2010年5月9日日曜日

無痛麻酔

・ 痛くない麻酔、やさしい無痛治療


「いつ麻酔したのか分かりません!」 よくおっしゃいます。

「治療は、全然、痛くなかったです!」

「歯医者が怖いのに、大丈夫でした!」良かったですね。


治療中居眠りなさる方もとても多いです。


こわくありませんから、お休みになって結構です。その間に治療しておきます。


・ 無痛麻酔率82%です!


麻酔アンケート113件(平成15年8月-10月実施)

・麻酔は全く痛みはなかった。82.3%、93件

・最初にチクッとしただけだった。10.6%、12件

・しばらくしてから少し痛みがあった。7.1%、8件

・強い痛みがあった。0%、0件


この他、お口を開けておく力はいりません。力を抜いてもお口を開けておける工夫があります。


洗浄水の吸引も自動で行います。


・ 全く痛くない"4ステップ麻酔"


1 表面麻酔剤を、粘膜表面に塗り、待ちます。

2 粘膜下に、少量の麻酔液を入れ、待ちます。

3 傍骨膜に少量を入れ、待ちます。

4 治療時間に合った適正量を追加。待てばOKです。

あとは、スタッフの"やさしい気持ち"で、痛くない治療を受けて頂けます。


・ 痛点は避けられない なのに痛くない


・ 痛点は多い


皮膚には、痛覚、触覚(圧覚)・冷覚・温覚を感じる部分が点状に散在しています。

この4種類の感覚点の分布密度は、痛点が最も多く100~350/cm2,触(圧)点25/cm2,冷点6~23/cm2,温点0~3/cm2となっています。元々、人間は痛みを敏感に感じるようになっているのです。


・ 口腔は特に多い


特に角膜、鼓膜、歯髄は、痛みを強く感じる部位ですが、口腔の粘膜も皮膚に比べると痛点が多く痛みに敏感な部分です。

口腔粘膜では、痛点は後方より前方に多く、付着歯肉より歯槽粘膜に多く、逆に、歯間乳頭や頬粘膜には少なくなっています。

通常、硬い付着歯肉は麻酔薬の量が入りませんので麻酔をしません。根の先に近い、柔らかい歯肉頬移行部付近の歯槽粘膜に麻酔をします。ここは痛点が多く、麻酔時に痛点を避けることはできません。

しかし、上記の方法で麻酔すれば、無痛的に麻酔することができますし、また、後方は鈍感ですから、前方だけ注意して麻酔すればいいわけです。


・ 痛みには2種類ある 両方によく効く


・ 痛みの感じ方の違い


痛みには、早く鋭い痛みの1次痛と、遅く鈍い痛みの2次痛があります。

1次痛は、機械的刺激に即座に反応します。

2次痛は、機械的刺激の他、冷熱や、炎症メディエーターなどにも反応し、場所を明確に示せず、刺激が止まっても続き、感情に左右されやすいという特徴があります。

炎症時には2次痛により、片側の顎全体が痛いとか、顎が重い感じがずっと続くなどが起こります。


・ 神経線維の違い


1次痛、2次痛には、神経線維に違いがあります。

1次痛は、Aδ繊維が伝え、Aδ繊維は直径2-5μm、伝達速度12-30m/sec、髄鞘が有ります。

2次痛は、C繊維が伝え、直径0.3-1.2μm、伝達速度0.5-2.3m/sec、髄鞘はありません。

麻酔が奏功しやすいのは髄鞘があるAδ繊維で、無髄鞘のC繊維は効きにくいと言われますが、両者とも通常の局部麻酔でよく麻酔されます。

痛みを抱えて急患として、お越しになった方でも、歯科領域の外来レベルでは1次痛2次痛ともよく麻酔され、痛みから解放されるのです。


・ 口腔顔面領域を感じる脳細胞は多い だから敏感


・ 伝達経路


痛みの感覚受容器である自由神経終末に加わった刺激は、神経線維により伝えられます。

通常は、細胞膜のNaポンプにより、細胞内ではNa+の濃度が低く、K+の濃度が高くなっており、細胞内電位は-70から-90mV に維持されています。これを静止膜電位といいます。

