長谷川が告別式で号泣、亡き母と２階級制覇に挑む

母・裕美子さんの遺影を持ち出棺に臨んだ長谷川

　長谷川が悲壮な決意で２階級制覇に挑む。２４日にがんで亡くなった、プロボクシング前ＷＢＣ世界バンタム級王者の長谷川穂積（２９）＝真正＝の母・裕美子さん（享年５５歳）の葬儀・告別式が２６日、兵庫県西脇市内でしめやかに営まれた。長谷川は最愛の母に「家族が悲しんだり、つらいときは夢に出てきて」と呼びかけて号泣。１か月後に迫ったＷＢＣ世界フェザー級王座決定戦（１１月２６日、名古屋・日本ガイシホール＝報知新聞社後援）はオカンの魂とともに戦う。

　会場が悲しみで包まれた。親族代表のあいさつ。泣きはらした真っ赤な目で長谷川は「さみしがり屋のオカンだから…少しだけ話をしたいです」と嗚咽（おえつ）しながらひつぎの方に体を向けた。母親への愛情と感謝の思いがあふれ出した。

　６月に母の余命を告げられて以降はテレビの出演依頼などを断り、自宅とジムのある神戸市内と西脇市内の病院を車で約４０分かけて往復する日々。旅行やバーベキューなど母と一緒に過ごす時間を大切にしてきた。「安心して天国に行って。でも家族が悲しんだり、つらいときは夢に出てきて、いつもの笑顔で話してください」と語りかけた。

　「オカンの笑顔が大好きやし、オカンもずっと大好きでいて。また会おうね」。リングで最強だった元チャンプが絞り出す言葉は参列者の多くの涙をさそった。この日はプロ野球・阪神の金本や西武の中島、俳優の片岡鶴太郎ら各界から供花が届き、長谷川を兄のように慕う前ＷＢＣ世界フェザー級王者の粟生隆寛（２６）＝帝拳＝ら５００人以上が参列した。

　苦難の１か月になる。飛び級での２階級制覇に挑む再起戦は１１月２６日。左手親指のつめがはがれたこともあって外国人パートナーとのスパーも延期しており、この時期の数日の練習休止は試合への影響が必至だ。母の死のショックは計り知れず、山下正人会長（４８）は今週いっぱい休ませる方針だが、練習再開は本人次第という。

　最後の数日は何度も息を吹き返した裕美子さん。父・大二郎さん（５４）が「何事にも負けないように頑張れ、と（メッセージを）残してくれた」と言うように、その姿は長谷川の胸に焼き付いた。優しいオカンが残してくれた強い心とともに、Ｖ１０王者が最大の試練を乗り越える。