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2010/10/27公開
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「18才」連載第42回 草野マサムネ(スピッツ)「初めてやったオリジナルがウケなくてすごく悔しかった」
アーティストが18才のころ、考えていたことや置かれていた状況とは? さまざまなアーティストをゲストに迎え、思い出を語ってもらう連載「18才」。第42回のゲストは10月27日に13枚目のオリジナルアルバム『とげまる』をリリースするスピッツの草野マサムネさんです。
草野マサムネが18才だった1985〜1986年、世はまさにバブル経済れい明期。
「80年代的な軽い時代で、自分はそれに反発したいような感じでしたね。天邪鬼だったのかなんだったのか、高校に入ったぐらいから、いまとはちょっと意味合いの違うサブカルってものに興味がいって。まだ(版型が)ちっちゃかったころの「宝島」とか「ビックリハウス」にかぶれながら、東京に行ったら、自分もインディーズバンドをやりたいな、と。まぁ、いま思えばそれもバブリーな発想なんですけど(笑)」
小学校高学年でロックと出会い、以来「あんまりさえない少年期だったので、そのさえない自分を変えてくれるかもしれないっていう思い込みがすごくあって。それがロックだったりバンドだったりした」という彼は、高校に入学してから念願のバンドを結成。地元・福岡はバンドシーンが盛んな土地柄で、先輩格にはザ・モッズやチェッカーズたち。そして、高校生も学園祭だけでなく、生徒主催でライブハウスを借り、対バンを企画するほど、ロックバンドにとっては豊かな土壌だった。そんななか……。
「オリジナルを作り始めたのがたぶん18才になるぐらいで、初めてオリジナル曲でライブをやったのが高校卒業ライブだったんです。ちょうどインディーズブームでね、ラフィンノーズとか有頂天とかが東京では人気があって、福岡もけっこう活発で。その後、人気者になるアンジーがすごい好きで。“自分も作れるかも”って思いましたね。あと、オリジナルでやりたいって思った理由は、そりゃチェッカーズとかカバーすればお客さんは普通に盛り上がるんですけど、なんかこう、借り物で盛り上がってるような気がして、オリジナルでそういうことができないかなと思って、やってみたら、お客さんどっちらけで(笑)」
いまとなっては「この曲じゃノれねぇな」と反省できるというが、「そのときはすごく悔しくて、いつか自分のオリジナル曲でもっとノってもらえるようになりたいなと。あれがあったから、そのあとも曲を作り続けて、オリジナルソングをいっぱい作ったし。あの経験はいまにつながってますね」と、当時を振り返る。
実はいまのスピッツのレパートリーである『流れ星』の原型もそのころあったんだとか。「『流れ星』は“春の正直”ってタイトルだったんですけど(笑)。タイトルの付け方はね、水戸さん(アンジーの水戸華之介)に影響受けてる感じですね」
いわく、「進学校のなかのあまりできないほう(笑)」だった彼は、地元の産業大学にも美術学科があることを親には言わず、東京の美大を受験。高校3年時には美大受験の予備校にも通い、晴れて合格。同じデザイン学科で田村明浩に出会ったのもこのころだそう。ちなみに当時のバイト遍歴を聞くと、いまの美容ブロガーも仰天の、「コンビニになにを求めるかを学生数人で談義し、しかも高級中華を食べて、帰りにン万円もらう」(!)、看板の取り付け、ウエイター、ゲームセンター……と、いずれもいまの時代からは想像できない好待遇だったとか。
「ふだんは田村の家に入り浸ってゲームやったり、中古レコード屋めぐりしたりとか、ロックおたくな日々を過ごしてて。そんなとき、高校時代の友だちで上京してるヤツとかに会うと、すごいシティボーイになってて、それこそポロシャツの襟立て系で、スキーサークル入ってたりとか、彼女は東京の女の子、とか。全然、うらやましいと思わないけど、キラキラして見えて。自分はバンドも方向性見えてないし、ライブもサークルのパーティーみたいのでしか演奏してないし、“おれ、なにやってるんだろうな“って、ちょっとヘコんだりしましたけど」
その後、ファンにはおなじみの、「やりたいことが似すぎてて、逆にその方向はやめた」、衝撃のザ・ブルーハーツとの出会い。
「それまでいた日本のバンドって、悪い言い方するとカッコつけてるというか、“おれはカッコいい”って前提でやってる人がメインだったと思うんですけど、別にそんなこと考えずにやってもカッコいいバンドを初めて見た感じ。もう、なにやってもまねになっちゃうと思って、ショックで一時期バンドは半年ぐらいやめてましたね」
オリジナル曲で観客が盛り上がってくれない悔しさや、見つけかけていたことを先にやっているバンドがいた衝撃。一見、ネガティブな経験をすべて、ソングライター、そしてバンドマンとしての発奮材料にしてきたことを認める。
「同じこと叫ぶ 理想家の覚悟」(『ビギナー』より抜粋)
こんなフレーズで嫌みなく心を打つのは、秀逸なメロディーだけのせいじゃない。草野マサムネのタフネスは、確かに18才のころ、鍛えられ始めたのだ。
「いまの18才にアドバイスですか? おこがましいですよね、いまからするとラクチンな時代に生きた世代だと思うんで……でも若いってそれだけで特権じゃないですか? なんで、やるといいです(笑)。自分のことでいえるのは、いろいろえらそうなことを言う年配の人がいて、ありがたがって、“ああ、そうなんだ!”って聞いてたけど、半分以上、あてにならなかったなって、この年になって思います(笑)。特にロックとかバンドなんて正しい方法はないわけですから、バンドやってる若い人には言いたいかな、“自分がいいと思ったら正しいと思え”ってね」
時代を把握し、しかし振り回されない。スピッツの音楽の根っこが見えた。
(インタビュー・文 / 石角友香)
前作『さざなみCD』から約3年。これまでにシングルリリースされた『君は太陽』(映画「ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡」主題歌)、テレビCMでもおなじみの『つぐみ』『ビギナー/シロクマ』など、スピッツ史上初となる5曲のシングルと7曲のタイアップを収録。制作にじっくり時間をかけた端正さと、フレッシュな勢いの両方がある名作。
リスナーレビュー
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2010/10/27 13:06
2010/10/28 0:55
2010/10/27 21:58
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