刺激が加わると、Na+が細胞内に流入、膜電位が上昇、脱分極が起こり、活動電位が発生します。

その後、Na ポンプによるNa+の排出と、K+の流入が起こり、再分極し、静止膜電位に戻ります。

この神経細胞の脱分極により、次々と刺激が伝わっていきます。

痛みの伝達経路は、表皮内の自由神経終末という受容器で発せられ、外側脊髄視床路という伝導路を通り、大脳皮質体性感覚野で、痛みとして知覚されます。

口腔顎顔面領域の痛覚は、三叉神経を経由して中枢に伝えられます。


・ 知覚領域


口腔顔面領域は、感覚野の中でも大きな領域を持ち、多くの脳細胞がかかわっていますので、口腔内の痛みには苦しむことが多いのです。


・ 局所麻酔薬の化学構造と作用機序


・ 化学構造


歯科用局所麻酔薬キシロカインの化学式は、C14H22N2O、3級アミンです。

芳香族基、中間鎖、アミノ基が繋がり、水溶性塩酸塩として用いられます。

アミノ基が水溶性を示すのに対し、芳香族基は脂溶性で、神経鞘を通過しやすくなっています。

中間鎖 -NH-CO- のものをアミド型といい、よく使う注射薬リドカインや表面麻酔薬ジブカインなどがあります。

中間鎖 -COO- をエステル型といい、表面麻酔薬テトラカインなどがあります。


・ 作用機序


神経鞘や神経周膜は脂質に富んでいますが、麻酔薬芳香族基の脂溶性で鞘や膜を通過し、細胞間隙に入ります。遊離した陽イオン状態の麻酔薬は、Na チャネル開口部に結合し、神経細胞の脱分極を阻害し、麻酔作用を示すといわれています。


・ 麻酔効果に影響する因子と対策


・ 麻酔薬の因子


脂溶性(神経鞘を通過できるか)、解離定数(イオン状態になりやすいか)、タンパク結合性、温度などによります。

製品化された麻酔薬は、以上の因子や副作用がないなどの安全性を考慮し、選ばれています。

また、麻酔液が冷たいと、薬効が低下しますし、冷たさを痛みと感じますので、使用直前に、体温と同じ温度に暖めておくのは必須です。


・ 人体の因子


組織の血流量やpHなど。

正常では組織のpHは7.4ですが、炎症組織は5-6にpHが下がっています。組織のpHが低いと=炎症がひどく痛む時は、麻酔が効きにくいのです。さらに、炎症部位に麻酔薬を注入すると圧が高まり痛くなりますので、炎症部位の周囲に麻酔し、痛みなく麻酔が出来るようにします。

組織の血流量が多いと、麻酔薬が拡散して効果が減弱しますので、血管収縮薬が添加され、組織の血流を抑えています。

組織の薄いところでは、組織がピンクから白く変化しますので、血管収縮効果が適正に効いた事がわかります。麻酔が切れると、元に戻りますので何の心配も要りません。


・ 痛くない麻酔、雑感


・ 機械よりテクニック


目に見えないテクニック、医院の雰囲気などが総体として痛くない麻酔ができあがります。


・ 新聞紙上をにぎわしたエンジェニードル


エンジェニードルという美容外科用極細針(直径0.2mm以下)は、蚊が刺した程度の感覚で楽に麻酔できるというものです。また美容外科領域では、刺入点の出血斑を防止するという別の目的もあるようです。

しかし、職人の手作りとはいえ、価格は1本1000円程度。歯科治療は回数がかかる事が多いわけですから、毎回1000円も追加負担いただくのは、難しいのではないでしょうか?

さらに、当院の「痛くない"4ステップ"麻酔」は痛くないわけですから、高価な注射針を使用せず、治療費を節約できます。


・ 針先が大事


日常的に使用される直径であれば、針の細さと刺入時の痛みとは関係がなかったという論文があります。細さより、スムーズな刺入が大事です。針先にはランセット加工がしてありますが、よーく調べてみると、メーカーや規格によって、加工精度にばらつきがありました。その事に気づき、選ぶ必要があります。


・ 楽な刺入


粘膜を乾燥・伸展するとスムーズに刺入できますし、針先の向きや角度も大切です。


・ 麻酔液


液が冷たいと、冷たさを痛みと感じます。注入速度は1秒1滴。早く注入すると組織が剥離され、痛みます。骨膜近くに注入する時は、よく麻酔が効いてから行います。骨膜近くの組織は硬い事が多く、かなり痛むからです。



