このページの先頭です。

ページ内を移動するためのリンクです。



| 受験生の皆様へ | 一般市民の皆様へ | 企業・研究者の皆様へ | 留学生の皆様へ | 修了生の皆様へ |


ここからメインメニューです。
ここからメインコンテンツです。

学長からのメッセージ

 学長室 TOP |

学長通信 No.21

学長通信No.21(2010年10月29日)

高山第2工区の開発計画の中止に伴う奈良県先端的研究支援事業の中止について


新聞報道などにもあるように、奈良県は高山第2工区の開発計画を白紙に戻すことになった。これに関連して、県から本学に要請があり計画を進めてきた奈良県先端的研究支援事業も中止することが余儀なくされた。以下、この問題についての経緯を報告しておく。


高山第2工区開発に対する基本的考え方

本学の北側の地域の高山第2工区の開発については、奈良県、生駒市、URとの間で、開発のための協議が進められていた。この計画は、一旦白紙に戻ったものの、本学の入学式において県知事と生駒市長が同席した際に、あらためて協議を進める方向の話が出て、再び動き出してきたものである。

本学としては、けいはんな学研都市の発展のために、高山地区が孤立している状況を解消して地域の活性化を図るためにも、また、本学の生活空間の改善を図るためにも、第2工区の開発の推進は重要であるという視点を基本的には持っている。


県の支援事業の計画の要請と中止の通告

本年初め、県副知事から、第2工区の開発の呼び水となるような、関東地区の大学を巻き込んだ研究プロジェクトを、3年間、県の支援事業によって実行するための計画づくりを要請された。そのための予算を、本年度2億円計上し、県議会で審議予定であるとのことであった。本学は第2工区の開発について、上記の視点に立ってこの話には協力すべきであるという判断から、県の意向を踏まえた方向で、研究プロジェクトを立案すべく、全学的な規模で動いてきた。そしてその状況については、県の担当窓口に報告してきた。今年度も半分をすぎ、研究計画がいつでも始められるよう、研究計画を具体的に詰め、研究を担当する研究者の手配も進めてきた。また、相手側大学では、単に研究者レベルではなく、研究科の組織的な対応も含めた継続的な協力体制を作るための手続きも進んでいた。

そうした中、10月15日、研究プロジェクトの説明に来るようにとの要請で県に出かけた研究者に、県側から思いもかけない言葉が発せられた。それは、このプロジェクトは、来年度以降はなく、また、今年度も予算執行が困難かもしれないというものであった。

そこで、本学としては、この話の真意と県の今後の予定について、責任者から話を聞きたいとして責任者の来学と説明を求めた。10月19日、県副知事が来学し、明日(10月20日)、知事が定例記者会見で、高山第2工区の開発計画の中止を発表する予定である。ついては、本学に要請してあった県の支援事業を中止することになった。また、もともと、第2工区開発に向けたプロジェクトのための予算という性格から本年度の予算執行も困難である、と通告された。県としては大学の計画しているプロジェクトに最終的なゴーサインを出したわけではないので、現時点で中止とすることは、申し訳ないことではあるが、全く問題ないと判断しているという見解であった。


県の見解についての大学の見解と対応

もともと、本プロジェクトは県の公的な強い要請によるものであった。プロジェクトの主眼は、関東地区の大学を巻き込み、本学との共同研究を本学即ち高山地区で実施し、一つの研究拠点を作ることであった。それが今後の高山地区開発の基点になり得るというのが県の発想であった。こうした県の要請を基礎に、本学としては、3つの研究科それぞれで、いくつかの関東地区の私立大学に研究連携を申し入れ、これまで研究計画を作ってきた。それを今の時点で突然、一方的に中止すると言われたことは極めて遺憾であり、困惑しており、また、怒りを感じていると言わざるを得ない。特に、大学連携の研究計画づくりに努力してきた教員や職員の怒りと奈良県に対する不信感は強いものがある。

研究というものは、そもそも、何をやるかというアイデアづくりが半分であり、今の時点ではあとは、実行するという半分が残っているだけである。本学は奈良県の行政の下部機関ではなく、独自の教育研究組織であって、それなりの運営のルールがある。そうしたプロセスが今回全く無視され、一方的に中止を通告されたことになる。

これまで、本学としては、県の事業、あるいは、県からの要請、たとえば遷都1300年記念祭、APECの際の要請などについては、ほとんど自前で、それに協力してきた。それは、県の本学への期待と、本学の立場を尊重した上での要請であると理解してきたからである。しかし、今回の件は、そうした本学の県への信頼を大きく揺るがすものである。県は、第2工区開発のために、本学を単に利用しようとしただけであると判断せざるを得ない。


