【社説】中国は朝鮮戦争での毛沢東の役割をどう説明するのか
中国外務省の馬朝旭報道局長は28日の定例記者会見で、習近平国家副主席の「抗美援朝戦争(6・25戦争〈朝鮮戦争〉参戦に対する中国式表現)は平和を守り、侵略に対抗するための正義の戦争」という発言について、「中国政府の定論」と主張した。
習副主席は今月25日、6・25戦争に参戦した兵士らとの座談会で、「朝鮮で内戦が発生すると、米国は多数の兵士を送り込み、中国の度重なる警告にもかかわらず、38度線を越えた」「(中国の参戦は)帝国主義の侵略者が中国の人民に強制したものだ」などと述べた。中国の主張はつまり、「6・25戦争は南北間の内戦だったが、ここに米国が介入し、中国国境まで迫ってきたため、中国が仕方なく参戦した」というものだ。
中国は、国際的に認められた歴史的事実を歪曲(わいきょく)している。ソ連崩壊後に公開された極秘文書によって、6・25戦争は金日成(キム・イルソン)主席が旧ソ連のスターリンと当時の中国の最高指導者・毛沢東主席と緊密な協議を行い、ソ連と中国の承認を得て敢行した南側への奇襲攻撃だったことが確認された。中国は仕方なく6・25戦争に参戦したのではなく、事前の謀議段階から深く関与していたわけだ。毛沢東主席は1949年5月、北京を訪問した金日成主席の側近、キム・イル氏に「満州に中国軍が控えているので心配しないように」と伝えた。また毛沢東主席は、50年5月に北京を訪問した金日成主席に対し、「米軍が戦闘に加われば、中国は北朝鮮に軍隊を送る」と再度念を押し、金日成主席はおよそ1カ月後、南側への奇襲攻撃を敢行した。中国は、金日成主席に南侵を促した毛沢東主席の役割について、何と説明するつもりなのか。
中国は、米国の6・25戦争参戦を「帝国主義の侵略」と規定しているが、これも事実と異なる。米国は、北朝鮮の南侵を「国際平和を破壊する行為」と糾弾した国連決議に従い、ほかの15カ国とともに国連軍の一員として参戦した。当時の中国は国連加盟国ではなかったが、現在は国連安全保障理事会の常任理事国として重要な役割を担っている以上、歴史的事実を無視した主張を展開してはならない。
中国は1990年代初めまで、教科書に「6・25戦争は北侵」と記述していたが、92年の韓中国交正常化以降、「50年6月に6・25戦争が起きた」と表現を変えた。旧ソ連の極秘文書公開などで「6・25北侵説」を主張しつづけるのが困難になり、立場を変えたわけだ。いま中国が展開している「抗美援朝戦争は正義の戦争」という主張も、いつか真実の前に崩れる瞬間が訪れるかもしれない。そうなれば、中国は次にどんな主張を持ち出すのだろうか。
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