局所麻酔

局所麻酔薬の量



基礎知識



 どの程度の量が使用できるかを述べる前に、ます歯科用局所麻酔の種類、成分、アレルギーなどの基礎知識を説明していきます。



歯科用局所麻酔薬



歯科領域で使用されている局所麻酔薬には次のものがあります。







表面麻酔



 粘膜や皮膚に麻酔薬を塗ります(または噴霧します)。歯科では注射針の痛みを和らげるために使われます。



浸潤麻酔



 麻酔薬を注射して、浸潤した部分が麻痺される方法です。歯科では歯を削るときや簡単な外科処置など、一般的な治療で使用される麻酔方法です。



伝達麻酔



 麻酔薬を神経のあるところに注射し、その神経が走っている先端部分まで麻酔をする方法です。歯科で主に使われるのは下顎孔(かがくこう)伝達麻酔という方法で、下顎の骨に入る神経に麻酔をすると、麻酔をした側の奥歯から前歯まで麻酔が効きます。浸潤麻酔で同じ効果を得るためには、麻酔薬をより多く使う必要があります。少量で広範囲に麻酔をするときに使われます。主に下の親知らずの抜歯に使われます。





局所麻酔薬に含まれている主な成分



 局所麻酔薬には麻酔薬自体の他に、以下のものが含まれていることがあります。







麻酔薬



 化学構造から、エステル型とアミド型(アニリッド型)に大きく分けられます。麻酔薬の中毒やアレルギーはエステル型で起きやすく、アミド型では少ないとされています。日本で歯科用に販売されている局所麻酔薬はアミド型になります。



血管収縮薬



 麻酔薬だけではその部分の末梢血管に移行して取り除かれていくため、作用時間が短くなってしまいます。そこで血管収縮剤を添加して麻酔薬が局所に停滞できるようにします。これは作用時間を長くする以外にも、麻酔薬の量を少なくできる、急激に血中に移行しないため麻酔薬の中毒が起きにくい、出血が少なくなるため手術を行ないやすいなどの利点をもたらします。



安定保存薬



 局所麻酔薬を安定させるために含まれています。それ自体で自律神経遮断作用を持つものもあります。





歯科麻酔とアレルギー



 麻酔後に気分が悪くなることの多くは、実際の麻酔アレルギーではなく、不安や針を刺した時の痛みによる心因性のものであると言われています。



 アミド型の局所麻酔薬でアレルギーを起こすのはまれであるとされていますが、アナフィラキシーショックが挙げられます。これは投与後数分から30分以内に起こり、重篤だと死亡します。不安感、嘔吐、皮膚の蒼白または紅斑、発汗、脈拍低下、血圧低下、気管支や全身のけいれんなどがみられます。アレルギー体質の人は以前に麻酔をして異常がなかったかどうかを調べ、必要に応じて皮膚反応試験を行ない、安全かどうかを確かめます。



 血管収縮薬ではアレルギーとは異なりますが、一般に使用されているエピネフリン(エピレナミン)は血圧を上昇させたり脈拍を早くする働きもあるため、甲状腺機能亢進症、高血圧症、糖尿病など感受性の高い患者さんには原則禁忌(必要がある場合には慎重投与)か、あるいはエピネフリン以外の血管収縮薬が入った麻酔薬、ないしは血管収縮薬無添加の麻酔薬を用います。



 保存安定薬のメチルパラベンによるアレルギーが以外に多いと言われています。これは化粧品に含まれている防腐剤と同じであるため、化粧品にアレルギーのある方は要注意です。保存安定薬の入っていない麻酔薬を用います。



針の太さ



 針の太さはゲージ(G)で表されます。これは1インチ(25.4mm)の何分の1かを表しており、30Gは1/30インチ(0.85mm)の太さになります。Gが大きいほど細い針になります。細い針ほど痛みが少なくなるので、浸潤麻酔のときには30ゲージ前後のものがよく使われています。無痛治療を心がけている先生は31G(0.82mm)のものを好んでいます。ただし細すぎると針がふにゃってしまうため、より深く入れる必要がある伝達麻酔では27G(0.94mm)前後のものが使われています。



 



通常の用量・最大量



 麻酔薬の添付書類には、過去に記載されていた最大量(最高基準量)が記載されなくなる傾向にあります。「年齢、麻酔領域、部位、組織、症状、体質により適宜増減する」という記載にとどめられてます。PL法後、最大量以下で問題が発生した場合の責任問題に関係があるのかもしれませんが実際のところは不明です。