大学としては10月20日に、急遽各プロジェクトの担当者を集め、県からの通告の内容など現状を報告し、それぞれのプロジェクトの状況を聞いた。その結果、研究がいつでも始められるよう、採用予定者についても、準備が進んでおり、現時点での中止は、そうした研究者の将来問題でもあるという意見が多かった。また、この話を聞いた連携先の大学では、奈良県や、本学に対する評価はすでにガタ落ちになっているとのことであった。

本学は、この20年間、新しい大学院大学として色々な努力を積み重ね、幸い、すこしずつ認知度も上がり、優れた大学院大学として評価されるようになってきた。また、そのなかで、奈良県や生駒市などの地元にも一定の貢献をし、けいはんな学研都市の重要な一員として、その発展に貢献してきた。しかし、今回のプロジェクトの急な中止は、大学の信用を落とすばかりではなく、そのために努力してきた優れた研究者の信用の失墜ももたらしている。大学としては、大学とそれらの研究者の立場と信用を守っていかなければならない。こうしたことを考えると、私自身は、本研究事業は、大学の独自の事業として、これまで計画してきた研究プロジェクトを、縮小してでも実施していくことが必要であると判断した。

たまたま、10月26日午後、けいはんな学研都市サードステージ推進会議があり、委員として出席していた私に発言の機会が与えられたので、こうした第2工区開発中止が、本学に大きな影響を与えている実態を報告した。その発言の趣旨は、いくつかの新聞の27日朝刊で報道された。この報道は、地域の人に本学が置かれている状況を知っていただくために役に立ったと思っている。また、県に対しても直接担当者以外の職員に、本学が困惑している状況が伝わったであろう。


今後の方針

学内の関係教員を集めての会議の後、大学名で、奈良県が本事業の中止を通告してきたことを連携先へ連絡する文書を作成した。それによって、取りあえず、計画の進行をストップしてもらうためである。


その後、26日午前の役員懇談会においてこうした状況を報告し、大学の信用、また、教員の信用を守るための方策を検討した。そこでは、新たに、外部機関との連携研究という予算枠を作り一定の支援をした上で、これまで準備してきた研究計画を実施していく方向、また、その際、現在の大学の財政状態の中で、こうした計画にどのくらいの予算が充当できるかについて検討した。もともと、それぞれのプロジェクトは、学内の公募という形で集約され、その研究内容は、研究戦略PTで議論されてきたものであり、それを実施することは、奈良県のためではなく、本学の研究の発展のために有用であるという判断も当然ある。


結論的には、現在のそれぞれの研究計画を、本学の独自事業としての関東地区の大学との連携研究と位置づけ、それが将来、色々な形で大学の研究資源となるよう、財政的な支援を行い、研究を実施する方向をとることとした。その際、大学の財政事情から、予算規模の上限としてはこれまで予定してきた半分で行えるよう、連携先との調整も含め、研究計画の見直しを求めた。研究期間は本年を含め予定通り3年とし、但し3年目の予算は研究の進捗状況を見た上で、変更することがあることとした。こうした大学の方針は、26日午後、研究担当者に伝えられ、現在、それぞれの研究計画毎に、内容の再点検を行っているところである。

これによって、本学あるいは本学の研究者の、失われつつあった信用を取り戻すことが出来、また当初予定したような、それぞれの研究の成果を生み出すことが出来れば、その後の連携の発展や、外部資金獲得の新たな研究の仕組みを作ることに貢献できるのではないかと考えている。さらには、関東地区からの学生の獲得戦略にも貢献できる可能性もある。

また、今回のことが、今後の県や外部機関との連携あるいは共同研究のための組織作りにとって、一つの教訓になることも期待している。こうしたことも含めて、転んでもただでは起きない、あるいは、災い転じて福と成す、ということでありたい。


なお、今回の件についての県との関係については、問題が片付いたわけではない。当然、県の言い分を全て納得して受け入れているわけでもない。今後どういう対応をするのか、学内で検討していきたい。また、この問題についての地域での応援団も作る必要があるのかもしれない。


以上が、最近に起きた、大学にとっても大きな出来事についての状況である。取りあえず、報告しておく。




ここからサブコンテンツです。

大学案内

読み込み中です。
読み込み中です。


ここからフッターです。