのではないかと一瞬思ったりした。

 写っている車は他県ナンバーで、水汲みに来たのではないかとも最初思ったがそれらしき人はおらず、違うようだ。

 炭酸井戸への道 

 この後道を間違え、辺りを10分以上彷徨ったのちようやくこの看板を見つけることが出来た、実際には上の写真の車のすぐ先に井戸への道があったのだった。
 
 ちなみにこの2枚の写真は帰りに撮影したものなので、写っている足跡は全て自分のものである事をお断りしておく。
 この看板からほんの20m程の所に炭酸井戸はあったのだが、振り返ってみると、この通り自分の他には、うっすらと一人分の足跡が残る程度でこの時期に炭酸井戸を訪れるひとは多くはないようだ。
 この日は正月の大雪も雨の影響などで大分減り、一帯の積雪量は50cm程だったというのにこの太ももまで埋まる状況である。
 
 本当に雪深い日ならばたどり着くのは不可能だったのかもしれない。

 さて肝心の炭酸井戸だが、雪にも埋もれず満々と水を湛えボコボコと湧き出す様子がしっかりと確認できる。
 
 水位は充分に高いようだが、用意した秘密兵器「汲み上げ1号」をザックから取り出し早速作業に取り掛かる。
炭酸の湧き出す様子を動画に収めたので、是非ご覧いただきたい。
 
 この炭酸水の湧き出す様子は味とともに一見の価値ありだと思う。 
 動画(455KB)

 到達

 この日は手を伸ばせば届くほど水位が高かったが、汲み上げる道具等はあるいは雪に埋もれているのか見当たらず、「汲み上げ1号」は充分な活躍を見せた。
 
 夏場などは何メートルも水位が下がる事もあるようで、そんな時は道具が必須であろう。
 無事に用意したペットボトル3本を満タンにし、試しに少し口に含んでみたが、想像以上の炭酸ぶりだった。
 
 三ツ矢サイダー並とまではいかないが、CCレモン級の炭酸感はあり、これが自然に湧き出しているのは驚きである

 この後来た道を無事に戻り、再び工場の前を通ると先程の男性が雪かきを続けていたので、炭酸井戸についての話を伺う事が出来た。










 話によれば、
 北海道や九州にも同じような炭酸井戸があるが硬度が高く飲みづらく、ここの炭酸水は非常に飲みやすい泉質で良い。 
 昔は子供がここの炭酸水に砂糖を入れサイダーのようにして飲んでいた。
 一年の中では冬が一番水位、泉質ともに安定していて炭酸も強い

 などの事を知る事が出来た。
帰りにこの工場で製造している「aWa心水」 250ml入りを3本購入し宿へと戻った。
 こちらは専用のポンプで汲み上げた物を非加熱ろ過殺菌で仕上げた製品だが、後で飲み比べて見ようと思う。

 頂いたパンフレットによると、ここの炭酸水は明治時代には「芸者印タンサン ミネラル ウォーター」としてヨーロッパに輸出していた事もあったがその後休業を余儀なくされ、近年復活を遂げたとの事だった。
 
 宿に持ち帰った天然炭酸水は、夕食後焼酎割と梅酒割で頂いたが非常に美味だった事はいうまでも無い。
 

 夏に訪れた他のレポートを見ると、雑味が感じられたり、水量の少ない時期には細かい砂が混じる事もあるようで、このように楽しめるのは冬からGW前位までのようだ。

 大塩温泉

 
 大塩温泉岩崎屋旅館は料理も上々で、炭酸泉の温泉があり体の芯まで温まる事が出来た。

 こういった山間部の旅館では、値段に見合った内容の料理を提供しようと、冷凍物の海産物や時期外れの食材が使われることも良くあるが、ここではシンプルながら味わい深い川魚を中心とした料理を堪能することができた。

 春に訪れればさらに旬の山菜料理を楽しむことができるであろう。

 また宿から徒歩2分くらいの所には源泉の異なる共同浴場もあり、こちらも全く観光地化されていない昔ながらの雰囲気でおすすめである。
 内湯の無色透明な炭酸泉に対して、こちらは素朴は感じの濁り湯になっている。

 この日はたまたま他に客はおらず、こじんまりとした木の浴槽でゆっくり温まることができた。 


 ちなみに「井戸へ汲みにいくのはちょっと」という方には洗面所に炭酸水の出る蛇口もあるので、やや炭酸度は低いが試してみる価値はあると思われる。