 この項目では、歯科麻酔学入門(学建書院)に記載されている麻酔薬(一般名)の最大量(mg)から、何mlかを換算しました。



 浸潤麻酔において使用されるカートリッジは通常サイズで1.8ml入っています。







浸潤麻酔用のカートリッジ、30Gの針、キシロカイン1.8mlカートリッジ



































































































































































































































名前 添加物 通常使用量 最大使用量
(1.8mlカートリッジ換算)
キシロカイン注射液「2%」



エピレナミン(8万分の1)含有



(塩酸リドカイン)
血管収縮薬 : エピネフリン



保存薬 : パラオキシ安息香酸メチル
通常 : 0.3~1.8ml



口腔外科領域 : 3~5ml
25ml



(13.9本)
キシロカイン注射液「2%」



(塩酸リドカイン)
血管収縮薬 : なし



保存薬 : パラオキシ安息香酸メチル
通常2~10ml 10ml



(5.6本)
キシロカインポリアンプ



(塩酸リドカイン)
血管収縮薬 : なし



保存薬 : なし
通常2~10ml 10ml



(5.6本)
オーラ注



(塩酸リドカイン)
血管収縮薬 : 酒石酸水素エピネフリン



保存薬 : なし
通常 : 0.3~1.8ml



口腔外科領域 : 3~5ml
25ml



(13.9本)
シタネスト



(塩酸プロピトカイン)
血管収縮薬 : 酒石酸水素エピネフリン



保存薬 : パラオキシ安息香酸メチル
通常0.3~1.8ml 20ml



(11.1本)
シタネスト-オクタプレシン



(塩酸プロピトカイン)
血管収縮薬 : フェリプレシン



保存薬 : パラオキシ安息香酸メチル
通常1.8ml 20ml



(11.1本)






注1) 臨床では、最大量まで絶対的に使用できるということではありません。



注2) 塩酸リドカインは1ml中に20mg、エピネフリン添加の最大量は500mg、無添加の最大量は200mgから換算しました。



注3) 塩酸プロピトカインは1ml中に30mg、最大量は600mgから換算しました。



高血圧患者と局所麻酔薬



 高血圧の分類、血圧の薬(降圧剤)の使用基準、局所麻酔薬の使用量を一覧にまとめます。



































































































































  血圧
最高(収縮期)/



最低(拡張期)mmHg
高血圧の治療 局所麻酔薬の量
(エピネフリン添加



キシロカイン1.8ml



カートリッジ)
軽度 140~159/



90~99mmgH
まず生活習慣の改善を数ヵ月行い、それでも150~160/95~100mmHg以上の場合に降圧剤を飲み始める。



ただし、心臓や脳に合併症があったり、糖尿病がある場合には140/90mmHg以上であれば降圧剤を飲み始める。
 
中程度 160~179/



100~109mmHg
2本まで
重度 180/110mmHg以上 速やかに降圧剤を飲み始める。 1本まで



ただし、治療は延期した方が無難。






 麻酔薬そのものに含まれているエピネフリンよりも、不安や痛みによって体の中で産生されるエピネフリン(内因性カテコラミン)の方が、数百倍の量になります。これによって血圧が一気に上昇すると脳血管障害を引き起こす危険性があります。



 したがって、安静時の血圧がこれ位だから、麻酔の量はこの位と、単純に数値化することは難しいと言えます。血圧がきちんとコントロールされている状態で歯科治療を行ない、さらに可能であれば、歯科治療時に血圧や脈拍をモニターで監視することが望ましいといえます。



 



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E-mail to FUMI's Dental Office






http://www.ne.jp/asahi/fumi/dental/symptom/anesthesia.html






2010年4月9日金曜日

扁平苔癬

口腔扁平苔癬 (Oral Lichen planus)

  

口腔扁平苔癬とは
扁平紅色苔癬とも言われています。
皮膚と口腔粘膜における慢性の角化異常を伴う病変の1つです。
扁平苔癬は角化異常を伴う難治性炎症で、日常の臨床でよく観察すると必ずしもまれなものとはいえません。
自覚症状のない場合は、あえて処置する必要性はないという意見もあります。
処置を希望しない場合でも、経過観察の必要性はあります。
なぜならまれに扁平苔癬と類似した臨床所見を示す白板症があり、このものは紅色厚肥症(赤板症)と類似していて、場合によっては前癌病変そのものであるからです。
本性は皮膚疾患の範疇に入るものであり、最近では発症の背景が免疫異常との関連も考えられています。
また口腔粘膜疾患は広く他科(たとえば皮膚科、耳鼻科)の医師によっても取り扱われています。
治療には基礎的な専門知識が必要であり、病態によって治療法が異なることがあります。

