2010年10月30日16時53分
全日本吹奏楽コンクールで、美しい演奏を披露する仙台市立八軒中の生徒たち=30日午後、東京都杉並区の普門館、古川透撮影
高田教諭の指導で練習に励む生徒たち=29日午後7時30分、東京都新宿区、角野写す
アマチュア音楽界の国内最高峰とされる全日本吹奏楽コンクールと全日本合唱コンクールの二つの全国大会に、同じメンバーでのぞむ中学校がある。仙台市立八軒(はちけん)中学校の「吹奏楽・合唱部」。30日昼すぎに東京・普門館の吹奏楽コンに出て、午後は台風のなかを31日に合唱コンがある兵庫県西宮市に向かう。
同中学校は、全国から約2600校が参加した第58回全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)中学の部Aを勝ち進んだ。中学数百校が参加した第63回全日本合唱コンクール(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)でも、混声合唱の部の出場を勝ち得た。
平松久司・全日本吹奏楽連盟理事長(75)は「連盟にかかわって30年になるが、初めて聞いた。声と楽器。表現方法が全く違うのに両方で成果をあげるなんてすばらしい」。浅井敬壹・全日本合唱連盟理事長(71)も「合唱にかかわって約50年間だが、初めて聞いた。感動した」と口をそろえる。
きっかけは一つのトラブルだった。
もともと同中の吹奏楽部と合唱部は別々。音楽教諭の高田志穂さん(37)が一人で顧問を務めていた。ところが2005年、両部がそれぞれ出場する予選大会の日程が重なった。悩んだあげく、合唱の大会を率い、吹奏楽は知り合いに頼んだ。その時、生徒たちが泣いた。「先生は合唱部の方が、かわいいんだ」。吹奏楽部の生徒の声に、「音楽を楽しむ資質を育てる教育がしたいのに」と悩んだ。そして2年後、「二つの部の顧問が無理ならば一つの部にしよう」と結論を出した。
吹奏楽と合唱の両方を練習する負担は大きいが、部長の鈴木伶奈さん(15)は「吹奏楽で和音がうまく吹けない時は、一度みんなで合唱してからイメージを合わせる」と利点を話す。
同中は30日、部員45人が中学前半の部の最後に演奏した後、台風14号で荒れる中を新幹線で大阪に移動。仙台に残っていた部員17人も飛行機で駆けつけて合流し、31日は62人で合唱の舞台に上がる。(角野貴之、加賀直樹、河村泰志)