自宅試聴室にB&Wのスピーカー「Signature Diamond」を導入してからすでに3年目を迎え、音がすっかり部屋になじんできた。導入当初はほぼ1ヶ月単位で微妙に音調が変化していたが、最近はさらにエージングが進んで音が安定し、中高域の音色に適度なしやなかさが感じられるようになっている。
一方、春から使い始めているネットオーディオ用の新しい試聴室に導入するスピーカーがなかなか決まらなかったのだが、夏の終わり頃にようやく候補を絞り込み、最終的にウィルソンオーディオの「Sophia 3」(
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到着したのがいまから約1ヶ月前、それからしばらく鳴らし込み、最近になってかなり音調が落ち着いてきたので、今回はSophia 3の第一印象を簡単に紹介しておくことにしよう。
ウィルソンオーディオといえばSystem 8に至る上下独立型キャビネットのスピーカーがまず思い浮かぶ。現在このラインはSasha W/Pに受け継がれているが、Sophiaは一体型キャビネットを採用しており、ウーファーのユニット構成など、いくつかの違いがある。私自身もSasha(
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最終的にSophia 3を選んだのは、部屋の大きさとのバランスと、低音の反応の良さに主な理由がある。大音量で鳴らしたときのスケール感は上位モデルのSashaの方が明らかに上だが、普段はそこまで音量を上げることはなく、むしろ小〜中程度の音量で聴いたときの実在感はSophia 3の方が好ましいと感じることが多かったのだ。
Sophia 3は型番からわかる通り、すでに本機で3世代目に進化している。ユニットは前作から一新され、トゥイーターとミッドレンジはSashaと共通する。ウーファーは25.5cmで前作と同様、アルミ振動板を採用しているが、マグネットの磁力はSophia 2の2倍に強化されているという。さきほど触れた低音のレスポンスの良さは、どうやらそこに理由がありそうだ。
いまのところ、アキュフェーズのPX-650をステレオモードに切り替えて鳴らしているが、DS特有の質感の高い低音のタッチを忠実に再現し、胸のすくようなクリアな低音を味わっている。ベースやパーカッションのアタックが瞬時に立ち上がり、しかも速さだけでなく、原寸大の実在感と厚みを確保。さらに、空気を一気に押し出すオープンな低音を再現し、そのスピードと広がりで量感を引き出してくる。このベースの鳴り方をバスレフ型キャビネットで実現するのは簡単ではないはずだが、Sophia 3は理想にかなり近い質感を再現していると思う。
中高域の自然な佇まいは、B&WのSignature Diamondが聴かせる2ウェイのシンプルな音像&音場表現に通じるものがあり、3ウェイのスピーカーとは思えない自然な描写に感心する。スピーカーの後方に深みのある音場が広がるのはウィルソンオーディオの歴代スピーカーに共通する長所の一つだが、その良さはSophia 3にも確実に受け継がれている。
Signature Diamondは声の音像が比較的手前に浮かぶが、Sophia 3はそこからさらに半歩ほど下がった位置に定位する。いずれもスピーカーに音がまとわりつかず、キャビネットの存在を忘れさせてくれるのだが、ステージの遠近感やプレゼンスの雰囲気には両者で微妙な違いがあり、興味深い。B&Wとのキャラクターの違いはかなり大きいが、どちらも私の好みにかなり近いスピーカーであることは間違いない。
これから組み合わせるアンプやセッティングの吟味を始める段階なので、実力をフルに引き出すところまでは、まだ到底たどり着いていない。これからのチューニングが大いに楽しみである。