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江原道料理

2010年4月15日

  • 筆者 八田靖史

写真土鍋で供されるタラチゲ(南陽屋)写真ジャガイモのチヂミ(南陽屋)写真古くからの常連客が多い(南陽屋)写真フェボッサム(東光)写真ミヨクティガクはごはんと食べる(東光)写真韓国田舎家庭料理を掲げる(東光)

 ここ数年の韓国ブームにより、首都ソウルだけでなく地方都市を訪れる観光客も少しずつ増えてきた。韓国ドラマの撮影地を訪ねるツアーや、新羅、百済の古都を巡る歴史ツアー、また地方都市を鉄道で周遊するプランも登場している。昨年、日本からの韓国渡航者数は史上初めて300万人を突破し、外国人全体でも780万人を数えた。韓国政府はその勢いに乗って、今年から2012年までの3年間を「韓国訪問の年」に指定。地方の活性化も目指し、観光情報のPRに力を注いでいる。

日本に事務所を開設する地方自治体も増えており、地方旅行に出かける下地は少しずつ整いつつあるようだ。今後は韓国という大きな枠組みではなく、地域性も含めたさまざまな文化が伝わってくるに違いない。また、地方を訪れる楽しみのひとつに郷土料理の存在があるが、日本で営業する韓国料理店にも地域色を感じさせてくれる店はある。地方出身のオーナーが地元の文化を知って欲しいとメニューに載せているケース。こうした店も地方のアピールに一役買っている。

 東京、東新宿にある「南陽屋」は、江原道横城郡出身のママが切り盛りする店。名物の「タラチゲ」は、江原道を主産地とするスケトウダラをピリ辛に仕立てた鍋料理だ。生のスケトウダラをぶつ切りにして使うので、大根、長ネギ、豆腐といった具にもいいダシが染み込む。同じく特産品であるジャガイモは、注文ごとにすりおろしてチヂミ(韓国式のお好み焼き)で提供。小麦粉などのつなぎは一切使わないので、もっちりとした独特の食感を楽しむことができる。

 東京、三田に位置する「東光」は、江原道江陵市出身の夫婦が営む店。江陵市は東海岸に面した港町で、新鮮な魚介料理がふんだんに揃う。看板料理のフェボッサムも、白身魚の刺身を生野菜とともに辛味ダレで和えたもの。海苔やエゴマの葉で包んで味わうが、アクセントとしてトビウオの卵(とびこ)が加わるので食感もいい。ほかにも素揚げしたワカメに砂糖を振りかけたミヨクティガクや、ジャガイモのチヂミ、江原道の特産品である蕎麦を使ったマッコリも用意するなど、地元へのこだわりが強く感じられる。

 江原道という地域は海と山の距離が近く、東海岸と平行するように太白山脈が南北を貫いている。韓国では海と山の両方を1度に楽しめる地域として旅行者の人気が高く、郷土料理においても魚介類と高冷地野菜の両者が活躍する。前者の例がスケトウダラの鍋やフェボッサムであり、後者の例が蕎麦マッコリ、そしてジャガイモのチヂミである。郷土料理というフィルターを通すことで、その土地の姿がいきいきと浮かぶ。それはもちろん江原道だけの事例ではない。

 今後、日韓関係がより近づいてゆく中で、地方の役割はさらに大きくなってゆくだろう。大都市一辺倒ではない、多様な韓国文化が伝わってくることを期待したい。

●江原道料理の魅力

 江原道という土地柄をよく象徴している食材のひとつがスケトウダラだ。12月頃にとれたスケトウダラは、水揚げされると同時に近隣の山間部まで運ばれ、野外で自然乾燥される。寒暖差が激しく、風の強い場所が乾燥に適しており、夜間は凍って昼間は溶ける。それを繰り返すことで、体内に旨味が蓄積されるとのこと。3ヶ月間じっくり野外乾燥されたスケトウダラは、春になってようやく市場へと運ばれる。これを韓国語でファンテと呼び、薬味ダレを塗って焼いて食べたり、あるいはスープに仕立てて味わう。春先に初物のファンテを待ちわびる韓国人のファンは多い。

●店舗データ地図

店名:東光(とんぐぁん)

住所:東京都港区芝5−26−2

電話:03−3451−7722

店名:南陽屋(なんようや)

住所:東京都新宿区新宿7−1−4

電話:03−3202−6888

プロフィール

八田靖史(はった・やすし)

コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。

日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。

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