原因と誘因
原因は不明とされており、いくつかの諸因子が報告されていますが、定かではありません。
外傷性、細菌性、梅毒性、寄生虫性、ウイルス性、糸状菌性、アレルギー性、中毒性、神経または神経原性、遺伝性などです。
促進因子として口腔内刺激および喫煙などが関与するといわれています。

臨床的特徴
発生頻度
口腔粘膜における罹患率は比較的少なく、0.02%~0.22%といわれています。
40~50歳代がピークになり、10歳以下にはないとされています。
男女比は、女性にやや多いと報告されています。
好発部位
好発部位は80~90%が頬粘膜で、特に歯列咬合面に相当する頬粘膜に認められます。
ときに舌、口唇(とくに下口唇)、口蓋、歯肉にも認められます。

臨床症状
幅1~2mmぐらいのレース状、網状の模様を呈することが多く、しばしば白い線状の内側には発赤やびらん(二次的病変)を呈します。
しかし、この網状模様は日時の経過とともに赤みを帯びたり、その形状を変えます。
接触により出血しやすく痛みがでます。
この白色の線状をなした病変は角化の異常を示すもので、病変は左右対称に生じることが多いです。
皮膚における扁平苔癬は小さく平らに隆起したスミレ色の丘疹です。
発生部位によりその病変が多少異なり、特徴的な差が認められます。
頬粘膜は白色病変を主としますが、発赤やびらん、潰瘍を伴うこともあるのが特徴的で、ときに小水疱を生じ、慢性の経過をたどったものは暗褐色の色素沈着が見られることもあります。
舌では斑状の白色病変が特徴的で、小豆大~大豆大の境界明瞭な乳白色の斑で、やや扁平に隆起し、舌乳頭は消失して触れるとやや硬く、痛みを伴います。
歯肉では白色線状の認められることもありますが、この部位で特徴的なものはび慢性の紅潮、萎縮像です。
このように、扁平苔癬は多彩な像を呈するために種々の分類がなされており、網状型、丘疹型、線状型、斑状型、びらんまたは潰瘍型、小水疱型、色素沈着型などです。
自覚症状としては、疼痛がもっとも多く、次いで口腔の荒れ、出血、不快感、味覚異常、灼熱感などです。
症状はきわめて慢性経過をとり、その期間は1~10年程度のものが多いとされています。
網状型のものは自然治癒も期待できますが、潰瘍型では一般に期待できません。

慢性炎症を繰り返すために正常上皮よりも癌発生の母地となりやすいという考えがあります。

治療法
原因が不明なために確実な治療法はありませんが以下の処置を試みます。
1:副腎皮質ホルモン口腔用軟膏(ケナログ、デスパコーワ、デキサルチンなど)の塗付
  びらん型に奏効します。
2:ビタミンA製剤の使用
  口腔用軟膏の塗布も効果が認められています。
  ビタミンA(チョコラA剤)、ビタミンA酸(チガソン)の内服も有効です。
   しかし副作用(皮膚の落屑、口唇炎、?痒感)が強く、また休薬すると再発することも多いです。

診 断
鑑別診断
 白板症、尋常性天疱瘡、多形性紅斑との鑑別が必要です
症例ノート
   症例1
    

   症例2

    

  症例3

    

http://www.chukai.ne.jp/~myaon80/mu4-caseA42lichen.htm

2010年2月20日土曜日

尿の色

尿の色から考えられる主な病気



気になる症状 疑われる病気名
尿の色が



おかしい
赤色~



赤褐色



(血尿)
むくみ、



高血圧
乏尿 急性糸球体腎炎
多尿、全身倦怠感、疲れやすい 慢性糸球体腎炎
腹部・腰部・ 背部痛 尿管腫瘍
発熱 寒気、ふるえ、頻尿 急性腎盂腎炎
頭痛、高血圧、吐き気 多発性嚢胞腎
腹部腫瘤、体重減少 腎がん
立位で痛みが増強、排尿障害 遊走腎
吐き気、嘔吐 腎臓結石
冷や汗、不安感 尿管結石
頻尿、排尿痛、残尿感など排尿障害 前立腺肥大症前立腺がん膀胱がん
下腹部痛 急性膀胱炎慢性膀胱炎膀胱結石
その他 特発性腎出血
黄褐色~



