・ 痛くない麻酔、やさしい無痛治療
「いつ麻酔したのか分かりません!」 よくおっしゃいます。
「治療は、全然、痛くなかったです!」
「歯医者が怖いのに、大丈夫でした!」良かったですね。
治療中居眠りなさる方もとても多いです。
こわくありませんから、お休みになって結構です。その間に治療しておきます。
・ 無痛麻酔率82%です!
麻酔アンケート113件(平成15年8月-10月実施)
・麻酔は全く痛みはなかった。82.3%、93件
・最初にチクッとしただけだった。10.6%、12件
・しばらくしてから少し痛みがあった。7.1%、8件
・強い痛みがあった。0%、0件
この他、お口を開けておく力はいりません。力を抜いてもお口を開けておける工夫があります。
洗浄水の吸引も自動で行います。
・ 全く痛くない"4ステップ麻酔"
1 表面麻酔剤を、粘膜表面に塗り、待ちます。
2 粘膜下に、少量の麻酔液を入れ、待ちます。
3 傍骨膜に少量を入れ、待ちます。
4 治療時間に合った適正量を追加。待てばOKです。
あとは、スタッフの"やさしい気持ち"で、痛くない治療を受けて頂けます。
・ 痛点は避けられない なのに痛くない
・ 痛点は多い
皮膚には、痛覚、触覚(圧覚)・冷覚・温覚を感じる部分が点状に散在しています。
この4種類の感覚点の分布密度は、痛点が最も多く100~350/cm2,触(圧)点25/cm2,冷点6~23/cm2,温点0~3/cm2となっています。元々、人間は痛みを敏感に感じるようになっているのです。
・ 口腔は特に多い
特に角膜、鼓膜、歯髄は、痛みを強く感じる部位ですが、口腔の粘膜も皮膚に比べると痛点が多く痛みに敏感な部分です。
口腔粘膜では、痛点は後方より前方に多く、付着歯肉より歯槽粘膜に多く、逆に、歯間乳頭や頬粘膜には少なくなっています。
通常、硬い付着歯肉は麻酔薬の量が入りませんので麻酔をしません。根の先に近い、柔らかい歯肉頬移行部付近の歯槽粘膜に麻酔をします。ここは痛点が多く、麻酔時に痛点を避けることはできません。
しかし、上記の方法で麻酔すれば、無痛的に麻酔することができますし、また、後方は鈍感ですから、前方だけ注意して麻酔すればいいわけです。
・ 痛みには2種類ある 両方によく効く
・ 痛みの感じ方の違い
痛みには、早く鋭い痛みの1次痛と、遅く鈍い痛みの2次痛があります。
1次痛は、機械的刺激に即座に反応します。
2次痛は、機械的刺激の他、冷熱や、炎症メディエーターなどにも反応し、場所を明確に示せず、刺激が止まっても続き、感情に左右されやすいという特徴があります。
炎症時には2次痛により、片側の顎全体が痛いとか、顎が重い感じがずっと続くなどが起こります。
・ 神経線維の違い
1次痛、2次痛には、神経線維に違いがあります。
1次痛は、Aδ繊維が伝え、Aδ繊維は直径2-5μm、伝達速度12-30m/sec、髄鞘が有ります。
2次痛は、C繊維が伝え、直径0.3-1.2μm、伝達速度0.5-2.3m/sec、髄鞘はありません。
麻酔が奏功しやすいのは髄鞘があるAδ繊維で、無髄鞘のC繊維は効きにくいと言われますが、両者とも通常の局部麻酔でよく麻酔されます。
痛みを抱えて急患として、お越しになった方でも、歯科領域の外来レベルでは1次痛2次痛ともよく麻酔され、痛みから解放されるのです。
・ 口腔顔面領域を感じる脳細胞は多い だから敏感
・ 伝達経路
痛みの感覚受容器である自由神経終末に加わった刺激は、神経線維により伝えられます。
通常は、細胞膜のNaポンプにより、細胞内ではNa+の濃度が低く、K+の濃度が高くなっており、細胞内電位は-70から-90mV に維持されています。これを静止膜電位といいます。
刺激が加わると、Na+が細胞内に流入、膜電位が上昇、脱分極が起こり、活動電位が発生します。
その後、Na ポンプによるNa+の排出と、K+の流入が起こり、再分極し、静止膜電位に戻ります。
