広島県営広島西飛行場(広島市西区)は30日夕、最後の鹿児島便が飛び立ち、定期路線がゼロになる。市は年内に市営存続か、ヘリポート化かを判断する方針。秋葉忠利市長は、27日の湯崎英彦知事との「トップ会談」で市営存続に強い意欲を示したが、全国の地方空港に逆風が吹く中、定期路線復活への道筋は見ていない。
「前途が100%明るい状況ではないが、着実に方向性が見えている」。トップ会談後の取材で秋葉市長は答えた。一方、「国の方針との整合性や経済的負担との兼ね合いなど重要な要素がある」と述べ、高いハードルがあることも認めた。市は7月、市営存続の可能性を探るため、大学教授や航空会社の幹部、旅行会社の担当者たち有識者でつくる「広島西飛行場あり方検討委員会」を設けた。11月上旬の最終会合を経て秋葉市長への提言をまとめる。
市は検討委の動きとは別に、市営存続に向けた「既成事実化」とも取れる動きを打ち出している。9月に公表した2020年夏季五輪の開催基本計画案に、交通輸送手段として西飛行場の活用を明記したのだ。トップ会談後、秋葉市長は「五輪を考えると、西飛行場を生かすのは自然な流れ」とも語った。
同じ9月、市は政府が来年度の創設を目指す「総合特区」制度に、「広島西飛行場民間活力活用特区」を提案した。民間活力を用いて運営コストの削減を図る内容である。ただ、市営存続させた場合の需要や東京線復活の可能性などの具体的な根拠を、市が示す場面はまだない。
市は9月、検討委の2回目の会合でビジネスや広島への観光の需要が見込める8路線を提示した。東京線は小型ジェット機による1日2往復で搭乗率が採算ラインを超えるとした。実現には、羽田空港の新規発着枠の確保が前提となるが、見通しは立っていない。他の7路線も誘致への手応えをつかんで市が提示したわけではない。
市議会からは「市の構想には具体的根拠がない」との批判が出ている。市営存続か、断念か―。秋葉市長は市民が納得できる結論をどう導き出すのか。自らが定めた最終決断の時期が2カ月後に迫っている。
【写真説明】存廃の行方が焦点になっている広島西飛行場
|