|  | きょうの社説 2010年10月29日
◎地方議員年金 公費負担増大なら廃止が筋
地方議員年金制度の存廃をめぐり、議長会や民主党内で意見が割れるなか、政府は来年
の通常国会に廃止法案を提出する方針を固めた。「平成の大合併」に伴う議員数減少などで負担と給付のバランスが大きく崩れ、来年には市町村議員分の積立金が枯渇するなど、このままでは制度の破綻は避けられない。存廃の結論をいつまでも先送りできる状況にはないだろう。 制度を維持した場合、将来にわたって公費負担の増大が見込まれている。自治体財政が 厳しいだけに、公費に過度に依存する制度であれば住民の理解は得られず、廃止するのが筋だろう。北陸では高岡市議会が6月定例会で廃止の意見書を可決し、金沢市議会などでも廃止容認の動きが出ている。仕組みが異なるとはいえ、国会議員の年金制度は2006年に廃止された。権利を主張するだけでなく、ここは制度の必要性にも踏み込んだ根本的な議論が必要である。 地方議員年金は、議員の掛け金と自治体負担で運営される互助年金制度で、12年間の 在職で他の公的年金と併せて受給できる。 都道府県議、市議、町村議の共済会の年金財政は、行政改革に連動した議員定数の削減 や自治体合併の影響、さらには高齢化に伴う受給期間の延びなどで大幅に悪化した。02年、06年に給付引き下げや掛け金、公費負担率の引き上げが行われたが、焼け石に水で、市町村議員分の積立金は来年6月、都道府県議分も21年度には底をつく見通しである。 総務省によると、制度廃止の場合は、保障措置として自治体が継続する年金給付などで 最大1兆3千億円の公費が必要となる。一方、存続では今後20年間で最大6200億円の公費負担が発生し、さらに長期でみれば廃止する場合の負担を上回るのは確実である。 3議長会のうち、都道府県議会議長会と町村議会議長会は存続を求め、市議会議長会は 条件付き廃止を打ち出した。廃止するとしても、受け取り額をめぐる調整は難航が必至である。いずれにせよ、議員側が相応の「痛み」を覚悟しなければ解決の糸口は見いだせず、公費負担とのバランスを見極めた判断が求められている。 
 
 
 
◎「まだら」大合唱 郷土の「第九」に育てたい
七尾市や輪島市など能登半島に伝わる祝い唄「まだら」の大合唱が年末に聴かれること
になった。県無形民俗文化財の「まだら」は祭りや婚礼などの慶事に欠かせず、節目ごとに能登の人々と地域に活力を与えてきた。これまで交流の機会が限られていた両市の伝承者らが1000人規模の舞台で共演することは画期的であり、互いによい刺激を受けながら連携を深め、能登の誇りである伝統芸能の継承発展につながると期待される。 能登は伝統芸能や祭りに恵まれ、地域の活性化や北陸新幹線金沢開業に向けてこれらの 地域資源の活用が課題となっている。年末の定番である「第九」になぞらえて、「1000人が歌う『能登の第九』まだら公演」と銘打った年末の大合唱は、県内外に「まだら」を発信して認知度を高め、ファンを増やす好機でもある。「まだら」の魅力を最大限に披露し、能登、石川の名物となる郷土の「第九」に育てていきたい。 今年の公演は七尾市で開かれ、来年以降は輪島市と交互に開催することになっている。 両市の関係者にとっては一年を締めくくり、新年への励みの場となる。これまで能登空港開港の際に、合同で合唱したことがあったが、今回は両市の関係者が力を合わせて、これまでにない舞台を作り上げることで、新たな「まだら」の世界が繰り広げられる楽しみがある。「まだら」の普及にも弾みがつき、後継者のすそ野を広げる格好の機会にもなる。 「まだら」を歌い継いできた両市では、ともに保存会が中心になって継承、普及に努め ている。七尾市では伝承師の認定をはじめ、市内外の受講者を対象に講習会を開催している。輪島市でも、「まだら」が立派に披露できて一人前といわれるほどで、祭礼の際や学校などで幅広く指導している。愛着が深い「まだら」の伝承を通じて地域のきずなを深めている。 「まだら」や「まだら」を披露する祭りは能登の大きな魅力である。これらの「地域の 宝」を大切に受け継いでいく地元の熱意が、地域おこしの力の源といえよう。 
 
 
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