この神経細胞の脱分極により、次々と刺激が伝わっていきます。
痛みの伝達経路は、表皮内の自由神経終末という受容器で発せられ、外側脊髄視床路という伝導路を通り、大脳皮質体性感覚野で、痛みとして知覚されます。
口腔顎顔面領域の痛覚は、三叉神経を経由して中枢に伝えられます。
・ 知覚領域
口腔顔面領域は、感覚野の中でも大きな領域を持ち、多くの脳細胞がかかわっていますので、口腔内の痛みには苦しむことが多いのです。
・ 局所麻酔薬の化学構造と作用機序
・ 化学構造
歯科用局所麻酔薬キシロカインの化学式は、C14H22N2O、3級アミンです。
芳香族基、中間鎖、アミノ基が繋がり、水溶性塩酸塩として用いられます。
アミノ基が水溶性を示すのに対し、芳香族基は脂溶性で、神経鞘を通過しやすくなっています。
中間鎖 -NH-CO- のものをアミド型といい、よく使う注射薬リドカインや表面麻酔薬ジブカインなどがあります。
中間鎖 -COO- をエステル型といい、表面麻酔薬テトラカインなどがあります。
・ 作用機序
神経鞘や神経周膜は脂質に富んでいますが、麻酔薬芳香族基の脂溶性で鞘や膜を通過し、細胞間隙に入ります。遊離した陽イオン状態の麻酔薬は、Na チャネル開口部に結合し、神経細胞の脱分極を阻害し、麻酔作用を示すといわれています。
・ 麻酔効果に影響する因子と対策
・ 麻酔薬の因子
脂溶性(神経鞘を通過できるか)、解離定数(イオン状態になりやすいか)、タンパク結合性、温度などによります。
製品化された麻酔薬は、以上の因子や副作用がないなどの安全性を考慮し、選ばれています。
また、麻酔液が冷たいと、薬効が低下しますし、冷たさを痛みと感じますので、使用直前に、体温と同じ温度に暖めておくのは必須です。
・ 人体の因子
組織の血流量やpHなど。
正常では組織のpHは7.4ですが、炎症組織は5-6にpHが下がっています。組織のpHが低いと=炎症がひどく痛む時は、麻酔が効きにくいのです。さらに、炎症部位に麻酔薬を注入すると圧が高まり痛くなりますので、炎症部位の周囲に麻酔し、痛みなく麻酔が出来るようにします。
組織の血流量が多いと、麻酔薬が拡散して効果が減弱しますので、血管収縮薬が添加され、組織の血流を抑えています。
組織の薄いところでは、組織がピンクから白く変化しますので、血管収縮効果が適正に効いた事がわかります。麻酔が切れると、元に戻りますので何の心配も要りません。
・ 痛くない麻酔、雑感
・ 機械よりテクニック
目に見えないテクニック、医院の雰囲気などが総体として痛くない麻酔ができあがります。
・ 新聞紙上をにぎわしたエンジェニードル
エンジェニードルという美容外科用極細針(直径0.2mm以下)は、蚊が刺した程度の感覚で楽に麻酔できるというものです。また美容外科領域では、刺入点の出血斑を防止するという別の目的もあるようです。
しかし、職人の手作りとはいえ、価格は1本1000円程度。歯科治療は回数がかかる事が多いわけですから、毎回1000円も追加負担いただくのは、難しいのではないでしょうか?
さらに、当院の「痛くない"4ステップ"麻酔」は痛くないわけですから、高価な注射針を使用せず、治療費を節約できます。
・ 針先が大事
日常的に使用される直径であれば、針の細さと刺入時の痛みとは関係がなかったという論文があります。細さより、スムーズな刺入が大事です。針先にはランセット加工がしてありますが、よーく調べてみると、メーカーや規格によって、加工精度にばらつきがありました。その事に気づき、選ぶ必要があります。
・ 楽な刺入
粘膜を乾燥・伸展するとスムーズに刺入できますし、針先の向きや角度も大切です。
・ 麻酔液
液が冷たいと、冷たさを痛みと感じます。注入速度は1秒1滴。早く注入すると組織が剥離され、痛みます。骨膜近くに注入する時は、よく麻酔が効いてから行います。骨膜近くの組織は硬い事が多く、かなり痛むからです。