茶褐色
黄疸 右上腹部痛、発熱 胆管炎胆管がん
かぜ様症状 A型急性肝炎B型急性肝炎C型急性肝炎
意識障害 劇症肝炎
吐き気、嘔吐、手掌紅斑、クモ状血管腫、女性化乳房 肝硬変肝がん
腹部の張り・しこり 胆管細胞がん
ワイン・コーラ色 皮膚の露光部の紅斑・はれ・水疱、手指の皮膚の萎縮・拘縮 ポルフィリン症
動悸・息切れなど貧血症状 黄疸 溶血性貧血
起床時の尿がコーラ色 発作性夜間血色素尿症


心電図 12誘導

ハート先生の心電図教室
























Top > 心電図の基本 > 12誘導心電図の捉え方





































12誘導心電図の捉え方
























四肢誘導





























































要点






























































  • まず、プラス側の電極の位置に注目する。















































  • そこに目の位置があって、そこから心臓を眺めているものと考える。















































  • aVR, aVL, aVFなどはR, L, Fと覚えて、それぞれ、Rは右手、Lは左手、Fは左足に目の位置がある。































































この絵のI、II、IIIの位置は、それぞれ手と足との組み合わせの関係、として示している。















































この絵ではI、II、IIIの位置を「眺めている目」の位置として示している。















































































第I誘導















































左室の側壁を見る誘導である。















































第II誘導















































心臓を心尖部から見る誘導である。四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれる。















































第III誘導















































右室側面と左室下壁を見る誘導である。















































aVR誘導















































右肩から心臓を見る誘導である。逆転した波形が見られる。















































aVL誘導















































左肩から心臓を見る誘導である。















































aVF誘導















































心臓を、ほぼ真下から見る誘導である。























































胸部誘導





























































要点






























































  • 胸部誘導の波形の捉え方は、胸部のそれぞれの電極の位置が「目の位置」で、そこから心臓を眺めているものと考える。






















































































































V1誘導















































主に右室側から心臓を見る誘導である。















































V2誘導















































右室と左室前壁側から心臓を見る誘導である。















































V3誘導















































心室中隔と左室前壁から心臓を見る誘導である。移行帯が見られる。















































V4誘導















































心室中隔と左室前壁方向を見る誘導である。















































V5誘導















































左室前壁と側壁を見る誘導である。















































V6誘導















































左室側壁を見る誘導である。























































胸部誘導電極装着方法のコツ















































第4肋間を探す場合、胸骨の上にある胸骨角(胸骨の突起部分)が第2肋骨と平行していることから、胸骨角を目安として、第2肋間、第3肋間、第4肋間と順に探る方法もある。
























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非ケトン性高浸透圧症候群





























































































































非ケトン性高浸透圧症候群(NKHS)は糖尿病の代謝性合併症で,高血糖,極度の脱水,血漿高浸透圧,および意識障害を特徴とする。Ⅱ型糖尿病で最も頻度が高く,しばしば生理的ストレス下において生じる。NKHSは,重度高血糖,血清高浸透圧,有意なケトーシスの欠如によって診断される。治療は生理食塩水およびインスリンの静注である。合併症は昏睡,痙攣発作,死亡である。



NKHSは高浸透圧性高血糖状態とも呼ばれ,Ⅱ型糖尿病の合併症であり,最大40%の死亡率を呈する。通常は症候性高血糖の期間を経て発症し,この期間中の水分摂取が高血糖誘発性の浸透圧利尿による極度の脱水を予防するには不十分であったと考えられる。促進因子には,急性感染症の共存,耐糖能を障害する薬物(グルココルチコイド)または水分喪失を増加させる薬物(利尿薬),治療不遵守,その他の疾患がある。血清中にケトン体は存在せず,血糖値および浸透圧は典型的には糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)よりも大幅に高い:血糖値>600mg/dL(>33mmol/L),浸透圧>320mOsm/L。



