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【主張】対中外交 首相はビデオ全面公開を
菅直人首相は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席するため、28日にベトナムを訪問する。中国の温家宝首相との首脳会談を調整しているが、気がかりなのは対中姿勢だ。
これに続き、11月には横浜でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。首相には、これを成功させるため、過剰に対中配慮している姿勢がうかがえるからだ。
それを端的に表すのが、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で海上保安庁の巡視船が撮影したビデオをめぐる対応だ。ビデオは27日、政府から中井洽(ひろし)衆院予算委員長に提出されたが、全面公開を避けたい政府・民主党に対し、野党は全面公開を求めている。
日本の主張の正しさを国際社会にアピールするためにも、ビデオの全面公開が不可欠である。首相は首脳会談前に決断すべきだ。
ビデオは国会法に基づく正式な手続きで提出され、取り扱いは国会が独自に判断すべきものだ。那覇地検は横路孝弘衆院議長にビデオを提出した際に「配慮が必要なので、見る方の範囲を含めて慎重に扱ってほしい」と要望したという。中国に配慮し、政府が再び検察を利用して公開を制限しようとしているなら認められない。
主権侵害問題の棚上げは日本の国益を損なうことになる。船長釈放は、「強く押せば日本は折れる」印象を与えた点で致命的な誤りだった。
対中外交を立て直す上で、主権の問題や権益をめぐる対立を避けることなどあり得ない。事件をめぐる厳重抗議に加え、東シナ海ガス田での一方的な開発やレアアース(希土類)の輸出制限など、中国側のあらゆる問題点を厳しくただしていかなければならない。
レアアースの輸出制限は欧米でも重大視され、11月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議で取り上げられる情勢だ。中国が貿易ルールを守らなければ、首相は首脳会談で世界貿易機関(WTO)に提訴すると通告すべきだ。
中国は24日、尖閣諸島周辺の接続水域内で漁業監視船2隻を航行させるなど、牽制(けんせい)行動をやめていない。仙谷由人官房長官は「わが国の領海内を徘徊(はいかい)されるのは気持ちがよくない」とコメントしたが、「主権侵害は断じて認められない」と、明確に抗議の意思を示さなければ国益は守れない。