甲子園を沸かせた「青いハンカチ」の衝撃から4年。東京六大学史上6人目の30勝&300奪三振を達成したスターがついにプロへの入り口に立つ。斎藤のためのドラフトがやってきた。
運命の日を翌日に控えたこの日は東京・西東京市の早大グラウンドで午後から汗を流した。練習は非公開だったが、親しい関係者にはプロ入り後の目標を打ち明けていることがわかった。
ラブコールを送り続けてきたヤクルト、ロッテに対しては、関係者に「誠意を示してくれている」と、感謝の意を伝えているという。両球団は今月22日に“早大詣で”をした際、両親に開幕ローテーション入りを確約したが、斎藤はその約束手形にはこだわらない。「実力でローテーションを奪い取って、最低2けたは勝ちたい」と、熱い思いを伝えていた。
さらなる野望も抱いている。「20年で200勝したい」。選手生命は太く、長く。ズバリ、名球会入りを目指すというのだ。大卒で200勝は、過去にわずか4人しか達成していない大記録。投手の分業制が確立した今では至難の業だが、あえて挑む。かつて大学から鳴り物でプロ入りした星野仙一(明大→中日)や江川卓(法大→阪神、“空白の一日”で巨人へトレード)らでも達成できなかった快挙に挑戦するのだ。
早実高のエースとして、2006年夏の甲子園決勝で田中(現楽天)を擁する駒大苫小牧高と延長15回引き分け再試合の末に優勝。“ハンカチ王子”の愛称もついて国民的アイドルになった。だがマー君が即プロの道を選ぶ一方、斎藤は進学を決めた。
「遠回りしたとは思っていない」。プロ志望届を出した後の今月15日の会見でキッパリと言った。早大では1年時から日の丸を背負い、招待試合や講演などにも引っ張りだこ。それでも4年間、大きな故障もなく、マウンドに立ち続けてきた。超人的な精神的、肉体的タフさ。そして圧倒的な人気。人材豊富な“ハンカチ世代”の中でも、客を呼べる即戦力右腕としての評価は揺るがない。
ドラフトではくじ抽選が待つ。斎藤は「あとはくじ引きですので、天命を待つだけ」と語っているが、「自信がなかったら(プロに)挑戦しようとは思わない」と強い自負も口にし、12球団OKの姿勢を示している。
28日、斎藤の“天命”に熱い視線が注がれるが、本人は早くもその先を見つめている。(石川洋)