症状,徴候,診断



NKHSの主症状は錯乱や見当識障害から昏睡までと幅広い意識障害であり,通常は,前腎性高窒素血症,高血糖,極度の脱水(高浸透圧を伴う場合と伴わない場合とがある)の結果生じる。DKAとは対照的に,焦点性または全身性の痙攣および一過性の片麻痺が生じうる。血清カリウム濃度は通常は基準範囲内であるが,ナトリウムは循環血液の不足量によって低値または高値となる。BUNおよび血清クレアチニンの濃度は著明に上昇している。動脈血pHは通常7.3を上回るが,ときに乳酸が蓄積して軽度の代謝性アシドーシスが生じる。



平均的な体液喪失量は10Lで,急性循環虚脱が一般的な死因である。広範な血栓症は剖検でしばしば認められる所見であり,一部の症例では播種性血管内血液凝固の結果として出血が生じることがある。その他の合併症には,誤嚥性肺炎,急性腎不全,急性呼吸促迫症候群がある。



治療



治療は0.9%生理食塩水1Lを30分かけて,その後1L/時で静注し,血圧を上昇させて循環状態および尿の排出を改善させる。血圧が正常になり血糖値が300mg/dLに達すれば,輸液を0.45%生理食塩水に置き換えられる。静脈内輸液速度は,血圧,心臓の状態,水分の補給と排泄とのバランスで調節すべきである。



インスリンは,最初の1Lの生理食塩水を静注後に0.15単位/kgをボーラス投与し,続いて0.1単位/kg/時を静注する。輸液単独でも,ときに血糖値が急激に低下してインスリンを減量する必要が生じることがある;急速すぎる浸透圧の低下は脳浮腫につながる恐れがある。ときに,NKHSを呈するインスリン抵抗性Ⅱ型糖尿病患者は大量のインスリンを要する。血糖値が200〜250mg/dLに達したならば,輸液が完了し患者が食事を摂れるようになるまでインスリン注入速度を基礎レベル(1〜2単位/時)まで低下させるべきである。5%ブドウ糖液注入の追加が低血糖を回避するためにときに必要となる。通常は急性症状から回復してから用量を調整したインスリン皮下注射に切り替える。大半の患者では病状が安定した時点で経口血糖降下薬を再開できる。



カリウムの補充はDKAと同様である:血清カリウム値が3.3mEq/L未満であれば40mEq/時,3.3〜4.9mEq/Lであれば20〜30mEq/時を投与し,5mEq/L以上であれば投与は行わない。










2010年2月18日木曜日

降圧剤

β遮断薬


β受容体には主に心筋に存在するβ1受容体と平滑筋に存在するβ2受容体、脂肪細胞に存在するβ3受容体の3種類あります。ともにノルエピネフリン(NE)が受容体に結合することでその作用を示します。 β1が刺激されると、心筋が収縮して心臓が活性化され、β2が刺激されると、気管支や血管の平滑筋が弛緩(拡張)したり、グリコーゲンの分解等が起こります。

 
Ca拮抗薬


細胞内にCaイオンが流入すると、Caはカルモジュリンとともにミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を活性化し、ミオシンをリン酸化(MLCp)することで、ATPを使い平滑筋を収縮させます。そして、収縮後はホスファターゼの作用で直ちに脱リン酸化され、平滑筋は弛緩します。

MLCKはERK1/2とp38によっても調節されています。

Ca拮抗薬は血管平滑筋細胞や心筋の細胞膜に存在する膜電位依存性Caチャネルに結合することで、細胞内へのCaイオンの流入を抑制します。臨床的に用いられているCa拮抗薬の多くはCaチャネルの中でも平滑筋、心筋に多く存在するL型Caチャネルに選択的に結合します。

 
 
 
利尿薬


利尿薬は、サイアザイド系、ループ利尿薬、K保持性利尿薬の3つに大きく分類され、作用機序はそれぞれ異なりますが、Naイオンの血中への再吸収を抑制することで降圧作用を示すという機序は共通しています。

 
 
 
α1遮断/α2作動薬


α受容体には中枢・末梢ともに存在するα1受容体と中枢のみに存在するα2受容体の2つがあります。 α1受容体は効果器側(臓器側)に存在し、血管収縮作用をはじめとして収縮反応全般に関わる。α2受容体は中枢にて、神経終末に存在し、NEの終末内再取り込みを阻害することでα1作用に拮抗する(フィードバック)。