2010年10月20日11時15分
福岡地裁に入る前福岡県副知事の中島孝之被告=20日午前9時36分、福岡市中央区、溝脇正撮影
福岡地裁に入る前福岡県添田町長で前町村会長の山本文男被告=20日午前9時30分、福岡市中央区、溝脇正撮影
福岡県町村会(福岡市博多区)をめぐる汚職事件で、福岡地裁の田口直樹裁判長は20日、収賄罪に問われた前同県副知事中島孝之被告(68)に懲役2年執行猶予3年追徴金100万円(求刑懲役2年追徴金100万円)を言い渡した。ともに贈賄罪に問われた前同県添田町長で前町村会長山本文男(84)と前町村会事務局長笹渕正三(81)の両被告には、いずれも懲役1年執行猶予3年(同懲役1年)を言い渡した。
判決によると、県の後期高齢者医療制度の広域連合設立準備委員会会長を務めた中島被告は、広域連合設立後の2007年8月7日、県庁副知事室で山本被告と笹渕被告から、連合の議員定数や負担金の調整で、町村側に便宜を図った見返りに現金100万円を受け取った。
田口裁判長は中島被告について「副知事という要職にありながら、安易に少なくない金額のわいろを受け取った。県の公務員の中でもとりわけ公正さが求められる副知事の職務に対する信頼を大きく傷つけた」とその責任を指摘。山本、笹渕両被告については「公的団体の会長、事務局長という立場にありながら進んで贈賄に及んだ。町村会の公正さや副知事の職務に対する信頼を傷つけた」と述べた。
また、笹渕被告側は幇助(ほうじょ)にとどまると主張していたが、判決は「両名とも犯行に不可欠な役割を果たした」と判断。山本被告は「贈賄の意思決定をした」、笹渕被告は「山本被告の意思を確認し、部下に町村会の資金から金を準備させた」と認定した。
中島被告は1964年に県庁に入り、99年7月から副知事を務め、麻生渡知事の側近として県政を支えた。町村会の裏金による接待疑惑が浮上し、昨年12月に辞任。今年2月に逮捕された。
山本被告は71年から添田町長に連続10期当選。92年からは県町村会長、99年からは全国町村会長も兼職。添田町長職は町民から解職請求運動が起きて辞職し、8月の出直し町長選で落選した。
◇
〈福岡県町村会をめぐる事件〉2009年11月、県町村会参事らがコピー用紙を架空発注する手口で同会から現金をだましとったとして、県警が詐欺容疑で逮捕した。長年にわたり同会で裏金がつくられ、中島孝之副知事ら県幹部を接待していた問題も浮上。同年12月、中島副知事は辞職した。裏金疑惑を捜査していた県警は今年2月、中島前副知事が同会に便宜を図る見返りに同会長の山本文男・添田町長らから現金を受け取ったとして、中島前副知事を収賄容疑、山本会長らを贈賄容疑で逮捕し、福岡地検が起訴した。詐欺罪で起訴された元参事ら2人については福岡地裁が5月、懲役3年執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。